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キノコ(きのこ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

キノコみ)きのこ

日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ) 「キノコ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

キノコ
きのこ /

菌類きんるい形成けいせいする大形おおがた実体じったい胞子ほうしをつくる器官きかん)にあたえられた一般いっぱんてき用語ようごで、「」の意味いみからまれた。きんたけ、蕈などもキノコを意味いみしてもちいられるが、いずれもくんで「たけ」ともみ、おとはキン、ジョウ、ジンである。

 きんは、現在げんざいではきんかい構成こうせいする菌類きんるい意味いみするが、元来がんらいはキノコ、すなわち英語えいごマッシュルームmushroomのことであった。このことは、菌類きんるい人間にんげんとのつきあいはキノコからはじまり、ちいさなカビや細菌さいきん人間にんげん認識にんしきそとにあったことをしめしている。ところがいまでは、きんといえば細菌さいきん連想れんそうするひとおおい。これは、菌類きんるいたいするただしい理解りかいがまだ定着ていちゃくしていないためである。

今関いまぜきろく也]

キノコの体制たいせい

キノコ、つまり菌類きんるいがつくる大形おおがた実体じったいは、いわば植物しょくぶつはな相当そうとうする器官きかんである。キノコをつくるきん本体ほんたいなか材木ざいもくなかひろがる菌糸きんしたいであって、いわゆる外形がいけいとしてとらえたキノコだけできているのではない。そのてんは、カビといわれる菌類きんるいわらない。カビというかたりも、キノコと同様どうよう一般いっぱんてき用語ようごにすぎず、学問がくもんじょうのことばではない。

 キノコといわれる大形おおがた実体じったいをつくる菌類きんるいは、かく菌類きんるい嚢菌るい(しのうきんるい)と担子菌類きんるいふくまれるが、だい部分ぶぶんは担子菌類きんるいぞくする。

 このようにキノコはおおくの菌類きんるいかく分野ぶんや分散ぶんさんするので、実体じったいすなわちキノコのかたちはさまざまである。ただし、いちばんおおいのは担子菌類きんるいのなかのぼうきん(ぼうきん)るいぞくするサルノコシカケとマツタケ(ハラタケ)であり、とりわけひととのかかわりがふかいのはマツタケである。このため、一般いっぱん人々ひとびとは、キノコといえばマツタケがたのキノコをあたまかべる。原爆げんばくくもを、きのこぐもというのもそのいちれいであろう。

 マツタケのキノコは種類しゅるいおおく、ほとんどが肉質にくしつ食用しょくよう対象たいしょうとなるので、ひととのかかわりはふるくからおおかった。かたち雨傘あまがさがたで、「かさ(かさ)」「ひだ」「くき(くき)」、くき上部じょうぶにある「つば」、くき根元ねもとにある「つぼ」といういつつの部分ぶぶんがそろっているのが、いちばん複雑ふくざつかたちである。たねによっては、このかたちから、まず、つぼ、またはつばがけたり、さらに、つばもつぼもなくなって、かさ、ひだ、くきみっつだけのものになる。みっつだけというのがいちばん普通ふつうかたちであるが、なかにはかさとひだだけという単純たんじゅんかたちのキノコもある。

 マツタケ分類ぶんるいするうえで重要じゅうようどころは、胞子ほうしいろである。胞子ほうしいろとは、ひだからかみうえとしもらせた胞子ほうしもんいろをいう。おおざっぱに、しろあわ桃色ももいろもも肉色にくいろ)、茶褐色ちゃかっしょく黒褐色こっかっしょくくらむらさき褐色かっしょく)、くろの5ぐんけられるが、これらの中間色ちゅうかんしょくもある。つぎに、ひだがくきせっする部分ぶぶんかたちを、はなれせいへだたなま)、じきせいわんせいたれせいなどにける。さらににくしち外形がいけいなどをげ、これらの特徴とくちょうわせ、さらに顕微鏡けんびきょうてき性質せいしつ、たとえば胞子ほうしかたち菌糸きんし組織そしき構造こうぞうなどをくわえると、マツタケの仲間なかますうせんしゅは、15あまりのと200をえるぞく分類ぶんるいすることができる。

 胞子ほうし形成けいせいされるめんそうという。マツタケのキノコは、かさうらにナイフじょうのひだがあり、その表面ひょうめんそうができる。おなじマツタケでもアミタケの仲間なかまは、ひだのかわりにほそかんあな(くだあな)がならび、かんあな内面ないめんそうができる。このほかに、ひだの原形げんけいともいうべき、しわのようなひだをつくるものがある。アンズタケはその代表だいひょうである。

 サルノコシカケのキノコは、革質かくしつ、コルクしつ木質もくしつかたいものがおおい。いち年生ねんせいおおいが、木質もくしつのキノコには多年生たねんせい巨大きょだいになるものがある。肉質にくしつのものにはすぐれた食用しょくようきんがある。サルノコシカケでは、かさしたがわにひだがならぶものはすくなく、
(1)かんあなならぶもの(サルノコシカケ
(2)無数むすうはりじょう突起とっき密生みっせいするもの(ハリタケ、イボタケ
(3)いぼがあるもの(イボタケ
(4)しわも、くぼみもなく平坦へいたん(へいたん)なもの(コウヤクタケ、ウロコタケ
などがある。

 サルノコシカケやマツタケは、胞子ほうしをキノコの外面がいめん露出ろしゅつしてつくる。これにたいしてはら菌類きんるいでは、キノコの体内たいない胞子ほうしをつくる。にくなかちいさなしつができて、その内面ないめんそう発達はったつする。胞子ほうし成熟せいじゅくしてからはじめて体外たいがい放出ほうしゅつされるのではら菌類きんるいづけられた。ショウロ、ホコリタケ、スッポンタケなどの仲間なかまはら菌類きんるいであり、食用しょくようにされるものもすくなくない。

今関いまぜきろく也]

