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菌類(キンルイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

菌類きんるいみ)キンルイ

デジタル大辞泉だいじせん菌類きんるい」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

きん‐るい【菌類きんるい

カビキノコ酵母こうぼなどをふくかく生物せいぶつ一群いちぐん葉緑素ようりょくそをもたず、寄生きせいくさなま生活せいかつし、胞子ほうし分裂ぶんれつ出芽しゅつがえる。かつて生物せいぶつ動物どうぶつ植物しょくぶつかいけるときは植物しょくぶつふくめられたが、分子ぶんし系統けいとうがくまとには、むしろ動物どうぶつちかきんかいという系統けいとう分類ぶんるいされる。また、細菌さいきんるい原核げんかく生物せいぶつ変形へんけいきんるいはアメーバ動物どうぶつふくまれ、菌類きんるいとはことなる生物せいぶつぐんとなる。医学いがく獣医じゅういがく分野ぶんやではきん菌類きんるいともよばれる。

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精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん菌類きんるい」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

きん‐るい【菌類きんるい

  1. 名詞めいし ねば菌類きんるい菌類きんるい嚢菌るい、担子菌類きんるいおよび不完全ふかんぜん菌類きんるい一括いっかつする生物せいぶつぐん名称めいしょう葉緑素ようりょくそふくまず光合成こうごうせいおこなわない。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「あはびたけ(ぞく)菌類きんるい形状けいじょうだいにしてあしみじかし」(出典しゅってん語彙ごい(1871‐84))

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)菌類きんるい」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

菌類きんるい
きんるい

植物しょくぶつかい動物界どうぶつかいとにならきんかい構成こうせいする生物せいぶつぐん

菌類きんるいかん変遷へんせん

大昔おおむかし人間にんげん最初さいしょうつった菌類きんるい大形おおがたのキノコであった。微小びしょう菌類きんるいをみたのは顕微鏡けんびきょう発明はつめいである。キノコやカビは、からだ微細びさい糸状いとじょう菌糸きんしでできているので、両者りょうしゃ同類どうるいかんがえられた。生物せいぶつ分類ぶんるい単純たんじゅんどううえふんほうおこなわれるようになってからは、キノコやカビは動物どうぶつのようにはうごかないので植物しょくぶつるいふくめられた。これらの菌類きんるいには、植物しょくぶつにみられるクロロフィル葉緑素ようりょくそ)はない。ムラサキホコリカビのような変形へんけい菌類きんるいには菌糸きんしはないが、クロロフィルもないのでカビの仲間入なかまいりをした。これらの菌類きんるいはクロロフィルが退化たいかした下等かとう植物しょくぶつであり、はなさきかない隠花植物いんかしょくぶつであるとかんがえられた。一方いっぽう腐敗ふはい病気びょうき原因げんいんとして細菌さいきんるいかびがった。これも下等かとう隠花植物いんかしょくぶつ仲間入なかまいりをしたが、前記ぜんき菌類きんるいとはべつ生物せいぶつぐんとしてあつかわれた。こうして菌類きんるい細菌さいきんるい植物しょくぶつかいながいこと地位ちいめてきたが、現在げんざいでは、生物せいぶつ起源きげん進化しんか考察こうさつ生物せいぶつ栄養えいようほう体制たいせい生殖せいしょくほう比較ひかく、および生態せいたいけい仕組しくみなどからみて、細菌さいきんるい菌類きんるい、つまり原核げんかく菌類きんるいかく菌類きんるいは、植物しょくぶつかいとはべつきんかい構成こうせいする菌類きんるいかんがえられるようになった。

寺川てらがわ博典ひろのり

菌類きんるい生態せいたい

地球ちきゅうじょういたところに、その環境かんきょうてきした菌類きんるい分布ぶんぷしている。砂漠さばくにすむものもあり、空中くうちゅう水分すいぶん微量びりょう有機物ゆうきぶつ吸収きゅうしゅうしてガラスなどのうえ生育せいいくするカビもある。一般いっぱん生育せいいく温度おんどは10~40℃であるが、きんによっては、零下れいか10℃の氷雪ひょうせつじょうから100℃の温泉おんせんちゅうまで生育せいいくし、そのはばひろい。つよアルカリ、あるいは強酸きょうさんせい温泉おんせん濃度のうど30%の塩水えんすいちゅうきる細菌さいきんもある。また、600気圧きあつ地下ちかすうせんメートルのところや、1000気圧きあつ以上いじょう海底かいてい生育せいいくするものもある。細菌さいきんるいのごく一部いちぶのものは有機物ゆうきぶつ必要ひつようとしないが、その菌類きんるいは、生物せいぶつたいとその生産せいさんぶつ分解ぶんかい途中とちゅう有機物ゆうきぶつ栄養えいようげん・エネルギーげんとする生活せいかついとなみ、地球ちきゅう表層ひょうそうおおくすんでいる。えた土壌どじょう1グラムちゅうには30おく以上いじょう細菌さいきんがすみ、森林しんりん土壌どじょう1グラムちゅう菌糸きんし合計ごうけいながさは10キロメートルにもなる。地中ちちゅうでも水中すいちゅうでも、くさなま生活せいかつをするものもあり、生体せいたい寄生きせいして病気びょうきしょうじたりころしたり、あるいは共生きょうせいして宿主しゅくしゅ生活せいかつささえているものもある。菌類きんるいは、分裂ぶんれつまたは胞子ほうしによって繁殖はんしょくする。

