東大は昨年3月、博士論文の執筆を目指していた休学中の大学院生に「3カ月あまりの長期間、具体的な指導や応答をしなかった」として、教授(当時)に1カ月停職の懲戒処分を出した。一方、教授側は処分を不服として裁判で争っている。大学は、どのような行為を指導放置と認定したのか。
私立大の大学院修士課程を終えたユミさん(当時32歳)が、東大で文系の修士課程に入ったのは2013年。15年には博士課程に進んだが、体調不良を理由に18年から休学に入った。博士論文の準備に取りかかったのも、休学中だった。
東大の懲戒処分書によると、当初、ユミさんは博士論文の執筆は予定していなかったが、20年8月ごろ、執筆する意向を示した。賛同した教授は、博士論文を執筆するうえで必要な資格審査の資料を21年3月末までに出すなど「博論完成にむけてのスケジュールは一切引き延ばさないことを大前提に」とユミさんにメールした。
だがユミさんが本格的に博論の準備にとりかかったのは、20年10月末だった。日本語教師になりたいと、「日本語教育能力検定試験」を受けた後だった。
当時は新型コロナの影響で、対面のゼミは開かれず、教授とのやりとりはメールなどに限られていた。
11月末、ユミさんは執筆資格審査に必要な資料のうち、まずは文献リスト案を添付して「ご助言、ご指示下されば幸いです」と教授にメールした。
だが懲戒処分書によると、教授はこのメールに返信をしなかった。
12月下旬には追加で文献リストを送り、不安な気持ちを明かした。
「文献数が不足しているのは承知ですが」「その路線であっているのか、知識不足で自分では判断がつかず不安です」「先生から直接ご指導いただいた方がよろしいでしょうか。それとも、博論概要作成に自分で進んでみるべきでしょうか」
懲戒処分書によると、教授はこのメールにも返信をしなかった。
「もうだいぶ自暴自棄」 夜中もメールチェック
ユミさんは21年1月末にも…