キノコの生態せいたい

菌類きんるいは、生態せいたいけいにおいて有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいして無機物むきぶつ還元かんげんする生物せいぶつである。キノコのだい部分ぶぶん森林しんりん生物せいぶつであり、森林しんりん生態せいたいけいにおいては、おもに木材もくざいとを分解ぶんかいする。とくに木材もくざい分解ぶんかい主役しゅやくはキノコであり、これらのきん木材もくざい腐朽ふきゅうきんという。木材もくざい腐朽ふきゅう対象たいしょう有用ゆうよう木材もくざいとか木造もくぞう建造けんぞうぶつである場合ばあいには、そのきん有害ゆうがいきんとみなされるが、木材もくざい分解ぶんかいするキノコがもし存在そんざいしなかったら、森林しんりん木材もくざい堆積たいせき(たいせき)じょうとなり、森林しんりんそのものの存立そんりつ不可能ふかのうとなるわけである。木材もくざい腐朽ふきゅうきん侵入しんにゅうし、きているうちから心材しんざいあたりざい腐朽ふきゅうはじめると、材質ざいしつ腐朽ふきゅうびょうをおこし、枯死こしはしないがれやすくなる。それが風害ふうがい原因げんいんとなり、森林しんりん崩壊ほうかいみちびくことがあるので、木材もくざい腐朽ふきゅうきん森林しんりん遷移せんい重要じゅうようなかかわりをもっている。これら木材もくざい腐朽ふきゅうきんには、自然しぜんかいでのシイタケ、ナメコ、エノキタケなどもふくまれる。

 木材もくざい腐朽ふきゅうきんたいして、マツタケ、ホンシメジ、ハツタケなどはきんきんといって、きているの、きているほそ同居どうきょし、居候いそうろう(いそうろう)てき生活せいかつをするキノコである。しかし、これらのキノコととは共生きょうせいてき関係かんけいにあり、栄養えいよう生活せいかつささえており、樹木じゅもく生活せいかつにとってくことのできない協力きょうりょくしゃはたらきをしているのである。

 キノコの役割やくわりとして、このほかに重要じゅうようなのは病原菌びょうげんきんとしてのはたらきである。木材もくざい腐朽ふきゅうきんきんきん宿主しゅくしゅ生命せいめいうばわないが、侵入しんにゅうし、積極せっきょくてきらすキノコがある。この仲間なかまのキノコはすくないが、日本にっぽんではナラタケがその代表だいひょうである。

今関いまぜきろく也]

食用しょくようキノコ

日本にっぽん森林しんりん豊富ほうふくにであり、大昔おおむかし日本人にっぽんじんうみまえに、もりにして、うみこうやまさちめぐまれて生活せいかつした。キノコはやまさちひとつとして、ふるくから賞味しょうみされてきた。日本にっぽんのキノコはきわめて複雑ふくざつで、アジア大陸たいりく東部とうぶのキノコをおもとするが、欧米おうべいけい東南とうなんアジアけい熱帯ねったいけいのキノコなどがはいじり、種類しゅるいもきわめておおい。そのなかで、マツタケ、ホンシメジ、ハツタケをはじめとして、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナラタケ、クリタケ、サクラシメジ、アミタケ、ショウロ、ホウキタケなどはふるくから日本人にっぽんじんあいされてきた。また、産地さんちかぎられているナメコ、マイタケ、コウタケなどは、地方ちほう特産とくさんひんとして独特どくとく名物めいぶつ料理りょうりんだ。秋田あきたきりたんぽとマイタケなどがいちれいである。これらのキノコは日本人にっぽんじんこのみのいちきゅう食用しょくようきんである。こうしたキノコには欧米おうべい共通きょうつうのものもおおいが、日本人にっぽんじん欧米おうべいじんとのあいだにはこのみにも料理りょうりにもちがいがある。

 日本にっぽん料理りょうりでは、キノコがもつ自然しぜん風味ふうみをたいせつにするので、マツタケ、ホンシメジ、シイタケ、ナメコ、エノキタケなどをこのむが、欧米おうべいではマツタケ、シイタケなどはこのまない。欧米おうべいじんいちきゅうひんとして食用しょくようにするのは、ハラタケ、アンズタケ、ヤマドリタケアミガサタケなどであり、これらは、日本にっぽんではむかしから食用しょくようとしては不適ふてきとされ、なかには見向みむきもされなかったものもある。このように、キノコの食用しょくようとしての適否てきひは、経験けいけんによってのみたしかめられるものであり、くににより、あるいは地方ちほうによってちがいがしょうじるものである。日本にっぽんでの食用しょくようキノコは、地方ちほうてきなものもふくめると、およそ200~300しゅかんがえられる。

 食品しょくひんとしてのキノコの価値かちは、栄養えいようめんから評価ひょうかするのではなく、植物しょくぶつしつ動物どうぶつしつ食品しょくひんからはられないものが、キノコをはじめとする菌類きんるいにあることをわすれてはならない。キノコには健康けんこう食品しょくひんとしての重要じゅうよう意義いぎがあり、それは「きんしょくろん」のなかによくあらわれている。

今関いまぜきろく也]

キノコの栽培さいばい

日本にっぽんのシイタケ、中国ちゅうごく東南とうなんアジアのフクロタケ中国ちゅうごくめいくさ菇(ツァオグー))、欧米おうべいのマッシュルーム(日本にっぽんめいツクリタケ)を世界せかいさんだい栽培さいばいキノコという。シイタケは木材もくざい腐朽ふきゅうきん、あとの2しゅくさなどをくさらせる死物しぶつ寄生きせいきんであるため栽培さいばい容易よういである。おなじような生活せいかつ様式ようしきをとるキノコは、食用しょくよう薬用やくようにかかわらず栽培さいばい可能かのうである。近年きんねん食用しょくようきんたいする需要じゅようえ、エノキタケ、ナメコ、ヒラタケの栽培さいばいさかんであり、さらにキクラゲ、シロキクラゲ、マイタケ、クリタケ、シロタモギタケなどの栽培さいばい発展はってんしている。今日きょう、これらのキノコの栽培さいばい産業さんぎょう年間ねんかん生産せいさんがくが2315おくえんえる重要じゅうよう産業さんぎょうとなっている(1999)。これにたいして、マツタケ、ホンシメジ、ハツタケなどのようにきんをつくるキノコは栽培さいばいできない。とくにマツタケについては精力せいりょくてき研究けんきゅうすすめられ、森林しんりん取扱とりあつかかたによる増産ぞうさんへのみちけたが、自由じゆう栽培さいばいすることはまだむずかしい。

今関いまぜきろく也]

どくキノコ

キノコきの日本人にっぽんじんにとって、「茸狩たけがり(たけが)り」はあきたのしい行楽こうらくである。収穫しゅうかくされた野生やせいしょくきん一部いちぶ市場いちばされるが、おおくはそのまま家庭かてい食卓しょくたくにのせられる。しかし、食用しょくようにされる種類しゅるいおおいだけに、どくキノコによる中毒ちゅうどくすくなくない。外国がいこくでも同様どうようで、北欧ほくおう諸国しょこくやイタリア、フランスなどのキノコきのくにではキノコ中毒ちゅうどくがある。ただ、それらのくに日本にっぽんとのちがいは、キノコにかんする研究けんきゅう一般いっぱんへの啓発けいはつというめんであり、このてんについては、残念ざんねんながら日本にっぽんいちじるしく後進こうしんこくとなっている。

