アウトモビリ・ランボルギーニは2023年3月29日(現地時間)、新型フラッグシップスーパースポーツ「Revuelto(レヴエルト)」を世界初公開した。
ランボルギーニの新たなフラッグシップモデル「レヴエルト」。V12エンジンをベースとするプラグインハイブリッド車として開発された。
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乗車定員は2人。パワーユニットはキャビン後方に搭載される。
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排気管はリアの高い位置にレイアウトされている。
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エンジンはカーボン製のフードで囲まれているものの、上面は露出している。
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「レヴエルト」のシステム最高出力は1015PS。0-100km/h加速はわずか2.5秒でこなす。
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ドアは従来どおりの跳ね上げ式となっている。
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広さと利便性にも配慮
その名はレヴエルト。もちろんランボルギーニの伝統的なネーミング手法にのっとって、それは闘牛の名前だ。1880年8月1日にバルセロナで戦った闘牛レヴエルトは、その最中に何度も柵を越え所構わずムチャクチャに暴れ回った。レヴエルトとはスペイン語で“かき混ぜる”の意。新時代のハイブリッドスーパーカーの名として、なるほどそれはふさわしい。
ご覧のとおり、そのスタイリングは全くもって新しい。と同時にそのディテールには随所にヘリテージの現代解釈がちりばめられている。それゆえ誰がどう見てもこれは立派に“ランボルギーニ”だ。
実際にプロトタイプを間近に観察すると一見複雑そうに見えたラインがすべて考え抜かれたものであることが分かる。直線的な処理が多いように見えて実はふくよかさをたたえているあたり、「カウンタック」と共通する美点だ。感心しつつ眺めているとチェントロ・スティーレの主(あるじ)であるミッティア・ボルカート氏が筆者をリアエンドへと手招きした。
「このアングルからのデザインがとても好きなんだ!」。上方排気の先をたどると、エンジンがむき出しになっている。覆いがない(炭素繊維強化プラスチック<CFRP>製フードは存在する)ため、この手のモデルとしては大きめのリアウィンドウとなっていて、コックピットをよく見通せるのだ。「エイリアンがこちらを見つめ返しているように見えるだろ?」。ミッティアが無邪気な笑いをみせた。ちなみにリアスポイラーは速度に応じて3段階に可変する。
ボディーカラーは現時点では8色(ビアンコシデラーレ、ブルオケアノス、ヴェルデヴァイパー、アランチオアポディス、ジアッロクンタッチ、ヴィオラパシファエ、グリジオアチェソ、ヴェルデタービン)のスタンダード仕様が用意されているが、もちろんスペシャルオーダーも可能だ。ちなみにミッティアのお気に入りはつや消し緑のヴェルデタービン。周りをブラックアウトしたY字ヘッドライトがフロントマスクの特徴だが、ライト下の黒い部分をボディー同色とすることもできる。逆にサイドドア前のフラップを黒にすることも可能。
「背の高いユーザーが多いので車高を少し上げたんだ。ルーフ形状と相まって室内高は握り拳ひとつぶん(24mm)広くなった。ヘルメットをかぶっても大丈夫なようにね。ドアの開閉についても、もう少し外に向けて開く。サイドシルはドア側に付けたから乗り降りもしやすくなっているよ」
フロントブートを開けると機内持ち込みサイズのトロリーが2つすっぽりとおさまる。また充電口もブート内にあって、充電時はフードが少し開いた状態でロックされる。
「アヴェンタドール」までの縦置きエンジンに対し前後180度逆の向きでマウントされる新開発V12ユニット。単体での重量は218kgと公表される。
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エンジンの後方に搭載される8段DCT。その上方にモーターが組み合わされている。
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インストゥルメントパネル中央には縦型ディスプレイが、助手席前方には横長の液晶モニターが配置される。
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メーターは液晶表示。運転にかかわるスイッチ類は、ステアリングホイールのスポーク上に集約されている。
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0-100km/h加速は2.5秒
サンタガータがレヴエルトを単なるPHEVではなくHPEV(ハイパフォーマンスエレクトリファイドビークル)とうたう理由は、もちろんその強力なハイブリッドパワートレインにあった。webCGでは既にリポート済みだから詳しくはそちらを参考にしていただくことにして(関連記事)、ここではそのスペックを簡単に振り返っておく。
完全新開発の6.5リッターV12自然吸気エンジンの最高出力は825PS/9250rpm。9500rpmまで許容する。最大トルクは725N・m/6750rpm。これに組み合わされるのが、前2機+後ろ1機の電気モーターと容量3.8kWhのリチウムイオンバッテリー、新開発の8段DCTだ。リアモーターのスペックは同150PS、同150N・m。スターターやジェネレーターとして機能するほか、必要に応じて後輪の駆動を助ける。2つのフロントモーターはそれぞれ同150PS、同350N・mで、前輪を駆動するほかトルクベクタリングや回生ブレーキとしても働く。電動走行は基本、フロントモーターが担うが、走行モードや状況に応じて完全電動の4WD走行もできる。後進ももちろん電動だ。
システム総出力はなんと1015PS。パワーウェイトレシオは驚異の“2切り”で1.75kg/PS。0-100km/h加速2.5秒、0-200km/h加速は7秒以下、最高速度は350km/hオーバーだ。フル電動時の電動航続距離に関しての公式発表はこの原稿を執筆している時点でまだないが、3.8kWhという比較的少なめの容量から想像するに10km程度ではないか。それでも早朝にガレージから最寄りのインターチェンジまで“無音”で走るくらいはできるだろう!
