企業きぎょうと投資とうし家かを結むすぶ中期ちゅうき経営けいえい計画けいかく

7月がつのワールドに続つづき、8月がつにはポッカコーポレーションもMBOによる株式かぶしきの非公開ひこうかい化かを決定けっていした。自発じはつ的てきな非公開ひこうかい化かという選択せんたくが、日本にっぽんにおいても一般いっぱん化かしそうな感かんがある。

ところで、両社りょうしゃのプレスリリースを見みると、ある共通きょうつうした言葉ことばに気付きづく。 経営けいえい戦略せんりゃくや施策しさくを短期たんき的てきな業績ぎょうせきの変動へんどうに左右さゆうされることなく迅速じんそくに実行じっこうする」（ワールド）。 こうした施策しさくを、短期たんき的てきな業績ぎょうせきの波なみにとらわれず、迅速じんそくに遂行すいこうする体制たいせいを整備せいびするとともに」（ポッカ）。

また、社長しゃちょうの会見かいけんにおいても、MBOに踏ふみ切きった理由りゆうとして、短期たんきではなく中長期ちゅうちょうき的てきな視点してんで経営けいえいを行おこないたいと共通きょうつうに述のべている。「短期たんきではなく中長期ちゅうちょうき」、「迅速じんそくな実行じっこう」。この2つがキーワードのようだ。

MBOの問題もんだい点てんとして、財務ざいむ体質たいしつの悪化あっかや経営けいえい陣じんに対たいする外部がいぶチェック機能きのうの低下ていかを懸念けねんする声こえがある。財務ざいむ体質たいしつの悪化あっかはその通とおりだが、外部がいぶチェックに関かんしてはいささか誤解ごかいがあろう。MBOにともなう多額たがくの買収ばいしゅう資金しきんは、大手おおての金融きんゆう機関きかんから提供ていきょうされる。これらはTOB成立せいりつ後ごには対象たいしょう企業きぎょうの融資ゆうしとなるが、この融資ゆうしがある間あいだ、大手おおての金融きんゆう機関きかんは厳きびしい監視かんしの目めをそそぐことになる。仮かりに、経営けいえい状じょう況きょうが悪化あっかした場合ばあいは、経営けいえい陣じんの交替こうたいを要求ようきゅうする仕組しくみというのもあり得える。外部がいぶチェック機能きのうは、株式かぶしき公開こうかい時じよりもむしろ厳きびしいかもしれない。

しかし、この金融きんゆう機関きかんによるチェックと株式かぶしき市場いちばによる外部がいぶチェックとでは、ひとつ大おおきな違ちがいがある。それは、MBOに協力きょうりょくした金融きんゆう機関きかんは、対象たいしょう企業きぎょうの中期ちゅうき的てきな目標もくひょう、戦略せんりゃく、施策しさくを熟知じゅくちしており、それを理解りかいし賛同さんどうしているという点てんだ（だからこそ大おおきな資金しきんを提供ていきょうしている）。一方いっぽう、株式かぶしき市場いちばにおける投資とうし家かは、そこの理解りかいが乏とぼしく目先めさきの材料ざいりょうで投資とうしを判断はんだんする傾向けいこうがある。今回こんかい、両者りょうしゃは、それが負まけに影響えいきょうした場合ばあいの、株主かぶぬしの圧力あつりょく、そして買収ばいしゅうの脅威きょういを懸念けねんせずに、ファンドや金融きんゆう機関きかんと合意ごういした経営けいえい施策しさくを「中期ちゅうき的てきに」、「迅速じんそくに」実行じっこうすることが企業きぎょう価値かちの最大さいだい化かに資しすると考かんがえたのだろう。

昨年さくねん以来いらい、こうしたMBOのみならず、外資がいしを含ふくめた投資とうしファンドの日本にっぽん市場いちばにおける活躍かつやくが急増きゅうぞうしている。すなわち、非公開ひこうかい化かのみならず公開こうかい時じにおいても、これら企業きぎょう防衛ぼうえいという観点かんてんから、経営けいえい陣じんは、常つねに株式かぶしき価値かち最大さいだい化かにまい進しんしている姿勢しせいを見みせることが重要じゅうようとなってきた。その姿勢しせいを見みせるためには、企業きぎょうの中期ちゅうき的てきな経営けいえい目標もくひょう、戦略せんりゃく、施策しさくが重要じゅうような要素ようそとなる。

中期ちゅうき経営けいえい計画けいかくの策定さくていと実行じっこう。それは、経営けいえい陣じんが株式かぶしき価値かちを高たかめる経営けいえいをしているという投資とうし家かへのアピールであり、これからの企業きぎょうと投資とうし家かを結むすぶ重要じゅうようなツールとなる。