 日本にっぽんではどくキノコの見分みわかたとして、くきたてけるキノコはべられる、どくキノコはいろが鮮美である、ナスといっしょにればどくにあたらないなどのいいつたえがあり、しかも、これをしんじているひとおおい。これらは、いずれも根拠こんきょのない、まったくの迷信めいしんであり、この迷信めいしん打破だはすることが中毒ちゅうどくふせ第一歩だいいっぽである。厚生こうせい労働省ろうどうしょう統計とうけいによると、キノコ中毒ちゅうどくしゃかずとし平均へいきんやく200にんほどであるが、かくれた中毒ちゅうどくしゃは、これにすうばいするであろう。またこの数字すうじは、明治めいじから今日きょうにかけてあまりわっていない。日本人にっぽんじん日常にちじょう生活せいかつがどれほど近代きんだいしても、日本人にっぽんじんのキノコきはすこしもわっていないし、相変あいかわらずどくキノコの安易あんい見分みわけという前述ぜんじゅつ迷信めいしんしんじ、おなじキノコによる中毒ちゅうどくかえしている。

 おもな食用しょくようキノコがぞくするのは、15あまりの分類ぶんるいされるマツタケであるが、どくキノコはどのにもある。そのことは、どくキノコに共通きょうつうした特徴とくちょうがないことを意味いみする。またどく成分せいぶんも、中毒ちゅうどく症状しょうじょうもさまざまであるため、2、3の試薬しやくどくキノコを見分みわけることは不可能ふかのうである。アメリカのリンコフLincoffとミッチェルMitchellは、キノコの毒性どくせいつぎのように分類ぶんるいしている(〔1〕~〔4〕はどく作用さよう、(1)~(7)の通番つうばんどく成分せいぶん)。

〔1〕細胞さいぼう破壊はかいし、肝臓かんぞう腎臓じんぞう(じんぞう)をおか致命ちめいてきどく食後しょくご発病はつびょうまでの潜伏せんぷく時間じかんは6~10あいだ

(1)環状かんじょうペプチド(アマトキシンるいなど)による。れいドクツルタケタマゴテングタケ、コレラタケなど。

(2)ジロミトリンによる。れいシャグマアミガサタケ

〔2〕おもに自律じりつ神経しんけいけい作用さようするどく

(3)さけとともにべると中毒ちゅうどくれいヒトヨタケホテイシメジなど。

(4)ムスカリンアルカロイド)による。れい=アセタケぞく、カヤタケぞくなど。

〔3〕おもに中枢ちゅうすう神経しんけいけい作用さようするどく

(5)イボテンさん、ムツシモルなどのアミノ酸あみのさんによる。れいベニテングタケなど。

(6)シロシビン、シロシンによる幻覚げんかくせい症状しょうじょうれいワライタケシビレタケアイゾメシバフタケなど。

〔4〕おもに胃腸いちょう粘膜ねんまくなどを刺激しげきして、下痢げり嘔吐おうと(おうと)、腹痛はらいたをおこすが、致命ちめいてきでないどく

(7)どく成分せいぶんはほとんど不明ふめいれいツキヨタケイッポンシメジ、カキシメジ(マツシメジ)など。

 この分類ぶんるいにもあるように、どくキノコの横綱よこづなかくといえるのはドクツルタケなど、テングタケタマゴテングタケの仲間なかまであり、くきにはつばがあり、くき根元ねもとふくろじょうのつぼがあるのが特徴とくちょうである。このかたちのものにもしょくきんはあるが、つぼがあるキノコは絶対ぜったいべないという配慮はいりょ必要ひつようである。また、キノコの採集さいしゅうにあたっては、かならず根元ねもとからとることもこころがけたい。日本にっぽんでいちばん中毒ちゅうどくおおいのはつぎの3しゅである。

(1)ツキヨタケ。ブナの群生ぐんせいみじかくきにくくろいしみがある。

(2)イッポンシメジとその仲間なかまかたちいろともホンシメジにるが、ひだはあわ桃色ももいろ胞子ほうしもんあわ桃色ももいろ

(3)カキシメジ(マツシメジ)。松林まつばやし雑木林ぞうきばやしえる茶色ちゃいろのシメジ。ひだもにくはじめはしろいが、茶色ちゃいろのしみができる。

 日本にっぽんからどくキノコによる中毒ちゅうどくをなくすためには、学校がっこう教育きょういくなどで、どくキノコの迷信めいしんてき見分みわかたてさせ、前述ぜんじゅつしたようなただしい採集さいしゅうほう、あるいは見分みわかた指導しどうする必要ひつようがある。そうすれば、中毒ちゅうどく件数けんすうはいまの3ぶんの1程度ていどげんずることであろう。

今関いまぜきろく也]

薬用やくようキノコ

日本にっぽん薬局方やっきょくほうには、漢方かんぽう医薬品いやくひんとして、かつてサルノコシカケのエブリコがっていたが、いまはのぞかれて、あらたにサルノコシカケのブクリョウ(茯苓)とチョレイ(いのしし苓)がせられている。りょうくすりとも利尿りにょう効果こうかたかく、各種かくしゅ漢方薬かんぽうやく処方しょほうもちいられる重要じゅうようなキノコである。キノコの薬用やくようについては草根木皮そうこんもくひ(そうこんもくひ)を主剤しゅざいとする漢方かんぽう医学いがく研究けんきゅうされており、中国人ちゅうごくじんの刘波(りゅうは)があらわした『中国ちゅうごく薬用やくよう菌類きんるい』(1974)には、キノコだけではないが78しゅきんせられている。このなかには民間みんかんやくてき利用りようされるものもおおいとおもわれるが、その一部いちぶ日本にっぽんでも民間みんかんやくとしてもちいられている。

 とくにがん(がん)の民間みんかん治療ちりょうやくとしてサルノコシカケるい日本にっぽん各地かくちもちいられ、しばしば顕著けんちょ効果こうかがあるといわれてきた。医薬いやく学界がっかいでもこれに注目ちゅうもくし、活発かっぱつ研究けんきゅうおこなわれた。その結果けっか、カワラタケからクレスチン、シイタケからレンチナンのようなせいがんやく開発かいはつされている。このほか、コフキサルノコシカケ、マンネンタケ(れいしば(れいし))なども、そのせいがん効果こうかおおいに期待きたいされている。また、シイタケのもつくだコレステロール、くだ血圧けつあつせい成分せいぶん、あるいはこうウイルスせいインターフェロンのさそえおこりせいなども研究けんきゅうされており、薬用やくようとしてのキノコ、菌類きんるい将来しょうらいにはおおきな展望てんぼうけているといえよう。