寺川てらがわ博典ひろのり

菌類きんるい特徴とくちょうてき栄養えいようほう

生物せいぶつ基本きほんきるための栄養えいようほうであり、それをすこしでも効果こうかてきにする方向ほうこう体制たいせい進化しんかしてきた。植物しょくぶつるい栄養えいようほう光合成こうごうせい吸収きゅうしゅうであり、動物どうぶつるい消化しょうか吸収きゅうしゅうであるのにたいして、菌類きんるい吸収きゅうしゅうのみをおこなう。吸収きゅうしゅうにはさんじゅうすうおくねん歴史れきしがある。原始げんし地球ちきゅう水中すいちゅう化学かがく進化しんか結果けっかとして誕生たんじょうした原核げんかくせい原始げんし生物せいぶつぐんは、まわりの水中すいちゅうけている原始げんし有機物ゆうきぶつ吸収きゅうしゅうして生活せいかつ進化しんかおこなった。この吸収きゅうしゅうというはたらきをいできたのが菌類きんるいであり、のちに原核げんかくせいからかくせいへと進化しんかした。その原核げんかく時代じだいに、吸収きゅうしゅうくわえて光合成こうごうせい仕組しくみが発達はったつして最初さいしょ植物しょくぶつるいあい(らんそう)るい)がしょうじた。それとはべつに、吸収きゅうしゅうおこなっていたかくせいのものから、消化しょうかという仕組しくみがくわわった動物どうぶつるい原生動物げんせいどうぶつ)の祖先そせんしょうじた。細菌さいきんるい一部いちぶには例外れいがいてき種々しゅじゅ栄養えいようほうがみられるが、それらはこのような原始時代げんしじだい栄養えいようほう進化しんか経路けいろしめ名残なごり(なごり)として注目ちゅうもくされる。植物しょくぶつるい動物どうぶつるい菌類きんるい特徴とくちょうてき栄養えいようほうちがいは、地球ちきゅう生態せいたいけい仕組しくみをかんがえるうえで重要じゅうようである。

寺川てらがわ博典ひろのり

還元かんげんしゃとしての菌類きんるい

30おくねんほどをかけて水中すいちゅう繁栄はんえいした生物せいぶつぐんは、やがてその生活せいかつけん陸上りくじょうひろげ、海洋かいよう生態せいたいけい陸上りくじょう一体いったいとなって急速きゅうそく地球ちきゅう生態せいたいけいへと発展はってんした。この生態せいたいけいは、つぎのようなさんしゃによる物質ぶっしつ循環じゅんかんシステムである。植物しょくぶつるい光合成こうごうせいによって無機物むきぶつ(とくに二酸化炭素にさんかたんそ)から有機物ゆうきぶつをつくる生産せいさんしゃとして重要じゅうようである。この有機物ゆうきぶつ動物どうぶつるい菌類きんるい利用りようするが、まず動物どうぶつるい消費しょうひしゃとなって、つぎ菌類きんるいはたらきをたすける。菌類きんるい酵素こうそ体外たいがいして複雑ふくざつ有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいして吸収きゅうしゅうし、さらに無機物むきぶつにする還元かんげんしゃとして重要じゅうようである。植物しょくぶつるい必要ひつようとする二酸化炭素にさんかたんそ大半たいはん菌類きんるい還元かんげん作用さようによる。生物せいぶつたいはこの菌類きんるいはたらきの対象たいしょうとなる。その第一歩だいいっぽ生体せいたい分解ぶんかいであるが、これをおこな寄生きせいきんは、動物どうぶつるいでは原核げんかく菌類きんるい植物しょくぶつるいではかく菌類きんるいだっている。生物せいぶつぬと、種々しゅじゅくさなまきんによって死体したい分解ぶんかいおこなわれる。こうして、菌類きんるいによる病気びょうき発酵はっこう腐敗ふはい腐朽ふきゅうなどは、有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいともな現象げんしょうであって、地球ちきゅう規模きぼおこなわれる物質ぶっしつ循環じゅんかん重要じゅうよう部分ぶぶんしめすものである。

寺川てらがわ博典ひろのり

菌類きんるい形態けいたい

生物せいぶつはもともと単細胞たんさいぼうたいであったが、それぞれの栄養えいようほう効果こうかてきにする方向ほうこう細胞さいぼうない構造こうぞう進化しんかおこない、さらに細胞さいぼうたいへの進化しんかおこなってきた。植物しょくぶつるいひろげて生活せいかつし、動物どうぶつるいうごいて生活せいかつするのにたいして、菌類きんるいもとぶつもぐって生活せいかつする体制たいせいとなった。こうして菌類きんるいでは動植物どうしょくぶつるいのような複雑ふくざつ形態けいたい無用むようとなり、単細胞たんさいぼうたいからすすんだものでも、その本体ほんたい糸状いとじょう菌糸きんしであり、菌糸きんし枝分えだわかれした菌糸きんしたいである。環境かんきょうがよければ、菌糸きんしたいもとぶつちゅう無限むげん成長せいちょうつづけられる。

 このような栄養えいようたい体制たいせい土台どだいにして、動物どうぶつ植物しょくぶつきんは、それぞれ特徴とくちょうのある生殖せいしょくたい、つまり繁殖はんしょくのための構造こうぞう進化しんかした。陸上りくじょう菌類きんるいでは、菌糸きんし組織そしき発達はったつして大形おおぎょうのキノコを形成けいせいし、たくさんの胞子ほうししょうじて繁殖はんしょくする。このような複雑ふくざつ生殖せいしょくたい簡単かんたん栄養えいようたいという組合くみあわせは、ほかではみられない。また、動植物どうしょくぶつるいでは雌雄しゆうせい発達はったつしたが、菌類きんるいでは和合わごう因子いんしによる交配こうはいけい発達はったつした。

寺川てらがわ博典ひろのり

原核げんかく菌類きんるい

原核げんかく菌類きんるい原核げんかくきんかいぞくする微小びしょう菌類きんるいで、細胞さいぼうないにはまくかこまれたかくミトコンドリアいとつぶからだ)がない。地球ちきゅうじょうひろ分布ぶんぷしてくさなま、あるいは動植物どうしょくぶつたい表面ひょうめん内部ないぶにすんでいる。そのなかには病原菌びょうげんきんもあるが、おおくは共生きょうせいてきである。とくに、くさえさ(えさ)とするほとんどすべての動物どうぶつでは、そのセルロース分解ぶんかい消化しょうか管内かんない共生きょうせいきんおこなっている。植物しょくぶつるいでは根粒こんりゅうきんそのけん菌類きんるいがみられる。また、きん寄生きせいあるいは共生きょうせいするものもある。だい多数たすうのものは有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいすることによってみずからがき、同時どうじ重要じゅうよう元素げんそ地球ちきゅう規模きぼでの循環じゅんかんはたらいている。このきんかいつぎのようないつつのきんもん大別たいべつされる。なお、ウイルスるいじゅん生物せいぶつであるというかんがえから、ここにはふくめない。

