業務ぎょうむスーパー創業そうぎょう者しゃ、地熱じねつ発電はつでんに革命かくめい…最短さいたんで発電はつでん所しょ稼働かどう、FC方式ほうしきを展開てんかい

　熊本くまもと県けん小国おぐに町まちに地熱じねつ発電はつでん所しょ（小国おぐに町まちおこしエネルギー地熱じねつ発電はつでん所しょ）が完成かんせいし、3月1日にちに落成らくせい式しきが開ひらかれ本格ほんかく稼働かどうした。この発電はつでん所しょは、地下ちかから吸すい上あげた蒸気じょうきでタービンを回まわして発電はつでんし、最大さいだい出力しゅつりょく4990キロワットで、およそ8000世帯せたいが1年間ねんかん使つかう電力でんりょく量りょうをまかなうことができる。この地熱じねつ発電はつでんを掘削くっさく・開発かいはつしたのは、町まちおこしエネルギー（兵庫ひょうご・加古川かこがわ）。業務ぎょうむスーパーの創業そうぎょう者しゃ、沼田ぬまた昭二しょうじ氏しが2016年ねんに約やく120億おく円えんの私財しざいを投とうじて設立せつりつした会社かいしゃだ。

　沼田ぬまた氏しは1985年ねんに神戸こうべ物産ぶっさんを設立せつりつし、フランチャイズ展開てんかいする業務ぎょうむスーパーを成功せいこうさせた。現在げんざいは全国ぜんこく1051店舗てんぽに達たっし、同社どうしゃの時価じか総額そうがくは約やく1兆ちょう円えんを超こえる。このビジネスモデルを地熱じねつエネルギー開発かいはつに応用おうようすれば迅速じんそく化かにつながると沼田ぬまた氏しは考かんがえた。町まちおこしエネルギーが井戸いどの調査ちょうさや掘削くっさくまでのリスクを負おい、地上ちじょう部分ぶぶんの巨額きょがくの建設けんせつ費用ひようは加盟かめい者しゃの地元じもと事業じぎょう者しゃらと折半せっぱんするのが大おおまかな仕組しくみ。今回こんかいの開発かいはつ費ひはおよそ100億おく円えんだ。

自じ走はし式しきの掘削くっさく機きを自社じしゃ開発かいはつし、地熱じねつの井戸いどを掘ほる

　経済けいざい産業さんぎょう省しょうが昨年さくねん11月がつに発表はっぴょうした2022年度ねんどの電源でんげん構成こうせい（速報そくほう値ち）によれば、再生さいせい可能かのうエネルギーの割合わりあいは21.7％で、その内訳うちわけは太陽光たいようこうが最もっとも多おおい9.2％で、水力すいりょく7.6％、バイオマス3.7％、風力ふうりょく0.9％。地熱じねつはわずか0.3％にすぎない。日本にっぽんは世界せかい3位いという莫大ばくだいな地熱じねつ資源しげんを持もっているにもかかわらず、ほとんど活用かつようされていないといっていい。

　従来じゅうらいから地熱じねつ開発かいはつのハードルとされてきたのは、通常つうじょう10年ねん以上いじょうもの長ながい開発かいはつ期間きかんと莫大ばくだいな費用ひようだ。地熱じねつ開発かいはつには掘削くっさく機きが必要ひつよう不可欠ふかけつだが、町まちおこしエネルギーは、これを自社じしゃ開発かいはつした。これにより、掘削くっさく費用ひようは5分ぶんの1になった。同社どうしゃで広報こうほうを担当たんとうする正岡まさおか世紀せいき氏しはこう話はなす。

「日本にっぽんではある時期じきから地熱じねつの開発かいはつスピードが落おち、国内こくないで掘削くっさく機きの開発かいはつをしているところはほとんど聞きかない。実じつは、海外かいがいでは自じ走はし式しき掘削くっさく機きの開発かいはつが進すすんでいるが、これをそのまま輸入ゆにゅうすることはできない。日本にっぽんの排はいガス基準きじゅんに適合てきごうするよう当社とうしゃが設計せっけいから携たずさわり、海外かいがいの工場こうじょうで組くみ立たてて直なおして輸入ゆにゅうしている。折おりたたむとコンテナに入はいるほどコンパクトなので、日本にっぽんに持もってきてからもコンテナごと移動いどうできる」

