石いし亨とおる

石いし亨とおる
石いし亨とおる
	大だい明太めんたい師し忠國ただくに公おおやけ兼けん鎮朔大將軍だいしょうぐん
籍せき貫ぬき	陝西せんせい
族ぞく裔	漢かん族ぞく
出生しゅっしょう	洪ひろし武たけ年間ねんかん; 陝西せんせい渭南
逝世	1460年ねん; 京師けいし
配偶はいぐう	郑氏
親おや屬ぞく	侄石いし彪あや
出身しゅっしん
	繼承けいしょう父ちち職しょく
經歷けいれき
	寬ひろし河かわ衛まもる指揮しき僉事; 都みやこ督ただし同どう知ち充たかし參まいり將しょう; 都と指揮しき使し、都と督とく僉事; 都みやこ督ただし同どう知ち; 掌てのひら五ご軍營ぐんえい右みぎ都と督とく; 封ふう武たけ清きよし伯はく、鎮朔大將軍だいしょうぐん; 太子たいし太ふとし師し; 提督ていとく、封ふう忠國ただくに公おおやけ; 罷職ひしょく

石いし亨とおる（？—1460年ねん），渭南（今こん屬ぞく陝西せんせい）人にん，明朝みょうちょう軍事ぐんじ將領しょうりょう。

生平おいだいら

石いし亨とおる繼承けいしょう父ちち職しょく，因いん功こう升ます任にん寬ひろし河かわ衛まもる指揮しき僉事，善ぜん騎射きしゃ。正統せいとう中ちゅう累るい遷都みやこ督ただし同どう知ち，充たかし參まいり將しょう，輔佐ほさ朱しゅ冕鎮守ちんじゅ大同だいどう，后きさき晋すすむ升ます都と指揮しき使し、都と督とく僉事，接せっ連れん擊げき敗はい兀良哈入侵おかせ。正統せいとう十じゅう四よん年ねん，與あずか都と督とく僉事馬うま麟巡めぐ僥塞外がい，并在箭や豁山擊げき敗はい兀良哈，晋すすむ升ます都と督とく同どう知ち。當時とうじ邊あたり將はた中ちゅう首くび推楊洪、其次為石ためし亨とおる。同年どうねん秋あき，也先入せんにゅう侵おかせ，石せき亨とおる與あずか西にし寧やすし侯こう宋そう瑛あきら、武たけ進すすむ伯はく朱しゅ冕等在ざい陽ひ和口わぐち大戰たいせん而敗，宋そう瑛あきら、朱しゅ冕戰死せんし，石せき亨とおる單騎たんき奔還，后きさき被ひ降くだ职，募兵ぼへい以自效こう^[1]。

郕王監かん國こく時じ，兵部ひょうぶ尚書しょうしょ于謙舉薦，召回掌てのひら五ご軍營ぐんえい，進しん右みぎ都と督とく，后きさき封ふう武たけ清きよし伯はく。也先逼近京師けいし時じ，命いのち其與都と督とく陶とう瑾等とう九きゅう位い將領しょうりょう，分別ふんべつ守衛しゅえい順じゅん天てん府ふ九きゅう門もん。其中正せい北きた的てき德とく勝かち門もん首くび當とう其衝，特命とくめい其鎮守ちんじゅ，于謙則そく擔任たんにん監かん軍ぐん。也先率先そっせん進攻しんこう彰あきら義ぎ門もん，都みやこ督ただし高こう禮あや等とう阻卻；隨ずい後ご轉うたて到いた德とく勝しょう門外もんがい，石せき亨とおる聽從ちょうじゅう于謙命令めいれい，設しつらえ伏兵ふくへい誘さそえ擊げき，瓦かわら剌死傷ししょう甚多。之これ後ご蒙こうむ古こ軍ぐん轉てん而圍攻おさむ孫まご鏜的てき西にし直門じきもん外そと，而石亨とおる親おや自じ率りつ大軍たいぐん救援きゅうえん。雙方そうほう相しょう持じ五ご日にち，瓦かわら剌撤軍ぐん。京師けいし保衛やすえ戰せん獲え勝かち，論功ろんこう石せき亨とおる為ため多た，晋すすむ升ます武たけ清きよし侯こう^[2]。