今関いまぜきろく也]

キノコの民俗みんぞく風習ふうしゅう

キノコをこのむとこのまざるとにかかわらず、人々ひとびとむかしから神秘しんぴ生物せいぶつとしてキノコをとらえてきた。ヨーロッパの人々ひとびと草原そうげん(わ)(きん(きんりん))をえがいてえるキノコを妖精ようせい(ようせい)のおどとし、もりいろどあかしろむらさきなどのキノコから、おとぎのくにさそわれ童心どうしんかえった。また、スカンジナビアのバイキングは、シラカバのはやしおおいベニテングタケをべて神経しんけい興奮こうふんさせ、士気しきたかめてたたかいに出陣しゅつじんした。こうしたことからもわかるように、ヨーロッパには、ベニテングタケが幸福こうふくをもたらすキノコであるというかんがえがあった。いまでもベニテングタケをかたどった装身具そうしんぐかざもの調味ちょうみりょうれをつくったり、テーブルけ、壁掛かべかけなどの図案ずあんにこのキノコをれている。また、キノコきの東欧とうおう諸国しょこくでは、キノコを図柄ずがらとした郵便ゆうびん切手きって発行はっこうされている。

 日本にっぽんでは、ヨーロッパの人々ひとびとがもったようなキノコにたいする発想はっそうはない。民芸みんげいひんとして、マツタケをいだく「おかめの人形にんぎょう」があるが、これはキノコのかたちからエロティックな連想れんそういたものであり、このようなれい日本にっぽんだけのことではないので、日本にっぽん独特どくとく民俗みんぞく資料しりょうとするにはあたらない。キノコにかんする日本にっぽん固有こゆう民俗みんぞく風習ふうしゅうすくないが、奈良なら時代じだいむかしからマンネンタケをぶくそう(さきくさ)とよび、めでたいキノコとして縁起えんぎをかついできた。このキノコはいろかたちうつくしいために、よく絵画かいが対象たいしょうとされ、またマンネンタケをかたどった置物おきもの焼物やきもの、その装身具そうしんぐをつくり、幸福こうふくねがった。この風習ふうしゅう起源きげんは、古代こだい中国ちゅうごく思想しそう根底こんていにある道教どうきょうもとめられる。ぶくろく寿ことぶき(ふくろくじゅ)(多子おいご富貴ふうき長生ちょうせい)の願望がんぼうのなかで最大さいだい関心かんしん不老ふろう長生ちょうせいであり、悲願ひがん達成たっせいのためには全知全能ぜんちぜんのうかたむけた。マンネンタケは、これにこたえる霊験れいけんあらたかなキノコとして珍重ちんちょうされ、さまざまなゆめあたえてくれた。

 神秘しんぴ生物せいぶつキノコのかた民族みんぞくによってちがう。アメリカのモルガン銀行ぎんこう総裁そうさいだったワッソンR. G. Wassonはこのことに興味きょうみをもち、キノコ民俗みんぞくがくethnomycologyなる新分野しんぶんやひらいた。そのきっかけとなったのが、メキシコ・インディアンにつたわる幻覚げんかくせいキノコにまつわる奇妙きみょう風習ふうしゅうであった。かれらは、このキノコをどくとはみなさず、中毒ちゅうどく症状しょうじょうかみがかりの状態じょうたいとし、キノコをとおしてかみ対話たいわし、かみ託宣たくせんくことができるとかんがえた。このため、幻覚げんかくせいキノコはむしろ神聖しんせいなキノコとされ、かみつかえる巫女ふじょ(みこ)や祈祷きとう(きとう)だけがべられるとした。巫女ふじょ祭壇さいだんまえ幻覚げんかくせいキノコをべ、民衆みんしゅうなやみにこたえをあたえるのである。ワッソンはメキシコ山中さんちゅうみずからこれを体験たいけんし、夫人ふじんとの共著きょうちょで1957ねんに2かんにわたる大著たいちょ『Mushrooms, Russia and History』をあらわしている。

今関いまぜきろく也]

調理ちょうり

日本にっぽん料理りょうりは、キノコがもつ自然しぜんかおり、あじ歯切はぎれなどをたいせつにするので、風味ふうみゆたかなマツタケ、ホンシメジ、ハツタケ、クリタケ、ナラタケ、サクラシメジなどの野生やせいしゅのほか、栽培さいばいしゅのシイタケ、ヒラタケ、エノキタケなどのキノコが珍重ちんちょうされる。料理りょうりほうもキノコのあじかすようにかんがえられてきた。鍋物なべもの(なべもの)、煮物にものましじるひろもちいられるが、ぬめりがあってしたざわりのよいキノコは大根だいこんおろし(あ)えによく、またみそしるにしてよい。ものには大豆だいず納豆なっとう豆腐とうふ、クルミなどさまざまなものがもちいられる。そのほか、もの茶碗ちゃわん(ちゃわん)しのにもされるが、マツタケ、コウタケ、ハツタケなどはぶしかんあじわうきのこめしとしてひろ賞味しょうみされる。炭火すみびいてしょうゆ、みそ、しおなどをつけてべるのはマツタケ、シイタケなどではめずらしくないが、いわゆるざつキノコのかたとしてもよい。マツタケ、シイタケなどにくあつがしまったキノコはものにもよいが、一般いっぱんには植物しょくぶつ(いた)めてから野菜やさいつけたり、中華ちゅうかふうにチャプスイ(ざつ砕)のにするのもよいかたである。

 中国ちゅうごく料理りょうりではシイタケ(こう菇(シャングー)、こうこも(シャンクー))、キクラゲ(木耳きくらげ(ムーアル))、フクロタケ(ツァオグー)はくことができない。日本にっぽんから大量たいりょう輸出ゆしゅつされるシイタケは、世界せかい進出しんしゅつしている中国ちゅうごく料理りょうりもちいられる。フクロタケは中国ちゅうごく南部なんぶから東南とうなんアジアにかけてひろ栽培さいばいされる。中国ちゅうごくではこのほかシロキクラゲ(白木しらきみみ(パイムーアル)、ぎんみみ(インアル))、キヌガサタケ(たけ蓀(チュースン)、たけさん(チューツァン))など、ほかではまったく見向みむきもされないキノコが珍重ちんちょうされる。またヤマブシタケ(猴頭(ホウトウ))も高級こうきゅう料理りょうりもちいられる。

