蘇そ軾

蘇そ文忠ふみただ公おおやけ軾，字じ子こ瞻，一いち字じ和わ仲なか，號ごう曰東坡居士し，眉まゆ州しゅう眉山びざん人ひと，宋そう仁ひとし宗むね景けい祐ゆう三さん年ねん生せい。生なま十じゅう年ねん，父ちち洵まこと游ゆう學まなぶ四方しほう，母はは程ほど氏し親授しんじゅ以書。聞程氏し讀東ひがし漢かん《范滂傳でん》，慨然がいぜん太ふとし息いき，比ひ冠かんむり，博はく通どおり經けい史し，屬ぞく文ぶん日數にっすう千言せんげん。

嘉よしみ祐ゆう二に年ねん，試ためし禮れい部ぶ，擢第二に；復ふく以《春秋しゅんじゅう》對たい義ぎ居きょ第だい一いち，殿しんがり試ためし中ちゅう乙おつ科か。丁ちょう母はは憂う。五ご年ねん，調しらべ福ぶく昌あきら主ぬし簿ぼ。歐おう陽ひ修おさむ以才識さいしき兼けん茂しげる，薦こも之の。復ふく對たい制せい策さく，入いれ三さん等とう。除じょ大だい理り評ひょう事ごと、簽書鳳おおとり翔しょう府ふ判官ほうがん。治平じへい二に年ねん，入いれ判ばん登とう聞鼓院いん。英えい宗むね自じ藩邸はんてい聞其名めい，召試二に論ろん，復ふく入いれ三さん等とう，得とく直史なおふみ館かん。會かい洵まこと卒そつ，賻以金きん帛，辭じ之の。

熙寧二に年ねん，還かえ朝あさ。王おう安やすし石せき執政しっせい，素もと惡あく其議論ろん異い己おのれ，以判官かん告つげ院いん。四よん年ねん，安やす石いし欲ほし變へん科か舉、興きょう學校がっこう，詔みことのり兩りょう制せい、三さん館かん議ぎ。軾上議ぎ不可ふか，神かみ宗はじめ悟さとる。即日そくじつ召見，問もん︰「方今ほうこん政令せいれい得失とくしつ。」安やす石せき不ふ悅えつ，命いのち權けん開封かいふう府ふ推官，將はた困こま之これ以事。軾決斷けつだん精せい敏さとし，聲聞しょうもん益えき遠とお。軾見安やす石せき贊さん神かみ宗はじめ以獨斷どくだん專任せんにん，因いん試ためし進士しんし發はつ策さく，以晉すすむ武たけ平ひらた吳ご以獨斷どくだん而克，苻堅伐き晉すすむ以獨斷どくだん而亡，齊ひとし桓專任せんにん管かん仲なか而霸，燕つばめ噲專任せんにん子こ之の而敗，事こと同どう而功異あや為ため問とえ，安やす石せき滋しげる怒いか，使つかい御ご史し謝しゃ景けい溫ゆたか論ろん奏そう其過，窮きゅう治ち無む所得しょとく，軾遂請外，通つう判ばん杭州こうしゅう。

時どき新政しんせい日下くさか，軾於其間，每まい因いん法ほう以便民みん，氏賴うじより以安。徙知密みつ州しゅう。未み幾いく，徙知徐じょ州しゅう，復ふく知ち湖みずうみ州しゅう，上表じょうひょう以謝。又また以事不便ふべん民みん者しゃ不ふ敢言，以詩託たく諷。御ご史し李り定じょう、舒亶、何なに正ただし言げん摭其語ご，並なみ媒なかだち糱所為しょい詩し以為訕謗，逮臺獄ごく，欲よく寘之死し，鍛きたえ鍊久之の不ふ決けつ。神かみ宗はじめ獨どく憐之，以黃き州しゅう團だん練ねり副使ふくし安置あんち。

