中村なかむら錦之助きんのすけ、中村なかむら隼人はやととの「引窓ひきまど」に「こんなにも早はやく夢ゆめがかなうとは」と感慨かんがい　親子おやこでの巡業じゅんぎょうの思おもい出でも

「令れい和わ6年度ねんど（公社こうしゃ）全ぜん国公立こっこうりつ文化ぶんか施設しせつ協会きょうかい主催しゅさい 松竹しょうちく大だい歌舞伎かぶき」の製作せいさく発表はっぴょう記者きしゃ会見かいけんが、本日ほんじつ8月がつ7日にちに東京とうきょう都内とないで行おこなわれた。

これは、中村なかむら錦之助きんのすけ、中村なかむら隼人はやと親子おやこを中心ちゅうしんにした歌舞伎かぶきの巡業じゅんぎょう公演こうえん。公演こうえんでは、隼人はやとによる「ご挨拶あいさつ」のあと、隼人はやとが南みなみ与兵衛よへえ後ごに南方なんぽう十じゅう次じ兵衛ひょうえ、錦之助きんのすけが濡髪ぬれがみ長五郎ちょうごろうを勤つとめる「『双そう蝶々ちょうちょう曲輪くるわ日記にっき』引窓ひきまど」、隼人はやとが山蔭やまかげ右京うきょう、錦之助きんのすけが奥方おくがた玉だまの井いを担になう「新古しんこ演劇えんげき十じゅう種しゅの内うち『身み替がえ座禅ざぜん』」が上演じょうえんされる。

会見かいけんには、錦之助きんのすけ、隼人はやとらが出席しゅっせき。なお、親子おやこがそろって巡業じゅんぎょう公演こうえんに出演しゅつえんするのは、約やく10年ねんぶりのこと。錦之助きんのすけは「隼人はやとが小学生しょうがくせいのときにした巡業じゅんぎょうのことも、よく覚おぼえています。そのときはホテルの部屋へやが同おなじだったので、時間じかんがあれば『遊あそびに行いこう』と、北海道ほっかいどう公演こうえんではグライダーにも乗のりました。隼人はやとが大おおきくなったら部屋へやが別べつになりましたので、そうなると『朝あさ、隼人はやとはちゃんと起おきてくるかな、大丈夫だいじょうぶかな』と心配しんぱいになったり（笑）」と親子おやこならではのエピソードを明あかす。錦之助きんのすけの言葉ことばに、隼人はやとは少すこし照てれくさそうな表情ひょうじょうを浮うかべつつ、「僕ぼく自身じしん、巡業じゅんぎょうへの出演しゅつえんは10年ねんぶりになります。幼少ようしょうの頃ころは、やはり毎日まいにち劇場げきじょうが変かわることに驚おどろいていましたね。複雑ふくざつな作つくりの会場かいじょうもあったりして、劇場げきじょうに入はいるとまず父ちちと導線どうせん確認かくにんをしていた記憶きおくがあります」と話はなす。また「親子おやこでガッツリお芝居しばいをすることは、近年きんねんなかなかありませんでしたので、楽たのしみ。父ちちとの責任せきにん興行こうぎょうになりますので、周まわりの方々かたがたの体調たいちょうにも気きをつけて勤つとめたいですね」と真摯しんしに述のべた。

「引窓ひきまど」で、隼人はやとが南方なんぽう十じゅう次じ兵衛ひょうえを勤つとめるのは、昨年さくねん1月がつの「新春しんしゅん浅草あさくさ歌舞伎かぶき」以来いらい2度目どめで、錦之助きんのすけが濡髪ぬれがみ長五郎ちょうごろうを勤つとめるのは、昨年さくねん7月がつに国立こくりつ劇場げきじょうで行おこなわれた歌舞伎かぶき鑑賞かんしょう教室きょうしつ以来いらい、3度目どめとなる。7月公演こうえんの記者きしゃ会見かいけんで、錦之助きんのすけは「（隼人はやとが1月公演こうえんで南方なんぽう十じゅう次じ兵衛ひょうえを初役はつやくで勤つとめたことから）私わたしと隼人はやとの『引窓ひきまど』もできるのでは」と目めを輝かがやかせていた。錦之助きんのすけは「こんなにも早はやく夢ゆめがかなうとは」と笑顔えがおを見みせ、「私わたしが初はじめて濡髪ぬれがみを勤つとめたのは、2011年ねんの永楽えいらく館かんでの公演こうえんで、（片岡かたおか）愛之助あいのすけさんの南方なんぽう十じゅう次じ兵衛ひょうえでした。そのときは、播磨屋はりまやのお兄にいさん（中村なかむら吉右衛門きちえもん）に、1から手取てどり足取あしどり教おしえていただきました。今回こんかいも、お兄にいさんから教おそわったことを、1から勉強べんきょうし直なおしたい」と話はなし、役やくの難むずかしさに関かんして「濡髪ぬれがみは、『角力すもう場じょう』では貫禄かんろくが重要じゅうようですが、『引窓ひきまど』ですと心しんの葛藤かっとうを見みせないといけません。それは言葉ことばや動作どうさで表現ひょうげんできるものではなく、お腹なかで表現ひょうげんするもの。そこに難むずかしさを感かんじています」と触ふれる。隼はやぶさ人じんは、南方みなかた十次じゅうじ兵衛ひょうえについて「昨年さくねんは（片岡かたおか）仁左衛門にざえもんのおじさまに教おしえていただいて、勤つとめました。（仁左衛門にざえもんが）おっしゃっていたことは、『引窓ひきまど』は義太夫ぎだゆう狂言きょうげんなので様式ようしき的てきに捉とらえがちだが、感情かんじょうが大事だいじだ、ということです。親子おやこの情愛じょうあいや義理ぎり人情にんじょうが描えがかれていて、大好だいすきな演目えんもくですので、なじみのないお客様きゃくさまにも感動かんどうしていただけるよう、父ちちと模索もさくしてやりたい」と言葉ことばに力ちからを込こめた。