景けい泰たい元年がんねん，命いのち佩鎮朔ついたち大將軍だいしょうぐん印しるし，帥そち京きょう軍ぐん三さん萬まん人にん，巡じゅん哨大同だいどう，并擊潰つぶせ地方ちほう入寇にゅうこう。同年どうねん秋あき，予よ世襲せしゅう誥券，景けい帝みかど易えき儲もうか后きさき，加か封ふう太子たいし太ふとし師し。于謙設立せつりつ團だん營，命いのち石せき亨とおる擔任たんにん提督ていとく，仍然擔任たんにん總そう兵へい官かん。景けい泰たい八はち年ねん，石せき亨とおる在ざい榻前受命じゅめい，見み景けい帝みかど病びょう重じゅう，與あずか張ちょう軏、曹吉祥きっしょう等とう謀はかりごと立りつ明あきら英えい宗むね。奪だつ門もん之の變へん后きさき，明あきら英えい宗むね復辟ふくへき，石せき亨とおる因いん首くび功こう，進しん封ふうじ為ため忠國ただくに公おおやけ，眷顧けんこ特異とくい，言げん無む不ふ從したがえ。因いん奪だつ門もん之の變へん而獲得かくとく官職かんしょく者しゃ達たち四よん千せん餘人よにん，而此前ぜん兩りょう京きょう官署かんしょ，均ひとし被ひ調しらべ換かわ。之これ後ご其貪污受賄まかなえ，勢いきおい焰熏灼。

景けい帝みかど時じ，为感激かんげき于谦的てき知遇ちぐう之の恩おん，他た向こう皇帝こうてい请求封ふう赏谦子こ于冕，于謙斥为徇私，竟與于謙交惡。天てん順じゅん元年がんねん（1457年ねん）正月しょうがつ，因いん私わたし憾杀于谦、范廣等ひとし。同年どうねん五ご月がつ，杨瑄、张鹏等とう十じゅう七位御史上书弹劾曹吉祥、石いし亨とおる，被ひ石いし亨とおる、曹吉祥きっしょう诬陷为“结党排はい陷おちい”，杨瑄、张鹏等とう人じん入にゅう狱。右みぎ都と御ご史し耿九畴、副ふく都と御ご史し罗绮被ひ石いし亨とおる诬陷为主使し，下しも狱贬官かん^[3]。

石いし亨とおる每日まいにち均ひとし進しん諫，屢次干ひ預あずか朝政ちょうせい。久之ひさゆき，英えい宗むね不能ふのう忍受にんじゅ，對たい內閣大臣だいじん李り賢けん諮詢しじゅん，李り賢けん則のり請獨斷どくだん。於是要求ようきゅう總そう兵へい官等かんとう不ふ得とく頻繁ひんぱん召見。石いし亨とおる曾經在ざい其祖墓ぼ上じょう立だて碑ひ，后きさき工こう部ぶ發現はつげん舉報，明あきら景けい帝みかど責せめ令れい部署ぶしょ，仍然命いのち石せき亨とおる自立じりつ，石せき亨とおる營建房ぼう第だい超過ちょうか王おう府ふ。天てん順じゅん三さん年ねん，其侄石いし彪あや欲よく鎮守ちんじゅ大同だいどう，后きさき被ひ發覺はっかく，下しも詔みことのり獄ごく詢問，得とく繡蟒龍りゅう衣ころも及違式しき寢床ねどこ諸しょ不ふ法事ほうじ，當とう死罪しざい，於是籍せき石せき彪あや家か。當時とうじ正せい朝議ちょうぎ革かわ除じょ奪だつ門もん之の變へん功こう勳くん，於是追つい問とい石せき亨とおる黨とう羽わ。天てん順じゅん四よん年ねん（1460年ねん）石いし亨とおる大だい肆培植うえ黨とう羽わ，干ひ預あずか朝政ちょうせい。明あきら英えい宗むね不能ふのう忍受にんじゅ，罷やめ其職，得とく罪ざい瘐死獄中ごくちゅう，盡つき誅其黨とう羽わ。後ご又また以家屬ぞく不軌ふき，下した詔みことのり獄ごく，坐すわ謀叛ぼうほん律りつ斬き，沒ぼつ其家資し。此為曹石之の變へん^[4]。

