なぜ、企業きぎょうは役員やくいん退職たいしょく慰労いろう金きんを廃止はいしするのか？

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2005年ねん11月17日にち

経営けいえいコンサルティング第だい二に部ぶ主席しゅせきコンサルタント竹田たけだ哲郎てつろう

役員やくいん退職たいしょく慰労いろう金きんを廃止はいしする企業きぎょうが増ふえている。日経新聞にっけいしんぶんが新興しんこう市場いちばを除のぞく全国ぜんこくの上場じょうじょう企業きぎょう1,680社しゃを対象たいしょうに行いった調査ちょうさでは、2006年ねん3月がつ期きに制度せいどを廃止はいしすることを表明ひょうめいした企業きぎょうは100社しゃを超こえて累計るいけいで300社しゃ以上いじょうとなり、全体ぜんたいの約やく２割わりに相当そうとうする(2005年ねん5月がつ29日にち付づけ)。

ニュースリリース等とうで企業きぎょうが公表こうひょうしている廃止はいし理由りゆうの多おおくは『年功ねんこう的てき性格せいかくの報酬ほうしゅうだから』『賃金ちんぎんの後払あとばらい的てき性格せいかくの報酬ほうしゅうだから』といったもので、いずれも、役員やくいんの任期にんき中ちゅうの業績ぎょうせきとの関連かんれんが不透明ふとうめいなので、それを是正ぜせいする目的もくてきで廃止はいしするというものである。企業きぎょう価値かちの向上こうじょうを是ぜとする資本しほん市場いちばから見みれば望のぞましい姿すがたといえる。

しかし、これらの理由りゆう以外いがいでも『業績ぎょうせき連動れんどう型がたにしないと、株主かぶぬしが文句もんくを言いうから』『せっかく役員やくいんを長年ながねん勤つとめても、たまたま退任たいにん時じに業績ぎょうせき不振ふしんや不祥事ふしょうじがあると株主かぶぬし総会そうかいで退職たいしょく慰労いろう金きんが否決ひけつされるので、別べつのかたちで確実かくじつに貰もらっておきたいから』といったあたりも、企業きぎょうを制度せいど廃止はいしに導みちびく大おおきな理由りゆうになっている。これらの理由りゆうは、企業きぎょうにとって“モノ言いう株主かぶぬし”の存在そんざいが大おおきくなっていることの裏返うらがえしであり、換言かんげんすれば、株主かぶぬしがうるさくなければ、制度せいどを廃止はいしする必要ひつよう性せいは薄うすれる。

そもそも、退職たいしょく慰労いろう金きんを廃止はいしすることにより、役員やくいん個人こじんとしては退職たいしょく所得しょとく優遇ゆうぐう税制ぜいせいが使つかえなくなるといったデメリットがある。そのため、“十分じゅうぶんな理由りゆう”がなければ、人事じんじ担当たんとう者しゃとしては「廃止はいししましょう」と役員やくいんに提案ていあんしにくい。企業きぎょうによっては、検討けんとう課題かだいとして話題わだいにすること自体じたい、タブーになっているケースもある。

この場合ばあい、“十分じゅうぶんな理由りゆう”として最もっとも強力きょうりょくなのは、株主かぶぬしの圧力あつりょくである。『このままでは株主かぶぬしが納得なっとくしません』『資本しほん市場いちばから置おいて行いかれます』という危機きき感かんを役員やくいんが共有きょうゆうすれば、企業きぎょうは制度せいどを廃止はいしする。すなわち、制度せいどを廃止はいしする企業きぎょうが増ふえ続つづけるのか、否ひかは、今後こんごの株主かぶぬしの圧力あつりょく次第しだい、資本しほん市場いちばのスタンス次第しだいということになる。

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