(Translated by https://www.hiragana.jp/)
輪島市に到着し災害救助犬ココが捜索へ 小雨がちらつき、夕闇が迫る | 犬・猫との幸せな暮らしのためのペット情報サイト「sippo」
 2021年7月9日、熱海市伊豆山土石流災害で流された家屋の中を捜索したココ。泥水の中、胸までつかって懸命に捜索した。人間は泥水に体が埋まってしまい、身動きが取れないほどだった
2021ねん7がつ9にち熱海あたみ伊豆山いずさん土石流どせきりゅう災害さいがいながされた家屋かおくなか捜索そうさくしたココ。泥水どろみずなかむねまでつかって懸命けんめい捜索そうさくした。人間にんげん泥水どろみずからだまってしまい、身動みうごきがれないほどだった

輪島わじま到着とうちゃく災害さいがい救助きゅうじょけんココが捜索そうさくへ 小雨こさめがちらつき、夕闇ゆうやみせま

 ジャーナリストで災害さいがい救助きゅうじょけんのハンドラーとしても活動かつどうするかわばたけだいさんが、愛犬あいけんであり信頼しんらいせる災害さいがい救助きゅうじょけんの「ココ」(ボーダーコリー/メス11さい)との生活せいかつめられた、よろこびや挑戦ちょうせんつたえていきます。

末尾まつび写真しゃしん特集とくしゅうがあります)

ココはしっかり捜索そうさくできるだろうか

 NPO法人ほうじん日本にっぽん救助きゅうじょけん協会きょうかい能登半島のとはんとう出動しゅつどうチームは1がつにち16まえ石川いしかわけん輪島わじまはいった。道路どうろ損傷そんしょう箇所かしょおおくなり、倒壊とうかいした家屋かおく一段いちだんえた。

 1かいしつぶされたいえは、地面じめん屋根やねがあり、2かいがそのまま1かいになっている。能登半島のとはんとう地震じしん元日がんじつの16ぎにきたが、普通ふつうならちょうどくつろいでいる時間じかんだ。倒壊とうかい家屋かおくるたびになかにいたひと無事ぶじだったろうかとおもう。家屋かおく完全かんぜん倒壊とうかいしていなくても、ななめにかたむいていたり、屋根やね波打なみうっていたりするいえもあった。

輪島わじま市内しないはいってくると倒壊とうかいした家屋かおく目立めだはじめた。1かいはぺしゃんこで、2かい波打なみうっている。余震よしんつづいており、とてもあぶなくてなかにはれないだろう

 余震よしんつづなか、いつたおれてもおかしくないいえがあちこちにある。かたむいていないいえでも、おそらくなか家具かぐたおれ、食器しょっきほんなどが散乱さんらんしているにちがいない。

 そんなぜん半壊はんかいした家屋かおくをいくつもとおぎた1610ふん目的もくてき輪島わじま消防署しょうぼうしょ門前もんぜん分署ぶんしょいた。ひろ駐車ちゅうしゃじょうには、愛知あいち県内けんない各地かくちからけつけた緊急きんきゅう消防しょうぼう援助えんじょたい救急きゅうきゅうしゃ消防車しょうぼうしゃところせましとならんでいる。わたしたちのくるま分署ぶんしょない建物たてものうら駐車ちゅうしゃした。

 ここにくまで15あいだほど、わたしくるまをずっと運転うんてんしてきたが、まったつかれをかんじない。いやかんじないというより、被災ひさい惨状さんじょう圧倒あっとうされて動揺どうようし、緊張きんちょうしていた。そのうえ災害さいがい救助きゅうじょけん出動しゅつどう要請ようせいいまにもあるかもしれないと身構みがまえた。

 なんとか行方ゆくえ不明ふめいしゃよう救助きゅうじょしゃ)をつけたいというおもいと、たしてココでどれほど捜索そうさくできるだろうかという心配しんぱいとがじっていた。

おもされるのは伊豆山いずさん土石流どせきりゅう

 名古屋なごや消防しょうぼう本部ほんぶ到着とうちゃく報告ほうこくった仲間なかまから、「出動しゅつどう要請ようせいがあったので、いまから捜索そうさく現場げんばかいます」とつたえられた。

 やはり、ことは切迫せっぱくしていた。わたしたちのチームはよるてっして千葉ちば東京とうきょう神奈川かながわからけつけたものの、すでにはつわざわいから48あいだがたっていた。生存せいぞんりつ低下ていかするとわれる72あいだまであと24あいだしかない。

