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大川達
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大川おおかわ 達いたる

おおかわ・たつし


・和歌山わかやま県けん
・日本にっぽんＡＬＳ協会きょうかい近畿きんきブロック

◆「パソコンはいのち――大川おおかわ達いたるさん」
　豊浦とようら 保子やすこ　19960722　『生命せいめいのコミュニケーション――筋すじ萎縮いしゅく性せい側がわ索さく硬化こうか症しょう（ＡＬＳ）患者かんじゃの記録きろく』
　東方とうほう出版しゅっぱん，198p.，1262円えん＋税ぜい　pp.40-54

　1988年ねん・「六ろく月がつ［…］初はじめて病院びょういんへ――。しかし、検査けんさするだけで、結果けっかは知しらせてもらえなかった。
　［…］十じゅう月がつに［…］本格ほんかく的てきな病院びょういん通がよいを始はじめた。徐々じょじょに四肢ししの筋力きんりょくが低下ていか。十じゅう三さんか所しょの病院びょういんをまわっても、病名びょうめいは知しらせてもらえなかった。ほとんどの病院びょういんでいやがられているように感かんじ、いっそう強つよい恐怖きょうふ心しんを抱だいた。［…］
　数すう多おおくの病院びょういんを渡わたり歩あるくうちに大川おおかわさんは、医学いがく書しょで自分じぶんの病名びょうめいはＡＬＳだと知しった。」（p.41）

　「首くびの角度かくどと頭あたまの位置いち、枕まくらとの組くみ合あわせが悪わるい時ときや暑あつさを感かんじる時ときは呼吸こきゅうしにくくなるか（p.44）ら、部屋へやを涼すずしくしてくれ。胸むねを押おしている時とき（人工じんこう呼吸こきゅうのこと）、眠ねむったり、呼吸こきゅうが止とまったらそのまま起おこすな。（六ろく月がつ十じゅう八はち日にち）
　この頃ころ新幹線しんかんせんに乗のっているようで進行しんこうも早はやい。皆みなにも会あったし有あり難がたい。これ以上いじょう進行しんこうすると、ノド切開せっかいして延命えんめいの方法ほうほうもあるが、自分じぶんは切開せっかいしないからよろしく頼たのむ。
　家族かぞくもよく頑張がんばってくれたがこの山やまの峠とうげは遠とおすぎた。自分じぶんだけ引ひき返かえし、家族かぞくに別べつの峠とうげを越こしてもらう。何なにかと世話せわになった。一杯いっぱいのビールを飲のみたかったな。頑張がんばるよ。自分じぶんで何なにもできん。（六ろく月がつ十じゅう九きゅう日にち）
　古江ふるえ（故郷こきょう）の墓はかに入はいる。早はやく行いきたいわ。さようなら。（六ろく月がつ二に十じゅう日にち）
　気管きかん切開せっかいは呼吸こきゅう器きをつけることか？部屋へやを冷つめたくして、水分すいぶんを十分じゅうぶんに取とれば少すこしは楽らくになる。（六ろく月がつ二に十じゅう五ご日にち）
　切開せっかいしても、あとしれているからやめた。苦くるしいのは二に分ふんや、仕方しかたない。先生せんせいらに大変たいへんお世話せわになり有あり難がたい。おれの命いのちだから、おまえらがあまり命乞いのちごいするなよ。胸むね押おすようになってから一いちか月げつの命いのちや、頑張がんばってくれ。（六ろく月がつ二に十じゅう六ろく日にち）
　おまえたちのことをかんがえて、あまりにもなげやりになっていた　つかれもでたからこれからむりだとおもう　いみがちがう　のどきってがんばるか　なるべくじたくかいごお願ねがいします。（六ろく月がつ二に十じゅう七なな日にち）」（pp.44-45）

