CMスキップとテレビ局てれびきょくのビジネスモデル

　インターネットは、広告こうこくメディア及および商しょう取引とりひきチャンネルとして目覚めざましい成長せいちょうを続つづけている。そうした一方いっぽうで、テレビの広告こうこくメディアとしてのステータスが揺ゆるぎつつあると印象いんしょう付つける事柄ことがらや報道ほうどうが増ふえている。インターネット利用りよう拡大かくだいによるテレビ視聴しちょう時間じかんの減少げんしょう、ライブドアによる買収ばいしゅう騒動そうどう、NHK受信じゅしん料りょう不払ふばらい、CMスキップの問題もんだいなどである。

　先週せんしゅうもあるシンクタンクより、HDD（ハードディスク）を搭載とうさいしたDVR（デジタル・ビデオ・レコーダー）の普及ふきゅうにより、CMスキップが常態じょうたい化かしているとのアンケート調査ちょうさ結果けっかが報告ほうこくされた。当該とうがい報告ほうこく中ちゅうのCMスキップによる広告こうこく価値かち損失そんしつ額がくの推定すいていはいささか短絡たんらく的てきではあるものの、テレビ局てれびきょくがビジネスとして広告こうこく収入しゅうにゅうをどのように維持いじしていくか、改あらためて考かんがえる必要ひつようがあるのは確たしかであろう。

　まず、CMスキップはなにも今いま始はじまった問題もんだいではない点てんを認識にんしきすべきである。リアルタイム視聴しちょうが中心ちゅうしんだったころから、すぐにチャンネルを変かえる「ザッピング」という行為こういはあったし、CMがテレビに表示ひょうじされている間あいだにちょっとした用事ようじを済すますなど、受身うけみ的てきなCMスキップ行動こうどうを取とる視聴しちょう者しゃは少すくなくなかったはずである。DVRの浸透しんとうにより、ビデオデッキに比くらべてタイムシフト（オンデマンド）視聴しちょうが手軽てがるとなったことで積極せっきょく的てきな行為こういとしてCMスキップが顕在けんざい化かしただけである。

　インターネットのようにオンデマンドで利用りようできる情報じょうほう・コミュニケーションメディアの発展はってんを背景はいけいに、DVRというツールの浸透しんとうでテレビにも時間じかん制約せいやくを超こえた利便りべん性せいが求もとめられる傾向けいこうとなっている。テレビ局てれびきょくは、リアルタイム視聴しちょう前提ぜんていではなく、タイムシフト視聴しちょうを考慮こうりょした経営けいえいを志向しこうする発想はっそうも必要ひつようではないだろうか。リアルタイムでは多おおくのリーチを獲得かくとくするのが困難こんなんな時間じかん帯たいの番組ばんぐみでも、DVRによるタイムシフト視聴しちょうで掘ほり起おこしが可能かのうとなる。すなわち、番組ばんぐみ単位たんいで考かんがえればリアルタイムの暇ひまつぶし的てきな視聴しちょう者しゃ層そうが減少げんしょうする一方いっぽう、タイムシフト視聴しちょうで本当ほんとうに興味きょうみを持もつユーザー層そうを獲得かくとくでき、リーチの質的しつてき向上こうじょうが期待きたいできるのである。

　DVRはスペック向上こうじょうが続つづいており、ダブルチューナー搭載とうさいで2番組ばんぐみ同時どうじ録画ろくが可能かのうなものや大だい容量ようりょうのHDD搭載とうさいのものが登場とうじょうしている。PCでは既すでに主要しゅような全ぜん地上波ちじょうは局きょくの番組ばんぐみを1週間しゅうかん分ぶん丸まるごと録画ろくができる機種きしゅも登場とうじょうしているが、パーツの低てい価格かかく化かが進すすめば、この先さき一般いっぱん的てきなDVRでも同様どうような機能きのうを持もつ製品せいひんが普及ふきゅう価格かかく帯たいで登場とうじょうしてもおかしくない。その時とき、テレビ放送ほうそうは視聴しちょう者しゃにとって時間じかん的てき制約せいやくがほとんどないメディアと変化へんかしていることになる。

　テレビ局てれびきょくは、CMスキップを敵視てきしするよりも、DVRに保存ほぞんされるCMデータを活用かつようし、効果こうかあるリーチの獲得かくとくとその測定そくていへ取とり組くんでいくほうが建設けんせつ的てきと見みられる。そのためには、家電かでんメーカー、インターネットサービス事業じぎょう者しゃとの連携れんけいが不可欠ふかけつである。テレビ局てれびきょくは、デジタル放送ほうそうへの移行いこうを契機けいきにコピーワンス制御せいぎょによるコンテンツ保護ほごの方針ほうしんを打うち出だしたが、視聴しちょう者しゃの利便りべん性せい向上こうじょうなしにメディアとしての発展はってんは望のぞめない。今いま一いち度どリーチの量的りょうてき・質的しつてき変化へんかを見据みすえ、視聴しちょう者しゃのロイヤルティ向上こうじょうを図はかることが優先ゆうせん課題かだいであろう。