少年しょうねん隊たい「星屑ほしくずのスパンコール」

文ぶん / 西寺にしてら郷ごう太ふとし（NONA REEVES） イラスト / しまおまほ

男性だんせいアイドルグループの最高さいこう傑作けっさく

僕ぼくはよく、自分じぶんには四天王してんのうがいる、っていうい方いかたをするんですね。マイケル・ジャクソンおよびThe Jacksons、プリンス、ジョージ・マイケルおよびWham!、少年しょうねん隊たい。少年しょうねん隊たいはトークも歌うたもすごいんですけど、何なによりもダンスが世界中せかいじゅうの“ボーイバンド”史上しじょう一番いちばんのグループだと僕ぼくは思おもうんです。

今こん現在げんざい、彼かれらの映像えいぞう作品さくひんは正規せいきに手てに入はいりにくいので、ファンとかマニアがダビングして僕ぼくの事務所じむしょに貴重きちょうな映像えいぞうを送おくってくださったりもするんですけど。一種いっしゅのシンジケートのようにファン同士どうしが連帯れんたいして次世代じせだいに伝つたえているといいますか。

少年しょうねん隊たいは3人にんでの活動かつどうは2008年ねんの「少年しょうねん隊たい PLAYZONE FINAL 1986～2008 SHOW TIME Hit Series Change」以降いこうはないんですが、彼かれらのファンって今いま、若わかい世代せだいにも実じつは増ふえていて。なんらかの方法ほうほうで観みてるんでしょうね。観みればすぐわかりますから、これはすごいと。

僕ぼくが錦織にしきおり一清かずきよさんを知しったのは、1982年ねん11月から1983年ねん2月がつにかけて放送ほうそうされた、彼かれがバク宙ちゅうをピタッと決きめる「キャンパスリップ」のCMで。第だい一いち印象いんしょうは「トシちゃんかな？ あれ？ 違ちがう？」というか（笑）。それから1年ねん後ごくらいですかね、少年しょうねん隊たいという3人組にんぐみになった錦織にしきおりさんを認識にんしきしたのは、明治製菓めいじせいかの「DELA」というチョコレートのCM。少年しょうねん隊たいはデビュー前まえからテレビで流ながれまくるCMに出でていたんですよね。で、テーマ曲きょくのレコードを子供こどもなりに必死ひっしで探さがしたんですけど、まだデビューしてなくて驚おどろいたり（笑）。

彼かれらの前まえに活躍かつやくしていたアイドルは10代半なかばでデビューすることが多おおかったんですけど、少年しょうねん隊たいはマイケル・ジャクソンの振付ふりつけ師しだったマイケル・ピータースの指導しどうを受うけたり、海外かいがいでもトレーニングを積つまれていて。錦織にしきおりさんが20歳さい、東山ひがしやま紀之のりゆきさんと植草うえくさ克秀かつひでさんが19歳さいのときにシングル「仮面かめん舞踏ぶとう会かい」（1985年ねん12月発売はつばい）で満まんを持もたしてデビューを果はたしました。最近さいきん、編曲へんきょく担当たんとうの船山ふなやま基紀もときさんと20th Centuryの「グレイテスト・ラヴァー」を共同きょうどうアレンジさせてもらったりして、スタジオやご自宅じたくで何なん度どもお話はなしする機会きかいがあるんですけど、「少年しょうねん隊たいのデビュー曲きょくのときは、大だいヒットが前提ぜんていのプレッシャーがすごかった」と回想かいそうされてましたね。

30年ねん以上いじょう歌うたい継つがれるクラシック

少年しょうねん隊たいの曲きょくのうち20曲きょくくらいはほぼ同率どうりつで好すきなので、この連載れんさいで3曲きょくだけ選えらぶのは正直しょうじき悩なやみました。ただ今回こんかい取とり上あげる「星屑ほしくずのスパンコール」（1986年ねん9月がつ発売はつばいの1stアルバム「翔しょう SHONENTAI」収録しゅうろく）は、僕ぼくが考かんがえるジャニーズソングの金字塔きんじとうで外はずせないな、と。この曲きょくはKAT-TUNやKing & Prince、SixTONESといった後輩こうはいグループたちに長ながきにわたり歌うたい継つがれてきましたから、若わかい世代せだいのジャニーズファンも好すきな人ひとが多おおいんじゃないでしょうか？ オリジナルが少年しょうねん隊たいだということを知しらない世代せだいも多おおいかもしれないと思おもって選曲せんきょくしました。個人こじん的てきには6人にん時代じだいのKAT-TUN版ばんも大好だいすきです。少年しょうねん隊たいにはないアウトローの匂においもあって、あまりにもカッコよすぎるなと（笑）。でも、結局けっきょくジャニーズの世界せかいに留とどまっている間あいだはギリギリのラインで、やっぱりみんな“上品じょうひん”なムードに包つつまれるんですよね。そこが絶妙ぜつみょうなバランスです。ただのアウトローなら、珍めずらしくはないので。

“男性だんせいアイドル”ってたくさん定義ていぎがあると思おもうんですが、「星屑ほしくずのスパンコール」を歌うたいこなせたとき初はじめて“真しんのジャニーズアイドル”になっていく、そんな気きがしていて。少年しょうねん隊たいが歌うたうオリジナルバージョンを後輩こうはいたちも研究けんきゅうして、それが遺伝子いでんしとして伝つたわっていく大事だいじなエッセンスになっているというか。4年ねん前まえかな？ 一緒いっしょに舞台ぶたいを作つくったとき、A.B.C-Zの橋本はしもと良りょう亮あきらくんも「星屑ほしくずのスパンコール」が大好だいすきだと言いってました。彼かれの普段ふだんのイメージからするとオールドスクールなジャニーズソングをそこまで熱あつく語かたるなんて、ちょっと意外いがいでうれしかったのでよく覚おぼえていますね。

