被爆ひばく者しゃらが期待きたいしてきた核兵器かくへいき禁止きんし条約じょうやくへの参加さんかがかなわぬまま、広島ひろしま選出せんしゅつの岸田きしだ文雄ふみお首相しゅしょうが退任たいにんする。来年らいねん3月がつにある第だい3回かい締約ていやく国こく会議かいぎへのオブザーバー参加さんかも拒否きょひするなど日本にっぽんは条約じょうやくに背せを向むけたままだが、核兵器かくへいきは「国際こくさい法ほう違反いはん」と初はじめて指摘してきした裁判さいばんが、半はん世紀せいき余あまり前まえの日本にっぽんであった。中東ちゅうとうや欧州おうしゅうで核兵器かくへいき使用しようの危機ききをはらむ紛争ふんそうが続つづく中なか、この判決はんけつの意義いぎに光ひかりを当あてようとする人ひともいる。

　1955年ねん4月がつ、広島ひろしまと長崎ながさきの被爆ひばく者しゃ5人にんが日本にっぽん政府せいふに賠償ばいしょうを求もとめて裁判さいばんを起おこした。

　日本にっぽんの戦争せんそう犯罪はんざいは戦後せんご、戦勝せんしょう国こく側がわによる極東きょくとう国際こくさい軍事ぐんじ裁判さいばん（東京とうきょう裁判さいばん）で裁さばかれた。だが、米国べいこくによる原爆げんばく投下とうかの責任せきにんは問とわれることのないまま、サンフランシスコ講和こうわ条約じょうやくが52年ねんに発効はっこう。その翌年よくねんから大阪おおさかの岡本おかもと尚一しょういち弁護士べんごし（1891～1958）が訴訟そしょうを呼よびかけ、協力きょうりょく者しゃを探さがした。

　原告げんこくとなったのは、妻子さいし5人にんを原爆げんばくで失うしなった人ひと、両親りょうしんを亡なくし生活せいかつに困窮こんきゅうする子こども、腎臓じんぞうや肝臓かんぞうに障害しょうがいを負おい働はたらけない人ひとら。「悲痛ひつう極きわまる精神せいしん的てき苦痛くつう」「名状めいじょうし難がたき苦悩くのう」などと被害ひがいを訴うったえた。日本にっぽんの裁判所さいばんしょに米国べいこく政府せいふを裁さばく権限けんげんはないため、日本にっぽん政府せいふに賠償ばいしょうを求もとめるほかなかった。

　政府せいふが棄却ききゃくを求もとめる中なか、原告げんこく側がわが最大さいだいの争点そうてんにしたのは、原爆げんばく投下とうかは国際こくさい法ほう違反いはんかだ。「人類じんるい社会しゃかいの安全あんぜんと発達はったつとを志向しこう希求ききゅうする国際こくさい法ほうと到底とうてい相あいいれない」と主張しゅちょうした。

　原告げんこくは、原爆げんばくがもたらす残虐ざんぎゃくな被害ひがいの立証りっしょうを積つみ重かさねる。爆風ばくふうによる破壊はかい、熱線ねっせんによるやけどや火災かさい、そして、放射線ほうしゃせんによる原爆げんばく症しょう。「加害かがい影響えいきょう力りょくは、旧来きゅうらいの高性能こうせいのう爆ばく弾だんに比くらべて著いちじるしく大おおきく、しかも不ふ必要ひつような苦痛くつうを与あたえる」と訴うったえた。

　判決はんけつは、こうした原告げんこくの訴うったえ…