サムスンはトヨタになれるか？

韓国かんこくを代表だいひょうするエレクトロニクス企業きぎょうであるサムスン電子でんしは、2004年度ねんどの純じゅん利益りえきが10.7兆ちょうウォン（約やく100億おく米あめりかドル）に達たっした。これはトヨタ自動車とよたじどうしゃの2004年度ねんど純じゅん利益りえき額がく（1.17兆ちょう円えん）とほぼ並ならぶ金額きんがくである。純じゅん利益りえきが100億おく米あめりかドルを超こえる企業きぎょうは、世界せかいでもトヨタ自動車とよたじどうしゃをはじめ9社しゃしかなく、サムスン電子でんしも名実めいじつともに世界せかいのトップ企業きぎょう入いりを果はたしたと言いえよう。サムスン電子でんしの大だい躍進やくしんの要因よういんとしては、サムスングループ李り会長かいちょうを頂点ちょうてんとしたトップダウンによる迅速じんそくな意思いし決定けっていメカニズム、熾烈しれつな社内しゃないの競争きょうそう原理げんりおよびそれらを可能かのうとする卓越たくえつしたコーポレート・ガバナンスなどが指摘してきされている。

サムスン電子でんしは何なにかとトヨタと比較ひかくされることが多おおい。両社りょうしゃともに日にち韓かんを代表だいひょうする製造せいぞう業ぎょう企業きぎょうであること、本業ほんぎょうが堅調けんちょうであり利益りえき規模きぼが同どう程度ていどであること、潤沢じゅんたくなキャッシュ資産しさんを抱かかえていること、などの共通きょうつう点てんがあるためであろう。しかし、サムスン電子でんしとトヨタには大おおきな違ちがいがある。それは、トヨタが系列けいれつ企業きぎょうとの共存きょうぞん共栄きょうえいを意識いしき的てきに目指めざしているのに対たいし、サムスン電子でんしは協力きょうりょく会社かいしゃを一段いちだん下かに見みる「主しゅ－従したがえ関係かんけい」を望のぞんでいるようだ。そして、この傾向けいこうは現代げんだい自動車じどうしゃなど他たの韓国かんこくの大だい企業きぎょうにも概がいして当あてはまるようである。

上下じょうげ関係かんけいが重視じゅうしされる韓国かんこくならではの企業きぎょう内外ないがいにおける明確めいかくな主従しゅうじゅう関係かんけいは、一いち面めんでは、スピーディな意思いし決定けっていと実行じっこう力りょくを生うみ出だす原動力げんどうりょくとなっている。「上うえ」や「主人しゅじん」が言いったことは絶対ぜったいなので、「下した」の者ものは必かならず即座そくざにそれに従したがって実行じっこうしなければならない。しかし、この意思いし決定けっていメカニズムでは、「下した」の者ものの思考しこう能力のうりょくが育そだたないうえ、「下した」の者ものの間あいだに不満ふまんがたまるリスクが高たかい。韓国かんこくで裾野すその産業さんぎょう、部品ぶひん産業さんぎょうが育そだたない理由りゆうのひとつがここにあるのだろう。また、大だい企業きぎょうから強烈きょうれつな値下ねさげ要求ようきゅうをされる下請したうけ企業きぎょうの不満ふまんもくすぶったままである。

先々さきざき週しゅうに発表はっぴょうされた韓国かんこくサムスン電子でんしの７-９月がつ期き純じゅん利益りえきは1.88兆ちょうウォン（約やく2,000億おく円えん）を記録きろく。前年ぜんねん同期どうき比ひでは約やく30％減益げんえきとなったものの、前期ぜんき比ひでは+11％増益ぞうえきとなり、半導体はんどうたいや液晶えきしょうパネルなどの価格かかく下落げらくに苦くるしんだ05年ねん前半ぜんはんの不調ふちょうから抜ぬけ出だしたことを印象いんしょう付つけた。05年ねんの設備せつび投資とうし計画けいかく額がくは従来じゅうらいの10.27兆ちょうウォン（約やく1.1兆ちょう円えん）を変かえておらず、日本にっぽんのエレキ企業きぎょう各社かくしゃが羨うらやむばかりの大だい規模きぼ投資とうしを継続けいぞくする姿勢しせいだ。短期たんき的てきには死角しかくの見当みあたらないサムスン電子でんしであるが、下請したうけ企業きぎょうや取引とりひき先さきとの共存きょうぞん体制たいせい作づくりを怠おこたると、中期ちゅうき的てきにはその足許あしもとを掬すくわれかねないと考かんがえる。