石いし亨とおる妻つま是ぜ武安たけやす侯こう郑宏妹いもうと。

参考さんこう文献ぶんけん

^ 《明あかり史し》（卷まき173）：“石いし亨とおる，渭南人じん。生なま有ゆう異狀いじょう，方面ほうめん偉えら軀，美髯びぜん及膝。其從子こ彪あや魁さきがけ梧似之の，須亦過か腹はら。就飲酒しゅ肆，相者そうしゃ曰：「今平いまひら也，二人何乃有封侯相？」亨とおる嗣世父ちち職しょく，為ため寬ひろし河かわ衛まもる指揮しき僉事。善ぜん騎射きしゃ，能のう用よう大刀たち，每まい戰せん輒摧破。正統せいとう初はつ，以獲首くび功こう，累るい遷都せんと指揮しき僉事。敗はい敵てき黃牛あめうし坡，獲え馬ば甚眾。三さん年ねん正月しょうがつ，敵てき三さん百ひゃく余よ騎き飲いん馬ば黃河こうが，亨とおる追擊ついげき至いたり官かん山下やました，多た所しょ斬き獲え。進すすむ都と指揮しき同どう知ち。尋ひろ充たかし左ひだり參さん將はた，佐武さたけ進すすむ伯はく朱しゅ冕守大同だいどう。六ろく年ねん上じょう言げん：「邊あたり餉難繼ままし，請分大同だいどう左右さゆう、玉たま林りん、雲くも川かわ四よん衛まもる軍ぐん，墾凈水すい坪つぼ迤西曠土，官給かんきゅう牛うし種しゅ，可か歲とし增ぞう糧かて萬まん八はち千せん石せき。」明年みょうねん又また言げん：「大同だいどう西にし路ろ屯たむろ堡，皆みな臨極邊べ。玉たま林りん故こ城しろ去さ右みぎ衛まもる五ご十じゅう裏うら，與あずか東ひがし勝しょう單たん於城接せっ，水草みずくさ便利べんり。請分軍ぐん築ちく壘るい，防護ぼうご屯たむろ種しゅ。」詔みことのり皆みな允まこと行ぎょう。尋ひろ以敗敵てき紅べに城じょう功いさお，進すすむ都と指揮しき使し。敵てき犯はん延のべ安やす，追つい至いたり金山かなやま敗はい之の，再さい遷都せんと督とく僉事。亨とおる以國制せい搜さがせ將はた才ざい未み廣こう，請仿漢かん、唐とう制せい，設しつらえ軍ぐん謀はかりごと宏遠こうえん、智識ちしき絕倫ぜつりん等とう科か，令れい人じん得え自じ陳ひね，試驗しけん擢用，不ふ專せん保ほ舉。報ほう可か。十じゅう四よん年ねん，與あずか都と督とく僉事馬ば麟巡僥塞外がい。至いたり箭や豁山，敗はい兀良哈眾，進しん都みやこ督ただし同どう知ち。是ぜ時じ，邊へん將はた智勇ちゆう者しゃ推楊洪ひろし，其次則そく亨とおる。亨とおる雖偏將はた，中ちゅう朝ちょう倚之如大帥そち，故こ亨とおる亦また盡力じんりょく。其秋，也先大だい舉寇大同だいどう，亨とおる及西寧やすし侯こう宋そう瑛あきら、武たけ進すすむ伯はく朱しゅ冕等戰せん陽ひ和口わぐち。瑛あきら、冕戰沒ぼつ，亨とおる單騎たんき奔還。降くだ官かん，募兵ぼへい自じ效こう。”
