目次 分類,体制 生活史 系統,進化 生育場所 病原微生物 としての菌類 植物病原菌類 古 ふる くは植物 しょくぶつ に含 ふく められ,光合成 こうごうせい を行 おこな う高等 こうとう 植物 しょくぶつ や藻類 そうるい に対 たい し,光合成 こうごうせい をまったく行 おこな わない下等 かとう 植物 しょくぶつ を一括 いっかつ した群 ぐん であったが,現在 げんざい では体制 たいせい ,生殖 せいしょく 法 ほう ,生化学 せいかがく 的 てき 特徴 とくちょう などから根本 こんぽん 的 てき に異 こと なる一 ひと つの生物 せいぶつ 群 ぐん として取 と り扱 あつか う傾向 けいこう が強 つよ い。系統 けいとう 的 てき な面 めん からも,菌類 きんるい を菌 きん 界 かい Mycotaとし,生物 せいぶつ 5界 かい 説 せつ (動物界 どうぶつかい Animalia,植物 しょくぶつ 界 かい Plantae,原生 げんせい 生物 せいぶつ 界 かい Protista,原核 げんかく 生物 せいぶつ 界 かい (モネラ界 かい )Monera,菌 きん 界 かい )の一 ひと つとする説 せつ もある(R.H. ホイッタカー,1969)。定義 ていぎ としては有 ゆう 核 かく で,光合成 こうごうせい を行 おこな わず,有性 ゆうせい または無性 むしょう 的 てき に繁殖 はんしょく し,栄養 えいよう 体 たい は多 おお く糸状 いとじょう で分 ぶん 枝 えだ し従属 じゅうぞく 栄養 えいよう 型 がた ,胞子 ほうし を形成 けいせい し,細胞 さいぼう 壁 かべ は多 おお くの場合 ばあい キチンあるいはセルロースで構成 こうせい される生物 せいぶつ 群 ぐん ということになる。また運動 うんどう 性 せい のある菌 きん は特殊 とくしゅ な器官 きかん をもつ。
分類 ぶんるい ,体制 たいせい 変形 へんけい 菌 きん 門 もん Myxomycotaと真 ま 菌 きん 門 もん Eumycotaの二 ふた つの門 もん に大別 たいべつ され,後者 こうしゃ は鞭 むち 毛 げ 菌類 きんるい ,接合 せつごう 菌類 きんるい ,子 こ 囊菌類 るい ,担子菌類 きんるい ,不完全 ふかんぜん 菌類 きんるい の五 いつ つの亜 あ 門 もん に分 わ けられる。この分類 ぶんるい 基準 きじゅん は有性 ゆうせい 生殖 せいしょく 器官 きかん の形質 けいしつ におかれ,したがって有性 ゆうせい 生殖 せいしょく の見 み いだされないものは,とりあえず不完全 ふかんぜん 菌類 きんるい としてまとめられている。
歴史 れきし 的 てき にみて,ミケーリP.A.Micheliの《新 あたら しい植物 しょくぶつ の属 ぞく Nova Plantarum Genera》(1729)にはすでに大型 おおがた の菌類 きんるい はのっているが植物 しょくぶつ として取 と り扱 あつか われ,リンネの《植物 しょくぶつ 種 しゅ 誌 し Species Plantarum》(1753)では藻類 そうるい といっしょに隠花植物 いんかしょくぶつ Cryptogamiaとしてまとめられ,この呼 よ び方 かた はその後 ご 長 なが い間 あいだ つかわれてきた。菌類 きんるい の分類 ぶんるい 研究 けんきゅう が独立 どくりつ して行 おこな われたのは1800年代 ねんだい からで,ペルズーンC.H.Persoon(1761-1836),フリースE.M.Fries(1794-1878)らが創始 そうし 者 しゃ といえよう。19世紀 せいき 後半 こうはん に入 はい ると,細胞 さいぼう 学 がく ,遺伝 いでん 学 がく ,生理学 せいりがく の分野 ぶんや で研究 けんきゅう 材料 ざいりょう として扱 あつか われ,とくに植物 しょくぶつ 病理 びょうり 学 がく ,応用 おうよう 微生物 びせいぶつ 学 がく ,皮膚 ひふ 科学 かがく の分野 ぶんや で研究 けんきゅう 成果 せいか が次々 つぎつぎ と得 え られ,発展 はってん してきた。このころには菌類 きんるい を研究 けんきゅう する学問 がくもん 分野 ぶんや として菌 きん 学 がく mycologyが独立 どくりつ してきたが,分類 ぶんるい 学 がく の面 めん では依然 いぜん として下等 かとう 植物 しょくぶつ の特殊 とくしゅ な一 いち 群 ぐん と解釈 かいしゃく されていた。