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富士通がジレンマを抱えている。滋賀銀行が富士通製メインフレームを更改する方針を明らかにし、現行の勘定系システムを当面維持することになった。日立製作所と開発する新システムの稼働は2027年以降に先送りになる。滋賀銀行のメインフレーム更改は、富士通にとって実入りの良い案件という見方もあるが、話はそう単純ではない。
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滋賀銀行がこのほど開示した2024年3月期の有価証券報告書に、驚きの内容が盛り込まれた。同期末時点で計画している重要な設備の新設、改修の項目に、勘定系システムの「更改」が加えられたのだ。
中身はこうだ。61億3900万円を投じて、現行の勘定系システムが動作する富士通製メインフレームを更改する。プロジェクトは2024年6月に着手し、完了は2027年1月を見込む。アプリケーションには基本的に手を加えず、メインフレームを「単純更改」(滋賀銀行総合企画部)する形になる。
そもそも滋賀銀行は日立のオープン勘定系パッケージである「OpenStage」を活用して、新システムに切り替える計画を進めている。当初は2024年1月の稼働を見込んでいたが、延期を繰り返し、今は先行きが見通せない状況だ。富士通製メインフレームの更改は、現行システムを当面維持し、新システムの稼働が2027年以降になることを意味している。新システムの開発に向けて「十分な開発・検証時間を確保する」(同)狙いがある。
新システムの開発が難航する中、滋賀銀行が現行システムを手掛ける富士通を頼った格好だ。結果として、富士通は滋賀銀行からの打診を引き受けたわけだが、今回の決断は富士通のジレンマを映し出している。