軾與田た父ちち野老ところ，相そう從したがえ溪山けいざん間あいだ，築ちく室しつ於東おひがし坡，自じ號ごう東ひがし坡居士し。三さん年ねん，神かみ宗はじめ數すう有意ゆうい復ふく用よう，輒為當路とうろ者しゃ沮之。神かみ宗はじめ嘗語宰相さいしょう王おう珪、蔡確曰︰「國史こくし至いたり重じゅう，可か命いのち蘇そ軾成之の。」珪有難色なんしょく。神かみ宗はじめ用よう曾鞏。鞏進《太ふとし祖そ總論そうろん》，神かみ宗はじめ意い不ふ允まこと，遂とげ手札しゅさつ移うつり軾汝なんじ州しゅう。軾未至いたり汝なんじ，上書うわがき自じ言げん，有田ありた在ざい常つね，願ねがい得とく居きょ之の，報ほう可か。至いたり常つね，神かみ宗はじめ崩くずし，哲あきら宗むね立だて，復ふく朝あさ奉たてまつ郎ろう、知ち登のぼり州しゅう，召為禮れい部ぶ郎ろう中ちゅう。遷起居ききょ舍人とねり。軾起於憂患ゆうかん，不ふ欲よく驟履要地ようち，辭じ於宰相しょう蔡確。確かく不ふ許もと。

元げん祐ゆう元年がんねん，遷中書ちゅうしょ舍人とねり。尋ひろ除じょ翰林かんりん學士がくし。二に年ねん，兼けん侍讀じどく。每まい進すすむ讀，反覆はんぷく開ひらけ導しるべ。三さん年ねん，權けん知ち禮れい部ぶ貢みつぎ舉。四よん年ねん，積せき以論事ごと，為當ためとう軸じく者しゃ所しょ恨。軾恐不ふ見み容よう，請外，拜はい龍りゅう圖ず閣かく學士がくし、知ち杭州こうしゅう，有德うとく於民，家いえ有ゆう畫像がぞう，飲食いんしょく必祝。又また生なま作さく祠ほこら以報。六ろく年ねん，召為吏部尚書しょうしょ，未み至いたり。以弟轍わだち除じょ右みぎ丞すすむ，改あらため翰林かんりん承うけたまわ旨むね。軾在翰林かんりん數すう月がつ，復ふく以讒請外，乃以龍りゅう圖ず閣かく學士がくし出で知ち潁州。七なな年ねん，徙揚あげ州しゅう。未み閱歲，以兵部ぶ尚書しょうしょ召兼侍讀じどく，哲あきら宗そう親ちかし祀まつ南郊なんこう，軾為鹵簿ろぼ使し。尋ひろ遷禮部ぶ兼けん端はし明あきら殿どの、翰林かんりん侍讀じどく兩りょう學士がくし，為ため禮れい部ぶ尚書しょうしょ。八はち年ねん，宣仁のぶひと后きさき崩くずれ，哲あきら宗そう親政しんせい。軾乞補外ほがい，以兩學士がくし出で知ち定じょう州しゅう。

紹聖初はつ，御ご史論しろん軾掌內外制せい日び，所しょ作詞さくし命いのち，以為譏そし斥先朝あさ。遂とげ以本官かん知ち英えい州しゅう，尋ひろ降くだ一いち官かん，未み至いたり，貶寧遠とお軍ぐん節度せつど副使ふくし，惠めぐみ州しゅう安置あんち。又また貶瓊州別べつ駕が。徽宗立だて，移うつり廉れん州しゅう，改あらため舒州團だん練ねり副使ふくし，徙永なが州しゅう。更さら三さん大赦たいしゃ，還かえ提つつみ舉玉局きょく觀かん，復ふく朝あさ奉たてまつ郎ろう。建けん中ちゅう靖國やすくに元年がんねん，卒そつ於常州しゅう。

軾自為ため舉子至いたり出入でいり侍從じじゅう，必以愛あい君くん為本ためもと，忠ちゅう規ぶんまわし讜論，挺てい挺てい大だい節ぶし，群臣ぐんしん無む出で其右。高こう宗はじめ即位そくい，贈おく資し政せい殿どの學士がくし。以其文ぶん寘左右さゆう，讀之終日しゅうじつ忘倦，親おや製せい集しゅう贊さん，賜たまもの其曾孫まご嶠。遂とげ崇たかし贈おく太ふとし師し，諡おくりな文忠ふみただ。