R.H.ホイッタカーの5界 かい 説 せつ は,はじめて菌類 きんるい を動物 どうぶつ および植物 しょくぶつ から切 き り離 はな したもので反論 はんろん も多 おお かったが,アインスワーズG.C.Ainsworthは《菌類 きんるい 辞典 じてん Dictionary of Fungi》でこの説 せつ を採用 さいよう し(1971,83),その後 ご ,広 ひろ く用 もち いられるようになっている。
菌類 きんるい はすべてが真 ま 核 かく 生物 せいぶつ であり,静止 せいし 核 かく の状態 じょうたい で核 かく 膜 まく が認 みと められ,原則 げんそく として有性 ゆうせい 生殖 せいしょく を行 おこな い,細胞 さいぼう 質 しつ 内 ない にはミトコンドリアなどの構造 こうぞう 体 たい がある。これらの諸点 しょてん で細菌 さいきん やウイルスなどの原核 げんかく 生物 せいぶつ とは基本 きほん 的 てき に異 こと なっている。栄養 えいよう 体 たい は菌糸 きんし hyphaといわれる糸状 いとじょう の細胞 さいぼう からなり,この菌糸 きんし がゆるく集 あつ まったものを菌糸 きんし 体 たい myceliumという。これが単細胞 たんさいぼう のものもあり,酵母 こうぼ などでは出芽 しゅつが 増殖 ぞうしょく をくり返 かえ す。菌糸 きんし は栄養 えいよう ,温度 おんど ,湿度 しつど などの条件 じょうけん が適当 てきとう ならば着 つ いている基質 きしつ の上 うえ を生 は えひろがる。菌糸 きんし にはところどころに隔壁 かくへき がある。この隔壁 かくへき の中央 ちゅうおう には小 ちい さい穴 あな があり内容 ないよう 物 ぶつ が流通 りゅうつう するが,完全 かんぜん に仕切 しき られている壁 かべ もある。隔壁 かくへき 構造 こうぞう は電子 でんし 顕微鏡 けんびきょう により研究 けんきゅう され,重要 じゅうよう な分類 ぶんるい 基準 きじゅん (とくに子 こ 囊菌類 るい と担子菌類 きんるい の相違 そうい )とされる。基本 きほん 的 てき には菌糸 きんし は多核 たかく である。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく を行 おこな うと,この菌糸 きんし 上 じょう に生殖 せいしょく 器官 きかん が形成 けいせい され,特殊 とくしゅ な構造 こうぞう ができる。鞭 むち 毛 げ 菌類 きんるい では接合 せつごう 子 こ zygote,卵 たまご 胞子 ほうし oospore,接合 せつごう 菌類 きんるい では接合 せつごう 胞子 ほうし zygospore,子 し 囊菌類 るい では子 こ 囊果ascocarp,担子菌類 きんるい では担子器 き 果 はて basidiocarpがそうである。これらの器官 きかん の形質 けいしつ をもとに次 つぎ の分類 ぶんるい 体系 たいけい ができている。
(1)変形 へんけい 菌 きん 門 もん 粘 ねば 菌類 きんるい ともいわれ,体 からだ 構造 こうぞう はアメーバ状 じょう ,偽 にせ 変形 へんけい 体 たい pseudoplasmodiumあるいは変形 へんけい 体 たい plasmodiumをつくる。
(2)真 ま 菌 きん 門 もん (真 ま 菌類 きんるい ) 体 からだ 構造 こうぞう は菌糸 きんし 状 じょう ,単細胞 たんさいぼう のこともある。(a)鞭 むち 毛 げ 菌 きん 亜 あ 門 もん (鞭 むち 毛 げ 菌類 きんるい ) 栄養 えいよう 体 たい は単細胞 たんさいぼう ,あるいは菌糸 きんし 状 じょう ,運動 うんどう 性 せい の胞子 ほうし ,あるいは配偶 はいぐう 子 こ をもつ。生活 せいかつ 史 し のある時期 じき に鞭 むち 毛 げ をもって運動 うんどう する遊 ゆう 走 はし 子 こ が遊 ゆう 走 はし 子 こ 囊中に形成 けいせい され,泳 およ ぎ出 だ す。この鞭 むち 毛 げ には尾 お 型 がた と羽 はね 型 がた があり,その着 つ く位置 いち ,本数 ほんすう などが分類 ぶんるい 基準 きじゅん となる。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく も行 おこな い,卵 たまご 胞子 ほうし を形成 けいせい するミズカビ目 め が代表 だいひょう 的 てき である。19属 ぞく ,1170種 しゅ 。