(1)マイコプラズマるい 原核げんかく菌類きんるいちゅう最小さいしょう生物せいぶつぐんで、大形おおがたウイルスのおおきさである。しかし、ウイルスとちがって、菌類きんるい同様どうように2種類しゅるい核酸かくさんをもっている。細胞さいぼうかべのない単細胞たんさいぼうたいで、かたちはいろいろになる。おおくのものが動植物どうしょくぶつるい寄生きせいする。ウシのはい寄生きせいして急速きゅうそく伝染でんせんするうしはい疫(ぎゅうはいえき)はもっともふるくから注目ちゅうもくされた。

(2)細菌さいきんるい 単細胞たんさいぼうたいで、細胞さいぼうかべ成分せいぶんペプチドグリカンとうくさりペプチドくさり結合けつごうした化合かごうぶつ総称そうしょう)である。球形きゅうけいまたはすこし細長ほそながく、一般いっぱんに1マイクロメートル(1ミリメートルの1000ぶんの1)前後ぜんこうである。細菌さいきんむち(べんもう)があって運動うんどうするものもある。普通ふつう分裂ぶんれつして増殖ぞうしょくし、広範囲こうはんい分布ぶんぷしている。寄生きせいきんもあるがおおくはくさなまきんで、酸素さんそ呼吸こきゅうまたは発酵はっこうおこなう。少数しょうすうのものには特殊とくしゅ栄養えいようほうがある。

(3)粘液ねんえき細菌さいきんるい 細胞さいぼうかべのかわりに粘液ねんえきそうつつまれた円柱えんちゅうじょう単細胞たんさいぼうたいで、滑走かっそう運動うんどうおこなう。地中ちちゅう水中すいちゅうにすみ、地上ちじょう植物しょくぶつたい動物どうぶつるいくそ(ふん)にくさし、また細菌さいきん細胞さいぼう分解ぶんかいするものもある。分裂ぶんれつによって増殖ぞうしょくし、集団しゅうだんをつくって滑走かっそうする。のちにかく細胞さいぼうあつかべしょうじて休眠きゅうみん胞子ほうしになるが、おおくのものではそのまえ集団しゅうだん微小びしょう実体じったい形成けいせいする。これはあか褐色かっしょくたまないしたまごがたで、すうひゃく胞子ほうし共通きょうつうまくつつまれている。

(4)スピロヘータるい 柔軟じゅうなん細胞さいぼうかべのある細長ほそなが螺旋らせん(らせん)かたち単細胞たんさいぼうたいで、周期しゅうきてき屈伸くっしん運動うんどうおこなう。むちはない。ながさがすうひゃくマイクロメートルにたっするものもある。分裂ぶんれつによって増殖ぞうしょくする。水中すいちゅう泥土でいど汚水おすいちゅうくさなま、あるいはヒトその動物どうぶつるい病気びょうきしょうじ、また、ヒトの口内こうないにすんで病原びょうげんせいのないものもある。

(5)放線ほうせん菌類きんるい ペプチドグリカンを成分せいぶんとする細胞さいぼうかべがあって、運動うんどうはしない。結核けっかくきんやライきん仲間なかま単細胞たんさいぼうたいのものにもすこし分岐ぶんきする傾向けいこうがあるが、そのおおくのものは分岐ぶんきした糸状いとじょう菌糸きんしたいである。この菌糸きんし一般いっぱんはばが1マイクロメートル以下いか管状かんじょうで、胞子ほうしをつくって増殖ぞうしょくする。そのだい多数たすうのものが地中ちちゅうくさし、とくにストレプトミケス仲間なかまタンパク質たんぱくしつ分解ぶんかい主役しゅやくである。

寺川てらがわ博典ひろのり

かく菌類きんるい

かく菌類きんるいかくきんかいぞくする菌類きんるいであって、その細胞さいぼう原核げんかく菌類きんるい細胞さいぼうよりもおおきく、細胞さいぼうないまくかこまれたかくとミトコンドリアをもっている。地球ちきゅうじょうひろ分布ぶんぷしてくさなま、あるいは寄生きせい共生きょうせいするものもある。すべてのものが生物せいぶつたいとその生産せいさんぶつ栄養えいようげん・エネルギーげんとして生活せいかつし、それにともなって、原核げんかく菌類きんるいとともに、重要じゅうよう元素げんそ地球ちきゅう規模きぼでの循環じゅんかん重要じゅうよう役割やくわりえんじている。かく菌類きんるいは、体制たいせい生殖せいしょくほう総括そうかつてき比較ひかくすることによって、つぎここのつのきんもん大別たいべつされる。

(1)変形へんけい菌類きんるい おおくは土壌どじょうにすみ、細胞さいぼうかべがなく、アメーバ運動うんどうおこなう。1かくをもつ単細胞たんさいぼうたいねばきんアメーバ)の場合ばあいもあるが、一般いっぱんには多数たすうかくをもつ多核たかくたい変形へんけいたい)である。おおきい変形へんけいたいすうセンチメートル以下いか実体じったいわり、その表面ひょうめん内部ないぶ胞子ほうしができる。胞子ほうしからしょうじたゆうはしには、長短ちょうたん2ほんがたむちからだぜんはしにある。

(2)細胞さいぼうねば菌類きんるい ほとんど土壌どじょうにすむねばきんアメーバであるが、むちのあるゆうはししょうじない。また、分裂ぶんれつして増殖ぞうしょくしたものが普通ふつう多数たすうあつまって集団しゅうだんにせ(ぎ)変形へんけいたい)をつくる。これは移動いどう停止ていしすると、細胞さいぼう順次じゅんじかさなって、2ミリメートル以下いかたかさのとそのさき連鎖れんさじょう胞子ほうしぐんからなる実体じったい形成けいせいする。

(3)ラビリンチュラるい 海産かいさん植物しょくぶつるい寄生きせいまたはくさなまする。細胞さいぼうかべのない紡錘形ぼうすいけい単細胞たんさいぼうたいやその集団しゅうだんが、細胞さいぼうしつ微細びさい管状かんじょういと連絡れんらくして微小びしょう網状もうじょうにせ変形へんけいたい形成けいせいする。単細胞たんさいぼうたいはこの微細びさい管内かんない滑走かっそうし、分裂ぶんれつして増殖ぞうしょくする。これらの細胞さいぼうは、のちに休眠きゅうみん胞子ほうしとなる。胞子ほうしからしょうじたゆうはし体側たいそくには、はねがたむち1ほんがたむち1ほんの1くみがついている。