スロープ状のセンターコンソールは、センターモニター以下がセパレートしたデザインとなった。
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「レヴエルト」のモノコックボディーと前後サブフレームの総重量は「アヴェンタドール」比で10%軽量。ねじり剛性は25%アップしたという。
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重量のかさむリチウムイオンバッテリーは、これまでトランスミッションが占めていた車体の中央にレイアウトされている。
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航空機のスイッチを思わせるスタートボタンは「レヴエルト」でも採用された。
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ランボルギーニが「HPEV(High Performance Electrified Vehicle)」と呼ぶ「レヴエルト」。電気的なシステムながら、4WDの駆動方式は継承された。
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サンタガータ本社の工場における「レヴエルト」の生産ペースは年間1500台と見込まれている。
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カーボンの車体でも新たな挑戦
レヴエルトのもうひとつの注目点がボディー骨格だ。さらなる軽量化と高剛性を目指して複数のCFRP成型法を使った全く新しい骨格を開発したことと、量産ロードカーとしては初めてフロントサブフレームに高剛性で衝撃吸収性に優れたCFRPを採用したことの2点が新しい。リアのサブフレームはアルミニウム製。これによりモノコックボディーと前後サブフレームの総重量は「アヴェンタドール」用に比べて10%軽くなり、ねじり剛性は25%もアップしたという。
サンタガータは新しいモノコックボディーを“Monofuselage(単胴体)”と名づけた。主に3種類の成型方法によるCFRPが使われている。最も多く(50%以上)を占めるのは得意のフォージド(鍛造)カーボン。細かな炭素繊維を樹脂に混ぜホットプレス(5000t級)し成型する。使われているのはメインのバスタブをはじめフロントファイアウォール、フロントサブフレーム、アンダーパネルといった主要パートだ。
ハンドレイアップのプリプレグ成型はピラーからルーフにかけて、つまり軽量かつ頑丈でクラスAの表面クオリティーが必要な部分に使われた。
注目すべきはRTM(レジン・トランスファー・モールディング)成型でつくられる“ロッカーリング”と呼ばれる構造物だ。フロントサブフレームの接合部分と両サイドシルを回ってリアバルクヘッド下までリング状に一体成型した。そこに前述した鍛造カーボンのバスタブがすっぽりハマるという仕掛け。この部分のみサプライヤーから供給を受ける。
そのほかの成型部品、つまりプリプレグとRTM、そして新たに自動レイアップのプリプレグ・ホットプレスによる各成型パーツは、およそ1.5倍の規模に拡張されたCFK自社工場にて生産される。筆者は改装されたCFK工場も見学したが、アヴェンタドール時代とは大きく変わって、設備や手法はほとんど航空機の機体製造現場の様相を呈していた。
生産の現場も見学した。アヴェンタドール用の生産ラインはすべて取り除かれ、同じ場所、つまり歴代フラッグモデルを生産してきたサンタガータ本社のメイン工場内に全く新しいレヴエルト用のアッセンブリーラインができ、働く人の環境を大きく改善した美しい工場になっていた。18セクションあり、タクトタイムは65分。8時間の1シフト制で一日に7台のレヴエルトが生産されるという。しばらくは年産1500台ペースということだった。
(文=西川 淳)
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