(b)接合 せつごう 菌 きん 亜 あ 門 もん (接合 せつごう 菌類 きんるい ) 栄養 えいよう 体 たい は菌糸 きんし 状 じょう ,基本 きほん 的 てき には隔壁 かくへき はない。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく の結果 けっか として接合 せつごう 胞子 ほうし を形成 けいせい する。無性 むしょう 生殖 せいしょく は胞子 ほうし 囊胞子 ほうし ,あるいは分 ぶん 生子 おいご による。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく は配偶 はいぐう 子 こ 囊の接合 せつごう にはじまり,融合 ゆうごう した両 りょう 配偶 はいぐう 子 こ 囊が発達 はったつ して接合 せつごう 胞子 ほうし となる。胞子 こ 囊胞子 ほうし は不動 ふどう 性 せい で胞子 ほうし 囊に含 ふく まれるが,ごく少数 しょうすう の胞子 ほうし を含 ふく む小 しょう 胞子 ほうし 囊,数個 すうこ が縦 たて に並 なら んで含 ふく まれる分節 ぶんせつ 胞子 ほうし 囊がある。また,ただ1個 いっこ を含 ふく む分 ぶん 生子 いくこ 様 さま の胞子 ほうし 囊もある。145属 ぞく ,765種 しゅ 。
(c)子 こ 囊菌亜 あ 門 もん (子 こ 囊菌類 るい ) 栄養 えいよう 体 たい は隔壁 かくへき のある菌糸 きんし 状 じょう ,あるいは単細胞 たんさいぼう 。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく の結果 けっか ,子 こ 囊を形成 けいせい し,中 なか に子 こ 囊胞子 ほうし をつくる。原 はら 形質 けいしつ 融合 ゆうごう から核 かく 融合 ゆうごう ,減数 げんすう 分裂 ぶんれつ を経 へ て子 こ 囊を形成 けいせい する有性 ゆうせい 時代 じだい (完全 かんぜん 時代 じだい ,完全 かんぜん 世代 せだい )のほか,多 おお くの種 たね で無性 むしょう の分 ぶん 生子 おいご を形成 けいせい する。生活 せいかつ 史 し は複雑 ふくざつ で多 た 形 かたち 的 てき であり,体制 たいせい の最 もっと も簡単 かんたん なものは子 こ 囊菌酵母 こうぼ (サッカロミセスほか)で子 こ 囊は独立 どくりつ するが,不整 ふせい 子 こ 囊菌綱 つな ,核 かく 菌 きん 綱 つな ,盤 ばん 菌 きん 綱 つな では子 こ 囊果は複雑 ふくざつ になる。2720属 ぞく ,2万 まん 8650種 しゅ 。
(d)担子菌 きん 亜 あ 門 もん (担子菌類 きんるい ) 栄養 えいよう 体 たい は隔壁 かくへき をもつ菌糸 きんし 状 じょう で,隔壁 かくへき 部 ぶ にかすがい連結 れんけつ のあることが多 おお い。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく の結果 けっか ,担子器 き を形成 けいせい し,その上 うえ に担子胞子 ほうし を外 そと 生 せい する。単 たん 相 しょう の一 いち 次 じ 菌糸 きんし と,遺伝子 いでんし 型 がた の異 こと なる2型 がた の核 かく を含 ふく む重 じゅう 相 しょう の二 に 次 じ 菌糸 きんし とがあり,二 に 次 じ 菌糸 きんし が集合 しゅうごう して組織 そしき 化 か した子 こ 実体 じったい がキノコに当 あ たる。子 こ 実体 じったい の決 き まった部位 ぶい に担子器 き が柵 しがらみ 状 じょう に並 なら び,担子器 き 上 じょう 端 はし にできる小柄 こがら 上 じょう に担子胞子 ほうし が形成 けいせい される。二 に 次 じ 菌糸 きんし の隔壁 かくへき 部 ぶ にしばしばかすがい連結 れんけつ が見 み られる。無性 むしょう 生殖 せいしょく が分 ぶん 生子 おいご によるものもある。1100属 ぞく ,1万 まん 6000種 しゅ 。