^ 《明あかり史し》（卷まき173）：“郕王監かん國こく，尚書しょうしょ于謙薦こも之の。召掌五ご軍ぐん大だい營，進しん右みぎ都と督とく。無む何なに，封ふう武たけ清きよし伯はく。也先逼京師し，命いのち偕都督とく陶すえ瑾等九きゅう將しょう，分ふん兵營へいえい九きゅう門外もんがい。德とく勝かち門もん當とう敵てき沖おき，特とく以命亨とおる。于謙以尚書しょ督とく軍ぐん。寇薄彰あきら義ぎ門もん，都と督とく高だか禮れい等とう卻之。轉てん至德しとく勝しょう門外もんがい，亨とおる用よう謙けん令れい，伏兵ふくへい誘さそえ擊げき，死者ししゃ甚眾。既すんで而圍孫まご鏜西直門じきもん外がい，以亨救すくい引卻。相あい持じ五ご日にち，寇斂眾遁。論功ろんこう，亨とおる為ため多た，進しん侯こう。”
^ 《明あかり史し》（卷まき173）：“景けい泰たい元年がんねん二月命佩鎮朔大將軍印，帥そち京きょう軍ぐん三さん萬まん人にん，巡じゅん哨大同だいどう。遇ぐう寇，敗はい之の。其秋，予よ世襲せしゅう誥券。易えき儲もうか，加か亨とおる太子たいし太ふとし師し。于謙立りつ團だん營，命いのち亨とおる提督ていとく，充たかし總そう兵へい官かん如故。八はち年ねん，帝みかど將はた郊，宿やど齋宮いつきのみや，疾やまし作さく不能ふのう行ぎょう禮れい，召亨代だい。亨とおる受命じゅめい榻前，見み帝みかど病びょう甚，遂とげ與あずか張ちょう軏、曹吉祥きっしょう等とう謀はかりごと迎むかえ立たて上皇じょうこう。上皇じょうこう既すんで復辟ふくへき，以亨首くび功こう，進しん爵忠國こく公こう。眷顧けんこ特異とくい，言げん無む不ふ從したがえ。其弟侄家人じん冒おかせ功こう錦にしき衣ころも者しゃ五ご十じゅう余人よにん，部ぶ曲きょく親おや故こ竄名「奪だつ門もん」籍せき得とく官かん者しゃ四よん千せん余人よにん。兩りょう京大きょうだい臣しん，斥逐殆盡。納おさめ私人しじん重じゅう賄まかなえ，引用いんよう太ふと仆丞孫まご弘ひろし，郎ろう中陳なかじん汝なんじ言ごと、蕭しょう璁、張ちょう用よう瀚、郝璜、龍文たつふみ、朱しゅ銓，員外いんがい郎ろう劉りゅう本道ほんどう為ため侍さむらい郎ろう。時とき有ゆう語ご曰「朱しゅ三さん千せん，龍りゅう八はち百ひゃく」。勢いきおい焰熏灼，嗜進者しゃ競走きょうそう其門。既すんで以私憾殺于謙、范廣等とう，又また以給事ごと中ちゅう成章せいしょう、御ご史し甘あま澤さわ等とう九きゅう人にん嘗攻其失，貶黜之の。數かず興きょう大獄たいごく，構陷耿九疇、嶽たけ正ただし，而戍楊瑄、張ちょう鵬ほう，謫周斌あきら、盛もり颙等。又また惡文あくぶん臣しん為ため巡じゅん撫なで，抑そもそも武臣ぶしん不ふ得とく肆，盡つき撤還。由よし是ぜ大權たいけん悉歸亨とおる。”
^ 《明あかり史し》（卷まき173）：“亨とおる無む日にち不ふ進すすむ見み，數かず預あずか政事せいじ。所ところ請或不ふ從したがえ，艴然見み於辭色しょく。即そく不ふ召，必假事ごと以入，出で則そく張ちょう大だい其勢，市し權利けんり。久之ひさゆき，帝みかど不能ふのう堪こらえ，嘗以語ご閣かく臣しん李り賢けん。賢けん曰：「惟おもんみ獨斷どくだん乃可。」帝みかど然しか之これ。一いち日にち語ご賢けん曰：「閣かく臣しん有事ゆうじ，須燕見み。彼かれ武臣ぶしん，何故なぜ頻しき見み？」