(4)たまご菌類きんるい(らんきんるい) 水中すいちゅう陸上りくじょう一般いっぱん植物しょくぶつるい寄生きせいまたはくさしている。セルロースしつ細胞さいぼうかべ多核たかくをもつ管状かんじょう菌糸きんしたいであるが、まえのラビリンチュラるい同型どうけいゆうはし多数たすうしょうじて増殖ぞうしょくする。また、特徴とくちょうてき接合せつごう結果けっかたまご胞子ほうしができる。

(5)サカゲツボカビるい キチンしつ細胞さいぼうかべのある単細胞たんさいぼうたいないしこんじょう菌糸きんしたいで、おおくは水中すいちゅう寄生きせいし、宿主しゅくしゅ藻類そうるいプランクトン菌糸きんしなどである。くさなまするものもある。ゆうはししょうじて繁殖はんしょくするが、そのからだぜんはしには1ほんはねがたむちがある。

(6)ツボカビるい キチンしつ細胞さいぼうかべのある単細胞たんさいぼうからだまたは管状かんじょう菌糸きんしたいで、ゆうはしにはからだはしに1ほんがたむちがある。地理ちりてき分布ぶんぷひろく、いろいろの生物せいぶつ寄生きせいまたはくさし、とくに菌糸きんしたい発達はったつしているものは水中すいちゅう地中ちちゅうでの還元かんげんしゃとして注目ちゅうもくされる。

(7)接合せつごう菌類きんるい 管状かんじょう菌糸きんしたい発達はったつし、おおくは陸上りくじょう有機物ゆうきぶつ還元かんげんおこない、不動ふどう胞子ほうししょうじて繁殖はんしょくする。接合せつごうおこなうと特徴とくちょうてき接合せつごう胞子ほうしができる。細胞さいぼうかべつぎ嚢(しのう)菌類きんるい、担子菌類きんるいとともにキチンしつである。

(8)嚢菌るい 一般いっぱん細胞さいぼう菌糸きんしたい発達はったつし、不動ふどう胞子ほうし繁殖はんしょくする。接合せつごうすると特徴とくちょうてき嚢と嚢胞のうほう形成けいせいする。そのまえ少数しょうすうのものはキノコをつくる。分布ぶんぷひろく、おもに植物しょくぶつしつ強力きょうりょく還元かんげんする。

(9)担子菌類きんるい 細胞さいぼう菌糸きんしたいがおもに植物しょくぶつしつ寄生きせい共生きょうせいあるいはくさなまする。とくに森林しんりんでの重要じゅうよう還元かんげんしゃである。接合せつごうして特徴とくちょうてきな担子担子胞子ほうし形成けいせいするが、そのまえおおくのものがキノコをつくる。

寺川てらがわ博典ひろのり

菌類きんるい利用りよう

有機物ゆうきぶつ分解ぶんかい作用さよう利用りようして汚水おすい汚物おぶつ処理しょりし、堆肥たいひ(たいひ)・腐葉土ふようどをつくり、また各種かくしゅ発酵はっこう食品しょくひんがつくられてきた。そのほか、有機ゆうきさんアルコール、ビタミン、成長せいちょう促進そくしんざい抗生こうせい物質ぶっしつその医薬品いやくひん製造せいぞうおこなわれる。キノコには食用しょくよう薬用やくよう観賞かんしょうようなどがあり、キノコりの対象たいしょうとなる。キノコをあいし、ゆめたくするにんおおい。キノコはまた不老ふろう長寿ちょうじゅ象徴しょうちょうとか幸福こうふく使者ししゃとされ、キノコをデザインした生活せいかつ用品ようひん趣味しゅみ用品ようひん切手きってなどもつくられる。

寺川てらがわ博典ひろのり


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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん菌類きんるい」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

菌類きんるい (きんるい)
fungi

ふるくは植物しょくぶつふくめられ,光合成こうごうせいおこな高等こうとう植物しょくぶつ藻類そうるいたいし,光合成こうごうせいをまったくおこなわない下等かとう植物しょくぶつ一括いっかつしたぐんであったが,現在げんざいでは体制たいせい生殖せいしょくほう生化学せいかがくてき特徴とくちょうなどから根本こんぽんてきことなるひとつの生物せいぶつぐんとしてあつか傾向けいこうつよい。系統けいとうてきめんからも,菌類きんるいきんかいMycotaとし,生物せいぶつ5かいせつ動物界どうぶつかいAnimalia,植物しょくぶつかいPlantae,原生げんせい生物せいぶつかいProtista,原核げんかく生物せいぶつかい(モネラかい)Monera,きんかい)のひとつとするせつもある(R.H. ホイッタカー,1969)。定義ていぎとしてはゆうかくで,光合成こうごうせいおこなわず,有性ゆうせいまたは無性むしょうてき繁殖はんしょくし,栄養えいようたいおお糸状いとじょうぶんえだ従属じゅうぞく栄養えいようがた胞子ほうし形成けいせいし,細胞さいぼうかべおおくの場合ばあいキチンあるいはセルロースで構成こうせいされる生物せいぶつぐんということになる。また運動うんどうせいのあるきん特殊とくしゅ器官きかんをもつ。

変形へんけいきんもんMyxomycotaときんもんEumycotaのふたつのもん大別たいべつされ,後者こうしゃむち菌類きんるい接合せつごう菌類きんるい囊菌るい担子菌類きんるい不完全ふかんぜん菌類きんるいいつつのもんけられる。この分類ぶんるい基準きじゅん有性ゆうせい生殖せいしょく器官きかん形質けいしつにおかれ,したがって有性ゆうせい生殖せいしょくいだされないものは,とりあえず不完全ふかんぜん菌類きんるいとしてまとめられている。

