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正面 しょうめん から見 み たダイオウグソクムシ
大 だい 顎 あご 部分 ぶぶん
ダイオウグソクムシ (Bathynomus giganteus 、大王 だいおう 具足 ぐそく 蟲 ちゅう 、大王 だいおう 具足 ぐそく 虫 ちゅう )は、等 とう 脚 あし 目 め スナホリムシ科 か に属 ぞく する海 うみ 生 せい 甲殻 こうかく 類 るい の1種 しゅ である。最大 さいだい の等 とう 脚 あし 目 め として知 し られる。
メキシコ湾 わん や、西 にし 大西 おおにし 洋 ひろし 周辺 しゅうへん の深海 しんかい 200 - 1000メートル ほどの深 ふか さの海底 かいてい 砂 すな 泥 どろ 地 ち に生息 せいそく する。
等 とう 脚 あし 類 るい としては世界 せかい 最大 さいだい であり、体長 たいちょう は20 - 40センチメートル で、最大 さいだい 50センチメートル近 ちか くにもなる巨大 きょだい な種 しゅ である。日本 にっぽん 近海 きんかい に生息 せいそく する最大 さいだい の等 とう 脚 あし 類 るい として知 し られるオオグソクムシ が最大 さいだい 15センチメートルほどなのと比 くら べて、はるかに大型 おおがた となり、体重 たいじゅう は1キログラム を上回 うわまわ る。外見 がいけん はダンゴムシ のようだが、分類 ぶんるい ではフナムシ に近 ちか い。
頭部 とうぶ の黒 くろ い複眼 ふくがん は約 やく 3500個 こ の個 こ 眼 め から形成 けいせい されており、節足動物 せっそくどうぶつ の複眼 ふくがん としては最大 さいだい 級 きゅう である。触角 しょっかく は2対 たい あり、等 とう 脚 あし 類 るい の特徴 とくちょう である第 だい 一 いち 触角 しょっかく は、フナムシ 程度 ていど の大 おお きさでは肉眼 にくがん でも判別 はんべつ しにくいほど小 ちい さいが、本 ほん 種 しゅ はその大 おお きさから容易 ようい に第 だい 一 いち 触角 しょっかく を見 み つけることができる。口 くち 部分 ぶぶん は2対 つい の格子 こうし 状 じょう の顎 あご が重 かさ なっている。
歩 ふ 脚 あし は、等 とう 脚 あし 類 るい の特徴 とくちょう である7対 つい の符節 ふせつ から構成 こうせい されている。脚 あし の間 あいだ には卵 たまご を抱 いだ く保育 ほいく 嚢があり、受精卵 じゅせいらん も節足動物 せっそくどうぶつ としては最大 さいだい 級 きゅう である。尾 お 部 ぶ に棘 とげ が生 は えており、一番 いちばん 後 うし ろの脚 あし のさらに後 ご の末端 まったん 部 ぶ には、ヒレ状 じょう に発達 はったつ している遊泳 ゆうえい 脚 あし がある。それを用 もち いて背面 はいめん を海底 かいてい に向 む けながら、身体 しんたい をくねらせて遊泳 ゆうえい を行 おこな う。外敵 がいてき や攻撃 こうげき を受 う けた場合 ばあい は背面 はいめん にはならず泳 およ いで逃 に げることもあり、不完全 ふかんぜん ながらダンゴムシのように身体 しんたい を丸 まる め、背 せ 甲 かぶと で身 み を守 まも るともいわれる。
脱皮 だっぴ する過程 かてい が、日本 にっぽん の鳥羽水族館 とばすいぞくかん で2016年 ねん 2月 がつ 12日 にち に撮影 さつえい ・記録 きろく された[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] 。脱皮 だっぴ の過程 かてい を記録 きろく できた映像 えいぞう は少 すく なくとも日本 にっぽん 国内 こくない では初 はつ 、世界 せかい 初 はつ の記録 きろく の可能 かのう 性 せい もある。だが、4月 がつ 1日 にち に死亡 しぼう した。原因 げんいん は不明 ふめい である。
