「ウツウツ、イライラ」から抜ぬけ出だすたった１ひとつの方法ほうほう

不安ふあんで憂ゆううつ、イライラ、頑張がんばってもなぜか空回からまわりばかり――。誰だれもが忙いそがしい日々ひびを送おくる中なかで、「生いきづらさ」や「メンタルの悩なやみ」を抱かかえている人ひとは多おおいと思おもいます。自身じしんもそんな悩なやみに長年ながねん苦くるしんできたという枡田ますだ智さとしさんは、メンタルが不安定ふあんていになる原因げんいんは「左脳さのうと右脳うのうの使つかい方かた」が関係かんけいしているとしています。

※本稿ほんこうは枡田ますだ智さとし著ちょ『瞑想めいそうメソッドで始はじめるメンタル強化きょうか法ほう　もう“左脳さのう”に振ふり回まわされない』（大和やまと出版しゅっぱん）より、一部いちぶを抜粋ばっすい編集へんしゅうしたものです。

※左脳さのう・右脳うのうの特徴とくちょうについては、ジル・ボルト・テイラー博士はかせの『奇跡きせきの脳のう』の内容ないようがベースになっています。

「思考しこう」が重視じゅうしされ、「感覚かんかく」が軽かるんじられる現代げんだい

人間にんげんは不安ふあんを感かんじた時とき、その賢かしこい頭あたまを使つかって、まだ起おきていない未来みらいの危険きけんを予測よそくしたり、起おこりうる出来事できごとにネガティブな意味いみづけをしたりします。そして、何なにかを決きめたり、行動こうどうしたりする時ときに強つよい不安ふあんを感かんじると、慎重しんちょうになり、思考しこうを強化きょうかして不安ふあんを取とり除のぞくための理由りゆうを探さがそうとします。

なぜ、そうするのか？本当ほんとうにそれでいいのか？
どんな計画けいかくを立たて、どんな段取だんどりでやるのか？
その決断けつだんは正ただしいのか？失敗しっぱいしたらどうするのか？

その一方いっぽうで、感覚かんかくは思考しこうよりも軽かるく扱あつかわれがちです。

「言葉ことばでハッキリと説明せつめいできない感覚かんかくに惑まどわされるな」
「あいまいな感覚かんかくは無視むしして、頭あたまでよく考かんがえるべきだ」

ビジネスの現場げんばでも、「様々さまざまな情報じょうほうを分析ぶんせきして成功せいこうする確かく率りつやリスクをきちんと示しめせ」などと、論理ろんり的てきに考かんがえて明確めいかくな言葉ことばで説明せつめいするように求もとめられます。

端はし的てきに言いえば、現代げんだい社会しゃかいは「思考しこう重視じゅうし」な社会しゃかいなのです。「頭あたまで考かんがえることが何なによりも大事だいじだ」と教おしえられ、言葉ことばで説明せつめいできなければ、取とるに足たらないこと、無視むししてもいいこととして扱あつかわれてしまいます。

このような体験たいけんを積つみ重かさねていくうちに、私わたしたちは自分じぶんの気持きもちや感覚かんかくを抑おさえ込こむようになり、頭あたまで考かんがえたことが重要じゅうようだからと強つよい思考しこうで予測よそくや意味いみづけを行おこない、余計よけいな不安ふあんや禁止きんし事項じこうを作つくり出だし、やがてそれらに縛しばられるようになります。

しかし、よく考かんがえてみてください。私わたしたちの人生じんせいは思考しこうだけで成なり立たっているのでしょうか。

例たとえば、皆みなさんは子こどもの頃ころ、何なにかを選えらんで買かった時とき、「なんでそれを選えらんだの？」と聞きかれて、「言葉ことばで説明せつめいできないけれど、なんとなく欲ほしいから」と答こたえたことがあると思おもいます。本来ほんらい、「好すき」「やりたい」「欲ほしい」というのは感覚かんかく的てきなものです。頭あたまで考かんがえて理由りゆうをしっかり決きめた上うえで、そうした感覚かんかくになることなどありません。