 1624ふん、ココにおしっこをさせる余裕よゆうもなく、消防車しょうぼうしゃ先導せんどうですぐに現場げんばかった。そういえば、2021ねんがつきた熱海あたみ市内しない土石流どせきりゅう災害さいがい出動しゅつどうしたときも消防しょうぼうくるま先導せんどうされた。

 熱海あたみおおきなホテルの駐車ちゅうしゃじょう全国ぜんこく各地かくち救助きゅうじょけん団体だんたい集結しゅうけつした。いくつかのグループにかれたのちわたしたち日本にっぽん救助きゅうじょけん協会きょうかい熱海あたみ出動しゅつどうチームは消防しょうぼう関係かんけい車両しゃりょうみちびかれて、熱海あたみ伊豆山いずさん土砂崩どしゃくずれがきた東側ひがしがわ現場げんばかった。

 片側かたがわいち車線しゃせん急坂きゅうざかのぼると坂道さかみち沿いに東京とうきょう消防庁しょうぼうちょう警察けいさつ自衛隊じえいたいくるまのきつらねるようにうえほうまで駐車ちゅうしゃしていた。うえからりてくるくるまとは時折ときおりいたスペースですれちがった。現場げんばちかくの民家みんか駐車ちゅうしゃじょうめ、そこから100mほどあるいてがったところに災害さいがい現場げんばひろがっていた。いえながされて土砂どしゃうずもれ、2かいだけがている。みちも、樹木じゅもくも、住宅じゅうたくなにもかもが土石流どせきりゅうによってながされていた。いきをのむその光景こうけいにただただ圧倒あっとうされた……。

熱海あたみ伊豆山いずさん土石流どせきりゅうながされた家屋かおく周辺しゅうへん捜索そうさくする熱海あたみ出動しゅつどうチーム。とおくに捜索そうさくしている自衛隊じえいたいえる

最初さいしょにココが捜索そうさくうごきや状態じょうたい確認かくにん

 輪島わじま門前もんぜまちなか消防車しょうぼうしゃ先導せんどうされて、ゆっくりしたスピードではしる。時折ときおりひびれた道路どうろくわす。おおきい亀裂きれつのときは反対はんたい車線しゃせんまわり、ちいさいときはそのうええた。とおりの両側りょうがわにはいえならび、郵便ゆうびんきょくがあるなど、集落しゅうらくのメインストリートのようだ。

 道路どうろわき電柱でんちゅうかたむき、がった電線でんせんには注意ちゅうい喚起かんきするためだろう、黄色きいろいテープがられていた。倒壊とうかい家屋かおくみぎひだり散見さんけんされ、その惨状さんじょう輪島わじまはいるまででもっともはげしかった。そんなとおりに捜索そうさく現場げんばはあった。門前もんぜん分署ぶんしょからわずか5ふんほどのところだ。

 それにしてもすさまじい倒壊とうかい家屋かおくだ。1かいつぶされて屋根やねしかない。そこにかたむいた2かいっかっている。屋根やねには四角しかくい50センチ四方しほうあなふたつほどいていた。消防しょうぼうたいがここからはいって捜索そうさくしたという。1かいにあった居間いまふつあいだうえらしい。

 夕闇ゆうやみせまなかくるまからりるとヘルメットをかぶり、手袋てぶくろをはめ、ヘッドライトを点灯てんとうさせた。

 ココはすこしキョトンとした表情ひょうじょうでケージのなかからこちらをている。ハンドラーの緊張きんちょうした雰囲気ふんいきつたわらなければいいのだが。いつもとおり、訓練くんれんどおりに捜索そうさくができることにしたことはない。

 自分じぶん身支度みじたくわるとココをケージからしてリードをつけた。地面じめんりたココはぜんあしをぐっとばして背伸せのびをする。はじめての場所ばしょ捜索そうさくする場合ばあい、いつもならその場所ばしょらすためにゆっくりと周囲しゅういあるいておしっこなどをさせるのだが、今日きょうはその時間じかんがない。刻々こくこくせまよるやみとのたたかいだからだ。

捜索そうさく対象たいしょう家屋かおく周囲しゅういある救助きゅうじょけんココとハンドラーのわたし小雨こさめがちらつき、夕闇ゆうやみせま

 隊長たいちょうから「最初さいしょにココから捜索そうさくさせてください」とわれた。今回こんかい出動しゅつどうしたTEAM7の救助きゅうじょけん3とうなかでは、現場げんば出動しゅつどうした経験けいけんがあり、最近さいきん捜索そうさく訓練くんれんでも調子ちょうしかったからだろう。

