中森なかもり明菜あきな「紅白こうはく復活ふっかつ」への道みち（2）明菜あきなを覚醒かくせいさせた「ミ・アモーレ」

　明菜あきなは82年ねんに「スローモーション」でデビュー後ご、「少女しょうじょA」「1/2の神話しんわ」「禁きん区く」の〝ツッパリ三さん部ぶ作さく〟で不動ふどうの人気にんきを得えて、松田まつだ聖子せいこ（62）と人気にんきを二分にぶんするトップアイドルに躍おどり出でた。

　元もとワーナー・パイオニア（現げんワーナーミュージック・ジャパン）で、明菜あきなの宣伝せんでん担当たんとうを務つとめていた田中たなか良明よしあき氏しが当時とうじを振ふり返かえる。

「彼女かのじょは『早はやくアイドルの殻からを破やぶりたい』と考かんがえていました。そんな思おもいに応こたえて洋楽ようがく担当たんとうだった藤倉ふじくら克己かつみさんを担当たんとうディレクターに抜擢ばってきしたのが、デビュー前まえから8年間ねんかん、明菜あきなの制作せいさく宣伝せんでんを統括とうかつし〝明菜あきなの育そだての親おや〟と呼よばれた寺林てらばやし晁あきらさんです。藤倉ふじくらさんは周囲しゅういの反対はんたいを押おし切きり、ラテンジャズ界かいで高たかい人気にんきを誇ほこっていたピアニストで作曲さっきょく家かの松岡まつおか直也なおやさんに作曲さっきょくを依頼いらい。そしてできあがったのが11枚まい目めのシングル『ミ・アモーレ』（85年ねん）です。彼女かのじょはこの曲きょくの魅力みりょくに言葉ことばを失うしなっていました。従来じゅうらいの歌謡かよう曲きょくの王道おうどうを意識いしきしない藤倉ふじくらさんのアバンギャルドな楽曲がっきょく作づくりが、彼女かのじょを覚醒かくせいさせたのです」

　14枚まい目めのシングル「DESIRE―情熱じょうねつ―」（86年ねん）でも藤倉ふじくら氏しは新あらたな挑戦ちょうせんを試こころみる。

「沢田さわだ研二けんじなどを手てがけていた鈴木すずきキサブローさんに作曲さっきょくを依頼いらいしました。ところが、どの曲きょくもしっくりこない。そんな時とき、鈴木すずきさんが『Get　Up　GetUp』と口くちにしたのを聞きいて、このフレーズで曲きょくを作つくったらヒットする。そうひらめいた藤倉ふじくらさんは、阿木あぎ燿子さんに作詞さくしを依頼いらいして『DESIRE』を完成かんせいさせました」（田中たなか氏し）

　この「ミ・アモーレ」と「DESIRE」で日本にっぽんレコード大賞たいしょうを2年ねん連続れんぞくで受賞じゅしょう。さらに「サザン・ウインド」（84年ねん）から「TATTOO」（88年ねん）までシングルチャート16作さく連続れんぞく初はつ登場とうじょう1位いを記録きろくするなど、歌姫うたひめとして確固かっこたる地位ちいを築きずいていく。が、89年ねん、事務所じむしょを独立どくりつしたことをきっかけに運命うんめいの歯車はぐるまは大おおきく狂くるっていく。

「映画えいが『愛あい・旅立たびだち』（85年ねん、東宝とうほう）で共演きょうえんした近藤こんどう真彦まさひこ（60）と交際こうさいしていましたが、89年ねんにマッチと聖子せいこのニューヨーク密会みっかい現場げんばがスクープされた。そのショックから、明菜あきなは自殺じさつ未遂みすい事件じけんを起おこしてしまいます。これにはほんと驚おどろきましたね」（石川いしかわ氏し）

　その年としの大晦日おおみそか、紅白こうはく歌合戦うたがっせんの裏うらで2人ふたりはそろって会見かいけんを行おこなった。結婚けっこん会見かいけんかと騒さわがれたが、単たんなる明菜あきなの復帰ふっき会見かいけんだった。

「何なにのために会見かいけんを行おこなったのか。とんだ茶番ちゃばん劇げきでしたね。マッチサイドから圧力あつりょくがかかったことは紛まぎれもない事実じじつです。明菜あきな自身じしんもこの金かね屏風びょうぶ会見かいけんが新あらたな一いち歩ほになると信しんじていただけに、心しんに大おおきな傷きずを負おい、歌うたうことができなくなってしまった」（石川いしかわ氏し）

　90年代ねんだいに入はいると、レコード会社かいしゃの移籍いせき問題もんだいなど様々さまざまなトラブルに巻まき込こまれ、過去かこの輝かがやきを失うしなっていく。

「すべては彼女かのじょを〝利権りけん〟と考かんがえて群むらがった人々ひとびとと、疑うたがいつつも乗のっかった彼女かのじょの甘あまさが招まねいたトラブルです。そんな彼女かのじょを見みかねてユニバーサルミュージックに呼よび、歌姫うたひめとして復活ふっかつさせたのが寺林てらばやしさんでした」（田中たなか氏し）