デジタル大辞泉だいじせん 「菌きん界かい」の意味いみ・読よみ・例文れいぶん・類語るいご きん‐かい【菌きん界かい】 生物せいぶつ分類ぶんるい上じょう、植物しょくぶつ・動物どうぶつ・原生げんせい生物せいぶつとともに真ま核かく生物せいぶつに属ぞくする生物せいぶつの一群いちぐん。カビ・キノコ・酵母こうぼなどの菌類きんるいが含ふくまれる。 出典しゅってん 小学館しょうがくかんデジタル大辞泉だいじせんについて 情報じょうほう | 凡例はんれい
日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ) 「菌きん界かい」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ 菌きん界かいきんかい 植物しょくぶつ界かい、動物どうぶつ界かいとともに生物せいぶつ界かいを構成こうせいする3要素ようそのうちの一ひとつである。生物せいぶつ観かんの変遷へんせんと菌きん界かい生物せいぶつには植物しょくぶつと動物どうぶつがあるというのが古来こらいの常識じょうしきであった。しかし、顕微鏡けんびきょうが発明はつめいされて微小びしょうな生物せいぶつ群ぐんが発見はっけんされるようになってからは、それらを含ふくむ原生げんせい生物せいぶつ界かいまたは微生物びせいぶつ界さかいが第だい三さんの生物せいぶつ界かいとして考かんがえられ、さらに一部いちぶでは、四よん界かい説せつ、五ご界かい説せつが唱となえられたが、常識じょうしき的てきな生物せいぶつ二元論にげんろんにかわることはできなかった。たとえば、1969年ねんのウィッタカーの五ご界かい説せつでは、次つぎの五いつつがあげられた。(1)モネラ界かい(原核げんかく生物せいぶつの細菌さいきん類るいと藍あい藻も(らんそう)類るい)、(2)原生げんせい生物せいぶつ界かい(単細胞たんさいぼう性せい真ま核かく生物せいぶつの藻類そうるい、原生動物げんせいどうぶつおよび菌類きんるいの一部いちぶであるネコブカビやサカゲツボカビの仲間なかま)、(3)植物しょくぶつ界かい(多た細胞さいぼう性せいの真ま核かく植物しょくぶつ)、(4)菌類きんるい界かい(Fungus kingdom前記ぜんき(1)と(2)を除のぞく狭義きょうぎの菌類きんるい)、(5)動物どうぶつ界かい(原生動物げんせいどうぶつ以外いがいの動物どうぶつ)。この分類ぶんるいでは、(1)と(2)は簡単かんたんな体制たいせいから複雑ふくざつな体制たいせいへ進すすむ進化しんか段階だんかいで上下じょうげに二分にぶんし、(3)~(5)は(2)に続つづく進化しんか段階だんかいを縦たてに三さん分ふんしていて、全体ぜんたいの区分くぶん法ほうに統一とういつ性せいがない。生物せいぶつ界かいの分類ぶんるいには、起源きげんと進化しんかを含ふくむ縦たて方向ほうこうの系統けいとう分類ぶんるいが重要じゅうようである。(3)~(5)はそれぞれの栄養えいよう法ほうが光合成こうごうせい、吸収きゅうしゅう、消化しょうかの方向ほうこうに進すすんだものであるが、この考かんがえ方かたを(1)と(2)に適用てきようすると次つぎのようになる。藍あい藻類そうるいと単細胞たんさいぼう性せい藻類そうるいは、酸素さんそ発生はっせい型がた光合成こうごうせいを行おこなう植物しょくぶつ類るいの系統けいとうであり、原生動物げんせいどうぶつは消化しょうかを行おこなう動物どうぶつ類るいの系統けいとう、残のこりのものは吸収きゅうしゅうを行おこなう菌類きんるいの系統けいとうである。このように現存げんそん生物せいぶつ群ぐんを整理せいりすると三みっつの系統けいとう群ぐんとなり、菌きん界かいMycotaには原核げんかく菌類きんるいと真ま核かく菌類きんるいが含ふくまれる。この考かんがえ方かたは、進化しんか学がく的てきおよび生態せいたい学がく的てきに裏うらづけされて、生物せいぶつ三さん元げん論ろんに発展はってんする。