相手あいての努力どりょくを知しらないと、嫉妬しっと心しんは強つよくなる？カレー沢さわ薫かおる×真田さなだつづるが語かたり合あう「創作そうさくをめぐる悩なやみとの付つき合あい方かた」

同人どうじん女おんなのマンガを描えがく人間にんげんとして、テーマ的てきに近ちかいものを感かんじています。どの相談そうだんも何なにかしら見みに覚おぼえのある悩なやみばかりで、共感きょうかんしっぱなしでした。

創作そうさくをする人ひとたちに「自分じぶん語かたりをするきっかけ」を与あたえてくれる作品さくひんだと思おもいます。マンガの感想かんそうという体からだで自分じぶんの気持きもちを吐はき出だせた人ひとは多おおいんじゃないでしょうか。どのエピソードも希望きぼうのある終おわり方かたですし、「たとえ悩なやみそのものは解決かいけつしないとしても、折おり合あいをつけてやっていくことはできるんだ」と感かんじさせてくれます。

取材しゅざいらしい取材しゅざいとなると、「あなたの創作そうさく活動かつどうに関かんする『感情かんじょう』のエピソードを教おしえてください」というテーマでアンケートを募集ぼしゅうしたことがあります。なんと500件けんくらい回答かいとうが集あつまって、しかも2、3000字じレベルの長文ちょうぶんもたくさんありました。

相談そうだん者しゃの感情かんじょうを否定ひていしないことですね。「あなたの気きにしすぎですよ」の一言ひとことで終おわりにしようと思おもえばできる相談そうだん内容ないようもありますが、皆みなさん真面目まじめだからこそ悩なやんでいるんでしょうし、その本気ほんきの感情かんじょうを否定ひていすることはしたくない。「気持きもちはわかるし、あなたは十分じゅうぶん頑張がんばっているよ」というスタンスは意識いしきしています。

「私わたしの物語ものがたりにしない」というのはすごく気きをつけています。自分じぶんから一いち歩ほ引ひいて描えがくからこそ、読者どくしゃの方々かたがたにキャラクターたちを応援おうえんしたくなってもらえるんじゃないでしょうか。

そうですね……。特とくにTwitter発はつで話題わだいになったマンガは、自分じぶんとフィールドが同おなじなぶん気きになってしまいます。あと私わたしはネガティブな考かんがえ方かたをしがちで、褒ほめ言葉ことばが10件けん来きても、たった1件けんだけ「あなたのマンガが嫌きらいです。消けしてください」みたいな感想かんそうが来くると、「みんなが私わたしの作品さくひんを嫌きらっているんじゃないか」と思おもい込こんでしまうんです。あとは「◯◯であるべき」思考しこうも強つよくて、「プロである以上いじょう、SNSで作品さくひんにいいねが○件けんもつかないのはダメだ」のようについ考かんがえてしまう。私わたし自身じしんは他人たにんの作品さくひんのいいねの数かずとか全然ぜんぜん気きにしないし、作者さくしゃが楽たのしそうに描えがいたことが伝つたわる作品さくひんであれば好感こうかんを持もつのに、自分じぶんのことになると急きゅうにダメなんですよね。

セラピーというのは本当ほんとうその通とおりで、頑張がんばっている子こが救すくわれる話はなしは自分じぶんにとっても救すくいになります。創作そうさくは自己じこ救済きゅうさいだと常々つねづね感かんじていますし、キャラが傷きずついたまま終おわらず、その子こなりにハッピーになってほしいという気持きもちで物語ものがたりを作つくっています。

自分じぶんがどんな思考しこうの癖くせ、認知にんちの歪ゆがみを持もっているか把握はあくすれば、ある程度ていどは客観きゃっかん的てきな視点してんを取とり戻もどせると思おもいます。私わたし、部屋へやの壁かべにも貼はってあるんですよ。「それって自動じどう思考しこう（「自分じぶんは嫌きらわれている」など、出来事できごとに対たいして反射はんしゃ的てきに頭あたまに浮うかぶ考かんがえのこと）じゃない？」って。「100点てんを穫かるよりも長ながく挑戦ちょうせんを続つづけよう」とか「作者さくしゃがいきいきと描えがいていればそれだけで価値かちがある」、とかも書かいて貼はっています（笑）。

