市場いちばを選択せんたくする、選択せんたくできるということ

2021年ねん6月がつに改訂かいていされたコーポレートガバナンス・コード（CGコード）の大おおきな特徴とくちょうの一ひとつは、2022年ねん4月がつ4日にちに予定よていされている東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょ（東証とうしょう）の新しん市場いちば区分くぶんに即そくして、「プライム市場いちば」上場じょうじょう会社かいしゃには、他たよりも上乗うわのせされた原則げんそく等とう（原則げんそく、補充ほじゅう原則げんそく）が設もうけられていることである。

プライム市場いちば上場じょうじょう会社かいしゃは、新しん市場いちば区分くぶんがスタートする2022年ねん4月がつ4日にち以降いこうに開催かいさいされる各社かくしゃの株主かぶぬし総会そうかいの終了しゅうりょう後ご速すみやかに、これらのプライム市場いちば向むけ原則げんそく等とうに関かんする事項じこうについて記載きさいしたコーポレート・ガバナンス報告ほうこく書しょを提出ていしゅつすることが求もとめられている。例たとえば、3月決算けっさんのプライム市場いちば上場じょうじょう会社かいしゃであれば、2022年ねん6月がつの定時ていじ株主かぶぬし総会そうかい終了しゅうりょう後ごの提出ていしゅつに向むけて、準備じゅんびを進すすめているところが多おおいだろう。

「プライム市場いちば向むけ原則げんそく等とうか。どのような内容ないようなのだ？」

大おおきく4つある。①独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやく（１／３以上いじょうの選任せんにん）、②指名しめい・報酬ほうしゅう委員いいん会かいの独立どくりつ性せいと開示かいじ、③議決ぎけつ権けん電子でんし行使こうしプラットフォームの利用りよう、英文えいぶん開示かいじの促進そくしん、④気候きこう変動へんどうによる自社じしゃへの影響えいきょうに関かんするTCFD（気候きこう関連かんれん財務ざいむ情報じょうほう開示かいじタスクフォース）等とうの枠組わくぐみに基もとづいた開示かいじの充実じゅうじつだ。

「何なんの脈絡みゃくらくもないように思おもえるが・・・」

そのようなことはない。

プライム市場いちばが「グローバルな機関きかん投資とうし家かとの建設けんせつ的てきな対話たいわを中心ちゅうしんに据すえた企業きぎょう向むけの市場いちば」（※１）と位置付いちづけられていることと関連かんれんづければわかりやすいだろう。独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやくの比率ひりつや独立どくりつ性せいのある指名しめい・報酬ほうしゅう委員いいん会かいの設置せっちは、海外かいがい投資とうし家かの目めから見みて、エクスプレインがなくても理解りかいできる、納得なっとく性せいの高たかいガバナンス体制たいせいと説明せつめいできるだろう。

「なるほど。議決ぎけつ権けん電子でんし行使こうしプラットフォームの利用りようや英文えいぶん開示かいじも、海外かいがい投資とうし家かにとっては重要じゅうようだろうな。」

近年きんねん、関心かんしんが高たかまっているサステナビリティ開示かいじについても、その国際こくさい的てきな基準きじゅんとしてTCFDが一ひとつの軸じくを形成けいせいしつつある。

「『プライム市場いちば』というよりは、まるで『グローバル市場いちば』だな。」

そう呼よんだ方ほうが市場いちばのコンセプトにも合致がっちする、と個人こじん的てきには思おもっている。ガバナンスの基準きじゅんだけではなく、流動りゅうどう性せいの基準きじゅんも、世界中せかいじゅうの投資とうし家かが投資とうし対象たいしょうとすると考かんがえれば、決けっして高たか過すぎる水準すいじゅんとは言いえないだろう。

「だとすれば『スタンダード市場いちば』は、さしずめ『ドメスティック（国内こくない）市場いちば』か？」

プライム市場いちばと比較ひかくしての話はなしだが、ガバナンスの観点かんてんで国内こくない投資とうし家かに対たいして説明せつめい責任せきにんを果はたす、という意味いみではそうだ。

説明せつめい責任せきにんを果はたすべき相手あいてがグローバルな投資とうし家かか、国内こくない投資とうし家かか、という違ちがいは、確たしかに企業きぎょう規模きぼの大小だいしょうが影響えいきょうするかもしれない。しかし、そこに上下じょうげの区別くべつはないはずだ。

頻繁ひんぱんに入替いれかえが起おきる「一部いちぶリーグ」、「二に部ぶリーグ」のような関係かんけいではないのだ。

「『プライム市場いちばに残留ざんりゅうできるか？』といった見方みかたも相変あいかわらずあるな。」

わが国くにを代表だいひょうする東証とうしょう市場いちばが、異ことなる明確めいかくなコンセプトを持もつ3つの市場いちば区分くぶんに再編さいへんされることは歓迎かんげいすべきことだろう。CGコードのプライム市場いちば向むけ原則げんそく等とうも、確たしかに、プライム市場いちばの位置付いちづけ・コンセプトを踏ふまえて、よく考かんがえられたものになっていると思おもう。

ただ、こうした取組とりくみが真価しんかを発揮はっきするためには、発行はっこう会社かいしゃが、これらの市場いちばの位置いちづけやコンセプトを理解りかいした上うえで、自社じしゃの理念りねん、経営けいえい戦略せんりゃく、資本しほん政策せいさくなどに照てらして、最もっともふさわしい市場いちばを選択せんたくする、選択せんたくできる、ということが大前提だいぜんていだ。

仮かりに、世間せけんの誤解ごかいや興味きょうみ本位ほんいの報道ほうどうなどが、発行はっこう会社かいしゃの市場いちば選択せんたくの判断はんだんを歪ゆがめるようなことがあれば、わが国くにの資本しほん市場いちば、ひいて経済けいざい、産業さんぎょう、社会しゃかいにとっても痛手いたでとなるのでは、と危惧きぐしている。

「大おおげさだなあ。ただ、『最もっともふさわしい市場いちば』という視点してんは面白おもしろい。今後こんご、意識いしきしてみるとしよう。」

• （※１）東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょウェブサイト（https://www.jpx.co.jp/equities/market-restructure/market-segments/index.html）

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