遂とげ敕左順じゅん門もん，非ひ宣せん召毋得とく納おさめ總そう兵へい官かん。亨とおる自じ此稀燕つばめ見み。亨とおる嘗白帝みかど立りつ碑ひ於其祖そ墓ぼ。工こう部ぶ希まれ亨とおる指ゆび，請敕有司ゆうし建立こんりゅう，翰林院かんりんいん撰文せんぶん。帝みかど以永樂たのし以來いらい，無為むい功臣こうしん祖宗そそう立りつ碑ひ故事こじ，責せめ部ぶ臣しん，而令亨とおる自立じりつ。初はつ，帝みかど命いのち所司しょし為ため亨とおる營第。既成きせい，壯麗そうれい逾制。帝みかど登のぼり翔しょう鳳おおとり樓ろう見み之の，問もん誰だれ所しょ居きょ。恭順きょうじゅん侯こう吳くれ瑾謬對たい曰：「此必王おう府ふ。」帝みかど曰：「非ひ也。」瑾曰：「非ひ王おう府ふ，誰だれ敢僭逾若此？」帝みかど頷之。亨とおる既すんで權けん侔人主ぬし，而從子こ彪あや亦また封ふうじ定てい遠とお侯こう，驕おご橫よこ如亨。兩家りょうけ蓄材官かん猛もう士し數すう萬まん，中外ちゅうがい將帥しょうすい半はん出で其門。都と人じん側目そばめ。三さん年ねん秋あき，彪あや謀はかりごと鎮大同だいどう，令れい千戶楊斌等奏保。帝みかど覺さとし其詐，收おさむ斌あきら等とう拷問ごうもん得とく實み，震ふるえ怒いか，下しも彪あや詔みことのり獄ごく。亨とおる懼，請罪。帝みかど慰諭之の。亨とおる請盡削そぎ弟おとうと侄官，放ひ歸き田でん裏うら。帝みかど亦また不ふ許もと。及鞫彪あや，得とく繡蟒龍りゅう衣ころも及違式しき寢床ねどこ諸しょ不ふ法事ほうじ，罪つみ當とう死し。遂とげ籍せき彪あや家か，命いのち亨とおる養やしなえ病びょう。亨とおる嘗遣京きょう衛まもる指揮しき裴瑄出で關せき市木いちき，遣や大同だいどう指揮しき盧の昭あきら追つい捕と亡者もうじゃ。至いたり是ぜ事ごと覺さとし，法ほう司し請罪亨とおる，帝みかど猶なお置おけ不問ふもん。法ほう司し再さい鞫彪，言げん彪あや初はつ為ため大同だいどう遊ゆう擊げき，以代王おう增ぞう祿ろく為ため己おのれ功こう，王おう至いたる跪謝。自じ是ぜ數すう款彪，出で歌か妓ぎ行ぎょう酒しゅ。彪あや淩侮親王しんのう，罪つみ亦また當とう死し。因よし劾亨招權納おさめ賕，肆行無む忌き，與あずか術じゅつ士し鄒叔彜等私わたし講こう天文てんもん，妄談休きゅう咎とがめ，宜むべ置おけ重典しげのり。帝みかど命いのち錮彪於獄，亨とおる閑住，罷やめ朝あさ參さん。時どき方かた議ぎ革かわ「奪だつ門もん」功いさお，窮きゅう治ち亨とおる黨とう，由ゆかり亨とおる得とく官かん者しゃ悉黜，朝ちょう署しょ一清かずきよ。明年みょうねん正月しょうがつ，錦にしき衣ころも指揮しき逯杲奏そう亨とおる怨望，與あずか其從孫まご後ご等とう造づくり妖言ようげん，蓄養無賴ぶらい，專せん伺朝廷ちょうてい動靜どうせい，不ふ軌跡きせき已やめ著ちょ。廷臣ていしん皆みな言げん不可ふか輕けい宥なだめ。乃下亨とおる詔みことのり獄ごく，坐すわ謀叛ぼうほん律りつ斬き，沒ぼつ其家貲。逾月，亨とおる瘐死，彪ぴょう、後こう並なみ伏ふく誅。”

