スタバ、セットメニュー提供ていきょうを開始かいし、隠かくれた理由りゆう…売上うりあげ・客数きゃくすう・客きゃく単価たんかの関係かんけい

　米国べいこくスターバックスがセットメニューの提供ていきょうを開始かいしした。コーヒーまたは紅茶こうちゃとパンメニューの組くみ合あわせで5～6ドルというものだが、なぜセットメニューの提供ていきょうを始はじめたのか。また、現在げんざいセットメニューを取とり扱あつかっていない日本にっぽんのスターバックスコーヒーも始はじめる可能かのう性せいはあるのか。専門せんもん家かの見解けんかいを交まじえて追おってみたい。

　日本にっぽんでシアトル系けいコーヒーチェーンの草分くさわけ的てき存在そんざいであるスターバックスコーヒーの国内こくない1号ごう店てんが東京とうきょう・銀座ぎんざの松屋まつや通どおりにオープンしたのは1996年ねん。当時とうじは珍めずらしかった店内てんない禁煙きんえんで、かつ競合きょうごうする国内こくないカフェチェーンより割高わりだかな価格かかく設定せっていという逆ぎゃく張はり戦略せんりゃくを取とり、落おち着ついた店内てんないでフラペチーノをはじめとする多彩たさいなスイーツ系けいドリンクも楽たのしめることが若わかい女性じょせい客きゃくなどから高たかい支持しじを得えて、瞬またたく間まに店舗てんぽ数すうが増加ぞうか。2013年ねんに1000店舗てんぽ、19年ねんには1500店舗てんぽを達成たっせいし、いつしか首位しゅいだったドトールコーヒーショップを逆転ぎゃくてん。現在げんざいでは1917店舗てんぽ（6月がつ現在げんざい）を展開てんかいし、2位いのドトールに600店てん以上いじょうの差さをつけて店舗てんぽ数すうでは圧倒的あっとうてき1位いとなっている。

　スタバの価格かかく設定せっていは強気つよきだ。たとえば現在げんざい、期間きかん限定げんていで販売はんばい中ちゅうの「バナナ ブリュレ フラペチーノ」は690円えん（Tall／以下いか同どう、税込ぜいこみ）、「抹茶まっちゃ＆クラッシュ ピスタチオミルク ティー ラテ」は700円えん、「スターバックス ストロベリー フラペチーノ」は680円えん。レギュラーメニューの「ドリップ コーヒー」（Short）は380円えんで、ドトールの「ブレンドコーヒー」（S／250円えん）と比くらべると130円えんも高たかい。

「スタバの店舗てんぽの商品しょうひんに加くわえ、一般いっぱん小売こうり店てんで販売はんばいされるチルド商品しょうひんも『スタバは割高わりだか』ということが消費しょうひ者しゃに受うけ入いれられている。頻繁ひんぱんに投入とうにゅうされる期間きかん商品しょうひんもスタバでしか味あじわえないメニューばかりで、新しん商品しょうひんが出でれば必かならず買かうという根強ねづよい固定こてい客きゃくもついている。市販しはん用ようのコーヒー豆まめやタンブラーなどの各種かくしゅグッズでも手堅てがたく稼かせいでおり、今いまのところ死角しかくは見当みあたらない」（外食がいしょくチェーン関係かんけい者しゃ）

日本にっぽんのスタバがセットメニューを扱あつかっていない理由りゆう

　日本にっぽんのスタバといえば、ファストフードチェーンでは一般いっぱん的てきなセットメニューを原則げんそく提供ていきょうしていないことでも知しられている（朝あさの時間じかん帯たいに一部いちぶのドリンク類るいとフードメニューの購入こうにゅうでドリンクが1サイズアップになる『サイズアップモーニング』は提供ていきょう）。例たとえば競合きょうごうするドトールはホットサンド類るいなどとドリンクのセットメニューを提供ていきょうしており、たとえば各種かくしゅモーニングセットは単品たんぴん積つみ上あげ価格かかくより50円えん引びきとなっている。ハンバーガーチェーン各社かくしゃでも一般いっぱん的てきで、マクドナルドはバーガー類るい・フレンチフライ・ドリンクのセットを提供ていきょうしており、単品たんぴん積つみ上あげ価格かかくより200～300円えんほど安やすくなっている。