 歴史れきしてきにみて,ミケーリP.A.Micheliの《あたらしい植物しょくぶつぞくNova Plantarum Genera》(1729)にはすでに大型おおがた菌類きんるいはのっているが植物しょくぶつとしてあつかわれ,リンネの《植物しょくぶつしゅSpecies Plantarum》(1753)では藻類そうるいといっしょに隠花植物いんかしょくぶつCryptogamiaとしてまとめられ,このかたはそのながあいだつかわれてきた。菌類きんるい分類ぶんるい研究けんきゅう独立どくりつしておこなわれたのは1800年代ねんだいからで,ペルズーンC.H.Persoon(1761-1836),フリースE.M.Fries(1794-1878)らが創始そうししゃといえよう。19世紀せいき後半こうはんはいると,細胞さいぼうがく遺伝いでんがく生理学せいりがく分野ぶんや研究けんきゅう材料ざいりょうとしてあつかわれ,とくに植物しょくぶつ病理びょうりがく応用おうよう微生物びせいぶつがく皮膚ひふ科学かがく分野ぶんや研究けんきゅう成果せいか次々つぎつぎられ,発展はってんしてきた。このころには菌類きんるい研究けんきゅうする学問がくもん分野ぶんやとしてきんがくmycologyが独立どくりつしてきたが,分類ぶんるいがくめんでは依然いぜんとして下等かとう植物しょくぶつ特殊とくしゅいちぐん解釈かいしゃくされていた。R.H.ホイッタカーの5かいせつは,はじめて菌類きんるい動物どうぶつおよび植物しょくぶつからはなしたもので反論はんろんおおかったが,アインスワーズG.C.Ainsworthは《菌類きんるい辞典じてんDictionary of Fungi》でこのせつ採用さいようし(1971,83),そのひろもちいられるようになっている。

 菌類きんるいはすべてがかく生物せいぶつであり,静止せいしかく状態じょうたいかくまくみとめられ,原則げんそくとして有性ゆうせい生殖せいしょくおこない,細胞さいぼうしつないにはミトコンドリアなどの構造こうぞうたいがある。これらの諸点しょてん細菌さいきんやウイルスなどの原核げんかく生物せいぶつとは基本きほんてきことなっている。栄養えいようたい菌糸きんしhyphaといわれる糸状いとじょう細胞さいぼうからなり,この菌糸きんしがゆるくあつまったものを菌糸きんしたいmyceliumという。これが単細胞たんさいぼうのものもあり,酵母こうぼなどでは出芽しゅつが増殖ぞうしょくをくりかえす。菌糸きんし栄養えいよう温度おんど湿度しつどなどの条件じょうけん適当てきとうならばいている基質きしつうええひろがる。菌糸きんしにはところどころに隔壁かくへきがある。この隔壁かくへき中央ちゅうおうにはちいさいあながあり内容ないようぶつ流通りゅうつうするが,完全かんぜん仕切しきられているかべもある。隔壁かくへき構造こうぞう電子でんし顕微鏡けんびきょうにより研究けんきゅうされ,重要じゅうよう分類ぶんるい基準きじゅん(とくに囊菌るいと担子菌類きんるい相違そうい)とされる。基本きほんてきには菌糸きんし多核たかくである。有性ゆうせい生殖せいしょくおこなうと,この菌糸きんしじょう生殖せいしょく器官きかん形成けいせいされ,特殊とくしゅ構造こうぞうができる。むち菌類きんるいでは接合せつごうzygote,たまご胞子ほうしoospore,接合せつごう菌類きんるいでは接合せつごう胞子ほうしzygospore,囊菌るいでは囊果ascocarp,担子菌類きんるいでは担子はてbasidiocarpがそうである。これらの器官きかん形質けいしつをもとにつぎ分類ぶんるい体系たいけいができている。

(1)変形へんけいきんもん ねば菌類きんるいともいわれ,からだ構造こうぞうはアメーバじょうにせ変形へんけいたいpseudoplasmodiumあるいは変形へんけいたいplasmodiumをつくる。

(2)きんもん菌類きんるい) からだ構造こうぞう菌糸きんしじょう単細胞たんさいぼうのこともある。(a)むちきんもんむち菌類きんるい) 栄養えいようたい単細胞たんさいぼう,あるいは菌糸きんしじょう運動うんどうせい胞子ほうし,あるいは配偶はいぐうをもつ。生活せいかつのある時期じきむちをもって運動うんどうするゆうはしゆうはし囊中に形成けいせいされ,およす。このむちにはがたはねがたがあり,その位置いち本数ほんすうなどが分類ぶんるい基準きじゅんとなる。有性ゆうせい生殖せいしょくおこない,たまご胞子ほうし形成けいせいするミズカビ代表だいひょうてきである。19ぞく,1170しゅ

(b)接合せつごうきんもん接合せつごう菌類きんるい) 栄養えいようたい菌糸きんしじょう基本きほんてきには隔壁かくへきはない。有性ゆうせい生殖せいしょく結果けっかとして接合せつごう胞子ほうし形成けいせいする。無性むしょう生殖せいしょく胞子ほうし胞子ほうし,あるいはぶん生子おいごによる。有性ゆうせい生殖せいしょく配偶はいぐう囊の接合せつごうにはじまり,融合ゆうごうしたりょう配偶はいぐう囊が発達はったつして接合せつごう胞子ほうしとなる。胞胞子ほうし不動ふどうせい胞子ほうし囊にふくまれるが,ごく少数しょうすう胞子ほうしふくしょう胞子ほうし囊,数個すうこたてならんでふくまれる分節ぶんせつ胞子ほうし囊がある。また,ただ1個いっこふくぶん生子いくこさま胞子ほうし囊もある。145ぞく,765しゅ

(c)囊菌もん囊菌るい) 栄養えいようたい隔壁かくへきのある菌糸きんしじょう,あるいは単細胞たんさいぼう有性ゆうせい生殖せいしょく結果けっか囊を形成けいせいし,なか胞子ほうしをつくる。はら形質けいしつ融合ゆうごうからかく融合ゆうごう減数げんすう分裂ぶんれつ囊を形成けいせいする有性ゆうせい時代じだい完全かんぜん時代じだい完全かんぜん世代せだい)のほか,おおくのたね無性むしょうぶん生子おいご形成けいせいする。生活せいかつ複雑ふくざつかたちてきであり,体制たいせいもっと簡単かんたんなものは囊菌酵母こうぼ(サッカロミセスほか)で囊は独立どくりつするが,不整ふせい囊菌つなかくきんつなばんきんつなでは囊果は複雑ふくざつになる。2720ぞく,2まん8650しゅ

