日米にちべい両国りょうこくで安定あんていする期待きたいインフレの背後はいごにある相違そうい点てん

米国べいこくでは、インフレの進行しんこうが実体じったい経済けいざいや金融きんゆう政策せいさくの先行さきゆきを考かんがえるうえで重要じゅうようなテーマとなっている。2022年ねん1月がつの米国べいこくのCPI上昇じょうしょう率りつは前年ぜんねん比ひ＋7.5％と、1982年ねん2月がつ以来いらいの高たかい伸のび率りつを記録きろくした。そこで今回こんかいのインフレ局面きょくめんの特徴とくちょうを探さぐるため、CPIを価格かかく改定かいてい頻度ひんどの高たかい品目ひんもく（伸縮しんしゅく価格かかく品目ひんもく）と低ひくい品目ひんもく（粘着ねんちゃく価格かかく品目ひんもく）に分わけると、伸縮しんしゅく価格かかく品目ひんもくが大幅おおはばに押おし上あげている一方いっぽう、粘着ねんちゃく価格かかく品目ひんもくは比較的ひかくてき安定あんていしている（図表ずひょう）。今回こんかいと同おなじように資源しげん高だかがインフレの高騰こうとうを引ひき起おこした1970年代ねんだいでは、粘着ねんちゃく価格かかく品目ひんもくも高騰こうとうしていた。

価格かかく改定かいてい頻度ひんどの低ひくい財ざい・サービスを提供ていきょうする企業きぎょうにとっては、価格かかく改定かいていの機会きかいが巡めぐってきた際さいに、その後ご価格かかく改定かいていを行おこなえない期間きかんに進行しんこうするインフレを考慮こうりょして最適さいてきな価格かかくを設定せっていすることが合理ごうり的てきな行動こうどうとなる。このため、粘着ねんちゃく価格かかくは期待きたいインフレ率りつと密接みっせつに関係かんけいしているが、足元あしもとでは長期ちょうきの期待きたいインフレ率りつが安定あんていしており、この点てんが1970年代ねんだいとは大おおきく異ことなる。

日本銀行にっぽんぎんこうの分析ぶんせきでは（※１）、米国べいこくにおける長期ちょうきの期待きたいインフレ率りつはインフレ目標もくひょうの影響えいきょうを強つよく受うけるとされている。1970年代ねんだいに採用さいようされていなかったインフレ目標もくひょうが足元あしもとの期待きたいインフレ率りつの安定あんていに寄与きよした可能かのう性せいがある。ただし、インフレ目標もくひょうを採用さいようしても、直ただちに期待きたいインフレ率りつが目標もくひょう値ち付近ふきんで安定あんていするわけではない。目標もくひょうを実現じつげんするための明確めいかくな手段しゅだんを有ゆうしてこそ中央ちゅうおう銀行ぎんこうへの信任しんにんが維持いじされ、期待きたいインフレ率りつを安定あんていさせることができる。この点てん、インフレに直面ちょくめんする米国べいこくでは利上りあげによってインフレ率りつを押おし下さげることが可能かのうである。

日本にっぽんに目めを向むけると、日銀短観にちぎんたんかん等とうに見みる長期ちょうきの期待きたいインフレ率りつはやはり安定あんていしている。ただし、その水準すいじゅんはインフレ目標もくひょう値ちの２％を下回したまわっており、日本銀行にっぽんぎんこうは資源しげん価格かかく高騰こうとう下かでも現在げんざいの金融きんゆう緩和かんわ策さくを継続けいぞくすると見込みこまれている。インフレ目標もくひょうの達成たっせいを未いまだ見通みとおせない状況じょうきょう下かで、ゼロ金利きんり制約せいやくに直面ちょくめんする日本にっぽんでは、Fedとは異ことなり、目標もくひょうを実現じつげんするための有効ゆうこうな手段しゅだんを見出みだせていない。

このように、長期ちょうきの期待きたいインフレ率りつの安定あんていは米国べいこくと日本にっぽんで共通きょうつうする現象げんしょうである。ただし、その背後はいごには有効ゆうこうなインフレファイティング手段しゅだんを持もつ米国べいこくと、デフレ（低ていインフレ）ファイティングに有効ゆうこうな手段しゅだんを見出みだせない日本にっぽんという、金融きんゆう政策せいさく効果こうかへの異ことなる期待きたいが表あらわれているのだろう。

（※１）日本にっぽん銀行ぎんこう(2016)「『量的りょうてき・質しつ的てき金融きんゆう緩和かんわ』導入どうにゅう以降いこうの経済けいざい・物価ぶっか動向どうこうと政策せいさく効果こうかについての総括そうかつ的てきな検証けんしょう【背景はいけい説明せつめい】」

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