「勝率しょうりつ１％」からの大だい逆転ぎゃくてん劇げき！藤井ふじい聡さとし太たい七なな冠かんには珍めずらしい「千日手せんにちて」で渡辺わたなべ明あきらが苦悶くもんの「ぐは」

　７月がつ６日にちと７日にちの両日りょうじつ、名古屋なごや市しの「徳川とくがわ園えん」で行おこなわれた将棋しょうぎの「伊藤園いとうえんお～いお茶ちゃ杯はい第だい65期き王位おうい戦せん７番ばん勝負しょうぶ」第だい１局きょくで、藤井ふじい聡さとし太たい七なな冠かんにとっては２日にち制せい７番ばん勝負しょうぶでは初はじめての椿事ちんじが起おきた。それが「千日手せんにちて」成立せいりつだ。

　千日手せんにちてとは両りょう対局たいきょく者しゃが不利ふりに追おい込こまれるのを避さけるため、同おなじ手順てじゅんを繰くり返かえして、対局たいきょくが行いき詰づまること。同どう一いち局面きょくめんが４回かい現あらわれると成立せいりつし、その勝負しょうぶはなかったことに。先手せんて後手ごてを入いれ替かえて、対局たいきょくのやり直なおしとなる。

　藤井ふじい七なな冠かんの千日手せんにちては、2022年ねん６月がつの「第だい93期きヒューリック杯はい棋聖きせい戦せん５番ばん勝負しょうぶ」第だい１局きょくの永瀬ながせ拓たく矢や九きゅう段だん戦せん以来いらい、２年ねんぶり２回かい目め。軍曹ぐんそうと称しょうされ、藤井ふじい七なな冠かんの研究けんきゅう仲間なかまでもある永瀬ながせ九きゅう段だんは過去かこのインタビューで、盤上ばんじょうに自みずから仕掛しかけたワナに誘導ゆうどうするまで同どう一いち手てを取とり続つづける、と語かたったこともあるトリッキーな戦法せんぽうが持もち味あじだ。この時とき、研究けんきゅう仲間なかまである藤井ふじいは永瀬ながせの術じゅつを見破みやぶり、互たがいに同おなじ手しゅを取とり続つづける千日手せんにちてが成立せいりつしたが、指さし直なおしで永瀬ながせに黒星くろぼしを喫きっしている。

　今回こんかいの王位おうい戦せんでは対局たいきょく２日にち目めの80手て目め、７月がつ７日にち午後ごご３時じ44分ふん、同どう一いち局面きょくめんが４回かい目めとなって千日手せんにちてが成立せいりつし、指さし直なおしに。指さし直なおしの時点じてんで、苦手にがてとする後手ごてになった藤井ふじいの持もち時間じかんは１時じ間あいだ、先手せんての渡辺わたなべ明あきら九きゅう段だんは２時じ間あいだ20分ふん。持もち時間じかんも戦法せんぽうも、AIの予測よそくは先手せんての渡辺わたなべ九きゅう段だんの勝率しょうりつが99％、藤井ふじい１％。残のこり18手てで藤井ふじい七なな冠かんが負まけることになっていたが…。

　指さし直なおしの90手て目めから藤井ふじい七なな冠かんの持もち味あじ、終盤しゅうばんの大だい逆転ぎゃくてん劇げきがまたまた起おきる。藤井ふじい七なな冠かんが指さした「馬うま」がジワジワと渡辺わたなべ九きゅう段だんの攻勢こうせいに背後はいごから圧あつをかけ、119手て目めで渡辺わたなべ九きゅう段だんの最善さいぜん手しゅの見落みおとしを誘さそう。ここで渡辺わたなべの勝率しょうりつ99％は数すう％へと、わずか１手てで急降下きゅうこうかした。

　視聴しちょう者しゃはAIの非情ひじょうな勝敗しょうはい予測よそくに戸惑とまどいつつ、どちらが優勢ゆうせいなのかわからないまま、136手てで藤井ふじい七なな冠かんが死闘しとうを制せいした。

　１分ふん将棋しょうぎの中なかで30手先てさきまでを見越みこした、藤井ふじいAI将棋しょうぎの本領ほんりょう発揮はっき。渡辺わたなべ九きゅう段だんは対局たいきょく後ご、自身じしんのＸで「ぐは」と苦悶くもんし、詰つみ筋すじが見みえなかったと猛省もうせいした。２人ふたりの死闘しとうは「勝負しょうぶは最後さいごの最後さいごまで諦あきらめてはいけない」という人生じんせい哲学てつがくそのものだ。

　藤井ふじい七なな冠かんが先勝せんしょう、２ふたつ目めの永世えいせいタイトル資格しかくまであと３勝しょうとなった王位おうい戦せん第だい２局きょくは、７月がつ17日にちに北海道ほっかいどう函館はこだて市しの「湯元ゆもと　啄木たくぼく亭てい」で開催かいさいされる。函館はこだての海鮮かいせん、北海道ほっかいどうスイーツに加くわえて、因縁いんねんの両者りょうしゃによる目めの離はなせない激闘げきとうになるのは確実かくじつで、第だい２局きょくもトイレに行いくタイミングはくれぐれも逃のがさぬよう…。

（那須なす優子ゆうこ）