 西洋せいよう料理りょうりでもキノコは重視じゅうしされる。キノコと西洋せいようじんのつきあいはギリシア・ローマ時代じだいからで歴史れきしふるい。とくにキノコをこのむのはロシア、北欧ほくおう諸国しょこく、フランス、イタリア、スペインなどで、料理りょうりもそれらのくに発達はったつした。材料ざいりょうとしてはいわゆるマッシュルームがだいいちであるが、野生やせいのものとしては、芝生しばふ草原そうげんのキノコであるハラタケ、シバフタケ、ササクレヒトヨタケ、もりのキノコであるヤマドリタケ、アンズタケ、アミガサタケ、ムラサキシメジ、タマゴタケの一種いっしゅシーザーズ・マッシュルームCaesar's mushroom、アカハツ、カンゾウタケ、ガンタケなどが珍重ちんちょうされる。これらは日本にっぽんにもあるが、日本にっぽんではほとんどべられない。このほかに雑木林ぞうきばやしえる地下ちかせいのキノコであるトリュフtruffe, truffleはフランスやイタリアの高級こうきゅう料理りょうりもちいられるが、日本にっぽんにはない。強烈きょうれつかおりをもつキノコである。一般いっぱん料理りょうりとしてはバターを使つかうものがおおいが、あおトマト、ニンジン、タマネギなどとぜてピクルスにし、マッシュルーム、カンゾウタケなどはなまのまま薄切うすぎりにしてサラダとしてもべる。

今関いまぜきろく也]

川村かわむら清一せいいちちょ原色げんしょく日本にっぽん菌類きんるい図鑑ずかんだい1~だい8かん(1954~1955・風間かざま書房しょぼう)』今関いまぜきろく也・本郷ほんごう次雄つぐおちょ原色げんしょく日本にっぽん菌類きんるい図鑑ずかんせいつづけ(1957、1965・保育ほいくしゃ)』今関いまぜきろく也・本郷ほんごう次雄つぐお椿つばき啓介けいすけちょ標準ひょうじゅん原色げんしょく図鑑ずかん全集ぜんしゅうだい14かん 菌類きんるい(きのこ・かび)』(1970・保育ほいくしゃ)』


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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん 「キノコ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

キノコ (きん/蕈/たけ)

キノコといわれる生物せいぶつ菌類きんるいなか大型おおがた実体じったいをつくるきんをさし,学問がくもんてき用語ようごというより,通俗つうぞくてき言葉ことばである。しかしキノコのだい部分ぶぶん担子菌類きんるい所属しょぞくし,マツタケ,シイタケなどのハラタケとサルノコシカケの仲間なかまによって代表だいひょうされる。これらのキノコは森林しんりん生活せいかつし,落葉らくよう木材もくざい分解ぶんかいする主役しゅやくとなり,森林しんりん生態せいたいけいにおける物質ぶっしつ循環じゅんかんにあって掛替かけがえのない役割やくわりをはたす。

 日本にっぽん元来がんらい森林しんりんくにであり,キノコはもり生物せいぶつのため,日本人にっぽんじん世界せかいてきにみてキノコきの民族みんぞくである。キノコの古語こごはクサビラまたはタケで,キノコは比較的ひかくてきあたらしい言葉ことばである。ほかにおおくの地方ちほうてきがある。たとえばナバ(西南せいなん日本にっぽん),クサビラ(奈良ならけん一部いちぶ),タケ(近畿きんき東海とうかい山陰さんいん中国ちゅうごくひがしはん四国しこくひがしはん),コケ(北陸ほくりく岐阜ぎふ新潟にいがた),キノコ(東日本ひがしにっぽん),ミミ(佐渡さど能登のと),モタシ,モダシ,モタセ(東北とうほく地方ちほう)などである。このように語彙ごいおおいのは,キノコについての関心かんしんふかさをしめしている。キノコを意味いみする漢字かんじはきわめておおいが,〈きん〉がふるくて普遍ふへんてきである。今日きょう生物せいぶつがく菌類きんるい植物しょくぶつでも動物どうぶつでもないだい3の生物せいぶつとみなすことがおおく,キノコ,カビ細菌さいきんなどを総称そうしょうする。人間にんげん菌類きんるいとのつきあいは肉眼にくがんてききんすなわちキノコからはじまり,それにきんという漢字かんじがつくられた。顕微鏡けんびきょう発明はつめいされてからカビも同類どうるいとされ,さらにバクテリアも細菌さいきんとして仲間入なかまいりした。ところがいまではきんといえば細菌さいきん連想れんそうするひとおおくなったが,これはあやまりである。キノコは英語えいごではマッシュルームmushroom,フランス語ふらんすごではシャンピニョンchampignon,ドイツではピルツPilzという。

人類じんるいとキノコとのつながりは,食用しょくようからはじまったといえよう。森林しんりんにし海辺うみべんだわれわれの先祖せんぞは,うみこうやまさちめぐまれた。キノコはやまさちひとつである。キノコがもつ独特どくとく風味ふうみ日本人にっぽんじんしんをとらえ,また健康けんこうささえた。自然しぜんのもつ風味ふうみぶしかんをたっとぶ日本にっぽん料理りょうりではかおたかいマツタケ,シイタケ,コウタケなどの風味ふうみをこよなくあいした。そして茸狩たけがりをたのしんだ。マツタケにきんえんのキノコは欧米おうべいにもあるが,かれらはこれをこのまない。欧米おうべいじんこのむキノコはマッシュルーム,ヤマドリタケ(イグチの仲間なかま),アミガサタケなどであり,いずれも日本にっぽん料理りょうりには不向ふむきである。

 茸狩たけがりがきで,キノコをよくべる日本にっぽんには中毒ちゅうどくおおい。われわれにつたわるどくキノコにかんする知識ちしきは,先祖せんぞをもって体験たいけんしたいわば人体じんたい実験じっけん積重つみかさねによってかちえた貴重きちょう知見ちけんである。それにもかかわらず,いまだにおなじキノコによる中毒ちゅうどくかえしているのは,どくキノコを簡単かんたん見分みわける方法ほうほうがないからである。むかしからくきたてけるキノコはべられるとか,どくキノコは華美かびいろをするとか,ナスとともにれば中毒ちゅうどくしないとかいわれているが,すべてあやまりである。どくキノコの種類しゅるいかならずしもすくなくないが,食用しょくようキノコにくらべればはるかにすくない。しかも実際じっさい中毒ちゅうどくこしているキノコはけっしておおくない。また毒性どくせいにもがあり,致命ちめいてき毒性どくせいをもつものとそれほどではないものとがある。また後者こうしゃには胃腸いちょう障害しょうがい神経しんけい系統けいとうをおかすものなどがあり,中毒ちゅうどく症状しょうじょうもさまざまである。以上いじょうのことからて,だい1に致命ちめいてき猛毒もうどくきんとしてドクツルタケ(シロタマゴテングタケをふくめて),致命ちめいてきではないが中毒ちゅうどく件数けんすうがとくにおおいツキヨタケ,イッポンシメジ(クサウラベニタケをふくめて),カキシメジ(マツシメジをふくめて)などの見分みわかた衆知しゅうちすれば,日本にっぽんのキノコ中毒ちゅうどくしゃかず現在げんざいの1/3~1/4にるであろう。