(e)不完全 ふかんぜん 菌 きん 亜 あ 門 もん (不完全 ふかんぜん 菌類 きんるい ) 栄養 えいよう 体 たい は隔壁 かくへき のある菌糸 きんし 状 じょう ,あるいは単細胞 たんさいぼう 。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく が見 み つかっていないもの。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく のわからない菌類 きんるい がすべてこの中 なか に含 ふく まれる。したがって分類 ぶんるい 基準 きじゅん は他 た の4亜 あ 門 もん の菌類 きんるい と異 こと なり,無性 むしょう 時代 じだい の分 ぶん 生子 おいご などの形質 けいしつ におかれる。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく が判明 はんめい すると,その形質 けいしつ により子 こ 囊菌や担子菌 きん に分類 ぶんるい される。1680属 ぞく ,1万 まん 7000種 しゅ 。
有性 ゆうせい 生殖 せいしょく のほか,菌糸 きんし のところどころから分 ぶん 枝 えだ が生 しょう じ,その先端 せんたん から無性 むしょう 的 てき に胞子 ほうし が生 う み出 だ されたり,また菌糸 きんし が分断 ぶんだん されて胞子 ほうし となることもある。これらの無性 むしょう 胞子 ほうし は分 ぶん 生子 おいご と呼 よ ばれ,その形成 けいせい 法 ほう はきわめて多様 たよう であり,分類 ぶんるい の基準 きじゅん となっている。また,分 ふん 枝 えだ の先端 せんたん にできる囊状の袋 ふくろ に無性 むしょう 胞子 ほうし が内 うち 生 せい するものもあり,これを胞子 ほうし 囊胞子 ほうし といい,接合 せつごう 菌類 きんるい のケカビ目 め にみられる。
なお前述 ぜんじゅつ の生物 せいぶつ 5界 かい 説 せつ では,変形 へんけい 菌類 きんるい や鞭 むち 毛 げ 菌類 きんるい の卵 たまご 菌類 きんるい やサカゲツボカビ類 るい を,藻類 そうるい などとともに原生 げんせい 生物 せいぶつ 界 かい に含 ふく める。
生活 せいかつ 史 し 菌類 きんるい の胞子 ほうし が発芽 はつが し,ある一連 いちれん の状態 じょうたい を経 へ て再 ふたた びもとの胞子 ほうし 形成 けいせい に至 いた る道程 どうてい を,一般 いっぱん に生活 せいかつ 史 し と称 しょう している。コケやシダ植物 しょくぶつ では生活 せいかつ 史 し は規則正 きそくただ しいものであるが,菌類 きんるい の場合 ばあい は特定 とくてい な場合 ばあい を除 のぞ き,諸 しょ 条件 じょうけん により途中 とちゅう の段階 だんかい を飛 と びこしたりして,必 かなら ずしも規則正 きそくただ しい生活 せいかつ 史 し をたどらないことが特徴 とくちょう といえる。菌類 きんるい の生殖 せいしょく 細胞 さいぼう は原則 げんそく 的 てき には単 たん 相 しょう (n 時代 じだい )であり,単 たん 相 しょう 細胞 さいぼう の間 あいだ に細胞 さいぼう 質 しつ 融合 ゆうごう があっても両方 りょうほう の核 かく はすぐに融合 ゆうごう せず,細胞 さいぼう 内 ない で対立 たいりつ した2核 かく のままである重 じゅう 相 しょう の時代 じだい の長 なが いことも特徴 とくちょう で,2n の複 ふく 相 しょう 時代 じだい は一般 いっぱん にきわめて短 みじか い。反面 はんめん ,無性 むしょう 時代 じだい の核 かく 相 しょう は必 かなら ずしも単 たん 相 しょう とはいえない。このように菌類 きんるい の生活 せいかつ 史 し には有性 ゆうせい と無性 むしょう の両 りょう 時代 じだい があり,しかも,それぞれの時代 じだい の形状 けいじょう に大 おお きな差 さ があるので(子 こ 囊果と分 ぶん 生子 おいご 時代 じだい ,担子菌類 きんるい 子 こ 実体 じったい キノコと菌糸 きんし 時代 じだい など),学名 がくめい も別々 べつべつ に与 あた えられ,両方 りょうほう の時代 じだい が判明 はんめい した場合 ばあい は,有性 ゆうせい 時代 じだい に与 あた えられた学名 がくめい が優先 ゆうせん することになっている。なお,菌類 きんるい に関 かん して,両 りょう 時代 じだい は現在 げんざい 有性 ゆうせい 時代 じだい teleomorph,無性 むしょう 時代 じだい anamorphと呼 よ ばれることが多 おお い。