 どの場所ばしょから捜索そうさくはじめるか、倒壊とうかい家屋かおく東側ひがしがわ北側きたがわあるきながらココのうごきや状態じょうたい確認かくにんする。10メートルぐらいの距離きょりひとめられていたなら、風向かざむきによっては反応はんのうする。ゆっくりとあるいてみたが、おしっこをしないところ以外いがいはいつもとおりで、これといったうごきはしめさない。

 チームいん空中くうちゅうこなをまいた。しろまくったこなは、ひがしから西にしゆるやかにながれた。

 災害さいがい救助きゅうじょけんは、空気くうきちゅう浮遊ふゆうするストレスしゅうけてよう救助きゅうじょしゃさがす。ストレスしゅうとは、められたひとなどがストレスをかんじて体臭たいしゅうのことだ。そのため、捜索そうさくエリアの風下かざしもからすのが鉄則てっそくだ。

 災害さいがい救助きゅうじょけん捜索そうさくちゅうはなたかげるときがある。こうはなという。それはストレスしゅうぎつけるためのしぐさだ。ココはたしてこうはなをするだろうか――。

災害さいがい救助きゅうじょけん認定にんてい審査しんさかい服従ふくじゅう試験しけんは10項目こうもくある。そのひとつ、「水平すいへいはしごわたり」。途中とちゅうあしはずしてしまったココ。いままでそんなことはなかったのに。やはりいがしのっているのだろうか

次回じかいは5月15にち公開こうかい予定よていです)

まえかい災害さいがい救助きゅうじょけん出動しゅつどう「これが最後さいごであってほしい」とねがう 眼前がんぜん光景こうけい気持きもちがらいだ

河畠大四
フリージャーナリスト、編集へんしゅうしゃ災害さいがい救助きゅうじょけんハンドラー、日本にっぽん救助きゅうじょけん協会きょうかい 救助きゅうじょいぬふく部長ぶちょう。1984ねん小学館しょうがくかん入社にゅうしゃ、ビッグコミックで手塚てづか治虫おさむ担当たんとうほか。1989ねん朝日新聞社あさひしんぶんしゃ入社にゅうしゃ週刊しゅうかん朝日あさひ経済けいざいなどで記者きしゃ編集へんしゅうしゃつとめる。2020ねん早期そうき退職たいしょくして、テントと寝袋ねぶくろんで日本にっぽん縦断じゅうだん自転車じてんしゃひとりたびる。自転車じてんしゃたび救助きゅうじょけん育成いくせい中心ちゅうしんにX(@e37TQUBRKJcf49z)「ココ&バイク」で発信はっしんちゅう

sippoのおすすめ企画きかく

sippoの投稿企画リニューアル! あなたとペットのストーリー教えてください

「sippoストーリー」は、みなさまの投稿とうこうでつくるコーナーです。ぬしさんだけがっている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真しゃしんとともにご紹介しょうかいします!

この連載れんさいについて
災害さいがい救助きゅうじょけん、ココと
ジャーナリストで災害さいがい救助きゅうじょけんのハンドラーとしても活動かつどうするかわばたけだいさんが、愛犬あいけんであり信頼しんらいせる災害さいがい救助きゅうじょけんのココとの生活せいかつめられたよろこびや挑戦ちょうせんつたえていきます。
Follow Us!
編集へんしゅうのイチオシ記事きじを、毎週まいしゅう金曜日きんようび
LINE公式こうしきアカウントとメルマガでおとどけします。


動物どうぶつ病院びょういん検索けんさく

全国ぜんこくやく9300ある動物どうぶつ病院びょういん基礎きそデータにくわえ、sippoの独自どくじ調査ちょうさ回答かいとうがあったやく1400病院びょういん診療しんりょう実績じっせき料金りょうきんなど詳細しょうさいなデータを無料むりょう検索けんさく閲覧えつらんできます。

編集へんしゅう PICK UP

おすすめ連載れんさい

なやんでまなんだいぬのこと
先代せんだいけん富士ふじまる、いまは保護ほごけん大吉だいきち福助ふくすけらす穴澤あなざわけんさんが、いぬとのらしで実際じっさい経験けいけんしたなやみからまなんできた“教訓きょうくん”をおとどけしていきます。