(d)担子きんもん(担子菌類きんるい) 栄養えいようたい隔壁かくへきをもつ菌糸きんしじょうで,隔壁かくへきにかすがい連結れんけつのあることがおおい。有性ゆうせい生殖せいしょく結果けっか,担子形成けいせいし,そのうえに担子胞子ほうしそとせいする。たんしょういち菌糸きんしと,遺伝子いでんしがたことなる2がたかくふくじゅうしょう菌糸きんしとがあり,菌糸きんし集合しゅうごうして組織そしきした実体じったいがキノコにたる。実体じったいまった部位ぶいに担子しがらみじょうならび,担子じょうはしにできる小柄こがらじょうに担子胞子ほうし形成けいせいされる。菌糸きんし隔壁かくへきにしばしばかすがい連結れんけつられる。無性むしょう生殖せいしょくぶん生子おいごによるものもある。1100ぞく,1まん6000しゅ

(e)不完全ふかんぜんきんもん不完全ふかんぜん菌類きんるい) 栄養えいようたい隔壁かくへきのある菌糸きんしじょう,あるいは単細胞たんさいぼう有性ゆうせい生殖せいしょくつかっていないもの。有性ゆうせい生殖せいしょくのわからない菌類きんるいがすべてこのなかふくまれる。したがって分類ぶんるい基準きじゅんの4もん菌類きんるいことなり,無性むしょう時代じだいぶん生子おいごなどの形質けいしつにおかれる。有性ゆうせい生殖せいしょく判明はんめいすると,その形質けいしつにより囊菌や担子きん分類ぶんるいされる。1680ぞく,1まん7000しゅ

 有性ゆうせい生殖せいしょくのほか,菌糸きんしのところどころからぶんえだしょうじ,その先端せんたんから無性むしょうてき胞子ほうしされたり,また菌糸きんし分断ぶんだんされて胞子ほうしとなることもある。これらの無性むしょう胞子ほうしぶん生子おいごばれ,その形成けいせいほうはきわめて多様たようであり,分類ぶんるい基準きじゅんとなっている。また,ふんえだ先端せんたんにできる囊状のふくろ無性むしょう胞子ほうしうちせいするものもあり,これを胞子ほうし胞子ほうしといい,接合せつごう菌類きんるいのケカビにみられる。

 なお前述ぜんじゅつ生物せいぶつ5かいせつでは,変形へんけい菌類きんるいむち菌類きんるいたまご菌類きんるいやサカゲツボカビるいを,藻類そうるいなどとともに原生げんせい生物せいぶつかいふくめる。

菌類きんるい胞子ほうし発芽はつがし,ある一連いちれん状態じょうたいふたたびもとの胞子ほうし形成けいせいいた道程どうていを,一般いっぱん生活せいかつしょうしている。コケやシダ植物しょくぶつでは生活せいかつ規則正きそくただしいものであるが,菌類きんるい場合ばあい特定とくてい場合ばあいのぞき,しょ条件じょうけんにより途中とちゅう段階だんかいびこしたりして,かならずしも規則正きそくただしい生活せいかつをたどらないことが特徴とくちょうといえる。菌類きんるい生殖せいしょく細胞さいぼう原則げんそくてきにはたんしょうn時代じだい)であり,たんしょう細胞さいぼうあいだ細胞さいぼうしつ融合ゆうごうがあっても両方りょうほうかくはすぐに融合ゆうごうせず,細胞さいぼうない対立たいりつした2かくのままであるじゅうしょう時代じだいながいことも特徴とくちょうで,2nふくしょう時代じだい一般いっぱんにきわめてみじかい。反面はんめん無性むしょう時代じだいかくしょうかならずしもたんしょうとはいえない。このように菌類きんるい生活せいかつには有性ゆうせい無性むしょうりょう時代じだいがあり,しかも,それぞれの時代じだい形状けいじょうおおきながあるので(囊果とぶん生子おいご時代じだい,担子菌類きんるい実体じったいキノコと菌糸きんし時代じだいなど),学名がくめい別々べつべつあたえられ,両方りょうほう時代じだい判明はんめいした場合ばあいは,有性ゆうせい時代じだいあたえられた学名がくめい優先ゆうせんすることになっている。なお,菌類きんるいかんして,りょう時代じだい現在げんざい有性ゆうせい時代じだいteleomorph,無性むしょう時代じだいanamorphとばれることがおおい。

菌類きんるい系統けいとうにはきわめて多様たよう体系たいけい提案ていあんされ,しかも次々つぎつぎあたらしい事実じじつ概念がいねん微細びさい構造こうぞう遺伝いでん生化学せいかがくてきなデータもくわえられているので,現在げんざい分類ぶんるい体系たいけい暫定ざんていてきなものと解釈かいしゃくすべきであろう。興味きょうみあるあたらしいデータもおおいが,あつかわれた種類しゅるいかぎられたり,系統けいとう分類ぶんるいがくじょう代表だいひょうしゅでない場合ばあいおおく,げん段階だんかいでは菌類きんるい系統けいとうあきらかにするにはいたっていない。たとえば,むち菌類きんるい遊泳ゆうえい細胞さいぼうそなえていることで一括いっかつされているが,かならずしも類縁るいえん関係かんけいふか自然しぜんぐんではないともいわれる。囊菌るいにおいても,囊果の外見がいけん系統けいとうとはかならずしも一致いっちしたものともかんがえられない。しん類縁るいえん関係かんけいあきらかにするためには,従来じゅうらいのような採集さいしゅうした時点じてんにおける観察かんさつにとどまらず,純粋じゅんすい培養ばいようにおける長期ちょうきてき観察かんさつおこなうことが必要ひつようであろう。

