スゴすぎるぞトヨタのミライ！すべての面めんで卓越たくえつ、この奇跡きせきのクルマはいかに生うまれた？

　昨年さくねん12月がつにトヨタ自動車とよたじどうしゃが発売はつばいした、世界せかい初はつの市販しはん用よう量産りょうさん型がた燃料ねんりょう電池でんち車しゃ（FCV）「MIRAI（ミライ）」。その公道こうどう試乗しじょう会かいが行おこなわれた。実用じつよう化かは程遠ほどとおいと考かんがえられてきたFCVだけに、「本当ほんとうに水素すいそだけで走はしるクルマが世よに出でるのか」と耳みみを疑うたがった人ひともいるのではないだろうか。かくいう筆者ひっしゃも最初さいしょにミライを試乗しじょうした際さいに、実用じつよう化かが近ちかいと確信かくしんできる完成かんせい度どの高たかさに驚おどろかされた。電気でんき自動車じどうしゃ嫌ぎらいの筆者ひっしゃでも「欲ほしい」と思おもった理由りゆうを、試乗しじょう会かいで得えた印象いんしょうをもとに簡単かんたんにリポートしよう。

　FCVはスタックと呼よばれる装置そうちで水素すいそと酸素さんそを化学かがく的てきに反応はんのうさせて発電はつでんし、その電気でんきでモーターを回まわして走行そうこうする。仕組しくみとしては電気でんき自動車じどうしゃ（EV）の親戚しんせきといっていい。EVはバッテリーに貯ためた電気でんきで走はしり、FCVは水素すいそで発電はつでんして走はしる。それだけの違ちがいだ。ただし、FCVはEVと比くらべて圧倒的あっとうてきに航続こうぞく距離きょりが長ながく、充填じゅうてん時間じかん（70MPaの高こう圧あつ水素すいそを充填じゅうてんした場合ばあい）も3分ふん程度ていどと、ガソリン車しゃ並なみの性能せいのうを誇ほこる。水素すいそはエネルギーキャリアとして優秀ゆうしゅうなのだ。

　ミライの心臓しんぞう部ぶともいうべき駆動くどう部ぶのうち、スタックはトヨタ独自どくじ開発かいはつによるもので、センターコンソールの床下ゆかしたに配置はいちされる。出力しゅつりょくはスタック（発電はつでん装置そうち）で155ps（仏ふつ馬力ばりき）、モーターで154psを絞しぼりだす。モーターの最大さいだいトルクは335Nm（ニュートンメートル）となる。これは3.5リッターV6エンジンに匹敵ひってきする出力しゅつりょくだ。これらパワートレーンの物理ぶつり的てきなサイズはV6エンジンよりもやや大おおきいが、スタックとモーターなどを分散ぶんさんしてパッケージできるので、新あたらしい自動車じどうしゃの設計せっけいが可能かのうとなっている。

　また、駆動くどうはフロントタイヤが担になうが、内燃ないねん機関きかんの前輪ぜんりん駆動くどう車しゃ（FWD）と違ちがうのは、前後ぜんご重量じゅうりょう配分はいぶんがフロント58％、リヤ42％であるということ。通常つうじょうのFWDでは6割わりを超こえることがほとんどだから、ミライはバランスに優すぐれているといえる。しかも低てい重心じゅうしんなので、安定あんてい性せいと乗のり心地ごこちのバランスは非常ひじょうに良よかった。

　実じつは、FCVの基盤きばん技術ぎじゅつはトヨタのハイブリッドシステムである。交差点こうさてんで止とまると、アイドリングストップと同おなじようにスタックは発電はつでんを停止ていしする。走はしり始はじめは「プリウス」と同おなじように、ニッケル水素すいその二に次じバッテリーに貯ためられた電気でんきを使用しようし、スピードが上あがってくると再ふたたびスタックが発電はつでんを始はじめる。そう、ハイブリッドシステムが下敷したじきなので、制動せいどうエネルギーを回収かいしゅうする回生かいせいブレーキもしっかり活用かつようできるのだ。

　ミライは確たしかに大だい出力しゅつりょくの駆動くどう部ぶを持もつ。しかし高こう圧あつ水素すいそタンクは約やく5kgの水素すいそを充填じゅうてんでき、水素すいそ1kgで100km以上いじょうも走行そうこうできるので航続こうぞく距離きょりの心配しんぱいはない。先日せんじつ水素すいそステーションを取材しゅざいしたが、水素すいその料金りょうきんは1kg当あたり約やく1000円えんである。高速こうそく道路どうろでの走行そうこうも得意とくいだし、航続こうぞく距離きょりも長ながいので、走行そうこう中ちゅうストレスを感かんじることはない。内燃ないねん機関きかんがない分ぶん、エンジン音おんがしないこともFCVの特徴とくちょうだ。試乗しじょう用ようのコースではロードノイズが耳みみに残のこったが、製品せいひん版ばんでは魅力みりょくをさらに高たかめるべく、遮音しゃおん対策たいさくを進すすめていることだろう。

　もう一ひとつ気きになったのは、水素すいそスタンドの探さがし方かただ。しかし、そこはぬかりなかった。チームジャパンの取とり組くみの一環いっかんとして、ナビアプリやスマホアプリで検索けんさくできるようになっていたのだ。これからの課題かだいは、水素すいそスタンドの整備せいびだ。そのテーマについては、次回じかい以降いこう詳くわしく見みていきたい。
（文ぶん＝清水しみず和夫かずお／モータージャーナリスト、日本にっぽん自動車じどうしゃ研究所けんきゅうじょ客員きゃくいん研究けんきゅう員いん）