系統 けいとう ,進化 しんか 菌類 きんるい の系統 けいとう にはきわめて多様 たよう の体系 たいけい が提案 ていあん され,しかも次々 つぎつぎ と新 あたら しい事実 じじつ や概念 がいねん ,微細 びさい 構造 こうぞう ,遺伝 いでん 生化学 せいかがく 的 てき なデータも加 くわ えられているので,現在 げんざい の分類 ぶんるい 体系 たいけい も暫定 ざんてい 的 てき なものと解釈 かいしゃく すべきであろう。興味 きょうみ ある新 あたら しいデータも多 おお いが,取 と り扱 あつか われた種類 しゅるい も限 かぎ られたり,系統 けいとう 分類 ぶんるい 学 がく 上 じょう の代表 だいひょう 種 しゅ でない場合 ばあい も多 おお く,現 げん 段階 だんかい では菌類 きんるい の系統 けいとう を明 あき らかにするには至 いた っていない。例 たと えば,鞭 むち 毛 げ 菌類 きんるい は遊泳 ゆうえい 細胞 さいぼう を備 そな えていることで一括 いっかつ されているが,必 かなら ずしも類縁 るいえん 関係 かんけい の深 ふか い自然 しぜん 群 ぐん ではないともいわれる。子 こ 囊菌類 るい においても,子 こ 囊果の外見 がいけん と系統 けいとう とは必 かなら ずしも一致 いっち したものとも考 かんが えられない。真 しん の類縁 るいえん 関係 かんけい を明 あき らかにするためには,従来 じゅうらい のような採集 さいしゅう した時点 じてん における観察 かんさつ にとどまらず,純粋 じゅんすい 培養 ばいよう 下 か における長期 ちょうき 的 てき な観察 かんさつ を行 おこな うことが必要 ひつよう であろう。
生育 せいいく 場所 ばしょ 菌類 きんるい の生育 せいいく 場所 ばしょ はきわめて多様 たよう で,地球 ちきゅう 上 じょう のほとんど全域 ぜんいき にわたっている。淡水 たんすい の河川 かせん 湖沼 こしょう にはミズカビ群 ぐん が生育 せいいく し,また独特 どくとく な形 かたち の分 ぶん 生子 おいご をもつ水生 すいせい 不完全 ふかんぜん 菌 きん が多 おお く,渓流 けいりゅう の泡 あわ 塊 かたまり によく見 み いだされる。海 うみ にはミズカビ群 ぐん のほか,特殊 とくしゅ な子 こ 囊菌がいる。陸上 りくじょう では土壌 どじょう に最 もっと も多 おお く,土壌 どじょう 生 せい 菌類 きんるい と称 しょう され,物質 ぶっしつ の分解 ぶんかい に大 おお きく関与 かんよ している。植物 しょくぶつ につく菌類 きんるい には寄生 きせい 菌 きん と腐 くさ 生 なま 菌 きん とがあり,前者 ぜんしゃ は銹病菌 きん (さびびようきん)などの絶対 ぜったい 寄生 きせい 菌 きん と土壌 どじょう などで腐 くさ 生 なま 生活 せいかつ ができるものが含 ふく まれる。後者 こうしゃ は落葉 らくよう ,落枝の分解 ぶんかい に関与 かんよ するもので,落葉 らくよう 生 せい 菌類 きんるい と称 しょう され,多様 たよう のものが含 ふく まれる。植物 しょくぶつ の根 ね と共生 きょうせい 関係 かんけい にあるものは菌 きん 根 ね 菌 きん (マツタケなど)と称 しょう される。動物 どうぶつ の糞 くそ (ふん)には特有 とくゆう な糞 くそ 生 せい 菌類 きんるい と称 しょう される菌 きん 群 ぐん があり,ほとんど全 ぜん 亜 あ 門 もん の菌類 きんるい にわたるものが生 しょう ずる。寄生 きせい 菌 きん としては人体 じんたい 寄生 きせい 菌類 きんるい ,高等 こうとう 動物 どうぶつ 寄生 きせい 菌類 きんるい ,水産 すいさん 動物 どうぶつ 寄生 きせい 菌類 きんるい ,昆虫 こんちゅう 寄生 きせい 菌類 きんるい ,微小 びしょう 動物 どうぶつ 寄生 きせい 菌類 きんるい などがある。そのほか,被服 ひふく ,建築 けんちく 材 ざい ,文化財 ぶんかざい ・美術 びじゅつ 品 ひん ,食料 しょくりょう ・飼料 しりょう ,医薬品 いやくひん 製剤 せいざい などあらゆるものに普通 ふつう に生 しょう ずる。 →カビ →キノコ 執筆 しっぴつ 者 しゃ :椿 つばき 啓介 けいすけ