ところが、大人おとなになるとそれでは納得なっとくしてもらえません。「そんないい加減かげんなことではダメだ。もっとよく考かんがえなさい」と言いわれて、何なにをするにも理由りゆうを頭あたまで考かんがえ、言葉ことばで説明せつめいしなければならなくなります。そして、言葉ことばで説明せつめいできなければ、その気持きもちや感覚かんかくは不要ふようなものとして切きり捨すてるようになってしまうのです。

はたして、そんな状態じょうたいで私わたしたちは幸しあわせに生いきることができるのでしょうか。

この状態じょうたいから抜ぬけ出だすには、過剰かじょうに働はたらく「思考しこう」を静しずめて、「感覚かんかく」に意識いしきを向むけていく必要ひつようがあるのです。

ウツウツ、イライラが生しょうじる仕組しくみ

ご存ぞんじの通とおり、思考しこうを司つかさどるのは左脳さのうであり、感覚かんかくを司つかさどるのは右脳うのうです。

左脳さのうの特徴とくちょうは、「自分じぶんと自分じぶん以外いがい」「A、B、C」というように、境界きょうかいを切きり分わけて物事ものごとを処理しょりすること。もう一ひとつは時間じかんの認識にんしき、つまり、出来事できごとに時間じかんを付つけることで時とき系列けいれつに並ならべて処理しょりするという働はたらきです。そして、言葉ことばを理解りかいして処理しょりすることも左脳さのうの大切たいせつな役割やくわりです。境界きょうかい線せん、時間じかん、言葉ことばなどを組くみ合あわせて論理ろんり的てき思考しこうを成なりたせているのが、左脳さのうなのです。

一方いっぽう、右脳うのうは物事ものごとを細こまかく分わけず、全体ぜんたいとして処理しょりすることが得意とくいです。五感ごかんを使つかいながら、雰囲気ふんいきや空気くうき感かんといった言葉ことばにできない感覚かんかくを感かんじ取とります。

例たとえば、景色けしきを眺ながめて美うつくしさを感かんじたり、音楽おんがくを聞きいて感動かんどうしたり、お気きに入いりの場所ばしょでホッと安やすらいだり。そうした美うつくしさや感動かんどう、安やすらぎを言葉ことばで論理ろんり的てきに説明せつめいすることはできませんが、右脳うのうは確たしかにそういった感覚かんかくを感かんじています。

この思考しこうと感覚かんかくは、「シーソー」のような関係かんけいになっています。双方そうほう同時どうじに優位ゆういにすることはできず、一方いっぽうが増ふえれば、もう一方いっぽうは減へる。だから、思考しこうを減へらしたければ、感覚かんかくを増ふやすことが必要ひつようです。思考しこうが減へれば、安やすらかさや幸福こうふく感かんを自然しぜんと感かんじられるようになります。人間にんげんの脳のうはそうできているのです。

実じつは、怒いかりや悲かなしみ、不安ふあんといったネガティブな感情かんじょうも、左脳さのうの思考しこうがもとになっている場合ばあいが多おおいのです。

左脳さのうの働はたらきが強つよいと、人々ひとびとを区別くべつ・分離ぶんりする傾向けいこうが強つよまり、次第しだいに自分じぶんを周囲しゅういから切きり離はなし、孤立こりつさせていくようになります。また、過去かこを振ふり返かえり、未来みらいを予想よそうするのも左脳さのうの働はたらきです。過すぎたことを考かんがえ続つづけてクヨクヨする。未来みらいのことを予想よそうして心配しんぱいし、不安ふあんになる。「自分じぶんは他人たにんにこう思おもわれている」などと勝手かってに想像そうぞうして、悲かなしみや怒いかりがわいてくる。

物事ものごとが正ただしいか間違まちがっているか、成功せいこうか失敗しっぱいかできっちり判断はんだんしようとするのも左脳さのうの働はたらきです。そして、失敗しっぱいのないようにコントロールしようするほど、不安ふあんに駆かられて苦くるしくなっていくのです。

