｢団体だんたい客きゃく｣よりも｢一いち人にん､食事しょくじ一いち泊はく｣が儲もうかる理由りゆう 旅館りょかんと旅行りょこう会社かいしゃが繰くり広ひろげる薄利はくりの争奪そうだつ戦せん

（イラスト：北沢きたざわ夕ゆう芸げい）

地方ちほうで取材しゅざいをしていて、夜よるが更ふけてしまうことがある。

そうすると、近ちかくで宿やどを探さがすことになる。

ある時とき、レンタカーのナビで宿やどを検索けんさくしたが、近ちかくに宿泊しゅくはく施設しせつが見当みあたらない。ようやく1軒けんの旅館りょかんを見みつけた。

宿やどの玄関げんかん前まえにクルマを停とま（と）める。

中なかをのぞくと、その日ひは会社かいしゃの宴会えんかいで貸かし切きりだった。

あきらめて引ひき返かえそうとしていると、玄関げんかんの外そとに女将おかみ（おかみ）が出でてきた。

「1泊はくですか？」

「はい」

女将おかみはちょっと考かんがえると、こう言いった。

「食事しょくじ付つき5000円えんでどうですか」

「え、いいんですか」

女将おかみが旅館りょかんの方ほうを振ふり返かえる。

「ただ、宴会えんかいをやっているので、かなりうるさいんですが」

「あ、それは気きにならないんで」

そう言いうと、部屋へやに案内あんないされた。一番いちばん奥おくの部屋へやに通とおされるが、宴会えんかい場じょうから大だい音量おんりょうのカラオケが聞きこえてくる。だが、それを除のぞけば快適かいてきである（そこ、問題もんだいか）。

食事しょくじが運はこばれてくる。刺身さしみ盛もり合あわせに天てんぷら、しゃぶしゃぶ、ステーキ……。

これで1泊はく5000円えんか。めっちゃいいじゃん。