 ドクツルタケは日本にっぽんにおける代表だいひょうてき猛毒もうどくきんで,くきもとにふくろじょうのつぼがあり,うえほう膜質まくしつのつばがある。テングタケ特徴とくちょう完全かんぜんにそなえている。このようなかたちのキノコはしろみどり赤色あかいろにかかわらず,いっさい食用しょくようにしてはならない。致命ちめいてきではないが,中毒ちゅうどくがいちばんおおいのはブナの枯木かれき群生ぐんせいするツキヨタケである。半円はんえんがたのかさのよこにつくみじかくきると,にくくろ斑紋はんもんがあることが特徴とくちょうである。つぎ中毒ちゅうどくおおいのが,雑木林ぞうきばやしえるイッポンシメジの仲間なかまである。かたちしょくともホンシメジにており,いろはじみでくきたてけるが,ひだのいろあわ桃色ももいろをおびることが見分みわけの急所きゅうしょである。カキシメジは松林まつばやし雑木林ぞうきばやしのキノコで,かたちはシメジがた,かさもくき茶色ちゃいろ毒々どくどくしくない。ひだはしろいが茶色ちゃいろのしみがでて,よごれやすいのが特徴とくちょうである。ツキヨタケ以下いかはげしい嘔吐おうと下痢げり腹痛はらいたこす。

西洋せいよう医学いがくではほとんど利用りようされないが,漢方薬かんぽうやくとしてはサルノコシカケのブクリョウ,チョレイなどはかせぬ重要じゅうようなキノコである。一方いっぽうがん民間みんかんやくとしておなのコフキサルノコシカケ,カワラタケなどがひろもちいられ,現在げんざいではカワラタケからせいがんやくとしてクレスチン(商品しょうひんめい)が開発かいはつされた。またシイタケをはじめとしてキノコ全般ぜんぱんにわたってせいがん物質ぶっしつ探求たんきゅうすすめられ,とくにシイタケについてはせいがんせいのほかたいウイルスびょうかんしても期待きたいがよせられている。そのほか中国ちゅうごくふるくかられいしば(れいし)の不老ふろう長生ちょうせいのキノコとされたマンネンタケの栽培さいばい開発かいはつされた。
執筆しっぴつしゃ

食用しょくよう薬用やくようのキノコ栽培さいばいは,世界せかいてきにみると,マッシュルームが生産せいさんりょう過半かはんめ,シイタケがこれにつぐ。くにべつでは日本にっぽんだい1生産せいさんこくであり,シイタケ,エノキなど十指じっしをこす品種ひんしゅ栽培さいばいされている。日本にっぽんではふるくから丸太まるたにシイタケをはやすことがおこなわれてきたが,それが栽培さいばいあたいするものとなった時期じきは1960ねんちかいころである。その発展はってん目覚めざましく,生産せいさんがくはリンゴをこえ,ミカンにちかづいている。本来ほんらい林家はやしやふく収入しゅうにゅう確保かくほ意味いみはじめられたが,需要じゅよう急増きゅうぞう対応たいおうする設備せつび充実じゅうじつのため専業せんぎょうがあらわれはじめ,必然ひつぜんてき種菌しゅきん供給きょうきゅう会社かいしゃ関連かんれん装置そうち製造せいぞう会社かいしゃ登場とうじょうし,年商ねんしょう2000おくえんをこえる産業さんぎょうとなった。

 キノコは植物しょくぶつのような光合成こうごうせい能力のうりょくをもたないので,栽培さいばい培地ばいち)からすべての栄養えいようぶつをとる。また,キノコはカビの一種いっしゅであるが,カビやバクテリアはどこにでもいるから,キノコだけがそだつには条件じょうけんかぎられる。この培地ばいち殺菌さっきん方法ほうほうにより,いまおこなわれている栽培さいばいほうみっつにけられる。だい1は原木げんぼく栽培さいばいである。かわつき丸太まるた種菌しゅきんをうめこみキノコの発生はっせい方法ほうほうで,日本にっぽんのシイタケ生産せいさんがこの代表だいひょうれいである(〈シイタケ〉のこう参照さんしょう)。原木げんぼく栽培さいばいはシイタケ以外いがいのキノコでもひろおこなわれていたが,これらは逐次ちくじ栽培さいばいにおきかえられている。しかし大型おおがたにくあつのキノコ生産せいさんにはてがたい利点りてんをもつ。だい2は栽培さいばいきんゆか栽培さいばい,おが栽培さいばい)で,こめぬかとを体積たいせき3たい1でぜてプラスチックせいびんれ,こうあつ蒸気じょうき殺菌さっきんしたものを培地ばいち使つか方法ほうほうである。長野ながのけん中野なかの中心ちゅうしんにエノキタケ栽培さいばい開発かいはつ発展はってんした。エノキタケでは培地ばいち種菌しゅきん接種せっしゅ,18℃の部屋へや20日はつかおいてきんをまんえんさせてから,13℃の部屋へやうつしてキノコを発生はっせいさせる。このままでとれるエノキタケは形状けいじょうざわりがこのましくないので,さらに環境かんきょう調節ちょうせつおこなう。すなわち10日とおかに8℃の部屋へやうつしてびん全体ぜんたいのキノコのおおきさをととのえてから4℃の部屋へやうつして生育せいいくさせ,収穫しゅうかくする。きんのうえつけから収穫しゅうかくまでやく50日間にちかんである。ヒラタケ,ナメコ,マイタケなども手順てじゅんおこなう。だい3はわら栽培さいばいである。わらは微生物びせいぶつ作用さよう分解ぶんかいされると,そのさい発生はっせいするねつ殺菌さっきんされる。これを培地ばいち使つか方法ほうほうで,マッシュルームの栽培さいばい発展はってんした。欧米おうべいではのキノコにも方法ほうほうもちいる。マッシュルームでは,培地ばいち作成さくせいやく25にちかかる。すなわちむぎわらを窒素ちっそふく鶏糞けいふん(けいふん)などとまぜて放置ほうちすると75℃にもなる。10日とおかあまりで,堆肥たいひができる。堆肥たいひでつくったわくにいれ,石灰せっかいなどをくわえて放置ほうちすると10にちあまり熟成じゅくせいする。これを培地ばいちとして種菌しゅきんをまく。20~25℃で2~3週間しゅうかんたちきん生育せいいくしたのを確認かくにんして,そのうえまたはピートでおおう。これが刺激しげきとなりキノコが発生はっせいする。わらの堆肥たいひ処理しょり開始かいし収穫しゅうかくまでやく60日間にちかんである。フクロタケ,キクラゲなどもわら,バガスなどで栽培さいばいされるが,殺菌さっきん簡単かんたん方法ほうほうで,また覆土ふくどおこなわれていない。
執筆しっぴつしゃ

