「モデル年金ねんきん」、そろそろ見直みなおしませんか？

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2022年ねん04月がつ20日はつか

金融きんゆう調査ちょうさ部ぶ主任しゅにん研究けんきゅう員いん是枝これえだ俊しゅん悟さとる

毎年まいとし4月がつは年金ねんきん支給しきゅう額がくの改定かいていが行おこなわれる。今年度こんねんどは、現役げんえき世代せだいの賃金ちんぎんの減少げんしょうなどを反映はんえいし、年金ねんきん支給しきゅう額がくは前年ぜんねん比ひ0.4％の引ひき下さげとなる。もっとも、改定かいてい率りつだけでは年金ねんきん額がくがどのくらいの水準すいじゅんになっているのか分わからない。そこで、厚生こうせい労働省ろうどうしょうは毎年まいとし、その年としに新あらたに受給じゅきゅう者しゃとなる厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅう者しゃの標準ひょうじゅん的てきな支給しきゅう額がく（モデル年金ねんきん）を公表こうひょうしている。モデル年金ねんきんは、2021年度ねんどは月つき22万まん496 円えん、2022年度ねんどは903円えん減げんの21万まん9,593 円えんだ。

この「モデル年金ねんきん」の前提ぜんていは、夫おっとが40年間ねんかん厚生こうせい年金ねんきんに加入かにゅうして平均へいきん的てきな収入しゅうにゅうを得えて、妻つまは40年間ねんかん専業せんぎょう主婦しゅふである世帯せたいを「標準ひょうじゅん的てき」な世帯せたいとした上うえで、その世帯せたいに支給しきゅうされる年金ねんきん額がくを算出さんしゅつしたものだ。それをもはや「標準ひょうじゅん」と呼よべるのか疑問ぎもんもあるだろう。

そこで、筆者ひっしゃが、「新しんモデル年金ねんきん」として、男女だんじょそれぞれの平均へいきん的てきな厚生こうせい年金ねんきんの加入かにゅう実績じっせき（平均へいきん加入かにゅう期間きかんと平均へいきん賃金ちんぎん）を前提ぜんていに標準ひょうじゅん的てきな夫婦ふうふ世帯せたいの年金ねんきん受給じゅきゅう額がくを試算しさんした。「新しんモデル年金ねんきん」は、2019年ねん時点じてん（1954年ねん生うまれ世代せだい）で月つき22万まん4,000円えんとなり、意外いがいなことに「モデル年金ねんきん」とほぼ一致いっちした。

1954年ねん生うまれ世代せだいの男性だんせいの厚生こうせい年金ねんきんの加入かにゅう期間きかんは平均へいきん32年ねんであり、モデル年金ねんきんの40年ねんに8年ねん不足ふそくする。一方いっぽう、同どう世代せだいの女性じょせいの厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅう期間きかんは平均へいきん16.2年ねんあり、この分ぶんは新しんモデル年金ねんきんの方ほうがモデル年金ねんきんより多おおくなる。報酬ほうしゅう比例ひれい部分ぶぶんの年金ねんきん額がくは、累計るいけい賃金ちんぎん、つまり、加入かにゅう期間きかんと賃金ちんぎんの掛かけ算ざんで決きまる（※１）。この世代せだいでは男女だんじょの賃金ちんぎん差さが倍ばい近ちかくあったので、結果けっかとして、「モデル年金ねんきん」に不足ふそくする男性だんせいの8年ねん分ぶんの累計るいけい賃金ちんぎんと「モデル年金ねんきん」に上乗うわのせされる女性じょせいの16.2年ねん分ぶんの累計るいけい賃金ちんぎんがほぼ釣つり合あい、「モデル年金ねんきん」と「新しんモデル年金ねんきん」はほぼ同額どうがくとなったのだ。

では、年金ねんきん額がくの将来しょうらいの見通みとおしはどうなるだろう。下したの図表ずひょうは2019年ねんの政府せいふの財政ざいせい検証けんしょうの｢標準ひょうじゅんケース｣（※２）における｢モデル年金ねんきん｣と｢新しんモデル年金ねんきん｣の見通みとおしを示しめしたものだ。

標準ケースにおけるモデル年金（左）と新モデル年金（右）の推移

標準ひょうじゅんケースの前提ぜんていの下したでは｢モデル年金ねんきん｣が後のちに生うまれた世代せだいほど増加ぞうかしていくが、｢新しんモデル年金ねんきん｣はそれを上回うわまわるペースで増加ぞうかしていく見込みこみで、徐々じょじょに差さが開ひらいていく。これは、後のちに生うまれた世代せだいほど女性じょせいがより高たかい賃金ちんぎん水準すいじゅんでより長期間ちょうきかん働はたらく（これに加くわえて、男性だんせいもより長期間ちょうきかん働はたらく）ことが想定そうていされるためだ。2000年ねん生うまれ世代せだいにおいては｢モデル年金ねんきん｣が月つき29.1万まん円えん（2019年ねんの物価ぶっかに換算かんさんした実質じっしつ額がく、以下いか同おなじ）であるのに対たいし、｢新しんモデル年金ねんきん｣は34.4万まん円えんと、5.3万まん円えん（比率ひりつにして18.2％）の差さが生しょうじる。もし、その世代せだいでもなお、専業せんぎょう主婦しゅふ世帯せたいを前提ぜんていとした｢モデル年金ねんきん｣を年金ねんきん受給じゅきゅう額がくの目安めやすとして用もちいるとなると、実態じったいとの乖離かいりが大おおきくなってしまう。

政府せいふは、多様たような働はたらき方かたの実現じつげんを目指めざし、年金ねんきん制度せいどにおいても短時間たんじかん労働ろうどう者しゃへの厚生こうせい年金ねんきんの適用てきよう拡大かくだいを進すすめている。それならば、標準ひょうじゅん的てきな年金ねんきん支給しきゅう額がくも、多様たような働はたらき方かたを反映はんえいした新あたらしいモデルで測はかるべきだろう。幸さいわいにも、専業せんぎょう主婦しゅふ世帯せたい型がたの「モデル年金ねんきん」と、平均へいきん的てきな夫婦ふうふの働はたらき方かたをもとにした「新しんモデル年金ねんきん」の水準すいじゅんは現在げんざい、ほぼ同おなじ水準すいじゅんにあり、今いまならば現状げんじょうの年金ねんきん額がくのイメージのままモデル変更へんこうができる。

「モデル年金ねんきん」、そろそろ見直みなおしませんか。

（※１）厳密げんみつにいえば、賃金ちんぎんを得えた年としから年金ねんきん受給じゅきゅう年ねんまでの物価ぶっか変動へんどう率りつや賃金ちんぎん変動へんどう率りつなどをもとに調整ちょうせいが行おこなわれる。
（※２）出生しゅっしょう中位ちゅうい・死亡しぼう中位ちゅうい・経済けいざい前提ぜんてい：ケースⅢ（内閣ないかく府ふ試算しさん｢成長せいちょう実現じつげんケース｣の一ひとつ）・制度せいど改正かいせいを行おこなわない（厚生こうせい年金ねんきんの適用てきよう拡大かくだいを行おこなわない）ケース

（※３）詳細しょうさいは、「女性じょせいの就労しゅうろう実績じっせきを加味かみした「新しんモデル年金ねんきん」の提唱ていしょうと試算しさん」（2021年ねん7月がつ8日にち、大和総研だいわそうけんレポート）参照さんしょう。

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