ユーカリの森が消え、伝染病も流行。オーストラリアのコアラの窮状と、保護に奔走する人々を取材した。
文=マーク・ジェンキンス 写真=ジョエル・サートレイ
夜中の2時に、電話のベルが鳴る。現場の郊外住宅地に急行したボランティアの一行が目にしたものは、1頭の野生のコアラ。フェンスの鉄条網にひっかかり、どうにも身動きがとれなくなっていた。
コアラはオーストラリアの人気者。かつては広大なユーカリの森に約1000万頭が生息していたが、20世紀初頭の乱獲で頭数が激減。都市化のあおりで生息地を失い、犬に襲われたり、自動車にはねられたりして、次々に命を落としている。さらに近年の調べでは、クラミジアによる感染症が広がり、不妊のコアラが増えている。窮地に立つコアラを救おうと、救助に奔走したり、みなしごコアラを里親として育てたり、さまざまな形で保護に尽力する人々を取材した。
4月号に登場したフラミンゴに負けず劣らず、コアラの目もたいがい怖いものですが、やはりそこは世界で愛されている動物。ふわふわの毛に丸いフォルムといった外見は愛嬌(あいきょう)を感じさせます。こんな動物が住宅街を普通に歩いていたりすること自体驚きですが、オーストラリアの人々がコアラ激減の危機的状況をあまり知らないことも意外で、また、それが根本的な問題でもあると感じました。ただし特集内で取り上げているのは、保護活動に奮闘する人たち。コアラへの愛が伝わってきて、心があたたまりました。(編集M.N)