PC遠隔えんかく操作そうさ・片山かたやま被告ひこく“”精神せいしん鑑定かんてい不ふ実施じっし”のデメリット　「平気へいきで嘘うそがつける」彼かれの心しんの闇やみを知しるべきだ

佐藤さとう弁護士べんごし（写真しゃしん右みぎ）をはじめ、無実むじつを信しんじた弁護べんご団だんをもだましてきた片山かたやま被告ひこく（写真しゃしん左ひだり）は「自分じぶんは平気へいきで嘘うそがつけてしまう」「無実むじつを訴うったえる記者きしゃ会見かいけんで、『犯人はんにんはサイコパス』と言いったが、それは自分じぶん自身じしんのこと」と語かたっていたが……。

　PC遠隔えんかく操作そうさ事件じけんで、片山かたやま祐輔ゆうすけ被告ひこくの弁護人べんごにんは、「なぜ事件じけんを起おこしたのかを解明かいめいするためには、被告人ひこくにんの心しんの闇やみに光ひかりを当あてる必要ひつようがある」として、精神せいしん鑑定かんていを求もとめていたが、東京とうきょう地裁ちさい（大野おおの勝則かつのり裁判さいばん長ちょう）はこれを認みとめないことを決きめた。

●不可解ふかかいな犯行はんこう動機どうき、乏とぼしい感情かんじょう表現ひょうげん

　片山かたやま被告ひこくは、昨年さくねん2月がつに逮捕たいほされて以来いらい否認ひにんを続つづけてきたが、保釈ほしゃく後ごの今年ことし5月がつにマスコミ関係かんけい者しゃに送おくられた「真犯人しんはんにんからのメール」が片山かたやま被告ひこくの自作じさく自演じえんであることが発覚はっかく。再さい収監しゅうかんされて以降いこうは、一転いってんして全面ぜんめん的てきに犯行はんこうを認みとめるようになった。

　それまで弁護人べんごにんは彼かれの無実むじつを信しんじ、昨年さくねん正月しょうがつに江えの島しまの猫ねこに首輪くびわがつけられた状況じょうきょうをできるだけ忠実ちゅうじつに再現さいげんしようと、今年ことしの正月しょうがつは休やすみ返上へんじょうで実地じっち検証けんしょうを行おこなうなど、積極せっきょく的てきかつ献身けんしん的てきな弁護べんご活動かつどうを展開てんかいしてきた。そんな弁護べんご団だんをもだましてきたことについて、片山かたやま被告ひこくは「自分じぶんは平気へいきで嘘うそがつけてしまう。無実むじつを訴うったえる記者きしゃ会見かいけんで、『犯人はんにんはサイコパス』と言いったが、それは自分じぶん自身じしんのこと」と述のべた。

　そのような状況じょうきょうから、弁護べんご側がわは「心しんの闇やみ」の解明かいめいを目的もくてきとして、精神せいしん鑑定かんていを求もとめた。通常つうじょう、刑事けいじ事件じけんで精神せいしん鑑定かんていが行おこなわれるのは、被告人ひこくにんの責任せきにん能力のうりょくを問題もんだいにする場合ばあい。主おもに精神せいしん科か医いが行おこなう。だが、今回こんかい、弁護人べんごにんが求もとめていたのは、責任せきにん能力のうりょくの有無うむではなく、事件じけんを起おこすに至いたった被告人ひこくにんの心しんの状況じょうきょうを分析ぶんせきすることで、情状じょうじょう面めんの判断はんだんに役立やくだてるための、臨床りんしょう心理しんり士しによる鑑定かんていだった。

　私わたしが彼かれのインタビューをしたり、記者きしゃ会見かいけんなどの様子ようすを見みていても、感情かんじょう表現ひょうげんがとても希薄きはくなのが気きになった。また、彼かれが偽装ぎそうした「真犯人しんはんにんからのメール」を最初さいしょに彼かれに見みせた時とき、その顔かおは次第しだいに紅潮こうちょうして、本当ほんとうに驚おどろいているように見みえた。無実むじつの人ひとを装よそおう演技えんぎだとしても、それがごく自然しぜんにできてしまう彼かれの心しんは、いまだによく見みえない。

　彼かれは子こどもの頃ころから、対人たいじんコミュニケーションがうまくいかず、同級生どうきゅうせいからいじめにあい、教師きょうしからも「お前まえは何なにを考かんがえているか分わからない」と突つき放はなされた、とのこと。彼かれ自身じしんも「どういう時ときに、どんな表情ひょうじょうをしていいのか分わからなかった」そうだ。大学だいがく時代じだいも、ずっと孤立こりつしていた。授業じゅぎょうでグループ研究けんきゅうの課題かだいが出でても、一緒いっしょに組くむ相手あいてがなく、課題かだいができず、そういうことが続つづいて退学たいがくしてしまった、という。

　裁判さいばんでも、自みずからに不利ふりなことも含ふくめて率直そっちょくに語かたるようになった片山かたやま被告ひこくは、事件じけんを起おこした理由りゆうを「騒さわぎを起おこすため」と認みとめた。「被害ひがいが出でるところを想像そうぞうして楽たのしんでいた。自分じぶんが異常いじょう者しゃだと思おもうのは、そういうところ」とも述のべている。その一方いっぽうで、当時とうじの自分じぶんについて、仕事しごとで仲良なかよくなった友達ともだちもあり、居合いあい道場どうじょうに通かよったり、ドライブやバイクのツーリングをしたりするなど、実生活じっせいかつは以前いぜんに比くらべて充実じゅうじつしていた、という。「リアルで充実じゅうじつした趣味しゅみでストレスは解消かいしょうできたのに、同おなじ時期じきにこういう事件じけんを起おこしてしまったのは、自分じぶんでもよく分わからない」と語かたった。

　彼かれには同種どうしゅの前科ぜんかがあり、刑務所けいむしょ体験たいけんもある。それにもかかわらず、今回こんかいの犯行はんこうは「捕つかまらない」という妙みょうな自信じしんがあった。手ての込こんだ仕掛しかけをする一方いっぽう、江ノ島えのしまの猫ねこに首輪くびわをつける際さいには、防犯ぼうはんカメラに対たいする警戒けいかい心しんがまったく欠落けつらくするなど、周到しゅうとうな犯罪はんざい者しゃというには、あまりにお粗末そまつな面めんもある。