病原 びょうげん 微生物 びせいぶつ としての菌類 きんるい 人体 じんたい に感染 かんせん して病原 びょうげん 性 せい をもつ菌類 きんるい は,担子菌類 きんるい を除 のぞ くすべての分類 ぶんるい 群 ぐん にみられ,これら病原菌 びょうげんきん 類 るい の感染 かんせん により発症 はっしょう した病気 びょうき を真 ま 菌 きん 症 しょう mycosisという。真 ま 菌 きん の病原 びょうげん 性 せい は一般 いっぱん に,細菌 さいきん やウイルスなどの他 ほか の病原 びょうげん 微生物 びせいぶつ に比 くら べて弱 よわ く,感染 かんせん 後 ご 慢性 まんせい 化 か の傾向 けいこう をたどるものが多 おお いが,クリプトコックス Cryptococcus neoformans やヒストプラズマHistoplasma capsulatum のように,急性 きゅうせい に激烈 げきれつ な症状 しょうじょう を示 しめ し死亡 しぼう 率 りつ の高 たか いものもある。
真 ま 菌 きん 症 しょう は健康 けんこう 人 じん に常 つね 在 ざい する菌類 きんるい が,なんらかの原因 げんいん で病原 びょうげん 性 せい を表 あらわ し発症 はっしょう する内因 ないいん 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう (このような感染 かんせん を日和見 ひよりみ 感染 かんせん という)と,本来 ほんらい は常 つね 在 ざい しない菌類 きんるい が抵抗 ていこう 力 りょく の低下 ていか によって感染 かんせん し発症 はっしょう する外因 がいいん 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう に分 わ けられる。前者 ぜんしゃ には放線 ほうせん 菌 きん 症 しょう ,カンジダ症 しょう があり,後者 こうしゃ にはアスペルギルス症 しょう ,クリプトコックス症 しょう ,ヒストプラズマ症 しょう などがある。外因 がいいん 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう には,アスペルギルス症 しょう のように,世界 せかい 的 てき にひろくみられるものと,コクシジオイデス症 しょう などのように,局地 きょくち 的 てき にみられるものとがある。一方 いっぽう ,真 ま 菌 きん 症 しょう は感染 かんせん を受 う ける部位 ぶい により,表 おもて 在 ざい 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう と深 ふか 在 ざい 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう に分 わ けられる。表 おもて 在 ざい 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう は皮膚 ひふ の表層 ひょうそう ,つめ,毛髪 もうはつ に発生 はっせい するもので,白癬 はくせん 菌 きん (はくせんきん)による頭部 とうぶ 白癬 はくせん (しらくも ),股 また 部 ぶ 白癬 はくせん (いんきんたむし),水虫 みずむし や表皮 ひょうひ 菌 きん による頑癬 がんせん などがある。これに対 たい して,深 ふか 在 ざい 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう は皮下 ひか 組織 そしき から骨 ほね ,内臓 ないぞう に感染 かんせん して発症 はっしょう するもので,アスペルギルス症 しょう ,クリプトコックス症 しょう ,ヒストプラズマ症 しょう ,コクシジオイデス症 しょう などが含 ふく まれている。