[寺川てらがわ博典ひろのり]菌きん界かいの成なり立たち原始げんし地球ちきゅう上じょうでの化学かがく進化しんかの結果けっかとして、約やく35億おく年ねん前まえに誕生たんじょうした原始げんし生物せいぶつ(原核げんかく性せい単細胞たんさいぼう体たい)群ぐんは、周囲しゅういの水中すいちゅうに溶とけている原始げんし有機物ゆうきぶつを吸収きゅうしゅうして生活せいかつと進化しんかを行おこなった。その後ご、この吸収きゅうしゅう機能きのうに加くわえて光合成こうごうせい機能きのうが発達はったつしたものが、植物しょくぶつ類るいの祖先そせんの藍あい藻もとして進化しんかした。吸収きゅうしゅうを行おこなっていた単細胞たんさいぼう体たいは何なん億おく年ねんもかかって真ま核かく性せいに進すすみ、吸収きゅうしゅう機能きのうに捕食ほしょく消化しょうかという過程かていが付つけ加くわわって真ま核かく性せいの動物どうぶつ類るいが進化しんかし、他方たほうでは真ま核かく性せいの植物しょくぶつ類るいも進化しんかした。最初さいしょの原始げんし生物せいぶつ群ぐんの吸収きゅうしゅうという栄養えいよう法ほうを受うけ継ついだのが菌類きんるいである。これらの三みっつの系統けいとう群ぐんのその後ごの進化しんかは、それぞれの特徴とくちょう的てき栄養えいよう法ほうをいっそう効果こうか的てきにするような体制たいせいの進化しんかであった。こうして、植物しょくぶつ類るいは葉はを広ひろげて生活せいかつし、動物どうぶつ類るいは動うごいて生活せいかつするのに対たいして、菌類きんるいは基もと物ぶつに潜もぐって生活せいかつする体制たいせいとなった。[寺川てらがわ博典ひろのり]菌きん界かいの菌類きんるいという見方みかたの重要じゅうよう性せい菌きん界かいの原核げんかく菌類きんるいと真ま核かく菌類きんるいは、いわゆる細菌さいきん類るいと菌類きんるいであって、一般いっぱんに細菌さいきん類るいは菌類きんるいに含ふくまれないものとして教おしえられている。また、細菌さいきん類るいはバクテリアともいわれるが、バクテリアには藍あい藻類そうるい(シアノバクテリア)も含ふくまれる。さらに、普通ふつうに使つかわれる「微生物びせいぶつ」は菌類きんるいや細菌さいきん類るいのほかに原生動物げんせいどうぶつや藻類そうるいも含ふくむ。細菌さいきん類るいを菌類きんるいと区別くべつしたり、バクテリア、微生物びせいぶつといった混乱こんらんした生物せいぶつ観かんからは正ただしい自然しぜん観かんは得えられない。生物せいぶつ群ぐんが三みっつに分化ぶんかしたのは、それなりの理由りゆうがあった。生物せいぶつ体たいになくてはならない物質ぶっしつ、とくに炭素たんそが滞とどこおりなく生物せいぶつ界かいを循環じゅんかんするには、生産せいさん者しゃとしての植物しょくぶつ類るい、消費しょうひ者しゃとしての動物どうぶつ類るい、および還元かんげん者しゃとしての菌きん界かいの菌類きんるいの三さん者しゃが不可欠ふかけつである。植物しょくぶつ類るいが光合成こうごうせいに使用しようする二酸化炭素にさんかたんその大半たいはんは、この菌類きんるいの還元かんげん作用さようによっている。地球ちきゅう上じょうにある二酸化炭素にさんかたんそは、補給ほきゅうされなければ250~300年ねんで植物しょくぶつ類るいによって使つかい尽つくされる。物質ぶっしつ循環じゅんかんという仕組しくみは地球ちきゅう上じょう有限ゆうげんの物質ぶっしつを無限むげんに使用しようする道みちを開ひらいたものであり、これによって三さん十じゅう数すう億おく年ねんにわたる生物せいぶつ界かいの繁栄はんえいが保証ほしょうされてきた。以上いじょうは生物せいぶつ三さん元げん論ろんの要旨ようしである。この生態せいたい系けい自然しぜん観かんは、人間にんげんのあらゆる活動かつどうの背景はいけいとして欠かかすことはできない。それには菌きん界かいの菌類きんるいという概念がいねんの確立かくりつが重要じゅうようである。[寺川てらがわ博典ひろのり]『寺川てらがわ博典ひろのり著ちょ『菌類きんるいの系統けいとう進化しんか』(1978・東京とうきょう大学だいがく出版しゅっぱん会かい)』[参照さんしょう項目こうもく] | 菌類きんるい | 生物せいぶつ三さん元げん論ろん 出典しゅってん 小学館しょうがくかん 日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)について 情報じょうほう | 凡例はんれい