　「六ろく月がつ二に十じゅう七なな日にち夕方ゆうがた、大川おおかわさんは呼吸こきゅう困難こんなんに陥おちいり、和歌山わかやま生協せいきょう病院びょういんに救急きゅうきゅう車しゃで緊急きんきゅう入院にゅういんし、即そく気き（p.45）管かん切開せっかい。翌々日よくよくじつ午前ごぜん一いち時半じはん、頭あたまを右みぎから左ひだりに向むけてくれという求もとめに応おうじて動うごかした途端とたん、苦くるしみ出だし、血圧けつあつ低下ていか、意識いしきもうろう状態じょうたいとなり、人工じんこう呼吸こきゅう器きを装着そうちゃくするに至いたった。
　大川おおかわさんが直前ちょくぜんまで人工じんこう呼吸こきゅう器き装着そうちゃくを拒否きょひした理由りゆうは、
「三さん人にんの子供こどもたちは皆みな就職しゅうしょくした」
「これまで幾いくつもの苦難くなんに耐たえ病魔びょうまと闘たたかってきたが、もう任務にんむは終おわった」
「任務にんむが終おわれば、呼吸こきゅう器き装着そうちゃくはむだ、家族かぞくの負担ふたんになる」
と考かんがえたからだった。
そう考かんがえていたのに人工じんこう呼吸こきゅう器き装着そうちゃくを受うけ入いれたのは、
「家族かぞくが不自由ふじゆうな私わたしの存在そんざいをまだまだ必要ひつようとし、少すこしでも生いきて欲ほしいと励はげむ姿すがた、友人ゆうじん、知人ちじん、肉親にくしんの強つよい励はげましと、流ながしてくれた涙なみだ。このように多おおくの人様ひとさまに恵めぐまれている素晴すばらしさを、自分じぶんの苦くるしみのために忘わすれていたことに気きづき、もう少すこし苦痛くつうに耐たえて頑張がんばろうと思おもい直なおした」からだ。
　現在げんざい、訪問ほうもん治療ちりょうを続つづけてくれている和歌山わかやま生協せいきょう病院びょういんの畑はた伸弘のぶひろ主治医しゅじいに、大川おおかわさんはこう伝つたえている。
　「万まんが一いち、人工じんこう呼吸こきゅう器きをつけて事故じこがあったとき、二に十じゅう四よん時間じかん待まって昏睡こんすい状態じょうたいだったら、呼吸こきゅう（p.46）器うつわを外はずして欲ほしい」」（pp.45-46）

　

◆1998年ねん９月がつの一句いっく
　http://www.wakayamanet.or.jp/josei/ikku9809.htm 　1998年ねん
　http://www.wakayamanet.or.jp/josei/ikku1998.htm
　『でじたるぼだいじゅ』（和歌山わかやま教区きょうく浄土宗じょうどしゅう青年せいねん会かい）
　http://www.wakayamanet.or.jp/josei/

ふたたびは
来きたらんものを
今日きょうの日ひは
ただほがらかに
活いきてぞたのし

　以下いか、上うえ掲ＨＰより引用いんよう。上うえ掲ＨＰには大川おおかわさんの写真しゃしんもあります。ご覧らんください。
　「以前いぜん、病人びょうにんや老人ろうじんに、仏教ぶっきょう精神せいしんに則そくした介護かいごがいかに出来できるかを考かんがえ、実践じっせんする『えんの会かい』に出席しゅっせきした際さい、常つねに〔死し〕と向むき合あいながらも明あかるく、強つよく生いきておられる大川おおかわ　達いたるさん（和歌山わかやま市し在住ざいじゅう）という方ほうにお会あいしました。
　大川おおかわさんは昭和しょうわ１４年ねんに三重みえ県けんで生うまれ、４７才さいの時とき、筋すじ萎縮いしゅく性せい側がわ索さく硬化こうか症しょう（ALS）という難病なんびょうにかかられました。この病気びょうきは知力ちりょく・感覚かんかくには影響えいきょうがありませんが、全身ぜんしんの筋肉きんにくの萎縮いしゅくがじわじわと進行しんこうし、やがてしゃべれなくなり、呼吸こきゅうも人工じんこう呼吸こきゅう器きを必要ひつようとするようになってしまいます。大川おおかわさんに残のこされた時間じかんは短みじかい。しかし常つねに希望きぼうを捨すてずに前向まえむきの姿勢しせいで心しん豊ゆたかに充実じゅうじつした日々ひびを過すごされるその生いき様ざまに、逆ぎゃくに励はげまされた思おもいでした。なにげなく過すごす日々ひびを感謝かんしゃの心しんで明あかるく・正まさしく・仲良なかよくほがらかに生いきていきたいものです。」

　

◆山本やまもと正広まさひろ（えんの会かい・住職じゅうしょく・和歌山わかやま）
　「ともに――ＡＬＳ患者かんじゃ大川おおかわ達いたるさんと過すごして」
　1999年ねん６月がつ26日にち

　日本にっぽんホスピス・在宅ざいたくケア研究けんきゅう会かい第だい７回かい岡山おかやま大会たいかい
　ミニシンポジューム『ホスピスに欠かかせないスピリチュアルケア』
　http://www.hospice.jp/zenkoku/1999_okayama/okayamataikai.html
　（ＨＰに掲載けいさいされているのはプログラムだけです。）

　
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■立岩たていわ『ＡＬＳ――不動ふどうの身体しんたいと息いきする機械きかい』における引用いんよう・言及げんきゅう