[1] 《明あかり史し》（卷まき173）：“石いし亨とおる，渭南人じん。生なま有ゆう異狀いじょう，方面ほうめん偉えら軀，美髯びぜん及膝。其從子こ彪あや魁さきがけ梧似之の，須亦過か腹はら。就飲酒しゅ肆，相者そうしゃ曰：「今平いまひら也，二人何乃有封侯相？」亨とおる嗣世父ちち職しょく，為ため寬ひろし河かわ衛まもる指揮しき僉事。善ぜん騎射きしゃ，能のう用よう大刀たち，每まい戰せん輒摧破。正統せいとう初はつ，以獲首くび功こう，累るい遷都せんと指揮しき僉事。敗はい敵てき黃牛あめうし坡，獲え馬ば甚眾。三さん年ねん正月しょうがつ，敵てき三さん百ひゃく余よ騎き飲いん馬ば黃河こうが，亨とおる追擊ついげき至いたり官かん山下やました，多た所しょ斬き獲え。進すすむ都と指揮しき同どう知ち。尋ひろ充たかし左ひだり參さん將はた，佐武さたけ進すすむ伯はく朱しゅ冕守大同だいどう。六ろく年ねん上じょう言げん：「邊あたり餉難繼ままし，請分大同だいどう左右さゆう、玉たま林りん、雲くも川かわ四よん衛まもる軍ぐん，墾凈水すい坪つぼ迤西曠土，官給かんきゅう牛うし種しゅ，可か歲とし增ぞう糧かて萬まん八はち千せん石せき。」明年みょうねん又また言げん：「大同だいどう西にし路ろ屯たむろ堡，皆みな臨極邊べ。玉たま林りん故こ城しろ去さ右みぎ衛まもる五ご十じゅう裏うら，與あずか東ひがし勝しょう單たん於城接せっ，水草みずくさ便利べんり。請分軍ぐん築ちく壘るい，防護ぼうご屯たむろ種しゅ。」詔みことのり皆みな允まこと行ぎょう。尋ひろ以敗敵てき紅べに城じょう功いさお，進すすむ都と指揮しき使し。敵てき犯はん延のべ安やす，追つい至いたり金山かなやま敗はい之の，再さい遷都せんと督とく僉事。亨とおる以國制せい搜さがせ將はた才ざい未み廣こう，請仿漢かん、唐とう制せい，設しつらえ軍ぐん謀はかりごと宏遠こうえん、智識ちしき絕倫ぜつりん等とう科か，令れい人じん得え自じ陳ひね，試驗しけん擢用，不ふ專せん保ほ舉。報ほう可か。十じゅう四よん年ねん，與あずか都と督とく僉事馬ば麟巡僥塞外がい。至いたり箭や豁山，敗はい兀良哈眾，進しん都みやこ督ただし同どう知ち。是ぜ時じ，邊へん將はた智勇ちゆう者しゃ推楊洪ひろし，其次則そく亨とおる。亨とおる雖偏將はた，中ちゅう朝ちょう倚之如大帥そち，故こ亨とおる亦また盡力じんりょく。其秋，也先大だい舉寇大同だいどう，亨とおる及西寧やすし侯こう宋そう瑛あきら、武たけ進すすむ伯はく朱しゅ冕等戰せん陽ひ和口わぐち。瑛あきら、冕戰沒ぼつ，亨とおる單騎たんき奔還。降くだ官かん，募兵ぼへい自じ效こう。”