くににより民族みんぞくによってちがうが,キノコには特別とくべつ関心かんしんをもつひとおおい。一方いっぽうでは魔性ましょうものとしておそれられ,一方いっぽうでは不老ふろう長生ちょうせい霊薬れいやくとされ,あるいは幸福こうふく使者ししゃとされ,ときにはおとぎのくに夢幻むげん世界せかいさそ神秘しんぴものとされる。アメリカのモルガン商会しょうかい総裁そうさいであったワッソンR.G.Wassonは,趣味しゅみからんだキノコにまつわる民俗みんぞくがくてき研究けんきゅう発展はってんさせて,キノコ民俗みんぞくがくethnomycologyの分野ぶんや開拓かいたくした。ワッソンの研究けんきゅうはメキシコの山岳さんがく地帯ちたい原住民げんじゅうみんつたわる幻覚げんかくせいキノコにともな風習ふうしゅうについて,またインドのバラモン教ばらもんきょう聖典せいてん《リグ・ベーダ》にあるかみにささげるせいなる供物くもつソーマについて考証こうしょうをすすめ,これがベニテングタケであるという独創どくそうてきせつ発表はっぴょうした。

 ベニテングタケはどくキノコであるが,ヨーロッパではこれを幸福こうふくをもたらすキノコとして壁掛かべかけ,置物おきもの服飾ふくしょくのアクセサリーなどの図案ずあん題材だいざいもちいる。道教どうきょう思想しそうをいだく中国人ちゅうごくじんぶくろく寿ことぶき(ふくろくじゆ)を現世げんせい理想りそうとし,寿ことぶきすなわち不老ふろう長生ちょうせいをもたらすものとしてれいしば瑞祥ずいしょう(ずいしよう)の象徴しょうちょうとしてたっとび,絵画かいが置物おきもの題材だいざいにとりいれた。れいしばによっていかに長寿ちょうじゅねがったかは,道教どうきょうの15世紀せいきはじめの経典きょうてんみちぞう》のだい1051かんに〈ふとしじょう霊宝れいほう芝草しばくさひん〉があり,これに1000ねんから10まんねん長寿ちょうじゅたもつという空想くうそう芝草しばくさすなわちれいしばのたぐい127しゅ図説ずせつしてあることによってもあきらかである。

 キノコの古名こみょうのタケの語源ごげんは〈たけし(たけ)り〉〈ちょう(た)ける〉ですみやかな生長せいちょう意味いみするとするせつもある。そしてキノコはそのかたちから男根だんこん連想れんそうんだ。この連想れんそう日本にっぽん民族みんぞくだけのものではないが,日本にっぽん文化ぶんかにかかわりのつよ中国ちゅうごく文化ぶんか影響えいきょうではない。キノコがたいしきざんできむきよしさま(こんせいさま)と同様どうようまつり,また夫婦ふうふ和合わごう子宝こだからねがって,おかめがマツタケがたのキノコをいだ人形にんぎょうふるくから民芸みんげいひんとしてつくる地方ちほうがある。中国ちゅうごく文化ぶんか影響えいきょうをうけてからはれいしば幸福こうふく使者ししゃとするようになり,ぶくそう(さきくさ),こうだけ(さいわいたけ)のでもんだ。にわにマンネンタケがえると瑞兆ずいちょうとし,一家いっかのあるじが旅立たびだつときはマンネンタケをもんさきにさげて無事ぶじ帰還きかんいの地方ちほうもあったといい,カドデタケのまれた。れいしばはまた画材がざいにもなり,これをかたどった置物おきもの文鎮ぶんちん,はしき,根付ねつけなどさまざまな装飾そうしょくひんもある。これ以外いがいにもマツタケ,ホンシメジ,ハツタケなどもれいしば同様どうようにかたどられる。
執筆しっぴつしゃ ヨーロッパでは日本にっぽんほど食用しょくようにされないが,イタリアではべ,その風習ふうしゅうキリスト教徒きりすときょうとかいしてドイツにもはいった。あか毒々どくどくしいキノコは悪魔あくま関係かんけいづけられ,生長せいちょうがひじょうにはやいため小人こども妖精ようせいともむすびつく。なかでもホコリタケはほこりのいっぱいまったふくろかたち人々ひとびと注意ちゅういをひき,これが雨後うご多量たりょうにあらわれることからあめ妖精ようせいとみなされ,キリストきょう改宗かいしゅうまえには,人間にんげんめぐみのあめらせるトールかみむすめとされた。キノコの起源きげん関係かんけいのある聖徒せいと伝説でんせつもある。イエスと弟子でしたちになに食物しょくもつのないことがあった。ペテロはパンをぬすんで,こっそりべようとした。ひと口口くちぐちべようとすると,そのたびにイエスがはなしかけるので,ペテロは全部ぜんぶさなければならなかった。そのパンが地上ちじょうちたところからキノコがえたのだという。むら女子じょしどものたのしみのひとつに茸狩たけがりがある。俗信ぞくしんによるとキノコのたくさんできるとし飢饉ききんになるとされる。
執筆しっぴつしゃ

