「米国べいこく型がた企業きぎょう戦略せんりゃく」≠「Ｍ＆Ａ」

最近さいきん、わが国くにの新聞しんぶん紙上しじょうを賑にぎわすライブドアや楽天らくてんによる企業きぎょう戦略せんりゃくを見みて、多おおくの日本にっぽんの人々ひとびとは、伝統でんとう的てきな日本にっぽんの企業きぎょう観かんとの違和感いわかんと共ともにわが国くににおける本格ほんかく的てきな米国べいこく型がた企業きぎょう戦略せんりゃくの到来とうらいを感かんじたのではないだろうか。

一般いっぱんにわが国くにでは、米国べいこくの企業きぎょう経営けいえいはといえば「アグレッシブ」で「抜ぬけ目めがなく」、虎視眈々こしたんたんと「（敵対てきたい的てきな）買収ばいしゅう・合併がっぺい」の機会きかいを伺うかがっているという言葉ことばで表現ひょうげんされるような力任ちからまかせに経営けいえいを行おこなうイメージが強つよい。特とくに、「買収ばいしゅう・合併がっぺい」は米国べいこく企業きぎょうの企業きぎょう戦略せんりゃくの代名詞だいめいしにようにさえ受うけ取とられることが多おおい。

では、代名詞だいめいしである「買収ばいしゅう・合併がっぺい」は企業きぎょう経営けいえい者しゃにとって成功せいこうをもたらすのであろうか。日本にっぽんにいるとイメージ先行せんこうとなりがちだが、実際じっさいにはそうではないらしい。もちろん、カリスマ経営けいえい者しゃであるジャック＝ウェルチ（元もとＧＥ社しゃＣＥＯ）は在任ざいにん中ちゅうに534件けんの買収ばいしゅうを行おこなったこと、あるいはコズロウスキー（元もとＴＹＣＯのＣＥＯ）は169件けんの買収ばいしゅうを行おこなっていることを鑑かんがみるならば、「成長せいちょうする企業きぎょう」の経営けいえい戦略せんりゃくの必要ひつよう条件じょうけんとして「Ｍ＆Ａ」があげられると理解りかいするのも無理むりはない。しかし、わが国くににおいて喧伝けんでんされる多おおくは成功せいこう事例じれいであって、失敗しっぱいのケースはほぼ表ひょうに出でることがないことから、こうした「成功せいこうする企業きぎょう」と「Ｍ＆Ａ」とを結むすびつける関係かんけいはかなりのバイアスを含ふくんでいるといえる。

こうした推測すいそくを裏付うらづけるように、ビジネスウィーク誌しによれば、Ｍ＆Ａを実施じっしした企業きぎょうの61%は株主かぶぬしの価値かちを喪失そうしつしているというショッキングな結果けっかを報告ほうこくしており、「成長せいちょう企業きぎょうの経営けいえい戦略せんりゃく」＝「Ｍ＆Ａ」の図式ずしきは成立せいりつしないことを示しめしている。そして、Ｍ＆Ａにおいて企業きぎょう価値かちを喪失そうしつすることとなった個別こべつのディールを分析ぶんせきした結果けっかによれば、いくつかの特徴とくちょうが明あきらかとなっている。まず、第だい一いちに買収ばいしゅう価格かかくが被ひ買収ばいしゅう企業きぎょうの価値かちと比較ひかくして高たかすぎたこと、第だい二にに買収ばいしゅうにおいて株式かぶしき交換こうかんを用もちいていること、そして長期ちょうきに保有ほゆうしたからといって失敗しっぱいした買収ばいしゅう案件あんけんの損失そんしつは取とり戻もどすことはできないことなどがわかった。さらに、ビジネスウィーク誌しの調査ちょうさ結果けっかは、経営けいえい者しゃの行動こうどうに関かんして重要じゅうような示唆しさを与あたえている。企業きぎょう経営けいえいの頂点ちょうてんに立たつＣＥＯにとって経営けいえい戦略せんりゃくの失敗しっぱいは許ゆるされない。したがって、被ひ買収ばいしゅう企業きぎょうの価格かかくが本来ほんらいの価値かちを上回うわまわった場合ばあい、合理ごうり的てきに考かんがえれば撤退てったいを検討けんとうすべきだが、撤退てったいすることにより自みずからのレピュテーション（評判ひょうばん）に傷きずがつくことを恐おそれて、つまりエゴによって想定そうてい外がいに高たかい価格かかくでもＭ＆Ａを実施じっししてしまったといえるのではないだろうか。

最後さいごにある米国べいこく有数ゆうすうの企業きぎょうの元もと幹部かんぶの話はなしを紹介しょうかいしたい。「企業きぎょうにおいてほかの企業きぎょうと事業じぎょうを共同きょうどうするケースは少すくなくない。その際さいに、最もっとも企業きぎょう経営けいえい者しゃとして重視じゅうしすべき点てんは、相手方あいてがた企業きぎょう経営けいえい者しゃトップとの個人こじん的てきな関係かんけいを成立せいりつさせ、強固きょうこにすることである。個人こじん的てきな関係かんけいはかならず、相互そうごの信頼しんらいを醸成じょうせいし、企業きぎょう同士どうしの提携ていけい、合併がっぺい、買収ばいしゅうなどがスムーズに運はこぶこととなる。そして、勤務きんむ時間じかん外がいにおいても相手あいて企業きぎょうトップと共ともに過すごす時間じかんを作つくることは必要ひつよう不可欠ふかけつである。」　 わが国くにの企業きぎょう経営けいえい者しゃにおいても企業きぎょう戦略せんりゃくを実行じっこうする上じょうで、こうした先人せんじんの教おしえをしっかりと受うけ止とめて欲ほしいものである。