殺傷さっしょう能力のうりょくのある武装ぶそうドローン、警察けいさつによる利用りよう解禁かいきんの是非ぜひ

ドローン（「Wikipedia」より／Joadl）

普及ふきゅうするドローン

　近年きんねん、遠隔えんかく操縦そうじゅうによる無人むじん航空機こうくうき「ドローン」が急速きゅうそくに普及ふきゅうしている。無人むじんの小型こがたドローンは生産せいさんコスト・運用うんよう費ひが安やすく、人命じんめいにかかわる事故じこのリスクも抑おさえられることから、測量そくりょう、撮影さつえい、災害さいがい調査ちょうさなどに役立やくだっており、宅配たくはいサービスへの利用りようも始はじまりつつある。

　だが、上空じょうくうから簡単かんたんに私有地しゆうちを覗のぞき見みることも可能かのうなため、プライバシーやセキュリティーの問題もんだいから、どこでも気軽きがるに飛とばせるわけではない。日本にっぽんの場合ばあい、空港くうこう周辺しゅうへんや都市とし部ぶ、高度こうど150メートル以上いじょうの飛行ひこうには許可きょかが必要ひつようである。ドローンの入手にゅうしゅは簡単かんたんではあるが、都会とかいでは飛とばせる環境かんきょうをが少すくないことを知しっておくことが先決せんけつかもしれない。

　こんなドローン像ぞうは、身近みぢかな存在そんざいになったことから生うまれる民間みんかん人じんの発想はっそうである。そもそもドローンは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの頃ころから軍事ぐんじ目的もくてきで研究けんきゅう・開発かいはつされ、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごに実用じつよう化かされるようになった。最初さいしょに普及ふきゅうしたものは標的ひょうてき機きとしての「ターゲット・ドローン」であり、女王蜂じょおうばちを意味いみするQueen Bee（クインビー）という無線むせん操縦そうじゅう機きがイギリスで開発かいはつされた。今日きょう、我々われわれが使つかう「ドローン」という言葉ことばは、雄お蜂はちを意味いみし、Queen Beeの存在そんざいが元もとにあるとされる。

　今いまやドローンは標的ひょうてき機きの機能きのうを超こえて、武器ぶきを搭載とうさいした軍事ぐんじ兵器へいきとしての地位ちいを高たかめている。

　このように、ドローンは軍ぐんが研究けんきゅう・開発かいはつしてきたことから、少すこし前まえまでは、各国かっこく当局とうきょくがその利用りようを独占どくせんしてきた。つまり、ラジコン飛行機ひこうきマニアを除のぞけば、一般人いっぱんじんには縁遠えんどおく、恐おそろしい兵器へいきにも利用りようされうるものだった。

　そんなイメージを継承けいしょうするように、現在げんざい、警察けいさつによるドローンの利用りようが議論ぎろんされている。しかも、武装ぶそうしたドローンを飛とばすことが検討けんとうされているのだ。

　これは恐おそろしい話はなしである。日頃ひごろ、我々われわれは拳銃けんじゅうをもった警察官けいさつかんを目めにするものの、それほど恐おそろしいとは感かんじない。だが、身みに覚おぼえがないにもかかわらず、警察官けいさつかんが拳銃けんじゅうを引ひき抜ぬき銃口じゅうこうを向むけてきたとしたら、誰だれもが恐おそろしいと感かんじるはずである。とはいえ、少すくなくとも日本にっぽんにおいて、警察官けいさつかんがそんな行動こうどうをとることはまずないので、安心あんしんしていられる。

　一方いっぽう、ドローンの場合ばあいは状況じょうきょうが異ことなってくる。たとえば、警察けいさつがドローンを利用りようして、テロの実行じっこう犯はんを探さがすとする。警察けいさつ側がわが容疑ようぎ者しゃを探さがすべくドローンを遠隔えんかく操縦そうじゅうし、道みちを歩あるく我々われわれの正面しょうめんにドローンを動うごかしては、顔かおを認証にんしょうして飛とんでいく。ドローンの場合ばあい、拳銃けんじゅうを引ひき抜ぬき、銃口じゅうこうを向むけるといったプロセスは必要ひつようない。小型こがたスピーカーから警察官けいさつかんの声こえは聞きこえるかもしれないが、表情ひょうじょうは見みえない。容疑ようぎが掛かけられるようなことをしていなくても、不審ふしん者しゃとみなされれば、もしものことがあるかもしれない。

　これはSFの世界せかいだと等閑なおざり視しはできない。だが、もちろん警察けいさつによる武装ぶそうドローンの利用りようが検討けんとうされているのは日本にっぽんではなく、アメリカでのことである。