株主かぶぬし総会そうかいで増ふえる反対はんたい票ひょう—影響えいきょう大おおきなコーポレートガバナンス・コード改訂かいてい—

株主かぶぬし総会そうかいシーズンが近ちかづいてきたが、取締役とりしまりやく選任せんにん議案ぎあんで反対はんたい票ひょうが増ふえそうな状況じょうきょうだ。原因げんいんの一ひとつは、2021年ねんのコーポレートガバナンス・コード（以下いか、「CGコード」）改訂かいていにある。改訂かいてい前まえから東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょ（東証とうしょう）1部ぶ・2部ぶ上場じょうじょう会社かいしゃは独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやくを複数ふくすう選任せんにんすべきとしていたが、改訂かいていによってプライム市場いちば上場じょうじょう会社かいしゃには3分ぶんの1以上いじょう、支配しはい株主かぶぬしがいる会社かいしゃでは過半数かはんすうが求もとめられ、そうしていない場合ばあいは理由りゆうを説明せつめいしなければならない（なお、支配しはい株主かぶぬしがいる場合ばあいの過半数かはんすうという基準きじゅんは、独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやくを含ふくむ独立どくりつ性せいのある者もので構成こうせいされる特別とくべつ委員いいん会かいを設もうけることで代替だいたいできる）。

上場じょうじょう会社かいしゃは、社外しゃがい取締役とりしまりやくを着実ちゃくじつに増ふやしてきたが、まだ3分ぶんの1に達たっしていない会社かいしゃは少すくなくない。特とくに監査かんさ役やく設置せっち会社かいしゃでは、既すでに監査かんさ役やくの半数はんすう以上いじょうが社外しゃがいとなっている状況じょうきょうに加くわえて、取締役とりしまりやくも社外しゃがい者しゃを3分ぶんの1以上いじょうとしなければならず、候補者こうほしゃ探さがしに苦慮くりょするのではないか。厳きびしくなるばかりのCGコードだが、これを充足じゅうそくしていない場合ばあい、株主かぶぬし総会そうかいで反対はんたい票ひょうを投とうじるとする議決ぎけつ権けん行使こうし基準きじゅんを機関きかん投資とうし家かは採用さいようするようになっている。CGコード改訂かいていが昨年さくねん6月がつだったので、機関きかん投資とうし家かの基準きじゅん見直みなおしは昨年さくねんの総会そうかいシーズン後ごに進すすんだ。機関きかん投資とうし家かの多おおくと議決ぎけつ権けん行使こうし助言じょげん業者ぎょうしゃは、反対はんたい投票とうひょうの対象たいしょうを経営けいえいトップとしているが、取締役とりしまりやく候補者こうほしゃ全員ぜんいんに反対はんたいするとの基準きじゅんを持もつところもある。基準きじゅんを充足じゅうそくしていないとして、昨年さくねんとは異ことなる多おおさの反対はんたい票ひょうが出でると想定そうていしておくべきだ。

2018年ねんのCGコード改訂かいていで取締役とりしまりやく会かいのジェンダー・ダイバーシティが定さだめられたほか、政策せいさく保有ほゆう株式かぶしきに関かんする開示かいじ事項じこうが大幅おおはばに増ふえた。これらを取締役とりしまりやく選任せんにん議案ぎあんでの考慮こうりょ要素ようそとする動うごきが徐々じょじょに広ひろがっており、女性じょせい取締役とりしまりやく不在ふざいの場合ばあいや、過大かだいな政策せいさく保有ほゆう株式かぶしきを持もっている場合ばあいも、経営けいえいトップの取締役とりしまりやく選任せんにん議案ぎあんへの反対はんたい票ひょうが増ふえるだろう。こうした問題もんだい点てんについても議決ぎけつ権けん行使こうし助言じょげん業者ぎょうしゃが先行せんこうして助言じょげん基準きじゅんを変かえており、助言じょげん業者ぎょうしゃに従したがう傾向けいこうが強つよい海外かいがい投資とうし家かは、今いままで以上いじょうに厳きびしい議決ぎけつ権けん行使こうしをするはずだ。