「深海 しんかい の掃除屋 そうじや 」と呼 よ ばれる本 ほん 種 しゅ は、深海 ふかうみ 底 そこ に沈降 ちんこう してきた大型 おおがた 魚類 ぎょるい やクジラ などの死骸 しがい や弱 よわ った生 い き物 もの 等 とう の有機物 ゆうきぶつ を摂食 せっしょく する。他 た の等 とう 脚 あし 類 るい のように弱 よわ った仲間 なかま や死体 したい を食 た べる共食 ともぐ い を行 おこな っている可能 かのう 性 せい もあるが、詳細 しょうさい は不明 ふめい である。
本 ほん 種 しゅ は大型 おおがた の割 わり に極 きわ めて少食 しょうしょく で飢餓 きが に強 つよ い。鳥羽水族館 とばすいぞくかん において2007年 ねん 9月 がつ から飼育 しいく されていた体長 たいちょう 29センチメートルの個体 こたい 「No.1」は、2009年 ねん 1月 がつ 2日 にち に50グラムのアジを食 た べて以来 いらい 、2014年 ねん 2月 がつ 14日 にち に死亡 しぼう するまでの5年 ねん 1か月 げつ 間 あいだ (1869日間 にちかん )にわたり餌 えさ を口 くち にしなかった[8] 。2013年 ねん 2月 がつ に飼育 しいく を開始 かいし し、4か月 げつ 間 あいだ 絶食 ぜっしょく した後 のち に死亡 しぼう した個体 こたい 「No.9」を解剖 かいぼう したところ、消化 しょうか 管 かん に未 み 消化 しょうか の魚 さかな が106gほど残 のこ っていた[9] [10] 。
しかし、餌 えさ の少 すく ない環境 かんきょう でここまでの巨体 きょたい になることは、ダイオウイカ と並 なら んで深海 しんかい 巨大 きょだい 症 しょう の例 れい としてよく引用 いんよう されるが、その巨大 きょだい 化 か のメカニズムについては未 いま だに多 おお くの部分 ぶぶん が解明 かいめい されていない。
人間 にんげん との関 かか わり[ 編集 へんしゅう ]
本 ほん 種 しゅ は1878年 ねん にオスがメキシコ湾 わん の海底 かいてい から発見 はっけん され、1891年 ねん にはメスも発見 はっけん された。漁網 ぎょもう や篭 かご にかかった有用 ゆうよう 魚類 ぎょるい を食 く い荒 あ らすことから、漁師 りょうし 達 たち には嫌 きら われている。
本 ほん 種 しゅ は巨躯 きょく の割 わり に肉 にく が少 すく なく、臭 くさ みも強 つよ いために食用 しょくよう には適 てき さないといわれる[11] が、地域 ちいき によっては食用 しょくよう 利用 りよう されるという[12] 。素 もと 揚 あ げにすると旨 うま みが強 つよ く美味 びみ という話 はなし もある。
神奈川 かながわ 県 けん の新 しん 江ノ島 えのしま 水族館 すいぞくかん でダイオウグソクムシとして飼育 しいく していたメキシコ湾 わん 産 さん の個体 こたい の中 なか に、本 ほん 種 しゅ に非常 ひじょう によく似 に た別種 べっしゅ が混 ま じっていたと、台湾 たいわん 、国立 こくりつ 台 だい 南 みなみ 大学 だいがく の黄 き 銘 めい 志 こころざし 博士 はかせ が執筆 しっぴつ 、2022年 ねん 8月 がつ に「Journal of Natural History」に掲載 けいさい された論文 ろんぶん で報告 ほうこく された。この新種 しんしゅ は、和名 わみょう は新 しん 江ノ島 えのしま 水族館 すいぞくかん の略称 りゃくしょう を取 と りエノスイグソクムシ (学名 がくめい はメキシコ湾 わん を囲 かこ むユカタン半島 はんとう からBathynomus yucatanensis )と名付 なづ けられた。新 しん 江ノ島 えのしま 水族館 すいぞくかん が飼育 しいく していた同 どう 産地 さんち の別 べつ 個体 こたい はダイオウグソクムシであることが確認 かくにん されている。
両 りょう 種 たね の判別 はんべつ は非常 ひじょう に難 むずか しく、現在 げんざい 同 どう 水族館 すいぞくかん で飼育 しいく ・展示 てんじ 中 ちゅう の個体 こたい に関 かん してはどちらの種 たね であるか未確認 みかくにん であるとして、展示 てんじ 水槽 すいそう に掲 かか げた名称 めいしょう は「オオグソクムシ属 ぞく の1種 しゅ 」に変更 へんこう されている。[13]