このように、私わたしたちの生活せいかつは左脳さのうを主役しゅやくとして、常つねに忙いそがしく考かんがえ続つづけています。一方いっぽうの右脳うのうはあまり目立めだたず、どちらかといえば裏方うらかたです。言葉ことばでは表現ひょうげんできないけれど、日々ひびの生活せいかつで確たしかに感かんじている心地ここちよさや安やすらかさ、美うつくしさなどの感覚かんかくは、思考しこうが強つよくなるほど切きり捨すてられていきます。こうなると、生いきることがとても味気あじけなく、つまらないものになってしまうのです。

右脳うのう優位ゆういがもたらしてくれるメリットとは？

では、右脳うのう（感覚かんかく）が優位ゆういになると、日々ひびの生活せいかつがどのように変かわっていくのでしょうか。

〈メリット１：ストレスがなくなる〉

過剰かじょうな思考しこうが静しずまっていくと、ストレスが減へり、楽らくに生いきられるようになります。単純たんじゅん計算けいさんで、思考しこうが半分はんぶんになれば、ストレスも半分はんぶんになります。
また、右脳うのう優位ゆういになると、意識いしきは過去かこや未来みらいではなく、「今こんココ」に集中しゅうちゅうするようになります。過去かこを悔くやんだり、未来みらいを想像そうぞうして不安ふあんになったりすることが減へれば、当然とうぜんストレスもなくなっていきます。

〈メリット２：集中しゅうちゅう力りょくアップ〉

不安ふあんに駆かられて思考しこうが強つよくなっている時ときは、目めの前まえのことに取とり組くんでいても、すぐ別べつのことに意識いしきが逸はぐれてしまいます。集中しゅうちゅう力りょくも注意ちゅうい力りょくも散漫さんまんになって、まさに上うわの空そら、心こころここにあらずといった状態じょうたいです。
右脳うのう優位ゆういになると、意識いしきが「今こんココ」に定着ていちゃくするようになるので、集中しゅうちゅう力りょくが増ましていきます。そうなれば、仕事しごとや勉強べんきょうはより効率こうりつよく進すすみ、成果せいかを上あげられるようになります。

〈メリット３：直感ちょっかん力りょくアップ〉

頭あたまの中なかが思考しこうでいっぱいになっていると、直感ちょっかんやヒラメキが起おこる余白よはく（スペース）がありません。思考しこうを静しずめて、感覚かんかくを優位ゆういにすることで頭あたまの中なかにスペースを作つくり出だせると、そのスペースで直感ちょっかんやヒラメキが起おこってきます。
例たとえば、机つくえの前まえで頭あたまを抱かかえていても一向いっこうにアイデアが浮うかばなかったけれど、気晴きばらしに散歩さんぽをしてみたら、よいアイデアがひらめいた。あるいは、湯船ゆぶねの中なかでぼんやりしていたら、抱かかえていた悩なやみの解決かいけつ策さくが見みつかった。そんな経験けいけんをしたことがある人ひとは多おおいのではないでしょうか。こうしたことも、右脳うのう優位ゆういになって頭あたまの中なかにスペースができたために起おこることなのです。

〈メリット４：感性かんせいが磨みがかれる〉

右脳うのう優位ゆういになると、景色けしきがいつもより美うつくしく見みえたり、芸術げいじゅつ作品さくひんがよりすばらしく見みえたり、食事しょくじがより美味おいしく感かんじられたりと、様々さまざまなことが普段ふだんよりも深ふかく、豊ゆたかに感かんじられるようになります。
左脳さのう過剰かじょうだと、景色けしきを見みているようであまり見みていない状態じょうたいになります。意識いしきの多おおくが目めの前まえにある景色けしきとは関係かんけいのない思考しこうに使つかわれてしまうからです。右脳うのう優位ゆういになると、思考しこうに邪魔じゃまされず、目めの前まえの景色けしきに意識いしきのすべてを向むけることができます。すると、景色けしきがより鮮明せんめいに見みえ、深ふかく感かんじられ、十分じゅうぶんに臨場りんじょう感かんや美うつくしさを感かんじられるのです。