家庭から出る廃プラスチックのうち、容器包装リサイクル法(容リ法)の分別収集対象から外れたものを油に加工する事業に、福岡県大木町と周辺2市が本年度から取り組んでいる。廃プラは海洋汚染の原因として問題視されるほか、中国が昨年末でプラスチックなどの資源ごみを輸入禁止としたため、行き場を失うものも出てきた。国内での適正処理が模索される中、利活用策として注目される。
工場にハンガーやバケツなど、プラ製のごみが大量に積まれていた。廃プラを油にするため、油化業者など3社の共同出資で設立された「YKKクリーン」(同町)の作業場。町と福岡県みやま市、柳川市から事業を受託している。
家庭から出る廃プラには、(1)同法の対象である容器や包装で、「プラ」マークがあるもの(2)同法の対象ではなく「製品プラスチックごみ」と呼ばれるもの-の2種類がある。工場では、(2)を油にする。機械で3~4センチ角に破砕後、風呂釜に似た装置に入れ、中で約400度に熱した砂状の触媒と接触させてガスにする。このガスを冷やすと油になる仕組み。成分は重油だ。
町によると、4~9月に3市町で集まった廃プラは約270トン。このうち(2)は約10トンだった。当面は1カ月でドラム缶10本に当たる2千リットルの製造を目指す。できた油は地域内のビニールハウスや温浴施設のボイラー燃料などとして市価の8割程度で提供する。
(2)は同法の対象ではないため再資源化のルールがなく、焼却されることが多い。油にする試みは国内でも珍しいという。同社の野田修嗣社長は「特殊な触媒の力で高品質の油ができ、法の穴も埋められる試み」と説明する。
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同町は2010年度、指定ごみ袋を使った廃プラの分別収集を全町で始めた。集まったごみは同法に基づく国の指定法人を通して業者にリサイクルしてもらっていたが、異物混入や汚れた分は町に戻され、やむなく焼却していたという。
廃プラは燃やすと温室効果ガスの排出量が多いとされる。町は分別の徹底を周知し、同法対象品目を確実にリサイクルする一方、2市と協力して製品プラごみも再資源化することにした。業者を探すうち、行き着いたのが野田社長が代表を務める「環境エネルギー」(広島県)の技術。後にYKKクリーンの出資者となる油化の専門企業だ。
町環境課の北島秀啓係長は「家庭で使っていた廃プラが油になって地域で使われれば、リサイクルの効果が目に見える形で分かる。ごみ分別の意識も高まるのではないか」と期待する。
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一般社団法人「プラスチック循環利用協会」(東京)によると、国内の廃プラの総排出量は899万トン(16年)。リサイクル方法は、プラスチックの原料に戻す▽ガスや油に再資源化▽焼却して熱エネルギーを発生させ、発電などに利用-があり、こうした方法で759万トンが再利用された。
ただ、内訳は5割以上が焼却による熱エネルギーの活用で、プラスチック原料に戻したのは206万トンだけ。再利用されなかった140万トンは焼却や埋め立てで処分された。
廃プラは今、直径5ミリ以下の「マイクロプラスチック」による海洋汚染でも問題視される。有害物質が付着し、誤飲した魚介類を通して人の健康に悪影響が出ることが懸念されている。
中国による資源ごみの輸入禁止も処理に影響を与えている。同法では、市町村は集めた廃プラを国の指定法人を通してリサイクル業者に引き渡すが、中にはこのルートでなく、業者に独自に処理を委託することがある。廃プラを受け取って輸出していた業者が、中国の措置で対応に困る事態が起きているという。国内で適正に再資源化する必要性は増している。
北島係長は「リサイクルは住民が分別で汗をかき、行政も周知で汗をかかないと進まない。温室効果ガスのことを考えれば、焼却は少ない方がいい」と語る。
焼却しないリサイクルは、同法対象かどうかにかかわらず、廃プラに異物の混入や汚れがないことが不可欠。まずは家庭での分別の徹底が再資源化の一歩になる。
=2018/10/17付 西日本新聞朝刊=