世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん(旧版きゅうばん)内うちの菌きん界かいの言及げんきゅう 【菌類きんるい】より …古ふるくは植物しょくぶつに含ふくめられ,光合成こうごうせいを行おこなう高等こうとう植物しょくぶつや藻類そうるいに対たいし,光合成こうごうせいをまったく行おこなわない下等かとう植物しょくぶつを一括いっかつした群ぐんであったが,現在げんざいでは体制たいせい,生殖せいしょく法ほう,生化学せいかがく的てき特徴とくちょうなどから根本こんぽん的てきに異ことなる一ひとつの生物せいぶつ群ぐんとして取とり扱あつかう傾向けいこうが強つよい。系統けいとう的てきな面めんからも,菌類きんるいを菌きん界かいMycotaとし,生物せいぶつ5界かい説せつ(動物界どうぶつかいAnimalia,植物しょくぶつ界かいPlantae,原生げんせい生物せいぶつ界かいProtista,原核げんかく生物せいぶつ界かい(モネラ界かい)Monera,菌きん界かい)の一ひとつとする説せつもある(R.H.ホイッタカー,1969)。定義ていぎとしては有ゆう核かくで,光合成こうごうせいを行おこなわず,有性ゆうせいまたは無性むしょう的てきに繁殖はんしょくし,栄養えいよう体たいは多おおく糸状いとじょうで分ぶん枝えだし従属じゅうぞく栄養えいよう型がた,胞子ほうしを形成けいせいし,細胞さいぼう壁かべは多おおくの場合ばあいキチンあるいはセルロースで構成こうせいされる生物せいぶつ群ぐんということになる。… 【生物せいぶつ】より …しかし,動物どうぶつでありながら,固着こちゃく性せいで,一見いっけんして動物どうぶつとは思おもえぬカイメンのようなものもおり,またミドリムシのように,植物しょくぶつの特徴とくちょうである光合成こうごうせいを行おこなうため動物どうぶつとしても植物しょくぶつとしても扱あつかわれる生物せいぶつもいる。細菌さいきん類るい,菌類きんるいなどは,主しゅとして細胞さいぼうの形態けいたい学がく的てき特徴とくちょうなどから,かつては植物しょくぶつとして扱あつかわれてきたが,もっぱら有機ゆうき物質ぶっしつに頼たよるという生いき方かたなどは植物しょくぶつ的てきとはいえず,さりとて全体ぜんたい的てきな様相ようそうは動物どうぶつ的てきでもなく,進化しんかの筋道すじみちからみても,動物どうぶつ,植物しょくぶつのいずれかに含ふくめるのは難なんがあるとして,今日きょうでは〈第だい三さんの生物せいぶつ〉といわれる菌類きんるい(菌きん界かいMycota)なるグループが設定せっていされている。 ウイルスが生物せいぶつであるかどうかは長ながい間あいだ論議ろんぎの的てきであったが,ウイルスは自分じぶんではエネルギー転換てんかん系けいをもたず,物質ぶっしつ代謝たいしゃの面めんは生物せいぶつの生いきた細胞さいぼうに依存いぞんして自己じこ増殖ぞうしょくを行おこなうため,現在げんざいでは生物せいぶつの範疇はんちゅう(はんちゆう)には含ふくめられていない。… ※「菌きん界かい」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつの一部いちぶを掲載けいさいしています。 出典しゅってん|株式会社かぶしきがいしゃ平凡社へいぼんしゃ「世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん(旧版きゅうばん)」