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　絵本えほん作家さっかのヨシタケシンスケさん（48）は、自信じしんがない、楽たのしいこともない、という子こども時代じだいを過すごしました。苦手にがてなことからずっと「逃にげる」ことで、現在げんざいの仕事しごとにたどりついたそうです。ベストセラーになった絵本えほん「りんごかもしれない」も、逃にげた先さきに生うまれた物語ものがたりでした。当時とうじの気持きもちや作品さくひんに込こめた思おもいを聞ききました。

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　〈姉あね1人にん、妹いもうと2人にんの4人にんきょうだい。二ふたつ上じょうの姉あねは、はっきりと自己じこ主張しゅちょうする性格せいかくで、勉強べんきょうもなんでも出来できる「天才てんさい」だった。そんな姉あねと自分じぶんを比くらべてしまい、少年しょうねん時代じだいは劣等れっとう感かんを抱だいていた〉

　僕ぼくはずっと、自分じぶんはなんにもできないと思おもっていました。家族かぞくの中なかでも、場ばを荒立あらだてないことが、居心地いごこちよく生いきるすべでした。いつもひとりでぶつぶつ本ほんを読よんでいるような子こで、腹はらを割わって話はなせる友達ともだちもいない。いないから寂さびしいとかじゃなくて、そういうものだと思おもっていたので、つらいという意識いしきはなかったんです。

　工作こうさくをすると、母親ははおやがほめてくれることがうれしくて。でも、その気持きもちが反対はんたいに、怒おこられたくない、という気持きもちを増幅ぞうふくさせました。もともと怖こわがりで極度きょくどの心配しんぱい性せい。どうすれば怒おこられないか、い訳いわけばかり考かんがえていました。

　人ひとから言いわれたことをきちっと形かたちにすることは得意とくいだったので、職人しょくにんになりたかった。高校こうこうの美術びじゅつ部ぶの先生せんせいが勧すすめてくれた美術びじゅつ系けいの大学だいがくに入はいりました。

　〈大学だいがくで作品さくひんを自由じゆうにつくる面白おもしろさに気きづいた。大学院だいがくいんを卒業そつぎょう後ご、ゲーム会社かいしゃに就職しゅうしょく。そのときのストレス解消かいしょう法ほうが、イラストレーターの道みちへつながった〉

　大学だいがくに入はいって、初はじめて人ひとに喜よろこんでもらえる楽たのしさに気きづきました。好すきだった宇宙うちゅう服ふくをつくって友達ともだちに見みせたら、「面白おもしろい」とすごくほめてくれた。そこで、小中しょうちゅう高だか時代じだいがつまらなかったことに初はじめて気きづいたんですね。

　卒業そつぎょう後ごに、半年はんとし間あいだだけサラリーマンになりましたが、ストレス発散はっさんのために、手帳てちょうにこっそりと小ちいさなイラストを描えがいていました。ネガティブな性格せいかくなので、生いきているのが嫌いやになっちゃう。毎日まいにち自分じぶんを励はげまし直なおし、「世よの中なかちゃんと探さがせば面白おもしろいことがある。周まわりにも、あちこちに転ころがっている」とい聞いきかせるために描えがいてきたもの。自分じぶんにとってリハビリの感覚かんかくです。

　そんなイラスト集しゅうを自費じひ出版しゅっぱんでつくり、いろいろな人ひとに配くばっていた。それが出版しゅっぱん社しゃの方ほうの目めに留とまり、今いまの仕事しごとにつながっています。

苦手にがてな色いろぬり、「していない」

　〈2013年ねんの絵本えほんデビュー作さく「りんごかもしれない」は、目めの前まえにあるリンゴから妄想もうそうを膨ふくらませる男おとこの子こが主人公しゅじんこうだ。実じつは、色いろ塗ぬりは自分じぶんではしていない〉

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