2024.06.21(Fri)

歌舞伎かぶき界かいのプリンス　24歳さいの片岡かたおか千せん之これ助すけが映像えいぞう作品さくひんに挑戦ちょうせんする理由りゆう　「歌舞伎かぶきがあることが当あたり前まえではない」コロナ禍かで学まなんだ危機きき感かん

　3歳さいから舞台ぶたいに立たつ松嶋屋まつしまやの歌舞伎かぶき俳優はいゆう・片岡かたおか千せん之これ助すけ。24歳さいの歌舞伎かぶき界かいのプリンスは、近年きんねん映像えいぞう作品さくひんにも挑戦ちょうせん。映画えいが『九きゅう十じゅう歳さい。何なにがめでたい』が公開こうかいされる。そんな千せん之これ助すけが思おもう歌舞伎かぶき界かいの未来みらいとは――。

　名門めいもん・松嶋屋まつしまやに生うまれ、祖父そふは人間にんげん国宝こくほう・十じゅう五ご代だい片岡かたおか仁左衛門にざえもん、父ちちも有名ゆうめい歌舞伎かぶき俳優はいゆうの片岡かたおか孝太郎こうたろうという家柄いえがら。物心ぶっしんついたときには舞台ぶたいに立たっていた。

　「最初さいしょはとりあえずやってみたい…ぐらいの気持きもちでした。小学校しょうがっこう高学年こうがくねんぐらいで、この世界せかいで生いきていくのかなと漠然ばくぜんと思おもっていたような気きがします」

　本人ほんにんの意識いしきとは別べつに引ひかれていたレール。その道みちを歩あゆむことに疑問ぎもんやためらいはなかったという。しかし20歳さいになったころ、コロナ禍かで国内外こくないがいのエンターテインメント業界ぎょうかいは大だい打撃だげきを受うけた。歌舞伎かぶき界かいも例外れいがいではなく、多おおくの先輩せんぱい俳優はいゆうは危機きき感かんを募つのらせていた。

　「歌舞伎かぶきの家いえに生うまれ、オーディションを受うけるわけでもなく、歌舞伎かぶき役者やくしゃとしてお役やくに挑戦ちょうせんさせていただける環境かんきょうを与あたえてもらえる。もちろん、小ちいさいころからお稽古けいこはたくさんしていますが、そこはすごく恵めぐまれていると思おもいつつ、特権とっけんみたいなものを意識いしきしたことはなかったんです。でもコロナ禍かになり、400年ねん続つづいてきた歌舞伎かぶきも決けっしてお客きゃくさんが入はいり続つづけるなんてことはないんだという危機きき感かんが芽生めばえました。歌舞伎かぶきがあることが当あたり前まえではないんですよね」

　起源きげんは江戸えど時代じだい初期しょきにさかのぼる歌舞伎かぶきだが、未来永劫みらいえいごう続つづく保証ほしょうなどないことを身みに染しみて感かんじた。

　「俯瞰ふかんして歌舞伎かぶきの世界せかいを見みるようになったんです。どの世界せかいも永遠えいえんの繁栄はんえいなどないと思おもいますが、謙虚けんきょに向むき合あいながらも、しっかり自分じぶんのなかで思おもいを持もっていないといけないんだと強つよく感かんじました。歌舞伎かぶきの世界せかいは役者やくしゃだけではなく、たくさんの裏方うらかたさんたちがいなければ成なりたない世界せかいなので。全員ぜんいんがちゃんと生活せいかつしていけなければダメなので」

　千せん之これ助すけが出演しゅつえんしている「九きゅう十じゅう歳さい。何なにがめでたい」では、草笛くさぶえ光子こうし演えんじる90歳さいを迎むかえる作家さっかが、あまりに合理ごうり的てきに進歩しんぽし続つづける現代げんだいを憂うれい、古ふるき良よきものと新あたらしいものの融合ゆうごうの大切たいせつさを説とく。

　「歌舞伎かぶきの世界せかいも同おなじような気きがします。僕ぼくら若わかい世代せだいに伝統でんとう芸能げいのうの何なにが面白おもしろいのかをどうやって伝つたえていくかは考かんがえます。アニメとのコラボなどは一いち例れいで、導入どうにゅうとしては大事だいじだと思おもいます。でもやっぱり最終さいしゅう的てきには古典こてんの魅力みりょくを知しってもらいたい。そこに興味きょうみを持もっていただかないと、続つづかないと思おもうんです。いまはサブスクやスマホで完結かんけつしてしまう若わかい方ほうが多おおいので、そこから先さき、もう一ひとつ頭あたまを絞しぼって、いいシナジーを生うんでいきたいです」

　歌舞伎かぶき俳優はいゆうが映像えいぞうの世界せかいで活躍かつやくする機会きかいも多おおい。そこには歌舞伎かぶきという伝統でんとう芸能げいのうを広ひろく知しってもらいたいという思おもいもある。

　「歌舞伎かぶきに興味きょうみがある人ひとは舞台ぶたいを観みてくださいますが、興味きょうみがない人ひとのとっかかりとして、少すこしでも何なにか引ひっかかってもらえればうれしいですね。7月には現代げんだい劇げきの舞台ぶたい『ヒストリーボーイズ』にも挑戦ちょうせんしますし、自分じぶん自身じしんも映像えいぞうのお芝居しばいだけではなく、さまざまな表現ひょうげんに磨みがきをかけていきたいです」