菌類きんるい生育せいいく場所ばしょはきわめて多様たようで,地球ちきゅうじょうのほとんど全域ぜんいきにわたっている。淡水たんすい河川かせん湖沼こしょうにはミズカビぐん生育せいいくし,また独特どくとくかたちぶん生子おいごをもつ水生すいせい不完全ふかんぜんきんおおく,渓流けいりゅうあわかたまりによくいだされる。うみにはミズカビぐんのほか,特殊とくしゅ囊菌がいる。陸上りくじょうでは土壌どじょうもっとおおく,土壌どじょうせい菌類きんるいしょうされ,物質ぶっしつ分解ぶんかいおおきく関与かんよしている。植物しょくぶつにつく菌類きんるいには寄生きせいきんくさなまきんとがあり,前者ぜんしゃは銹病きん(さびびようきん)などの絶対ぜったい寄生きせいきん土壌どじょうなどでくさなま生活せいかつができるものがふくまれる。後者こうしゃ落葉らくよう,落枝の分解ぶんかい関与かんよするもので,落葉らくようせい菌類きんるいしょうされ,多様たようのものがふくまれる。植物しょくぶつ共生きょうせい関係かんけいにあるものはきんきん(マツタケなど)としょうされる。動物どうぶつくそ(ふん)には特有とくゆうくそせい菌類きんるいしょうされるきんぐんがあり,ほとんどぜんもん菌類きんるいにわたるものがしょうずる。寄生きせいきんとしては人体じんたい寄生きせい菌類きんるい高等こうとう動物どうぶつ寄生きせい菌類きんるい水産すいさん動物どうぶつ寄生きせい菌類きんるい昆虫こんちゅう寄生きせい菌類きんるい微小びしょう動物どうぶつ寄生きせい菌類きんるいなどがある。そのほか,被服ひふく建築けんちくざい文化財ぶんかざい美術びじゅつひん食料しょくりょう飼料しりょう医薬品いやくひん製剤せいざいなどあらゆるものに普通ふつうしょうずる。
カビ →キノコ
執筆しっぴつしゃ

人体じんたい感染かんせんして病原びょうげんせいをもつ菌類きんるいは,担子菌類きんるいのぞくすべての分類ぶんるいぐんにみられ,これら病原菌びょうげんきんるい感染かんせんにより発症はっしょうした病気びょうききんしょうmycosisという。きん病原びょうげんせい一般いっぱんに,細菌さいきんやウイルスなどのほか病原びょうげん微生物びせいぶつくらべてよわく,感染かんせん慢性まんせい傾向けいこうをたどるものがおおいが,クリプトコックスCryptococcus neoformansやヒストプラズマHistoplasma capsulatumのように,急性きゅうせい激烈げきれつ症状しょうじょうしめ死亡しぼうりつたかいものもある。

 きんしょう健康けんこうじんつねざいする菌類きんるいが,なんらかの原因げんいん病原びょうげんせいあらわ発症はっしょうする内因ないいんせいきんしょう(このような感染かんせん日和見ひよりみ感染かんせんという)と,本来ほんらいつねざいしない菌類きんるい抵抗ていこうりょく低下ていかによって感染かんせん発症はっしょうする外因がいいんせいきんしょうけられる。前者ぜんしゃには放線ほうせんきんしょうカンジダしょうがあり,後者こうしゃにはアスペルギルスしょう,クリプトコックスしょう,ヒストプラズマしょうなどがある。外因がいいんせいきんしょうには,アスペルギルスしょうのように,世界せかいてきにひろくみられるものと,コクシジオイデスしょうなどのように,局地きょくちてきにみられるものとがある。一方いっぽうきんしょう感染かんせんける部位ぶいにより,おもてざいせいきんしょうふかざいせいきんしょうけられる。おもてざいせいきんしょう皮膚ひふ表層ひょうそう,つめ,毛髪もうはつ発生はっせいするもので,白癬はくせんきん(はくせんきん)による頭部とうぶ白癬はくせんしらくも),また白癬はくせん(いんきんたむし),水虫みずむし表皮ひょうひきんによる頑癬がんせんなどがある。これにたいして,ふかざいせいきんしょう皮下ひか組織そしきからほね内臓ないぞう感染かんせんして発症はっしょうするもので,アスペルギルスしょう,クリプトコックスしょう,ヒストプラズマしょう,コクシジオイデスしょうなどがふくまれている。

 きんしょう治療ちりょうしゅとしてこうきんやくによるが,外科げかてき治療ちりょう必要ひつようとなることもある。きんしょうとくにふかざいせいきんしょうは,病原びょうげん微生物びせいぶつによる感染かんせんしょうたいして,抗生こうせい物質ぶっしつ投与とうよされたさいきん交代こうたい現象げんしょうとしてあらわれることがおおい。
執筆しっぴつしゃ

菌類きんるい人間にんげん動物どうぶつでは,皮膚ひふびょうなど割合わりあい表面ひょうめんせい病気びょうき原因げんいんとなる場合ばあいおおいが,植物しょくぶつではほとんどあらゆる部分ぶぶん感染かんせんをうけ,植物しょくぶつ病原菌びょうげんきんるいは8000しゅえるといわれる。きん分類ぶんるいじょうからみても,菌糸きんしをもたないごく下等かとうきんから,もっと体制たいせい分化ぶんかした担子きんまでひろ範囲はんいきん記録きろくされている。きん植物しょくぶつかくがわ気孔きこう細胞さいぼう縫合ほうごうなどから侵入しんにゅういとんで内部ないぶ侵入しんにゅうする。きん寄生きせいによって植物しょくぶつ病気びょうきにかかると,局部きょくぶあるいは全身ぜんしん異常いじょうしょうずる。これをやめちょうという。やまいちょうには斑点はんてん,褐変,ようれ,立枯たちがれ,肥大ひだい徒長とちょうくされ,あまどころ凋(いちよう),萎縮いしゅくなどがある。菌類きんるいびょう場合ばあいには,やまいちょうのほかに病原菌びょうげんきん自身じしん姿すがたあらわ外観がいかん異常いじょうみとめることがおおい。これをしるべちょうという。病原菌びょうげんきんにはまったくきた植物しょくぶつからのみ養分ようぶんをとるものと,なま細胞さいぼうをいったんころしてその部分ぶぶんから養分ようぶんうものがある。前者ぜんしゃぜん寄生きせいきん後者こうしゃ殺生せっしょうきんである。うどんこ病菌びょうきんぜん寄生きせいきん,いもち病菌びょうきん殺生せっしょうきん代表だいひょうてきれいである。きんよせぬし範囲はんいひろさにも相違そういがみられる。コムギあか銹病きんはコムギだけをおかすが,イネもん枯病きんはイネのほかにもおおくの植物しょくぶつおかすことができる。また中間ちゅうかんよせぬし必要ひつようとするきん存在そんざいする。各種かくしゅの銹病きんは,生活せいかつたまきなかで2しゅ植物しょくぶつ通過つうかしなければならない。ナシ赤星あかほし病菌びょうきんは,ナシと中間なかまよせぬしビャクシンのあいだ往復おうふくする。このほかきんこの温度おんど範囲はんいにもちがいがある。このように性質せいしつことなる種々しゅじゅきん大気たいきちゅう土壌どじょうちゅう存在そんざいしているのである。
執筆しっぴつしゃ