日本人にっぽんじんふるくからキノコをよくべたが,もっと珍重ちんちょうされたのはマツタケである。マツタケにつづいては,《梁塵りょうじんしょう》に〈ひじりこのむもの……松茸まつたけ(まつたけ),たいらだけ,なめすすき〉とえるように,〈たいらだけ〉や〈なめすすき〉がよろこばれた。ヒラタケのは《今昔こんじゃく物語ものがたりしゅう》などにおおられ,当時とうじ国司こくしらの“ころんでもただではきぬ”しき強欲ごうよくさの典型てんけいとされる藤原ふじわらちんただし(のぶただ)が,転落てんらくしたふかたにそこからことのついでとってくるのも,ヒラタケということになっている。〈なめすすき〉はすべりうすくこともあり,エノキタケの異名いみょうとされる。ほかにシイタケ,ショウロ,シメジ,イワタケなどが中世ちゅうせい文献ぶんけんにしばしばられる。近世きんせい初期しょき刊行かんこうされた《料理りょうり物語ものがたり》には,以上いじょうのもののほかに,〈初茸はつたけ〉〈いくち〉〈よしたけ〉〈くらげ〉〈かうたけ〉〈ねずみだけ(ねずたけ)〉のえる。このうち,〈いくち〉はなん種類しゅるいかの集合しゅうごうめいともいわれるが,の〈よしたけ〉とともに実体じったい不明ふめい,〈かうたけ〉はコウタケで,かわだけかわだけなどとき,〈ねずみだけ〉はホウキタケの別称べっしょうである。
執筆しっぴつしゃ


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百科ひゃっか事典じてんマイペディア 「キノコ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

キノコ

菌類きんるいなかで,繁殖はんしょく器官きかんである実体じったい比較的ひかくてき大型おおがたのもの,またその実体じったいのことをいう。カビなどとおなじく通俗つうぞくてき用法ようほうで,分類ぶんるいがくてき厳密げんみつ定義ていぎはできない。嚢菌るいばん菌類きんるいと,担子菌類きんるい(サビきん,クロボ菌類きんるいなどをのぞく)がふくまれる。担子菌類きんるいでは胞子ほうし棒状ぼうじょう球状きゅうじょうの担子もと一定いっていすうずつつき,それらがあつまってそうをつくる。キノコがながとかさをもち,かさの下面かめんあなやひだがあることは,かぎられたせま部分ぶぶんになるべくおおくの胞子ほうしをつけ,それらがるのに都合つごうがよい。キノコのからだ寒天かんてんしつ肉質にくしつ紙質かみしつ炭質たんしつ,コルクしつなどさまざまであるが,一般いっぱん寒天かんてんしつ肉質にくしつのものは寿命じゅみょうみじかく,炭質たんしつ,コルクしつのものは多年たねんにわたって生長せいちょうする。キノコはぜん世界せかいすうせんしゅあり,地中ちちゅう地上ちじょうくさ木上きのうえまたは特定とくてい植物しょくぶつくさなま寄生きせいまたは共生きょうせいしている。ふゆちゅうなつそうなど昆虫こんちゅうにつくもの,サルノコシカケなど樹幹じゅかんざいについて腐朽ふきゅうさせるもの,ヤグラタケのようにのキノコに重複じゅうふく寄生きせいするものなど,いろいろなものがある。食用しょくようキノコとしては,マツタケシイタケエノキタケシメジマッシュルームなどが代表だいひょうてきなもので,おおくのたね栽培さいばい実用じつようされている。どくキノコは種類しゅるいかならずしもすくなくないが,食用しょくようキノコにくらべればはるかにすくない。どく成分せいぶん消化しょうか呼吸こきゅう神経しんけい血液けつえきなどをおかす。どくキノコと食用しょくようキノコとの簡単かんたん見分みわかたはなく,通用つうようされている方法ほうほうのほとんどはあやまりである。しかし,くきもとにふくろじょうのつぼがあり,うえほう膜質まくしつのつばがあるのは猛毒もうどくのテングタケ特徴とくちょうなので,絶対ぜったいけたほうがよい(テングタケドクツルタケ)。そのほか中毒ちゅうどく件数けんすうおおツキヨタケ,イッポンシメジの見分みわかたおぼえれば,中毒ちゅうどく事故じこ大幅おおはばらすことができる。
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栄養えいよう生化学せいかがく辞典じてん 「キノコ」の解説かいせつ

キノコ

 菌類きんるい一種いっしゅ.担子菌類きんるい嚢菌るいがある.実体じったいつくり,それを通常つうじょうキノコといい食用しょくようにする.有毒ゆうどくのものもおおい.

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうちキノコ言及げんきゅう

菌糸きんし】より

後者こうしゃ場合ばあい菌糸きんしつねに1細胞さいぼうれつで,隔壁かくへき中央ちゅうおうあながあって両隣りょうどなり細胞さいぼう連絡れんらくし,そのあなとおして物質ぶっしつ移動いどうおこなわれる。担糸菌類きんるいでは,かく細胞さいぼう1個いっこかくをもつ菌糸きんし(いち菌糸きんし)が異性いせい菌糸きんし接合せつごうするが,双方そうほう菌糸きんし由来ゆらいする2かくはすぐには融合ゆうごうせず,それぞれが独立どくりつ分裂ぶんれつするため,2かくをもつ菌糸きんし(菌糸きんし)が発達はったつし,この菌糸きんし実体じったい(いわゆるキノコ)を形成けいせいする。菌糸きんし細胞さいぼうかべ主成分しゅせいぶん一般いっぱんにキチンまたはヘミセルロース,あるいはその両者りょうしゃである。…

菌類きんるい】より

有性ゆうせい生殖せいしょく結果けっか,担子形成けいせいし,そのうえに担子胞子ほうしそとせいする。たんしょういち菌糸きんしと,遺伝子いでんしがたことなる2がたかくふくじゅうしょう菌糸きんしとがあり,菌糸きんし集合しゅうごうして組織そしきした実体じったいがキノコにたる。実体じったいまった部位ぶいに担子しがらみじょうならび,担子じょうはしにできる小柄こがらじょうに担子胞子ほうし形成けいせいされる。…

食用しょくよう植物しょくぶつ】より

緑藻類りょくそうるい(ヒトエグサ,スジアオノリ,カワノリ,クロレラなど),褐藻かっそうるい(モズク,マツモ,マコンブ,ミツイシコンブ,トロロコンブ,ワカメ,ヒジキなど),べに藻類そうるい(アサクサノリ,スサビノリ,チシマクロノリ(いわ海苔のり),フクロフノリ,マフノリなど),ラン藻類そうるい(スイゼンジノリ,カワタケなど)がある。 菌類きんるいのつくりすキノコも食用しょくようとして重視じゅうしされる。現在げんざい市場いちば出回でまわっているシイタケ,エノキタケ,ナメコ,ヒラタケ,マイタケ,マッシュルーム,フクロタケなど,だい部分ぶぶんのものは栽培さいばいされたものである。…

※「キノコ」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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