口絵1 熊本県上益城郡甲佐町白旗山出地点の写真(北を望む.2016年4月21日撮影).降雨による水たまりの分布で,地表変状が生じていることが分かる.水たまりの分布形状は杉型雁行状を呈する.地表地震断層は,写真奥の中位段丘面上の断層崖(池田ほか,2001)へ連続する.
口絵2 写真1と同地点の曇天時の様子(2016年12月1日撮影).地表地震断層は,地表踏査では,高野―白旗区間の北端部から約6km区間に認められた.本地点は,地表地震断層が認められた範囲のほぼ南端部に位置しており,地表変状は数cm程度の微弱なものであった.
口絵3 山出トレンチ北壁面.トレンチは,写真1の地表地震断層を横断する方向に掘削した.グリッドは鉛直1m× 水平1m.壁面に露出した地層は,上位より,耕作土,旧耕作土,シルト,シルト/砂礫互層におおまかに区分される.各層は西(写真左手)に向かって撓み込むとともに,断層で明瞭に切られる.主要な断層は2条認められる.断層上盤側において,3層の腐植質シルト層が認められる.それぞれの腐植質シルト層の断層沿いの変位量及び変形の程度は下位層ほど大きく,累積性が認められる.最下位の腐植質シルト層からは,約1万5千年前の放射性炭素年代が得られた.
口絵4 南部田トレンチ北壁面.トレンチは,宇城市小川町南部田地点で掘削した.グリッドは鉛直1m×水平1m.壁面に露出した地層は,上位より,盛土及び耕作土,旧耕作土,シルト/砂互層,腐植質シルト/砂礫互層におおまかに区分される.地層の変形の様子は,山出トレンチと酷似している.主要な断層は2条認められ,壁面東端(写真右手)の断層はほぼ鉛直,写真中央部の断層は見かけ逆断層の形状を示す.両断層に挟まれた部分は,複雑な変形構造を呈するが,大局的に見ると下位層ほど変形の程度が大きく,変位の累積が認められる.写真中央部に分布する腐植質シルト層からは,約1万2千年前の放射性炭素年代が得られた.
南部田(口絵5)及び山出(口絵6)両トレンチ調査では,いずれも一般公開を行った.両トレンチの見学者数は延べ1,200名を超えたほか,テレビ・新聞等で多数報道された.
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