『花子はなことアン』で話題わだいの“あの店みせ”、100年ねん超こえても人気にんきの秘密ひみつ　伝統でんとうと進化しんかを両立りょうりつ

「カフェーパウリスタ HP」より

「現象げんしょうの裏うらにある本質ほんしつを描えがく」をモットーに、「企業きぎょう経営けいえい」「ビジネス現場げんばとヒト」をテーマにした企画きかくや著作ちょさくも多数たすうあるジャーナリスト・経営けいえいコンサルタントの高井たかい尚之なおゆき氏しが、経営けいえい側がわだけでなく、商品しょうひんの製作せいさく現場げんばレベルの視点してんを織おり交まぜて人気にんき商品しょうひんの裏側うらがわを解説かいせつする。

「今いまでもお客きゃくさまから『あのお店みせですよね？』と聞きかれます。番組ばんぐみの放送ほうそう時じに比くらべると少すくなくなりましたが……」

　東京とうきょう・銀座ぎんざ8丁目ちょうめにある「カフェーパウリスタ」の従業じゅうぎょう員いんはこう話はなす。“あのお店みせ”とは、2014年ねんに放送ほうそうされて高こう視聴しちょう率りつを記録きろくした連続れんぞくテレビ小説しょうせつ『花子はなことアン』（NHK）内ないでたびたび登場とうじょうしたカフェのことで、この店みせがモデルとなっている。

　同店どうてんの開業かいぎょうは今いまから104年ねん前まえ、明治めいじ時代じだい末期まっきの1911年ねんだ。現存げんそんする日本にっぽん最古さいこの喫茶店きっさてんで、店名てんめいが「カフェ」ではなく、「カフェー」なのも歴史れきしを感かんじさせる。カフェーはコーヒー、パウリスタはサンパウロっ子こという意味いみのポルトガル語ごだ。つまりブラジル・サンパウロのコーヒーにこだわる店みせとして開業かいぎょうした。

常連じょうれん客きゃくも多おおく、多彩たさいなコーヒーやスイーツが看板かんばんメニュー

　同店どうてんの近ちかくには、創業そうぎょう130年ねんの天てんぷら「天國てんごく」や同どう113年ねんの「資生堂しせいどうパーラー」など老舗しにせも多おおい。開業かいぎょう当初とうしょは現在地げんざいちから近ちかい、時事新報じじしんぽう社しゃ（現在げんざいは銀座ぎんざ6丁目ちょうめの交詢ビル）の前まえにあり、戦後せんごの1970年ねんに現在げんざいの場所ばしょに店みせを構かまえた。この場所ばしょでも45年ねんの歴史れきしを刻きざみ、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻ふさいが3日にち続つづけて通とおったとの逸話いつわもある。

　一方いっぽうで、時代じだいによって消費しょうひ者しゃの好このみはどんどん変かわるものだが、同店どうてんの客足きゃくあしは今いまでも途絶とだえない。筆者ひっしゃは平日へいじつに何なん度どか同店どうてんを訪おとずれたが、いつもにぎわっていた。現在げんざい、1日にちの売うり上あげは平日へいじつで平均へいきん30万まん円えん、週末しゅうまつは多おおい時ときで40万まん円えんを超こえるという。なぜ、長ながい間あいだ、人気にんき店てんであり続つづけられるのだろうか？

「店名てんめいと同おなじようにブラジル・サンパウロのコーヒーという『軸じく足あし』は崩くずしていませんが、現在げんざいは、お客きゃくさまの好このみに応おうじて『森もりのコーヒー』『パウリスタオールド』『パリ祭さい』の三さん本ほん柱ばしらを中心ちゅうしんに、さまざまなコーヒーを提供ていきょうしています」

　こう説明せつめいするのは、運営うんえい会社かいしゃ・日東にっとう珈琲こーひーの現げん会長かいちょうで3代目だいめ社長しゃちょうの長谷川はせがわ浩一こういち氏しだ。現在げんざいは息子むすこの長谷川はせがわ勝彦かつひこ氏しが6代目だいめの社長しゃちょうを務つとめている。ちなみに親子おやこともに東京とうきょう都立とりつ日比谷ひびや高校こうこう出身しゅっしん（父ちちは旧制きゅうせい）で、会長かいちょうは東大とうだい経済学部けいざいがくぶ、社長しゃちょうは上智大じょうちだい外国がいこく語ご学部がくぶを卒業そつぎょうした。昔むかしのカフェーはインテリ経営けいえい者しゃが多おおかったが、その伝統でんとうを受うけ継つぐかのようだ。

「『森もりのコーヒー』はブラジル・サンパウロ州しゅうの高こう品質ひんしつな豆まめを使つかったもの。甘あまみがあり、後味あとあじがさわやかなので、コーヒーが苦手にがてな人ひとでも飲のみやすいです。『パウリスタオールド』はビターチョコのような風味ふうみで、昔むかしながらの伝統でんとうの味あじ。『パリ祭さい』は開店かいてん100年ねんを機きに商品しょうひん開発かいはつしたもので、エチオピアや南米なんべいの高級こうきゅうコーヒー豆まめをブレンドしています」（同どう）

　最もっとも知しられているのが「森もりのコーヒー」だ。無む農薬のうやく栽培さいばいにこだわり、サンパウロ州しゅうの農園のうえん主ぬし・ジョン・ネット氏しらの生産せいさん者しゃグループから年間ねんかん150トン以上いじょうを直接ちょくせつ買かい付つける。通信つうしん販売はんばいでも人気にんきの品しなだ。いずれのコーヒー豆まめも、勝彦かつひこ氏しが直接ちょくせつ産地さんちを訪問ほうもんして、生産せいさん者しゃと対話たいわを続つづけながら購入こうにゅうしている。これらのコーヒーを銀座ぎんざの店みせで飲のむときは、1杯はい510～540円えん（税込ぜいこみ、以下いか同どう）で、おかわりは300円えんで飲のめる。