　今回こんかい、米国べいこくスタバが始はじめたセットメニューは、Tallサイズのコーヒーまたは紅茶こうちゃ（アイス／ホット）とクロワッサンのセット（5ドル：約やく780円えん）、同どうドリンクと朝食ちょうしょく用ようサンドイッチのセット（6ドル：約やく940円えん）の2つ。セットメニュー開始かいしの背景はいけいについて、外食がいしょく・フードデリバリーコンサルタントの堀部ほりべ太一たいち氏しはいう。

「米国べいこくのスタバは売上うりあげが下降かこう傾向けいこうですが、特とくに落おち込こんでいるのは客数きゃくすうです。売上うりあげは客数きゃくすうと客きゃく単価たんかの掛かけ算ざんで決きまりますが、客数きゃくすうが好調こうちょうであればそのチェーンへの需要じゅようが高たかい、
要ようは人気にんきがあるということなので値上ねあげはしやすくなります。例たとえば日本にっぽんではマクドナルドや餃子ぎょうざの王将おうしょうは客数きゃくすうが伸のびている事ことで、複ふく数すう回かいにわたり値上ねあげを重かさねていますが、
共ともに業績ぎょうせき好調こうちょうを維持いじしています。

　一方いっぽう、客数きゃくすうが落おちている場合ばあいは値上ねあげをすると、さらに客数きゃくすうが落おちて売上うりあげも落おちてしまう場合ばあいがあります。それを防ふせぐべくセットメニューの導入どうにゅうには2つの目的もくてきがあります。（1）客数きゃくすうのテコ入てこいれ、（2）ついで買かいの誘発ゆうはつで単価たんかアップです。客数きゃくすうのテコ入てこいれは『コーヒーを飲のみたい』という客きゃくに加くわえて『食事しょくじをとりたい』という客きゃくの来店らいてんを促うながすという顧客こきゃく層そうの拡大かくだいです。かつて客数きゃくすう減げんが続つづいていた日本にっぽんのケンタッキーフライドチキンが500円えんランチを投入とうにゅうし、客層きゃくそうの枠わくを広ひろげた事例じれいがこれにあたります」

　日本にっぽんのスタバがセットメニューを扱あつかっていない理由りゆうは何なにか。

「セットメニューはドリンクとフードの単品たんぴん積つみ上あげ価格かかくより低ひくい価格かかくを設定せっていしなければならず、客数きゃくすうが好調こうちょうな日本にっぽんのスタバは、そのような客きゃく単価たんかの低下ていかにつながるような施策しさくを行おこなう必要ひつようがないからです」

　気きになるのが、日本にっぽんのスタバがセットメニューの取とり扱あつかいを始はじめる可能かのう性せいはあるのかという点てんだ。

「可能かのう性せいは高たかくはないものの、ゼロではないかもしれません。たとえば、米国べいこくスタバでセットメニューの開始かいしによって明あきらかに客きゃく単価たんかが上昇じょうしょうしたという結果けっかが出でれば、それを受うけて日本にっぽんでもスタートするということは考かんがえられます。このほか、世界せかい的てきなコーヒー豆まめの高騰こうとうをはじめとする原料げんりょう費ひの上昇じょうしょうを受うけて、価格かかくが“お客きゃくが許容きょようできないレベル”にまで上昇じょうしょうし、客数きゃくすうが下さがり始はじめたりすれば、セットメニューを始はじめるかもしれません。もっとも、繰くり返かえしになりますが国内こくないのスタバ店舗てんぽは全体ぜんたいでみると客数きゃくすうは好調こうちょうなので、今いまのところはセットメニューを始はじめる必要ひつよう性せいがあまりないということになります」