さらに、昨年さくねんのCGコード改訂かいていでは、サステナビリティ課題かだいへの取とり組くみや情報じょうほう開示かいじに関かんする事項じこうが拡充かくじゅうされたが、これも議決ぎけつ権けん行使こうしに影響えいきょうを及およぼすだろう。サステナビリティ関連かんれんの情報じょうほう開示かいじが不十分ふじゅうぶんであると判断はんだんされると、経営けいえいトップなどの取締役とりしまりやく選任せんにん議案ぎあんで反対はんたい投票とうひょうをする場合ばあいがあるとの議決ぎけつ権けん行使こうし基準きじゅんを持もつ機関きかん投資とうし家かが現あらわれている。

また、今年ことしは特とくに、スタンダード市場いちば上場じょうじょう会社かいしゃの株主かぶぬし総会そうかい動向どうこうにも注目ちゅうもくしたい。東証とうしょう再編さいへんに際さいして、プライム市場いちばの上場じょうじょう基準きじゅんに不適合ふてきごうだったり、ガバナンス面めんの負担ふたん増ぞうを嫌きらったりして、東証とうしょう1部ぶ上場じょうじょう会社かいしゃでもスタンダード市場いちばを選択せんたくした例れいが少すくなくない（基準きじゅんに不適合ふてきごうでも経過けいか措置そちを利用りようすればプライム市場いちばへの上場じょうじょうは可能かのうだった）。こうした会社かいしゃでは、市場いちば選択せんたくの妥当だとう性せいに関かんする質問しつもんが投資とうし家かから出でることを考かんがえておく必要ひつようがある。選択せんたく結果けっかの公表こうひょう前後ぜんこうで、株価かぶか変動へんどうが大おおきかった会社かいしゃはことさらだ。

コード改訂かいていとは関係かんけいないが、コロナ禍かの中なかでバーチャル株主かぶぬし総会そうかいへの取とり組くみが問とわれる可能かのう性せいもある。バーチャルオンリー型がた株主かぶぬし総会そうかいを実施じっしするには、原則げんそくとしてあらかじめ定款ていかんを変更へんこうしておく必要ひつようがある。この定款ていかん変更へんこう議案ぎあんに対たいする議決ぎけつ権けん行使こうし助言じょげん業者ぎょうしゃの基準きじゅんは、原則げんそく賛成さんせいとするところと原則げんそく反対はんたいとするところに分わかれる。機関きかん投資とうし家かはおおむね賛成さんせいのようだが、ある程度ていどの反対はんたい票ひょうが出でることは想定そうていしておくべきだ。また、2020年ねん以来いらい、株主かぶぬし総会そうかいをインターネット中継ちゅうけいするハイブリッド型がたバーチャル株主かぶぬし総会そうかいを実施じっしする会社かいしゃが増ふえている。コロナ禍かで株主かぶぬし総会そうかいへ足あしを運はこぶのが難むずかしくなっている中なか、株主かぶぬしに総会そうかいの様子ようすを知しらせる機会きかいを設もうけていない場合ばあいは、経営けいえい者しゃの姿勢しせいが問とわれるかもしれない。

新型しんがたコロナウイルスやウクライナ情勢じょうせいなど、個々ここの会社かいしゃにはどうすることもできない新あらたなリスクが現あらわれている。こうした新あらたなリスクが他たのリスク、例たとえばサイバーセキュリティ・リスクを深刻しんこく化かさせる恐おそれもある。さまざまなリスクが顕在けんざい化かした場合ばあいの業績ぎょうせきへの影響えいきょうや対処たいしょ方針ほうしんを問とう株主かぶぬしが、これまで以上いじょうに現あらわれることを想定そうていしておくべきだ。

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