　小国おぐに町まちおこしエネルギー地熱じねつ発電はつでん所しょは、試掘しくつを含ふくめてわずか5年ねんという最短さいたんスピードで実働じつどう稼働かどうすることができたが、JOGMEC（独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじんエネルギー・金属きんぞく鉱物こうぶつ資源しげん機構きこう）の支援しえんや国くにの補助ほじょ金きん制度せいどを受うけていないことも理由りゆうに挙あげられる。国くにの支援しえんを受うけると、推奨すいしょうする調査ちょうさ過程かていを受うけなければいけなくなり、開発かいはつスピードが遅おそくなるからだ。

　そして、今回こんかい稼働かどうした1号機ごうきよりも山やまの上うえに新あらたな熱源ねつげんを発見はっけんしており、そこに2号機ごうきを建設けんせつする。一般いっぱん的てきな地熱じねつ発電はつでん所しょは熱源ねつげんの規模きぼに合あわせてサイズを変かえるオーダーメイドだが、同社どうしゃは熱源ねつげんの規模きぼにかかわらず、同おなじ設計せっけいのタービンや発電はつでん機き、冷却れいきゃく塔とうで、同おなじサイズの発電はつでん所しょを建たてるという。いわば、地熱じねつ発電はつでんのパッケージ化かだ。2号機ごうきはフランチャイズ方式ほうしきで進すすめることになっている。

大手おおて電力でんりょくの原発げんぱつ回帰かいきと出力しゅつりょく制御せいぎょに歯止はどめかかるか

　地熱じねつ発電はつでんの適地てきちは国立こくりつ公園こうえんや温泉おんせん地ち付近ふきんに多おおいことも開発かいはつが進すすまなかった理由りゆうだ。

「温泉おんせんの層そうは地下ちか200～300メートルの浅あさい層そうで、地熱じねつ発電はつでんは1000メートルよりも深ふかい層そうになるので、温泉おんせんには影響えいきょうがない。温泉おんせん業者ぎょうしゃや地元じもととの交渉こうしょうではそのことを丁寧ていねいに説明せつめいさせていただいている。また、温泉おんせんモニタリングなどに影響えいきょうが出でないよう調査ちょうさしながら開発かいはつを進すすめている。今回こんかいは先行せんこう事業じぎょう者しゃがいたので、小国おぐに町まちの行政ぎょうせいに入はいっていただき、5者しゃ間あいだで開発かいはつのルールを決きめた。乱らん開発かいはつにだけはならないように気きを付つけている。地域ちいき再生さいせいになるよう熱ねつ水すい利用りようとして地熱じねつのハウス栽培さいばいや養殖ようしょくなど、2次じ展開てんかいも今後こんごできればと考かんがえている」（正岡まさおか氏し）

　小国おぐに町まちで発電はつでんした電気でんきは固定こてい価格かかく買取かいとり制度せいど（FIT）を利用りようして九州電力きゅうしゅうでんりょくに売うれ電でんされる。近年きんねん、太陽光たいようこう発電はつでんの導入どうにゅう量りょうが急増きゅうぞうした結果けっか、一昨年いっさくねんあたりから「出力しゅつりょく制御せいぎょ」が増加ぞうかしているが、九州電力きゅうしゅうでんりょくはその筆頭ひっとうだ。太陽光たいようこうや風力ふうりょくは出力しゅつりょくが不安定ふあんていなため、あまり系統けいとう連れん系けいさせたくないのではと大手おおて電力でんりょくの本音ほんねを推測すいそくする向むきもある。再生さいせい可能かのうエネルギーの中なかで出力しゅつりょくが安定あんていしているのは水力すいりょくと地熱じねつであり、大手おおて電力でんりょくはそうしたい訳いわけができないだろう。エネルギー代だい高騰こうとうにより、世論せろんには原発げんぱつ回帰かいきの動うごきも見みえるが、地熱じねつ発電はつでん量りょうが増ふえれば、そんな流ながれは吹ふき飛とぶかもしれない。

　町まちおこしエネルギーはすでに全国ぜんこく30カ所かしょ以上いじょうで掘削くっさく許可きょかを得えているといい、フランチャイズへの申もうし込こみは今いまも続つづいているそうだ。

（文ぶん＝横山よこやま渉わたる／ジャーナリスト）