「同志をいじめたらこんな目に遭うぞというのをやんなきゃだめ。力を示さなきゃ!」
自民党の二階俊博元幹事長が軽井沢で開かれた二階派の研究会でこう吠えたのは、9月20日のことだった。二階派中堅議員も「安倍さんが元気だったら岸田もこれほど露骨に二階派いじめはしなかった」と怒るが、どんないじめがあったのか。この議員が続ける。
「今回の内閣改造に先立ち二階派は、事前に閣僚2枠と党四役入りも求めていた。ところが官邸からのその回答は入閣枠1のみ。二階さんも『舐めるな。それならゼロで結構』と激怒したといいます。それで官邸も慌てたようで、最終的に小泉龍司法相と自見英子地方創生担当相の2枠に落ち着いた。ただ、自見氏は女性重視の首相パフォーマンスに利用された格好で、本来二階派が望む名簿とは異なっていた」
コケにされたのは大臣枠だけではない。副大臣も従来の2から1に、政務官も5から3に減らされた。二階派といえば安倍晋三元総理、菅義偉政権時代は総裁選前に「よし二階派は安倍総裁で行く」「菅氏を推す」といち早く手をあげ党内の大きな流れを作り政権づくりに貢献し、そのために二階氏は5年にわたり幹事長の椅子に座り続けてきた。派閥入会希望も殺到。最大時には48人と膨れあがった。
ところが、岸田氏が21年に総裁選出馬の際、党改革案として党役員任期を「1期1年、連続3期まで」と提唱し、二階氏の幹事長続投にストップをかける。
「岸田氏が総裁選で勝つと二階派は逆風にさらされた。加えてトップの二階氏が84歳の高齢となることや後継者が曖昧などの背景もあって、厳しい派閥運営を迫られた。逆風を察した議員が一人抜け二人抜け、派の所属議員は現在41人にまで減ってしまった。そして今回の改造での冷遇。派閥幹部らの間では来年の総裁選で反岸田で新内閣を作り、二階派のパワーを見せつける必要があるとの論が沸騰したわけです」(前出・中堅議員)
自民党長老もこう言う。
「岸田も二階派内の不穏情報をキャッチしたようだ。もしこの流れがうねりとなれば岸田再選は危うい。岸田は二階派の反乱を抑えたい思惑で党の金庫番である経理局長に二階の最側近の林幹雄元幹事長代理を充てることを決めた。それでも二階派内では、岸田に対する怒りが静まっていないようだ」
二階派内では今回の岸田改造内閣を裏で差配した麻生副総裁に対する反発も強まっているという。
(田村建光)