役やく作づくりで大事だいじにしたのは、金子かねこさんのプログラミング愛あい（東出ひがしで）

──そもそもWinnyというソフトや事件じけんについて皆みなさんは知しってましたか？

東出ひがしで昌あきら大だい　存ぞんじ上あげなかったです。

吹越ふきこし満みつる　僕ぼくも知しらなかったです。パソコン自体じたいいまだに持もってないんですよ。だからそういう世界せかいは疎うとくて。

三浦みうら貴たか大だい　僕ぼくは昔むかしからインターネットを利用りようすることが多おおくて、2ちゃんねるも見みていましたし、Winnyというソフトウェアがあるのも知しってはいました。使つかい方かたがよくわからなかったし、ネット回線かいせんが貧弱ひんじゃくだったのこともあって使つかおうとも思おもいませんでしたけど。事件じけんについても詳くわしく追おっていたわけではないですが、ソフトを作つくった人ひとが逮捕たいほされたとか、裁判さいばんが最終さいしゅう的てきにどうなったかということは知しっていました。

吹越ふきこし　実話じつわをもとにしてるっていうのを知しったのも、オファー受うけたあとか、前まえだったかなぐらいの感かんじでした。事件じけんについても、違法いほうアップロードをした人ひとじゃなくて、なんでソフト作つくった人ひとが逮捕たいほされるんだろうっていうぐらいの認識にんしきでしたね。

──金子かねこさんは著作ちょさく権けん法ほう違反いはんを幇助ほうじょしたという容疑ようぎで逮捕たいほされてしまうんですが、それが本当ほんとうに正ただしいことなのかというのがこの事件じけん、そして映画えいがのポイントです。東出ひがしでさんは事件じけんについてご自身じしんでもかなり調しらべたと伺うかがいました。

東出ひがしで　最初さいしょは本当ほんとうに無知むち蒙昧もうまいの代表だいひょうみたいなところがあって。事件じけんについて調しらべたときに、金子かねこさんが最後さいごは無罪むざいになるとはいえ、逮捕たいほされて有罪ゆうざいになったという情報じょうほうだけを受うけ取とった僕ぼくは、「金子かねこさんっていかがわしい人ひとなのかな」「悪意あくいを持もってWinnyを作つくったのかな」という先入観せんにゅうかんを抱だいてしまったんです。

──金子かねこさんを有罪ゆうざいにしたい警察けいさつ側がわと同おなじようなことを思おもってしまったわけですね。

東出ひがしで　でも僕ぼくは役やくが悪人あくにんであれ善人ぜんにんであれやってみたいと思おもうので、金子かねこさんについてとにかく調しらべてみようと思おもい、その結果けっかとして彼かれは悪人あくにんではないという認識にんしきを持もちました。作中さくちゅうでも、なんで金子かねこさんがWinnyを作つくったという話はなしで、壇だん先生せんせいに「そこに山やまがあるから登のぼっただけ」と表現ひょうげんされていましたけど、僕ぼくもちょっとずつ彼かれのことを知しるうちに「こんな純真じゅんしん無垢むくなプログラマーがいたんだ」と考かんがえるようになった次第しだいです。

──金子かねこさんを知しる人ひとは、彼かれのことを悪わるく言いわないという話はなしも伝つたわってきています。金子かねこさんは一般いっぱんの方ほうということでそこまで資料しりょうが多おおく残のこっているわけではないですよね。遺族いぞくの方ほうとお話はなしをして役やく作づくりをしていったんでしょうか。

東出ひがしで　そうですね、少すこしだけ残のこっていた映像えいぞうと、壇だん先生せんせいのお話はなしを聞きいたのと、あとは遺族いぞくの方ほうのお話はなしですね。栃木とちぎにある金子かねこさんの生家せいか跡あとを訪たずねたことがあるんです。そのあとお昼ひるごはんを食たべるために移動いどうしたときに、30分ふんぐらい車くるまを走はしらせたところで金子かねこさんのお姉あね様さまに「ここが弟おとうとの通とおっていた電気でんき屋やさんです」と言いわれたんですよ。

──映画えいがでも、金子かねこさんが小学生しょうがくせいの頃ころに電気でんき屋やの店頭てんとうにあるマイコンを使つかってプログラミングをしていたシーンがありましたね。

東出ひがしで　その電気でんき屋やさんまで自宅じたくから車くるまで30分ふんぐらいかかったのに、子供こどもの自転車じてんしゃだとどれぐらいの時間じかんがかかったんだろうと思おもって。でも金子かねこ少年しょうねんは暑あつい日ひも寒さむい日ひも、そこでマイコンを触さわりたくて通かよっていた。このプログラミング愛あいでずっとやってきた方ほうだったんだと。役やく作づくりにおいてこれだけは忘わすれちゃいけないというか、一番いちばん大事だいじだなと思おもいました。