[2] 《明あかり史し》（卷まき173）：“郕王監かん國こく，尚書しょうしょ于謙薦こも之の。召掌五ご軍ぐん大だい營，進しん右みぎ都と督とく。無む何なに，封ふう武たけ清きよし伯はく。也先逼京師し，命いのち偕都督とく陶すえ瑾等九きゅう將しょう，分ふん兵營へいえい九きゅう門外もんがい。德とく勝かち門もん當とう敵てき沖おき，特とく以命亨とおる。于謙以尚書しょ督とく軍ぐん。寇薄彰あきら義ぎ門もん，都と督とく高だか禮れい等とう卻之。轉てん至德しとく勝しょう門外もんがい，亨とおる用よう謙けん令れい，伏兵ふくへい誘さそえ擊げき，死者ししゃ甚眾。既すんで而圍孫まご鏜西直門じきもん外がい，以亨救すくい引卻。相あい持じ五ご日にち，寇斂眾遁。論功ろんこう，亨とおる為ため多た，進しん侯こう。”

[3] 《明あかり史し》（卷まき173）：“景けい泰たい元年がんねん二月命佩鎮朔大將軍印，帥そち京きょう軍ぐん三さん萬まん人にん，巡じゅん哨大同だいどう。遇ぐう寇，敗はい之の。其秋，予よ世襲せしゅう誥券。易えき儲もうか，加か亨とおる太子たいし太ふとし師し。于謙立りつ團だん營，命いのち亨とおる提督ていとく，充たかし總そう兵へい官かん如故。八はち年ねん，帝みかど將はた郊，宿やど齋宮いつきのみや，疾やまし作さく不能ふのう行ぎょう禮れい，召亨代だい。亨とおる受命じゅめい榻前，見み帝みかど病びょう甚，遂とげ與あずか張ちょう軏、曹吉祥きっしょう等とう謀はかりごと迎むかえ立たて上皇じょうこう。上皇じょうこう既すんで復辟ふくへき，以亨首くび功こう，進しん爵忠國こく公こう。眷顧けんこ特異とくい，言げん無む不ふ從したがえ。其弟侄家人じん冒おかせ功こう錦にしき衣ころも者しゃ五ご十じゅう余人よにん，部ぶ曲きょく親おや故こ竄名「奪だつ門もん」籍せき得とく官かん者しゃ四よん千せん余人よにん。兩りょう京大きょうだい臣しん，斥逐殆盡。納おさめ私人しじん重じゅう賄まかなえ，引用いんよう太ふと仆丞孫まご弘ひろし，郎ろう中陳なかじん汝なんじ言ごと、蕭しょう璁、張ちょう用よう瀚、郝璜、龍文たつふみ、朱しゅ銓，員外いんがい郎ろう劉りゅう本道ほんどう為ため侍さむらい郎ろう。時とき有ゆう語ご曰「朱しゅ三さん千せん，龍りゅう八はち百ひゃく」。勢いきおい焰熏灼，嗜進者しゃ競走きょうそう其門。既すんで以私憾殺于謙、范廣等とう，又また以給事ごと中ちゅう成章せいしょう、御ご史し甘あま澤さわ等とう九きゅう人にん嘗攻其失，貶黜之の。數かず興きょう大獄たいごく，構陷耿九疇、嶽たけ正ただし，而戍楊瑄、張ちょう鵬ほう，謫周斌あきら、盛もり颙等。又また惡文あくぶん臣しん為ため巡じゅん撫なで，抑そもそも武臣ぶしん不ふ得とく肆，盡つき撤還。由よし是ぜ大權たいけん悉歸亨とおる。”

