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建築設計におけるAI(人工知能)活用が、大手建設会社で始まる。大林組は2023年7月中に、AIを活用した設計支援ツール「AiCorb(アイコルブ)」の社内運用を開始する。手描きのスケッチと建物をイメージした文章を基に、様々なファサード(建物の正面外観)のデザイン案を短時間で出力し、生成したデザインを基に3次元(3D)モデルを作成するツールだ。同社は23年内の一般向け試験公開に向け、追加機能の開発やAIモデルの性能向上などを進めている。
アイコルブは、大林組と米シリコンバレーに拠点を置く研究機関のSRI Internationalが共同で開発した。米スタートアップ企業のHypar(ハイパー)が提供する設計プラットフォーム「Hypar」の拡張機能として実装する。Hypar上では敷地条件などを入力することで、自動で建物のボリュームスタディー(どのくらいの規模の建物を建てられるか検討すること)ができる。アイコルブはHypar上で作成したボリュームモデルやスケッチの画像データなどを基に、多様なファサードデザインを出力する。
Hypar上で敷地条件などを入力すると、自動でボリュームスタディーができる(出所:大林組)
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建築設計の初期段階において、発注者に提案するデザイン案を作成する手間を削減できるのが売りだ。AIで生成したファサードデザインを発注者との打ち合わせにおける「たたき台」として活用し、合意形成を円滑化する効果が期待される。大林組設計本部アジア建築設計部の辻芳人部長は「人間の設計者に代わるものではなく、あくまで人間を支援する目的で開発している」と説明する。
22年3月に発表した後、実装に向けて追加機能の開発を進めてきた。その1つが日本語による文章入力への対応だ。開発当初はHypar上のボリュームモデルとスケッチを読み込ませる方法だけだったが、デザインのイメージを文章で指示できるようにすることで、発注者の要望に対してより直感的に提案できるようになった。
例えば、ラフなスケッチと「湾曲したガラスカーテンウオールが特徴的な、都会的なオフィスビル」という指示のほか、周辺環境や時間帯などを入力する。すると、40秒ほどでそれらを反映したファサードデザインが3枚提示される。
スケッチに加えてデザインを指示したり、時間帯や天候などを指定したりすることで複数のファサードデザインが提示される(出所:大林組)
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