秋田あきた弁護士べんごしの本ほんは役やく作づくりにも日常にちじょうにも役立やくだつ（吹越ふきこし）

──壇だん先生せんせい役やくの三浦みうらさんも、ご本人ほんにんといろいろお話はなしをされたそうですね。事前じぜんに見みせていただいた資料しりょうに壇だんさんのインタビューがあったんですが、三浦みうらさんについて「私わたし本ほん⼈よりも、ずっと素直すなおな⽅」「私わたしを⾒てあんまり私わたしに寄よせたら映画えいがを⾒てる⼈の共感きょうかんを得えられないと思おもったんでしょうか」と言いわれていました。そこは多少たしょうのアレンジはされたんでしょうか。

三浦みうら　壇だん先生せんせいは本当ほんとうに弁べんの立たつ方ほうで。いろんな裁判さいばんを闘たたかってきている歴戦れきせんの猛者もさで、本当ほんとうに手練しゅれん手管てくだを使つかっている方ほうなので、そういう面めんで比くらべたら僕ぼくのほうが素直すなおってことなのかもしれないです（笑）。

──吹越ふきこしさんが演えんじた秋田あきたさんは、刑事けいじ事件じけんで無罪むざいを10回かい以上いじょう勝かち取とった伝説でんせつの弁護士べんごしという人物じんぶつです。秋田あきたさんの著書ちょしょ「実践じっせん！刑事けいじ証人しょうにん尋問じんもん技術ぎじゅつ part2」を事前じぜんに読よまれたとか。

吹越ふきこし　うん。今いままで検事けんじ、弁護士べんごし、被告ひこく、傍聴ぼうちょう人じんの役やくは経験けいけんあって、裁判官さいばんかん以外いがいはだいたいやったことがあるし、普段ふだんだったらそんなことしないんですけど。でも今いままで関かかわってきた裁判さいばんはそれは架空かくうの事件じけんだし、大だいどんでん返がえしがあったりとか、証人しょうにんが言いってくれるはずのことを言いわないとか、ドラマチックになってるじゃない？ この映画えいがの裁判さいばんは実際じっさいにあったことだから、弁護士べんごしの先生せんせいがどんなことをやってるのかと思おもって、その本ほんを読よんだんです。「証人しょうにん尋問じんもんでこういう流ながれになった、なぜこれはダメなのか」っていうことを教おしえてくれる文章ぶんしょうなんだけど。例たとえば映画えいがの中なかで「わざと嘘うそをつかせてピン止とめして、そこに矛盾むじゅんを突つきつける」ってセリフがあるんです。あれは例たとえばこういうことなのかなと思おもって。旦那だんなが外そとから帰かえってきたときに、風呂ふろに入はいろうと思おもってズボン脱ぬいだときにパンツが裏返うらがえしになってるっていうことがあったとして。

──裏返うらがえしになっているということは、外出がいしゅつ時じにどこかでパンツを脱ぬぐようなことをしたのか……と。

吹越ふきこし　奥おくさんってきっと「あんた、なんでパンツが裏返うらがえしになってるの？」って言いっちゃうと思おもうんですよ。それを言いわないことが、相手あいてに嘘うそをつかせる手順てじゅんになるっていうテクニックが紹介しょうかいされていて、勉強べんきょうになりました。

──秋田あきたさんの戦術せんじゅつとして「相手あいてに『なぜ』と聞きいてはいけない」というのがあるそうですね。

吹越ふきこし　そう。「なんで裏返うらがえしになってるの？」って聞きくと、絶対ぜったい「知しらなかった、ウンコするときにズボンとパンツ脱ぬぐクセがあってさ」みたいにごまかされる可能かのう性せいがある。だから奥おくさんは「今日きょうどこかでズボン脱ぬいだ？」と聞きくことで、「何なに言いってんだ、脱ぬいでねえよ」と言いわせる。

──「脱ぬいでない」と嘘うそをつかせることができる。

吹越ふきこし　そこで「パンツが裏返うらがえしになってた」という事実じじつを見みせれば、「裁判さいばん長ちょう、こちらからは以上いじょうです」となるわけですよ。

東出ひがしで　なるほどね（笑）。

吹越ふきこし　そういうのが説明せつめいされている本ほんだから、読よむと秋田あきた先生せんせいのキャラクターがなんとなくわかるというかね。

東出ひがしで　にじみ出でてくるものがあったんですね。

吹越ふきこし　だから映画えいがで秋田あきた先生せんせいを演えんじるのにも役立やくだったし、それにプラスして日常にちじょうで他人たにんとのトラブルに役立やくだつなと思おもってさ。秋田あきた先生せんせいって、裁判官さいばんかんと証人しょうにんと傍聴ぼうちょう人じんと検察けんさつを相手あいてに1人ひとり芝居しばいしてるみたいな弁護士べんごしで、非常ひじょうに魅力みりょく的てきな人ひとなんですよ。それはそれでプレッシャーがかかったけど。今日きょう、映画えいがの舞台ぶたい挨拶あいさつに秋田あきた先生せんせいが来きてくれて、初はじめてお会あいしたんですけど、撮影さつえい前まえに会あってたら逆ぎゃくに作つくりすぎちゃってたかもしれない。そういう意味いみではラッキーだった。

東出ひがしで　僕ぼくも秋田あきた先生せんせいと初はじめてお会あいしたんですけど、醸かもす雰囲気ふんいきがすごく似にてらっしゃいましたね。