教育きょういく格差かくさ議論ぎろんからちていること 無料むりょうじゅくからえた社会しゃかい課題かだい

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教育きょういくジャーナリスト・おおたとしまさ=寄稿きこう
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 「わたしじゅくかよはじめたんだ」

 「えっ、どこのじゅく?」

 「中野なかのよもぎじゅくっていうの」

 「なにそれ、いたことないんだけど」

 「無料むりょうじゅくなの」

 「無料むりょうじゅくってなに? え、意味いみわかんないんだけど」

 「無料むりょうなのに、マンツーマンの個別こべつ指導しどうおしえてもらえて、しかも勉強べんきょうおしえてくれるサポーターの大人おとなたちもぜんぜん先生せんせいってかんじじゃなくて、みんなでゲームしたりして、近所きんじょのおにいさん、おねえさんと仲良なかよくなれちゃうみたいなかんじなの。めっちゃおとくでしょ」

 「えー、ずるくない!? わたしじゅく勉強べんきょうしかしないし、きびしいし、宿題しゅくだいもたくさんるし、ぜんぜん面白おもしろくないよ。先生せんせい、エラそうだしね」

 「しかも、なつには合宿がっしゅくがあって、それもおかねがかからないんだって。交通こうつう宿泊しゅくはくだい食費しょくひもぜんぶじゅくはらってくれるの」

 「てか、そんなじゅくほんとにあるの? 詐欺さぎられてるんじゃない!?」

 「だいじょぶだよ。みんなもよもぎじゅくにすればいいのに」

 無料むりょうじゅくとは、おも経済けいざいてき理由りゆう一般いっぱんてきじゅくかよえないどもたちにたいして、無料むりょう勉強べんきょうおしえる活動かつどうである。学習がくしゅう支援しえん団体だんたいぶこともある。ども食堂しょくどう勉強べんきょうばんといえばイメージしやすいだろうか。上記じょうきは、とある公立こうりつ中学ちゅうがく教室きょうしつで、実際じっさいにあった会話かいわだ。

 わたしはじめて無料むりょうじゅくたずねたのは2017ねんはる。サポーターたちがヒーローにえた。しかし全国ぜんこく無料むりょうじゅくひろがることをイメージしてみたつぎ瞬間しゅんかん矛盾むじゅんにもづいた。すべての中学生ちゅうがくせいが「学校がっこうじゅく」を標準ひょうじゅん装備そうびとして高校こうこう受験じゅけんいどむようになることはむしろ教育きょういく競争きょうそうのさらなる激化げきか意味いみする。本当ほんとうにそれでいいのか。

 そこでさまざまな無料むりょうじゅく現場げんばたずね、運営うんえいしゃたちのはなしき、2023ねん12月に「ルポ無料むりょうじゅく教育きょういく格差かくさ議論ぎろん死角しかく」というほんにした。

高校こうこう受験じゅけんでは7わり以上いじょうじゅくがよ

 「じゅく」はそもそも、学歴がくれき社会しゃかい前提ぜんていにした受験じゅけん競争きょうそうたたかうための強力きょうりょくな「道具どうぐ」であった。しかしいま、高校こうこう受験じゅけんかんしては7わり以上いじょう道具どうぐにしている。無料むりょうじゅく存在そんざいは、日本にっぽん教育きょういくシステムをくためにじゅくがもはや必需ひつじゅひんとなっていることの皮肉ひにく証左しょうさでもあるわけだ。

 また、無料むりょうじゅく生徒せいとかり困難こんなんからすチケットを学力がくりょくによってれたとしても、それは、べつのどこかでだれかがそのチケットをうしなっている事実じじつ裏返うらがえしでしかない。チケットをやすにはどうしたらいいのだろう?

 「そく戦力せんりょくを」「グローバル人材じんざい育成いくせいを」などと経済けいざいかい教育きょういくにたくさんの要求ようきゅうをする。中学生ちゅうがくせいがもっと高校こうこう受験じゅけん勉強べんきょう頑張がんばって全体ぜんたい学力がくりょく底上そこあげされれば、社会しゃかいゆたかになるのだろうか。チケットはえるのだろうか。いな

 国際こくさいてき学力がくりょく調査ちょうさでは、日本にっぽんどもたちの学力がくりょくつねにトップレベルである。それなのに、もっと底上そこあげしろというのか? 先進せんしんこくのなかでこのすうじゅうねん賃金ちんぎんがっていないのは日本にっぽんくらいである。チケットがりないのは、雇用こよう劣化れっか問題もんだいであり、教育きょういく問題もんだいではない。

 無料むりょうじゅく活動かつどう共感きょうかんし、支援しえんもうてくれる企業きぎょう財団ざいだんには、いわゆるエリートとばれるようなひとたちもおおい。かれらとはなしをしていて、認識にんしきにズレをかんじることもすくなくないともらすのは、八王子はちおうじつばめじゅく運営うんえいする小宮こみやさんだ。

 「勉強べんきょうができる環境かんきょうととのえて…

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    本田ほんだ由紀ゆき
    東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん教育きょういくがく研究けんきゅう教授きょうじゅ
    2024ねん5がつ10日とおか05ふん 投稿とうこう
    視点してん

    教育きょういく格差かくさ」の議論ぎろんについて、つねおもうのは、「どうなったら教育きょういく格差かくさがなくなったことになるのか」ということだ。絶対ぜったいてきにはわずかなであっても、それをプロジェクタのように拡大かくだい投影とうえいするしくみがつづいていれば、格差かくさはなくならない。 このようにどもたち

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    おおたとしまさ
    教育きょういくジャーナリスト)
    2024ねん5がつ16にち2051ふん 投稿とうこう
    解説かいせつ

    わたしたちはなぜ複雑ふくざつにしてしまうのか?> 拙文せつぶんをおみいただき、ありがとうございます。「なにをきれいごとを・・・。現実げんじつろ」というご批判ひはんもあるかもしれません。でもわたしにとっての「現実げんじつ」とは、たとえばこちらの記事きじいたようなことなんです。 h

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Re:Ron

Re:Ron

対話たいわつうじて「ろん」をふかう。論考ろんこうやインタビューなど様々さまざま言葉ことばとおして世界せかいひろげる。そんなをRe:Ronはめざします。[もっと]