和泉いずみ常つね寛ひろしさんによる作曲さっきょくも、ジャニーズの楽曲がっきょくの屋台骨やたいぼねを支ささえてきた馬飼野まかいの康二こうじさんによるアレンジも素晴すばらしいですが、「星屑ほしくずのスパンコール」はやはり安藤あんどう芳彦よしひこさんによるシアトリカル、演劇えんげき的てきな歌詞かし設定せっていがこの楽曲がっきょくを30年ねん以上いじょう歌うたい継つがれるクラシックに導みちびいた、と思おもいます。歌詞かしの主人公しゅじんこうは、まさに当時とうじの少年しょうねん隊たいのような女おんなの子こにとって雲くもの上うえのスーパースターのアイドル。彼かれがリムジンに乗のって全国ぜんこくのライブツアーを回まわっているという設定せっていで。今いまも昔むかしもリムジンで移動いどうするアイドルっていないと思おもうし（笑）、逆ぎゃくに目立めだつだろうとも思おもうんですけど（笑）。知しらない街まちでサングラスをしてこっそり歩あるいていると、ある女おんなの子こが彼かれの存在そんざいに気付きづくんですよ。2人ふたりは迷まよい込こんだディスコで暗くらがりに紛まぎれて一緒いっしょに踊おどるんだけど、別わかれの時間じかんが来くる。その後ご、女おんなの子こへの気持きもちを募つのらせていた主人公しゅじんこうは、リハーサルを終おえたコンサート会場かいじょうの客席きゃくせきにその女おんなの子この姿すがたを見みつけたというストーリーです。

スターとファンとの間あいだに生うまれるファンタジー

いまだにジャニーズのアイドルって、いい意味いみで通常つうじょうの事務所じむしょよりもファンとの関係かんけい性せいを隔へだてるバリアがありますよね。ネットにもほぼ登場とうじょうしないし。基本きほん、ライブ会場かいじょうでしか憧あこがれのアイドルに会あえる機会きかいがない。ただ、もしも会あえたら？というファンタジー。僕ぼくは普段ふだん、街まち中ちゅうでめちゃくちゃ人じんを見みてるんです。車くるまを運転うんてんしてる人ひととかも見みちゃうんですよね、なぜか。そうすると有名人ゆうめいじんによく遭遇そうぐうするんですよ。もっと目めを凝こらして歩あるけば、有名人ゆうめいじんが意外いがいと近ちかくを歩あるいているかもしれない。「星屑ほしくずのスパンコール」のようなシチュエーションに陥おちいる可能かのう性せいもなくはないです（笑）。

最後さいごに。この曲きょくを選えらんだもう1つの理由りゆうは、やっぱり楽曲がっきょくを音おとだけで聴きいていても完結かんけつしない部分ぶぶんがジャニーズ的てきだな、と。あくまでも「星屑ほしくずのスパンコール」は照明しょうめいのキラめくライブ会場かいじょうで客きゃくと、本来ほんらいは手てが届とどくわけもないスター、両者りょうしゃが共鳴きょうめいした瞬間しゅんかん完結かんけつする。そしてそれは儚はかなくて、同おなじメンバーがずっとそこにいるとは限かぎらないし、関係かんけい性せいも年齢ねんれいも永遠えいえんではないから響ひびいてくるんじゃないかな、と。

西寺にしてら郷ごう太ふとし（ニシデラゴウタ）

1973年ねん生うまれ、NONA REEVESのボーカリストとして活躍かつやくする一方いっぽう、他たアーティストのプロデュースや楽曲がっきょく提供ていきょうも多数たすう行おこなっている。文筆ぶんぴつ家かとしても活躍かつやくし、代表だいひょう作さくは「新あたらしい『マイケル・ジャクソン』の教科書きょうかしょ」「ウィ・アー・ザ・ワールドの呪のろい」「プリンス論ろん」「伝つたわるノートマジック」など。近年きんねんでは1980年代ねんだい音楽おんがくの伝承でんしょう者しゃとしてテレビやラジオ番組ばんぐみなどさまざまなメディアに出演しゅつえんしている。

しまおまほ（シマオマホ）

1978年ねん東京とうきょう生うまれの作家さっか、イラストレーター。多摩美術大学たまびじゅつだいがく在学ざいがく中ちゅうの1997年ねんにマンガ「女子高じょしこう生せいゴリコ」で作家さっかデビューを果はたす。以降いこう「タビリオン」「ぼんやり小町こまち」「しまおまほのひとりオリーブ調査ちょうさ隊たい」「まほちゃんの家いえ」「漫画まんが真帆まほちゃん」「ガールフレンド」といった著作ちょさくを発表はっぴょう。イベントやラジオ番組ばんぐみにも多数たすう出演しゅつえんしている。父ちちは写真しゃしん家かの島尾しまお伸しん三さん、母ははは写真しゃしん家かの潮田うしおだ登久子とくこ、祖父そふは小説しょうせつ家かの島尾しまお敏雄としお。

※記事きじ初出しょしゅつ時じより、一部いちぶ変更へんこうを表現ひょうげんしました。