　【53】　大川おおかわ達いたる（和歌山わかやま県けん）が健康けんこう診断しんだんで握力あくりょくが落おちているのを知しったのは一いち九きゅう八はち七なな年ねん。現在げんざいALS協会きょうかい近畿きんきブロックの会長かいちょうをつとめている。
　【121】　一いち九きゅう八はち七なな年ねん、大川おおかわ達いたる［53］は健康けんこう診断しんだんで握力あくりょくが落おちているのを知しる、さらに状態じょうたいが進すすみ、八はち八はち年ねん《六ろく月がつ［…］初はじめて病院びょういんへ――。しかし、検査けんさするだけで、結果けっかは知しらせてもらえなかった。／［…］一いち〇月がつに［…］本格ほんかく的てきな病院びょういん通がよいを始はじめた。徐々じょじょに四肢ししの筋力きんりょくが低下ていか。一いち三さんか所しょの病院びょういんをまわっても、病名びょうめいは知しらせてもらえなかった。ほとんどの病院びょういんでいやがられているように感かんじ、いっそう強つよい恐怖きょうふ心しんを抱だいた。［…］／数すう多おおくの病院びょういんを渡わたり歩あるくうちに大川おおかわさんは、医学いがく書しょで自分じぶんの病名びょうめいはALSだと知しった。》（豊浦とようら［1986:41］）
　【261】　大川おおかわ達いたる［121］の一いち九きゅう九きゅう二に年ねんの文章ぶんしょう。《胸むねを押おしている時とき（人工じんこう呼吸こきゅうのこと）、眠ねむったり、呼吸こきゅうが止とまったらそのまま起おこすな。（六ろく月がつ一いち八はち日にち）／この頃ころ新幹線しんかんせんに乗のっているようで進行しんこうも早はやい。皆みなにも会あったし有あり難がたい。これ以上いじょう進行しんこうすると、ノド切開せっかいして延命えんめいの方法ほうほうもあるが、自分じぶんは切開せっかいしないからよろしく頼たのむ。／家族かぞくもよく頑張がんばってくれたがこの山やまの峠とうげは遠とおすぎた。自分じぶんだけ引ひき返かえし、家族かぞくに別べつの峠とうげを越こしてもらう。何なにかと世話せわになった。一杯いっぱいのビールを飲のみたかったな。頑張がんばるよ。自分じぶんで何なにもできん。（六ろく月がつ一いち九きゅう日にち）／古江ふるえ（故郷こきょう）の墓はかに入はいる。早はやく行いきたいわ。さようなら。（六ろく月がつ二に〇日にち）／気管きかん切開せっかいは呼吸こきゅう器きを付つけることか？　部屋へやを冷つめたくして、水分すいぶんを十分じゅうぶんに取とれば少すこしは楽らくになる。（六ろく月がつ二に五ご日にち）／切開せっかいしても、あとしれているからやめた。苦くるしいのは二に分ふんや、仕方しかたない。先生せんせいらに大変たいへんお世話せわになり有あり難がたい。おれの命いのちだから、おまえらがあまり命乞いのちごいするなよ。胸むね押おすようになってから一いちか月げつの命いのちや、頑張がんばってくれ。（六ろく月がつ二に六ろく日にち）／おまえたちのことをかんがえて、あまりにもなげやりになっていた　つかれもでたからこれからむりだとおもう　いみがちがう　のどきってがんばるか　なるべくじたくかいごお願ねがいします。（六ろく月がつ二に七なな日にち）》（豊浦とようら［1996:45］。二に七なな日にちに呼吸こきゅう困難こんなんで緊急きんきゅう入院にゅういん、即そく気管きかん切開せっかい、二に九きゅう日にちに人工じんこう呼吸こきゅう器きを装着そうちゃく）
　【512】　大川おおかわ達いたる［261］。《家族かぞくが不自由ふじゆうな私わたしの存在そんざいをまだまだ必要ひつようとし、少すこしでも生いきて欲ほしいと励はげむ姿すがた、友人ゆうじん、知人ちじん、肉親にくしんの強つよい励はげましと、流ながしてくれた涙なみだ。このように多おおくの人様ひとさまに恵めぐまれている素晴すばらしさを、自分じぶんの苦くるしみのために忘わすれていたことに気きづき、もう少すこし苦痛くつうに耐たえて頑張がんばろうと思おもい直なおした》（豊浦とようら［1996:46］）


※おことわり
・このページは、公開こうかいされている情報じょうほうに基もとづいて作成さくせいされた、人ひと・組織そしき「について」のページです。その人ひとや組織そしき「が」作成さくせいしているページではありません。
・このページは、文部もんぶ科学かがく省しょう科学かがく研究けんきゅう費ひ補助ほじょ金きんを受うけている研究けんきゅう（基盤きばん(C)・課題かだい番号ばんごう12610172　〜2004.3／基盤きばん(B)・課題かだい番号ばんごう16330111　2004.4〜2008.3）のための資料しりょうの一部いちぶでもあります。

・作成さくせい：立岩たていわ 真しん也
・UP:20021009　REV:20021015　20041204
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