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百科ひゃっか事典じてんマイペディア菌類きんるい」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

菌類きんるい【きんるい】

変形へんけいきんるい,および菌類きんるいふくかく生物せいぶついち部門ぶもん。かつては植物しょくぶつとされたが,現在げんざいでは独立どくりつのグループとみなすのが一般いっぱんてきである。狭義きょうぎには菌類きんるいのみをいう。菌類きんるいにはむち菌類きんるい接合せつごう菌類きんるい嚢菌るい,担子菌類きんるい不完全ふかんぜん菌類きんるいふくまれる。下等かとうなものには単細胞たんさいぼうのものもあるが,一般いっぱん栄養えいようたい菌糸きんしという枝分えだわかれした糸状いとじょう細胞さいぼうからなる。細胞さいぼうかべはキチンしつまたはセルロースからなり,みどりたいふくまず,光合成こうごうせいをしない。動植物どうしょくぶつたい寄生きせいまたはくさし,セルロース,リグニン,デンプンなどを分解ぶんかいしてエネルギーげんとし,また有機ゆうきさん,ビタミンるい色素しきそ,ステロイド,カロチンるい毒物どくぶつなどをつくす。増殖ぞうしょくにはきんたい切断せつだんふん生子おいごこなによる無性むしょう生殖せいしょくと,雌雄しゆう嚢,担子もとなどによる有性ゆうせい生殖せいしょくがある。空気くうきちゅう地上ちじょう地中ちちゅう水中すいちゅうなどいたるところに存在そんざいし,世界せかいに10まんしゅ以上いじょう腐敗ふはい原因げんいんとなるなど有害ゆうがいなものもあるが,有用ゆうようきんおおい。
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ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん菌類きんるい」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

菌類きんるい
きんるい
fungi

菌類きんるいとは,ふるくは藻類そうるいたいして葉状ようじょう植物しょくぶつ (ゆうくき植物しょくぶつのぞいた植物しょくぶつ) のうち,同化どうか色素しきそをもたないものを総称そうしょうした植物しょくぶつ分類ぶんるいじょう言葉ことばであった。しかも菌類きんるいはなんらかの藻類そうるい同化どうか色素しきそうしなったものに由来ゆらいしたのであろうというかんがえがつよかったが,知見ちけんおおくなるにつれ,菌類きんるいとは広義こうぎには細菌さいきんるい変形へんけい菌類きんるいおよび菌類きんるいをまとめてさし,狭義きょうぎにはその菌類きんるい意味いみするようになった。

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち菌類きんるい言及げんきゅう

植物しょくぶつ】より

生物せいぶつかい動物どうぶつ植物しょくぶつ大別たいべつするのは,常識じょうしき範囲はんいでは当然とうぜんのようにおもえるが,厳密げんみつ区別くべつをしようとするとさまざまな問題もんだいがでてくる。かつては生物せいぶつ世界せかい動物界どうぶつかい植物しょくぶつかい大別たいべつするのが常識じょうしきだったが,菌類きんるいだいさんさかい認識にんしきすると,それに対応たいおうするのは狭義きょうぎ動物どうぶつ(後生ごしょう動物どうぶつ),狭義きょうぎ植物しょくぶつ(陸上りくじょう植物しょくぶつ)ということになり,原生動物げんせいどうぶつおおくの藻類そうるいなどは原生げんせい生物せいぶつというでひとまとめにされ,また,これらかく生物せいぶつして,細菌さいきんるいやラン藻類そうるい原核げんかくせいで,原核げんかく生物せいぶつべつぐんにまとめることができる。そこで,生物せいぶつ世界せかいを,動物界どうぶつかい植物しょくぶつかいきんかい原生げんせい生物せいぶつかい原核げんかく生物せいぶつかい(モネラかい)の5かい大別たいべつする5かいせつ提議ていぎされ(R.H.ホイッタカー,1969)ひろ使つかわれているが,これは生物せいぶつ世界せかいをわかりやすく整理せいりしたもので,いわゆる人為じんい分類ぶんるい体系たいけいである。…

生物せいぶつ】より

…しかし,動物どうぶつでありながら,固着こちゃくせいで,一見いっけんして動物どうぶつとはおもえぬカイメンのようなものもおり,またミドリムシのように,植物しょくぶつ特徴とくちょうである光合成こうごうせいおこなうため動物どうぶつとしても植物しょくぶつとしてもあつかわれる生物せいぶつもいる。細菌さいきんるい菌類きんるいなどは,しゅとして細胞さいぼう形態けいたいがくてき特徴とくちょうなどから,かつては植物しょくぶつとしてあつかわれてきたが,もっぱら有機ゆうき物質ぶっしつたよるというかたなどは植物しょくぶつてきとはいえず,さりとて全体ぜんたいてき様相ようそう動物どうぶつてきでもなく,進化しんか筋道すじみちからみても,動物どうぶつ植物しょくぶつのいずれかにふくめるのはなんがあるとして,今日きょうでは〈だいさん生物せいぶつ〉といわれる菌類きんるい(きんかいMycota)なるグループが設定せっていされている。 ウイルス生物せいぶつであるかどうかはながあいだ論議ろんぎてきであったが,ウイルスは自分じぶんではエネルギー転換てんかんけいをもたず,物質ぶっしつ代謝たいしゃめん生物せいぶつきた細胞さいぼう依存いぞんして自己じこ増殖ぞうしょくおこなうため,現在げんざいでは生物せいぶつ範疇はんちゅう(はんちゆう)にはふくめられていない。…

※「菌類きんるい」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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