伊藤いとう博文ひろぶみ

伊藤いとう博文ひろぶみ者もの，初はつ名な利助としすけ、俊輔しゅんすけ，號ごう春はる畝うね、滄浪閣かく主人しゅじん。日本にっぽん明治めいじ之これ相しょう，中興ちゅうこう之の能のう臣しん也。官かん至いたり貴族きぞく院いん議長ぎちょう、樞密院すうみついん議長ぎちょう、四よん拜はい內閣總理そうり大臣だいじん。爵從したがえ一等いっとう公こう。

天保てんぽう十じゅう二に年ねん，生なま於周防すおう國こく熊毛くまげ郡ぐん束荷つかり村むら（今いま山口やまぐち縣けん光ひかり市し），為ため長州ちょうしゅう藩はん領りょう。幼よう家か貧ひん，公門くもん爲ため奴やつ。稍やや長なが，入にゅう松下まつした村塾そんじゅく，師し高杉たかすぎ晉作しんさく。

文久ぶんきゅう二に年ねん，士人しじん尊王そんのう攘夷じょうい，焚英えい格かく蘭らん公館こうかん，刺とげ幕府ばくふ大だい學士がくし塙はなわ次郎じろう，其名始はじめ聞於諸侯しょこう。翌年よくねん，密みつ赴英倫りん，方ほう曉あきら西にし夷之えびすの勢ぜい盛もり，遂とげ棄一孔あな之の見み，仰おおせ西洋せいよう之の學まなべ，易えき名めい博文ひろぶみ。學がく成なり，歸き，內務卿きょう大久保おおくぼ利通としみち厚遇こうぐう之の，入閣にゅうかく，掌てのひら外交がいこう諸しょ務つとむ，官かん至いたり工こう部ぶ卿きょう。

明治めいじ十じゅう一いち年ねん，日本國にっぽんこく內亂頻しき仍。武士ぶし紀尾井きおい阪ばん刺殺しさつ利り通どおり。博文ひろぶみ臨危受命じゅめい，繼つぎ任にん內務卿きょう，治亂ちらん有ゆう術じゅつ，政せい稍やや平たいら。

十じゅう七なな年ねん，博文ひろぶみ引援德とく意志いし法典ほうてん，倡立憲法けんぽう，世せい謂いい「明治めいじ憲法けんぽう之の父ちち」。是ぜ年ねん，設しつらえ內閣，首しゅ輔太政大臣だじょうだいじん三條さんじょう實美みみ與あずか博文ひろぶみ爭そう相しょう位い。三條さんじょう世よ侯こう家か。博文ひろぶみ雖能，奈身微ほろ，止とめ賜たまもの伯爵はくしゃく，舊きゅう士多した不ふ齒は。外務がいむ卿きょう井上いのうえ馨かおる進言しんげん曰：「今いま之の內閣首相しゅしょう，須備內外賓がいひん服ふく之の能のう，不通ふつう西にし文者もんじゃ不足ふそく立りつ也。」內務卿きょう有朋ありとも亦また從したがえ之の曰：「若わか如此，非ひ博文ひろぶみ君くん莫屬矣。」天皇てんのう遂とげ定博さだひろ文ぶん。

博文ひろぶみ既すんで爲相ためすけ，內用西にし學がく，改あらため制せい易えき服ふく；外がい興きょう霸道，遠交近攻えんこうきんこう。二に十じゅう七なな年ねん，夷えびす朝鮮ちょうせん，己おのれ爲ため宗むね國こく。復ふく列れつ艦かん黃海こうかい，敗はい大だい清きよし水みず師し，陷おちい旅順りょじゅん、威海衛いかいえい，占うらない遼東りゃおとん，窺指北京ぺきん。清きよし廷懼，李り鴻章こうしう求もとめ和わ馬うま關せき。博文ひろぶみ欲よく並なみ臺灣たいわん，陳ちん甲かぶと兵へい之の威い臨使之の，鴻章こうしう氣き沮，曰：「貴國きこく何なん急きゅう之これ用よう？臺灣たいわん已やめ口こう中之なかの物ぶつ也。」博文ひろぶみ笑わらい曰：「尚なお未み下した嚥えん，飢かつえ甚。」鴻章こうしう知ち勢ぜい不可ふか挽，乃議定ぎてい償つぐなえ銀ぎん二に萬まん萬まん兩りょう，割わり遼東りゃおとん、臺だい澎諸しょ土ど。史し稱しょう《馬うま關せき條約じょうやく》。博文ひろぶみ以開疆首勛，封ふう侯こう。

當とう是ぜ時じ，俄にわか羅ら斯雄お據よりどころ北地きたじ，覬覦中國ちゅうごく。清きよし廷割土ど遼東りゃおとん，不利ふり於俄。乃結盟けつめい德とく、法ほう，揚言ようげん兵戈へいか，逼日本にっぽん還かえ遼東りゃおとん。博文ひろぶみ自じ度ど不可ふか敵てき三さん強きょう，從したがえ之これ。時日じじつ人じん方かた得とく志しむら中國ちゅうごく，遭此辱はずかしめ，皆みな罵ののし博文ひろぶみ國賊こくぞく。民心みんしん既すんで失しつ，博文ひろぶみ引辭。東ひがし瀛之士し始はじめ恨俄國こく。

三さん十じゅう三さん年ねん，創立そうりつ「立憲りっけん政友せいゆう會かい」，開ひらく兩りょう黨とう之これ制せい。

三さん十じゅう七なな年ねん，俄にわか羅ら斯國力こくりょく漸やや微ほろ。春はる二に月がつ，日にち俄にわか於旅順じゅん互戰，歷れき十じゅう八はち月がつ，俄にわか師し潰つぶせ敗はい，舉世震撼しんかん。日本にっぽん始はじめ列れつ於諸強きょう。既定きてい遼東りゃおとん，博文ひろぶみ統監とうかん韓國かんこく。朝鮮ちょうせん雖臣，民心みんしん未み服ふく，韓かん人じん切きり齒ぱ。四よん十じゅう二に年ねん冬ふゆ，博文會はくぶんかい俄にわか羅ら斯公使こうし於黑龍江こくりゅうこう哈爾濱はま，為ため韓かん人じん安やす重根しこね所ところ刺とげ，尋ひろ傷きず薨，年ねん六ろく十じゅう八はち。

考こう

春はる畝うね公こう追つい頌會編へん，《伊藤いとう博文ひろぶみ傳でん・上卷じょうかん》，統すべ正せい社しゃ發行はっこう，文化ぶんか印刷いんさつ印しるし，一いち九きゅう四よん零れい年ねん。（日にち文ぶん）
春はる畝うね公こう追つい頌會編へん，《伊藤いとう博文ひろぶみ傳でん・中ちゅう卷まき》，統すべ正せい社しゃ發行はっこう，文化ぶんか印刷いんさつ印しるし，一いち九きゅう四よん零れい年ねん。（日にち文ぶん）
春はる畝うね公こう追つい頌會編へん，《伊藤いとう博文ひろぶみ傳でん・下卷げかん》，統すべ正せい社しゃ發行はっこう，文化ぶんか印刷いんさつ印しるし，一いち九きゅう四よん零れい年ねん。（日にち文ぶん）
伊藤いとう之の雄ゆう編へん，《伊藤いとう博文ひろぶみ　近代きんだい日本にっぽんを創つくった男おとこ》，講談社こうだんしゃ發行はっこう，二に零れい零れい九きゅう年ねん十じゅう一いち月がつ。（日にち文ぶん）