真 ま 菌 きん 症 しょう の治療 ちりょう は主 しゅ として抗 こう 真 ま 菌 きん 薬 やく によるが,外科 げか 的 てき 治療 ちりょう が必要 ひつよう となることもある。真 ま 菌 きん 症 しょう とくに深 ふか 在 ざい 性 せい 真 ま 菌 きん 症 しょう は,他 た の病原 びょうげん 微生物 びせいぶつ による感染 かんせん 症 しょう に対 たい して,抗生 こうせい 物質 ぶっしつ が投与 とうよ された際 さい の菌 きん 交代 こうたい 現象 げんしょう として現 あらわ れることが多 おお い。執筆 しっぴつ 者 しゃ :川口 かわぐち 啓明 ひろあき
植物 しょくぶつ 病原菌 びょうげんきん 類 るい 菌類 きんるい は人間 にんげん ,動物 どうぶつ では,皮膚 ひふ 病 びょう など割合 わりあい に表面 ひょうめん 性 せい の病気 びょうき の原因 げんいん となる場合 ばあい が多 おお いが,植物 しょくぶつ ではほとんどあらゆる部分 ぶぶん が感染 かんせん をうけ,植物 しょくぶつ 病原菌 びょうげんきん 類 るい は8000種 しゅ を超 こ えるといわれる。菌 きん の分類 ぶんるい 上 じょう からみても,菌糸 きんし をもたないごく下等 かとう な菌 きん から,最 もっと も体制 たいせい の分化 ぶんか した担子菌 きん まで広 ひろ い範囲 はんい の菌 きん が記録 きろく されている。菌 きん は植物 しょくぶつ の角 かく 皮 がわ ,気孔 きこう ,細胞 さいぼう 縫合 ほうごう 部 ぶ などから侵入 しんにゅう 糸 いと を押 お し込 こ んで内部 ないぶ に侵入 しんにゅう する。菌 きん の寄生 きせい によって植物 しょくぶつ が病気 びょうき にかかると,局部 きょくぶ あるいは全身 ぜんしん に異常 いじょう を生 しょう ずる。これを病 やめ 徴 ちょう という。病 やまい 徴 ちょう には斑点 はんてん ,褐変,葉 よう 枯 か れ,立枯 たちが れ,肥大 ひだい ,徒長 とちょう ,根 ね 腐 くさ れ,萎 あまどころ 凋(いちよう),萎縮 いしゅく などがある。菌類 きんるい 病 びょう の場合 ばあい には,病 やまい 徴 ちょう のほかに病原菌 びょうげんきん 自身 じしん が姿 すがた を現 あらわ す外観 がいかん 異常 いじょう を認 みと めることが多 おお い。これを標 しるべ 兆 ちょう という。病原菌 びょうげんきん にはまったく生 い きた植物 しょくぶつ からのみ養分 ようぶん をとるものと,生 なま 細胞 さいぼう をいったん殺 ころ してその部分 ぶぶん から養分 ようぶん を吸 す うものがある。前者 ぜんしゃ が全 ぜん 寄生 きせい 菌 きん ,後者 こうしゃ が殺生 せっしょう 菌 きん である。うどんこ病菌 びょうきん は全 ぜん 寄生 きせい 菌 きん ,いもち病菌 びょうきん は殺生 せっしょう 菌 きん の代表 だいひょう 的 てき な例 れい である。菌 きん は寄 よせ 主 ぬし 範囲 はんい の広 ひろ さにも相違 そうい がみられる。コムギ赤 あか 銹病菌 きん はコムギだけを侵 おか すが,イネ紋 もん 枯病菌 きん はイネのほかにも多 おお くの植物 しょくぶつ を侵 おか すことができる。また中間 ちゅうかん 寄 よせ 主 ぬし を必要 ひつよう とする菌 きん も存在 そんざい する。各種 かくしゅ の銹病菌 きん は,生活 せいかつ 環 たまき の中 なか で2種 しゅ の植物 しょくぶつ を通過 つうか しなければならない。ナシ赤星 あかほし 病菌 びょうきん は,ナシと中間 なかま 寄 よせ 主 ぬし ビャクシンの間 あいだ を往復 おうふく する。このほか菌 きん の好 この む温度 おんど 範囲 はんい にも違 ちが いがある。このように性質 せいしつ の異 こと なる種々 しゅじゅ の菌 きん が大気 たいき 中 ちゅう ,土壌 どじょう 中 ちゅう に存在 そんざい しているのである。執筆 しっぴつ 者 しゃ :寺中 じちゅう 理 り 明 あきら