[4] 《明あかり史し》（卷まき173）：“亨とおる無む日にち不ふ進すすむ見み，數かず預あずか政事せいじ。所ところ請或不ふ從したがえ，艴然見み於辭色しょく。即そく不ふ召，必假事ごと以入，出で則そく張ちょう大だい其勢，市し權利けんり。久之ひさゆき，帝みかど不能ふのう堪こらえ，嘗以語ご閣かく臣しん李り賢けん。賢けん曰：「惟おもんみ獨斷どくだん乃可。」帝みかど然しか之これ。一いち日にち語ご賢けん曰：「閣かく臣しん有事ゆうじ，須燕見み。彼かれ武臣ぶしん，何故なぜ頻しき見み？」遂とげ敕左順じゅん門もん，非ひ宣せん召毋得とく納おさめ總そう兵へい官かん。亨とおる自じ此稀燕つばめ見み。亨とおる嘗白帝みかど立りつ碑ひ於其祖そ墓ぼ。工こう部ぶ希まれ亨とおる指ゆび，請敕有司ゆうし建立こんりゅう，翰林院かんりんいん撰文せんぶん。帝みかど以永樂たのし以來いらい，無為むい功臣こうしん祖宗そそう立りつ碑ひ故事こじ，責せめ部ぶ臣しん，而令亨とおる自立じりつ。初はつ，帝みかど命いのち所司しょし為ため亨とおる營第。既成きせい，壯麗そうれい逾制。帝みかど登のぼり翔しょう鳳おおとり樓ろう見み之の，問もん誰だれ所しょ居きょ。恭順きょうじゅん侯こう吳くれ瑾謬對たい曰：「此必王おう府ふ。」帝みかど曰：「非ひ也。」瑾曰：「非ひ王おう府ふ，誰だれ敢僭逾若此？」帝みかど頷之。亨とおる既すんで權けん侔人主ぬし，而從子こ彪あや亦また封ふうじ定てい遠とお侯こう，驕おご橫よこ如亨。兩家りょうけ蓄材官かん猛もう士し數すう萬まん，中外ちゅうがい將帥しょうすい半はん出で其門。都と人じん側目そばめ。三さん年ねん秋あき，彪あや謀はかりごと鎮大同だいどう，令れい千戶楊斌等奏保。帝みかど覺さとし其詐，收おさむ斌あきら等とう拷問ごうもん得とく實み，震ふるえ怒いか，下しも彪あや詔みことのり獄ごく。亨とおる懼，請罪。帝みかど慰諭之の。亨とおる請盡削そぎ弟おとうと侄官，放ひ歸き田でん裏うら。帝みかど亦また不ふ許もと。及鞫彪あや，得とく繡蟒龍りゅう衣ころも及違式しき寢床ねどこ諸しょ不ふ法事ほうじ，罪つみ當とう死し。遂とげ籍せき彪あや家か，命いのち亨とおる養やしなえ病びょう。亨とおる嘗遣京きょう衛まもる指揮しき裴瑄出で關せき市木いちき，遣や大同だいどう指揮しき盧の昭あきら追つい捕と亡者もうじゃ。至いたり是ぜ事ごと覺さとし，法ほう司し請罪亨とおる，帝みかど猶なお置おけ不問ふもん。法ほう司し再さい鞫彪，言げん彪あや初はつ為ため大同だいどう遊ゆう擊げき，以代王おう增ぞう祿ろく為ため己おのれ功こう，王おう至いたる跪謝。自じ是ぜ數すう款彪，出で歌か妓ぎ行ぎょう酒しゅ。彪あや淩侮親王しんのう，罪つみ亦また當とう死し。因よし劾亨招權納おさめ賕，肆行無む忌き，與あずか術じゅつ士し鄒叔彜等私わたし講こう天文てんもん，妄談休きゅう咎とがめ，宜むべ置おけ重典しげのり。帝みかど命いのち錮彪於獄，亨とおる閑住，罷やめ朝あさ參さん。時どき方かた議ぎ革かわ「奪だつ門もん」功いさお，窮きゅう治ち亨とおる黨とう，由ゆかり亨とおる得とく官かん者しゃ悉黜，朝ちょう署しょ一清かずきよ。明年みょうねん正月しょうがつ，錦にしき衣ころも指揮しき逯杲奏そう亨とおる怨望，與あずか其從孫まご後ご等とう造づくり妖言ようげん，蓄養無賴ぶらい，專せん伺朝廷ちょうてい動靜どうせい，不ふ軌跡きせき已やめ著ちょ。廷臣ていしん皆みな言げん不可ふか輕けい宥なだめ。乃下亨とおる詔みことのり獄ごく，坐すわ謀叛ぼうほん律りつ斬き，沒ぼつ其家貲。逾月，亨とおる瘐死，彪ぴょう、後こう並なみ伏ふく誅。”

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生平おいだいら

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