公的こうてき年金ねんきんの抜本ばっぽん改革かいかくへ向むけて

公的こうてき年金ねんきんの次つぎの改革かいかくへの議論ぎろんが始はじまった。衆参しゅうさん両院りょういん合同ごうどう会議かいぎで各党かくとうがそれぞれの考かんがえを基もとに主張しゅちょうし合あっている段階だんかいだ。その内容ないようを概観がいかんすると大おおきく分わけて、まず一般いっぱんサラリーマンの厚生こうせい年金ねんきんと公務員こうむいん等とうの共済きょうさい年金ねんきんを統合とうごうするところから始はじめるか、それとも国民こくみん全体ぜんたいの公的こうてき年金ねんきんの一元化いちげんかを目指めざす議論ぎろんから入はいるか、に意見いけんは二分にぶんされている。隔へだたりが大おおきいように見みえるこの議論ぎろん、果はたしてどの部分ぶぶんから入はいっていくべきか。

ここで政治せいじ家かや年金ねんきんの専門せんもん家かではない、一般いっぱんの国民こくみんの視点してんから考かんがえた場合ばあいは何なにが重要じゅうようか。それは改革かいかくの方向ほうこう性せいについて納得なっとく感かんのある議論ぎろんが成なされること、すなわち、これからの議論ぎろんとその進すすめ方かたが信頼しんらいを得えられるものであることが重要じゅうようである。国民こくみん一般いっぱんの印象いんしょうとしては16年ねんの年金ねんきん改正かいせいで、給付きゅうふと負担ふたんの見直みなおし論議ろんぎを中心ちゅうしんに、厚生こうせい年金ねんきんの最終さいしゅう保険ほけん料りょう率りつ18.3％やモデルケースでの所得しょとく代替だいたい率りつ50％以上いじょうの確保かくほ、マクロ経済けいざいスライドの導入どうにゅう等とう、目めの前まえの解決かいけつしなければならない事項じこうについてまずは急いそいで決定けっていしたというところであろう。そして短時間たんじかん労働ろうどう者しゃや第だい３号ごう被ひ保険ほけん者しゃの問題もんだいを含ふくめ根本こんぽん的てきな問題もんだいは先送さきおくりになっていて、まだこれからという印象いんしょうだ。そのため今いまは、将来しょうらい的てきに年金ねんきんをどうするのか、基本きほん的てきにどのような考かんがえ方かたに基もとづいて構築こうちくし直なおすのか、その根本こんぽん的てきな議論ぎろんが期待きたいされている。

公的こうてき年金ねんきん制度せいど再さい構築こうちくのポイントは大おおきく次つぎの二ふたつだろう。一ひとつは、公的こうてき年金ねんきんの単位たんいを一人ひとり一いち人にんの個人こじんごとで考かんがえるか、それとも夫婦ふうふあるいは家族かぞくを基本きほんの考かんがえ方かたとして水準すいじゅん・仕組しくみ等とうを構築こうちくするかである。一見いっけん、アプローチが異ことなるだけでどちらも結果けっかは同おなじと考かんがえがちだが、基本きほん的てきな視点してんをどこに置おいて整理せいりするかというのは議論ぎろんがすれ違ちがわないために重要じゅうようである。二ふたつ目めは、現役げんえき時代じだいの所得しょとくに比例ひれいした保険ほけん料りょうや将来しょうらいの給付きゅうふ体系たいけいを公的こうてき年金ねんきん全体ぜんたいの基本きほんに据すえるかという点てんである。公的こうてき制度せいどで所得しょとく比例ひれいの保険ほけん料りょうに統一とういつするということは、程度ていどの差さはあれ所得しょとく再さい分配ぶんぱい機能きのうを備そなえるということにもなる。日本にっぽんの公的こうてき年金ねんきんはもともと所得しょとく比例ひれいの考かんがえ方かたをベースに始はじまった経緯けいいがあるようだが、今後こんごは制度せいど全体ぜんたいについて所得しょとく比例ひれいの仕組しくみを本当ほんとうに目指めざすのか。根本こんぽん的てきな再さい構築こうちくにあたってこの議論ぎろんは避さけて通とおるべきではない。ましてや「所得しょとくを把握はあくするための申告しんこくが信用しんようできない」ので、その議論ぎろんは時期じき尚早しょうそうというのは本末転倒ほんまつてんとうである。単純たんじゅんに納税のうぜいの観点かんてんだけから見みても事態じたいを放置ほうちしているという印象いんしょうを与あたえ、説得せっとく力りょくはない。

次つぎの改革かいかくで具体ぐたい的てきに何なにを行おこなうか、現実げんじつ的てきに何なにができるか、という議論ぎろんが必要ひつようなのは当然とうぜんだが、それは将来しょうらいの目指めざす形かたちに向むけてのステップとしての議論ぎろんであることが重要じゅうようである。昨年さくねんの年金ねんきん制度せいど改正かいせいで、まずは急務きゅうむの問題もんだいに対応たいおうした。今度こんどこそは根本こんぽん的てきな問題もんだいを先送さきおくりせず議論ぎろんしてほしい。これが一般いっぱんの国民こくみんが感かんじている偽いつわらざる気持きもちだ。