「身み替がえ座禅ざぜん」は、浮気うわき性せいな大名だいみょう・右京うきょうと、嫉妬しっと深ふかい妻つま・玉たまの井いによる、コミカルな舞踊ぶよう劇げき。錦之助きんのすけは「（中村なかむら）富十郎とみじゅうろうのお兄にいさんの右京うきょうで太郎たろう冠者かんじゃを勤つとめて以来いらい、いろいろな方ほうの右京うきょう、玉たまの井いとご一緒いっしょしてきました」と語かたり、玉たまの井いについて「私わたし自身じしん、優やさしいお父とうさんですので、どこまで怖こわくできるかわかりませんが（笑）、彼女かのじょはヤキモチ焼やきなだけの可愛かわいい奥方おくがたなんです。先輩せんぱい方かたも、みんなどこか可愛かわいらしく演えんじていらしたので、先輩せんぱい方かたを見習みならい、お客様きゃくさまに『可哀想かわいそうで、かわいいな』と思おもっていただけるように演えんじたいですね。また、隼人はやとの奥方おくがたになるわけですので、若々わかわかしくできれば（笑）」と冗談じょうだん交まじりに話はなす。右京うきょうを初役はつやくで勤つとめる隼人はやとは「大人おとなになって、初はじめて勤つとめた女方おざかたが侍女じじょの小しょう枝えだでした。仁左衛門にざえもんのおじさまの右京うきょうで、太郎たろう冠者かんじゃも勤つとめたこともありますが、『いつかは右京うきょうを』と思おもっておりました。今回こんかい、しかも親子おやこで勤つとめられることがうれしいです。父ちちも、右京うきょうは勤つとめたことがありますので、相談そうだんしながら作つくりつつ、物怖ものおじせずにぶつかっていきたい」と述のべる。

会見かいけんでは、隼人はやとによる「ご挨拶あいさつ」の話題わだいに。隼はやぶさ人じんは「各かく会館かいかんからも、この『ご挨拶あいさつ』では一体いったいどんなことをするのか、とお問とい合あわせをいただいておりますが（笑）、『ご挨拶あいさつ』をさせていただくきっかけは、『新春しんしゅん浅草あさくさ歌舞伎かぶき』です。この公演こうえんは、かつてはお客様きゃくさまにあまり来きていただけない公演こうえんだったのですが、そこで先輩せんぱい方かたが『お年玉としだまご挨拶あいさつ』という企画きかくを思おもいつきました。これは、舞台ぶたいの上演じょうえん前まえに、歌舞伎かぶき俳優はいゆうが素顔すがおで演目えんもくや浅草あさくさの観光かんこう名所めいしょ、そして他愛たあいのない話はなしをして、お客様きゃくさまに出演しゅつえん者しゃに対たいし、親近しんきん感かんを持もっていただくことを目的もくてきとしているのですが、今回こんかいはそれを踏襲とうしゅうしたく、無理むりを言いって『ご挨拶あいさつ』をさせていただくことになりました」と明あかす。「ただ、浅草あさくさ歌舞伎かぶきでの『ご挨拶あいさつ』は、その次つぎの演目えんもくに出でていない人ひとや、出番でばんまでに余裕よゆうのある人ひとが担当たんとうするものだったのですが、私わたしは『ご挨拶あいさつ』のあと、すぐに南方なんぽう十じゅう次じ兵衛ひょうえとして出でないといけません。ですので、もし間まに合あわなかったら申もうし訳わけございません（笑）」と茶目ちゃめっ気けたっぷりに微笑ほほえんだ。

公演こうえんは、10月31日にちの神奈川かながわ・藤沢ふじさわ市民しみん会館かいかん公演こうえんを皮切かわきりに、全国ぜんこくを巡業じゅんぎょうする。詳細しょうさいは、各かく劇場げきじょうの公式こうしきサイトを確認かくにんしよう。