私わたしは嫉妬しっと心しんがとても強つよくて、他人たにんのサクセスが大嫌だいきらいなんです。たとえ全然ぜんぜん知しらない作品さくひんでもアニメ化かとか重版じゅうはんとかの情報じょうほうが耳みみに入はいるとストレスを感かんじます。でもそういう嫉妬しっと心しんが長ながく続つづかないことも知しっているので、怒いかりながらもどこか「この気持きもちはいつか燃もえ尽つきるもんだ」と安心あんしんできている。ひとりで怒いかり続つづけていると疲つかれてきて、最終さいしゅう的てきには「私わたしも捨すてたもんじゃない」と思おもえたりします。あとは自分じぶんの嫉妬しっと心しんの強つよさを隠かくさず、SNSで普通ふつうに言いうようにしています。……実じつは今日きょうの対談たいだん、初はじめは断ことわろうと思おもっていたんですよ。

自分じぶんより売うれているやつと口くちを聞ききたくなくて……。でも、やってよかったなと感かんじます。相手あいての努力どりょくを知しらず、サクセスという結果けっかしか見みえていないと、どうしても「上手うまくやりやがって」みたいに感かんじてしまう。今日きょうこうしてお話はなしして、真田さなだ先生せんせいが悩なやんでいることを知しったので、そりゃ成功せいこうするのは当然とうぜんだわと思おもえました。「売うれている人ひとは努力どりょくしていて、自分じぶんはそこまでやっていないな」と納得なっとくできたら、嫉妬しっと心しんも少すこしは薄うすれます。人気にんき作家さっかの努力どりょくや悩なやみを知しることができて、良よい機会きかいになりました。

私わたしはたまたま同人どうじん女おんながヒットしましたが、全まったく別べつのテーマを扱あつかった連載れんさいは実じつは反省はんせい点てんも多おおく、自分じぶんはまだペラペラの新人しんじんなんだと実感じっかんしました……！　とはいえ、どんなに売うれている大物おおもの作家さっかさんでも、なかには上手うまくいかなかった作品さくひんもあるのが普通ふつうなんですよね。どうしても「商業しょうぎょうデビューしたからには全部ぜんぶヒットさせなきゃ。毎まい話はなしおもしろくなきゃ」みたいな完璧かんぺき思考しこうに陥おちいって苦くるしみがちですが……。

同人どうじん女おんながバズったとき、たくさん感想かんそうが届とどくのが初はじめはシンプルにうれしかったんですが、そのうち「ここまで大量たいりょうのリアクションが来くるなら、作品さくひんと自分じぶんを切きり離はなして受うけ止とめるようにしないとキツくなるぞ」と感かんじるようになりました。

読者どくしゃの方ほうは作品さくひんについて自由じゆうに議論ぎろんしているのであって、私わたし自身じしんを否定ひていしているわけではない、というのを意識いしきするようになりました。

私わたしの場合ばあいは、絵えを描えがくことを長年ながねん仕事しごとにしてきて、「これが描えがきたい」とか「描えがいて楽たのしい」みたいな気持きもちが薄うすれてきたように感かんじます。その気持きもちをどう復活ふっかつさせたらせたらいいのか……？

自分じぶんごときがカレー沢さわ先生せんせいにアドバイスできるのか心配しんぱいですが、昔むかしの自分じぶんの作品さくひんを読よみ返かえして、「このときの私わたしはこんなチャレンジをしているな」と振ふり返かえってみるといいのかもしれません。あと私わたしは誰だれかの作品さくひんを見みて、おもしろく感かんじたところを箇条書かじょうがきにしたりしています。ほかにも昔むかしから好すきな作品さくひんの好すきなセリフを「私わたしの輝かがやける星ほし」と名付なづけたスプレッドシートにまとめるとか……。

はい（笑）。自分じぶんの中なかのときめきを言葉ことばにする作業さぎょうをやってみたらいいんじゃないでしょうか。

私わたしは今いまでも新しん連載れんさいが始はじまるときは緊張きんちょうします。ただ、連載れんさい開始かいしすぐ結果けっかが決きまるようなことはなくて、人気にんきに火ひがつくまで時間じかんがかかるケースは珍めずらしくないんですよね。それに「一いち度ど失敗しっぱいしたら終おわり」なんてこともなく、ダメでもどこかから声こえがかかるものなんですよ。失敗しっぱいを通とおして、自分じぶんの得意とくい／不得意ふとくいが見みえてくることもありますし、そういう意味いみでもいっぱい描えがいて出だしてみるのは大事だいじだと思おもいます。

