伊藤忠いとうちゅうが｢ビッグモーター買収ばいしゅう｣に動うごいた舞台裏ぶたいうら ライバル商社しょうしゃが尻しり込こむ中なかで強気つよきの｢丸まるごと買かい｣

ビッグモーターのスポンサー候補こうほにはオリックスやテレビショッピング大手おおてのQVC、中古ちゅうこ車しゃ販売はんばい店てん「ガリバー」を運営うんえいするIDOMといった企業きぎょうも浮上ふじょうした（撮影さつえい：風間かざま仁一郎にいちろう）

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「伊藤忠いとうちゅうはとりあえず手てを挙あげて、倒産とうさん後ごに何なにかしらの資産しさんを買かい取とろうとしているだけではないか。本気ほんきで再生さいせいを考かんがえているなら狂気きょうきの沙汰さただ」

伊藤忠商事いとうちゅうしょうじが中古ちゅうこ車しゃ販売はんばい大手おおてビッグモーターの買収ばいしゅうに向むけて資産しさん査定さていを開始かいしすると発表はっぴょうした直後ちょくごの2023年ねん11月。ある金融きんゆう関係かんけい者しゃはそうい放いはなった。

「狂気きょうきの沙汰さた」と考かんがえたのも仕方しかたがない。買収ばいしゅうの打診だしんを受うけたある商社しょうしゃ幹部かんぶは、「いくつかの店舗てんぽは魅力みりょく的てきだったが丸まるごと買収ばいしゅうするには費用ひよう対たい効果こうかがまるで見合みあわなかった」と明あかす。

ビッグモーターは兼重かねしげ宏行ひろゆき氏し（2023年ねん7月がつに社長しゃちょう辞任じにん）が山口やまぐち県けんで創業そうぎょう、約やく50年ねんかけて業界ぎょうかい大手おおてへと育そだて上あげた。だが、利益りえき拡大かくだいのためには修理しゅうり費用ひようの水増みずましや自動車じどうしゃ保険ほけん金きんの不正ふせい請求せいきゅうなどをいとわない企業きぎょう体質たいしつが白日はくじつの下したにさらされた。

岡おか藤ふじ会長かいちょうは「やってみろ」と一言いちげん

顧客こきゃく離ばなれは深刻しんこくだった。2023年ねん9月がつには月次げつじの売うり上あげが例年れいねんの10分ぶんの1ほどに縮小しゅくしょうしていた。

2023年ねん9月がつ期き決算けっさんの決算けっさんにも影かげを落おとした。売上うりあげ高だかは5398億おく円えんと前期ぜんき比ひで増収ぞうしゅうとなったが、営業えいぎょう利益りえきは73億おく円えんと前期ぜんき比ひ7割わり減げんに。最終さいしゅう損益そんえきは10月がつ以降いこうの損失そんしつ見込みこみも計上けいじょうしたことで708億おく円えんの大だい赤字あかじとなった。前期ぜんきは184億おく円えんの黒字くろじだった。

再生さいせいの成否せいひは信頼しんらい回復かいふくとその先さきの黒字くろじ転換てんかんにかかっている。だが、看板かんばんの掛かけ替がえだけでは信頼しんらいの回復かいふくはままならない。

実際じっさい、伊藤忠商事いとうちゅうしょうじでは自動車じどうしゃ分野ぶんやを管轄かんかつする機械きかいカンパニーを中心ちゅうしんに、買収ばいしゅうを躊躇ちゅうちょする声こえも上あがっていたという。多おおくが臆おくする中なか、強烈きょうれつな剛腕ごうわんぶりで案件あんけんをまとめあげたのが、住じゅう生活せいかつカンパニー出身しゅっしんで伊藤忠いとうちゅうエネクスの社長しゃちょうを務つとめる吉田よしだ朋とも史し氏し（67）だ。

「苦境くきょうに陥おちいったビッグモーターを見みて、まずは“適当てきとうに”行いくぞと決きめた。それでも本社ほんしゃとの葛藤かっとうは何一なにひとつなかった。岡おか藤ふじ（正広まさひろ・伊藤忠商事いとうちゅうしょうじ）会長かいちょうも『まずはやってみろ』と」