2017
年5
月21
日,
京都府のみやこめっせで
開催されたインディーゲームイベント「A 5th of BitSummit」では,
「『鈴木爆発』『ストライダー飛竜』通好みのゲームはどのようにつくられるのか?」という
講演が
行われた。
「ストライダー飛竜」を
手がけた
四井浩一氏と,
四井氏と
共に
「鈴木爆発」を
作った,シシララの
安藤武博氏が
登壇。PlayStation
初期の
熱気や,なぜ
2人の
作るゲームは
通好みになってしまうのか? といったテーマが
語られた。
「ストライダー飛竜」を手がけた四井浩一氏(左)。そして四井氏と共に「鈴木爆発」を作ったシシララの安藤武博氏(右)
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四井氏と
安藤氏は,
通好みのゲームを
作るクリエイターだ。ここでいう「
通好み」とは,
個性的かつ
斬新で,
一部に
熱狂的なファンを
擁するゲームのことである。
四井氏の
代表作は,
言うまでもなく
伝説のアクションゲーム「ストライダー
飛竜」だ。そんな
四井氏と
共に,
美女が
爆弾を
解体する「
鈴木爆発」を
制作したのが
安藤氏である。
安藤氏はこのほかにも,ヤンキーライフを
疑似体験できる「
疾走、ヤンキー魂。」や,iPodの
音楽ファイルからキャラクターが
生まれるRPG「
ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律」といった
個性的な
作品を
世に
送り
出している。いずれも
強いインパクトを
持ち,
続編制作を
望む
声も
多い
作品といえるだろう。
このように,
作るゲームがなぜか
通好みになってしまう
両氏だが,その
理由を
探っていくのが,
今回のトークショーだ。
四井氏の代表作「ストライダー飛竜」
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安藤氏の代表作「ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律」「ケイオスリングス」
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四井氏と安藤氏が手がけた「鈴木爆発」「MOON DIVER」
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両氏が
手がけた「
鈴木爆発」は,
主人公の
美女・
鈴木さんが「みかん」や「
踏みきり」「
月」など,ありえない
爆弾を
解体していく。モデルの
緒沢 凛さんが
鈴木さんを
演じたほか,
実写取り
込みを
積極的に
使ったことにより,
結果として
極めてシュールな
雰囲気を
醸し
出すことになった。
安藤氏曰く「
今となっては“バカゲー”と
言われる
通好みな
作品になっている」
作品だが,
当時は
「本気で100万本売るつもり」で開発したのだという。
「
鈴木爆発」がこうした
作風になった
理由としては,ソニーがPlayStationでゲーム
業界に
参入して
間もない
頃の
時代性が
大きく
影響しているという。
安藤氏はこの
頃を「ゲームが
映画や
音楽のようなポップカルチャーになるのではないかということで,SCEが
積極的にプレイヤーの
裾野を
広げようとしていた
時期」と
表現。こうした
空気を
受けてか,
大手メーカーも
大ヒットを
狙わずに
自由にゲームを
作ることができ,その
雰囲気はインディーゲームイベントであるBitSummitと
似たものがあった……と
述懐する。
当時のエニックスにもユニークな
作品を
奨励する
空気があり,
安藤氏も
常々「ほかと
同じようなものを
作るな」と
言われていたそうだ。
時代性とSCEの
取り
組みが
功を
奏し,
音楽をゲームにした
「パラッパラッパー」や,アナログスティックで
料理を
作る
「俺の料理」など
個性的な
作品が
大ヒットを
記録。これを
見た
安藤氏は
「とにかくユニークなゲームを作れば100万本売れるんじゃないか」と
考え,プレイヤーの
裾野を
広げ,
普段ゲームを
遊ばない
人にも
作品を
届けるべく,モデルを
起用した
実写取り
込みのグラフィックスを
選んだのだという。
また,
四井氏は
「既に固まったシステムを作るのはつまらない」ということで,
新しいジャンルを
作るつもりで
制作を
進めていき,ついにはデータセーブにすらゲーム
性を
盛り
込んだというのだから
徹底している。
結果として
通好みな
作品となった「
鈴木爆発」だが,
「作り手は通好みになるよう狙って作るわけではなく,皆さんに楽しんでもらおうと考えている」と
安藤氏は
語る。
氏は「
今から
考えると,
絶対に100
万本売れるものではない」
企画であると
語っていたが,
制作費を
回収できる
程度には
売れたうえ,
現在でもファンの
心に
残る
作品となったのだから,これはある
種の
成功と
言えるのではないか……と
筆者には
思える。
こうして
今までないゲームを
作るべく
努力を
重ねた
四井氏と
安藤氏だが,
中には
開発が
中止になってしまったものもあるという。ここで
両氏はPlayStation 2
用の
未発売レースゲーム
「マッドスティック(MAD STIX)」の
資料を
初公開した。
PS2用の未発売レースゲーム「マッドスティック(MAD STIX)」
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「ハンドル,アクセル,ブレーキで
操作“しない”レースゲームを
作ってみよう」という
着想から,「
右のアナログスティックを
回せば
回すほどカーアクションが
危険になっていき,
逆に
左のアナログスティックを
回すと
走りが
安全になっていく」という
独特の
操作系を
考案。
左右のスティックを
適宜回しつつ,
事故を
起こさないギリギリのところで
見応えのあるカーアクションを
行う「チキンレースのような」(
安藤氏)
内容になる
予定だったそうだ。
このシステムの
利点は,カメラを
自由な
位置におけることにあると
安藤氏は
語る。
通常のレースゲームだと,ハンドル,アクセル,ブレーキで
操作するため,カメラを
運転席や
車体後方に
配さなければならない。しかし,
本作の
場合はそうした
制限がないため,
映画の
様なカメラワークが
可能だったそうだ。
想像するに,レースゲームのリプレイのような
迫力ある
画面だが,
車は
自分で
操作できるというシステムのようだ。
「
発売されていたらやはり
通好みなゲームになっていたかも
知れないが,
当時は
自動車のゲームに
革命を
起こそうとして
一生懸命頑張っていた」と,
安藤氏は
振り
返る。このように
制作中止になるケースも
珍しくなかったそうで,ほかにも「セクシーな
女性になって
寄ってくる
蚊を
叩く」ゲームなどは
試作までされていたとのこと。お
蔵入りとなってしまったのはもったいないような
気がしてしまう。
最後に
安藤氏は「
作り
手の“ヒットしてほしい,たくさんの
人に
楽しんでほしい”という
気持ちが,どこかボタンを
掛け
違えたことによって,
通好みのゲームは
生まれる」と
結論づけ,
最後に「また
四井さんと
一緒に,
次は
通好みにならない,たくさんダウンロードしてもらえるゲームを
作ってBitSummitに
参戦したい」と
語って
講演を
締めくくった。