ありがとうございます。経験けいけんが圧倒的あっとうてきに足たりないせいで、私わたしは下手へたをこく勇気ゆうきも足たりていないんでしょうね。

商業しょうぎょう作品さくひんにおける「下手へたをこく」って、見みている人ひとの数かずが少すくないということなので、「あいつ下手へたこいたぜ」っていうのがバレないんですよ（笑）。誰だれの記憶きおくにも残のこらないまま、ひっそりと終おわります。

創作そうさく相談そうだんの「『感想かんそう』とどう付つき合あえばいい？」の回かいでもおっしゃっていましたよね。「『好意こうい的てきな感想かんそうしかない』というのはおもしろいからではなく、『いろんな意見いけんが出でるほど大勢おおぜいに読よまれていない』ということなので、特とくに商業しょうぎょう作家さっかにとってはあまり良よいことではありません」という言葉ことばがすごく腑ふに落おちて、「つまらないと言いわれたとしても、そこがスタートなんだよな……」と染しみました。

アンチや批判ひはんはイヤなものですが、「こんな感想かんそうも出でてくるなんて、俺おれも偉えらくなったもんだ」と思おもうと少すこし慰なぐさめにもなりますよね。

創作そうさくをすれば誰だれでもその世界せかいの神かみになれるし、もしかしたら作品さくひんを読よんだ人ひとの心しんを動うごかせるかもしれない。それってすごいことだと思おもいます。一度いちど何なにかを作つくって感想かんそうをもらった経験けいけんがある人ひとは、その喜よろこびをなかなか手放てばなせないんじゃないでしょうか。だからこそ「感想かんそうが欲ほしくてたまらない」といった新あらたな悩なやみも生うまれるんでしょうが……。長ながく続つづけてきて作つくること自体じたいの感想かんそうは薄うすれたとしても、作品さくひんによって人ひとの心しんを動うごかしたことへの感動かんどうはやっぱりあります。「おもしろい」の一言ひとことだけでも、いまだにテンションが上あがりますから。

谷川たにがわ俊太郎しゅんたろうさんの作品さくひんに「からだの中なかに」という詩しがあるんですが、その中なかの「からだの中なかに 深ふかいさけびがあり 口こうはそれ故ゆえにつぐまれる」という一節いっせつが大好だいすきなんです。自分じぶんは叫さけびを抱かかえていて、現実げんじつ生活せいかつでもいろいろ言いったりはしているけど、それでも言葉ことばにしきれなかった部分ぶぶんを創作そうさくにぶつけているんだと思おもいます。叫さけびを叫さけびきって成仏じょうぶつさせないと、心しんにモヤモヤが残のこる。私わたしにとっての創作そうさくの快感かいかんって、そういうことかもしれません。

そういう感覚かんかくは私わたしにもありますね。すごく悲かなしいことや悔くやしいことも作品さくひんに昇華しょうかして、誰だれかがおもしろがってくれたら成仏じょうぶつできます。

SNSなど発表はっぴょうの場ばがいろいろあって、今いまは創作そうさくをやりたい人ひとにとっては恵めぐまれた時代じだいだと思おもいます。もちろん作品さくひんを発表はっぴょうするのに勇気ゆうきがいるのはわかりますが、せっかく良よい時代じだいに生うまれたからには、一いち歩ほ踏ふみ出だしてみるといいんじゃないでしょうか。そこから新あらたな扉とびらが開ひらくこともあると思おもいます。まぁ、こんな地獄じごくにわざわざ来こなくてもいいですし、読よみ専せんでもいいと思おもいますけどね。

1コママンガでも、1ツイートで終おわる小説しょうせつでも、どんな形式けいしきだっていいんです。どんな小ちいさな作品さくひんでも完成かんせいさせると達成たっせい感かんがあります。やってみた人ひとにしか得えられないこの喜よろこびを一度いちどぜひ味あじわってみてほしいです。