逆風ぎゃくふうのTポイントが始はじめた「Tポイント投資とうし」は“アリ”なのか？手数料てすうりょうは実質じっしつ無料むりょう

「SBIネオモバイル証券しょうけん/公式こうしき | Tポイントで株式かぶしき投資とうし | sbineomobile.co.jp‎」より

　2018年ねんから開業かいぎょうをリリースしていた「SBIネオモバイル証券しょうけん」が19年ねん4月がつ10日とおかにサービスをスタートした。詳細しょうさいが開示かいじされる前まえは「Tポイントを使つかって金融きんゆう商品しょうひんが購入こうにゅうできる『Tポイント投資とうし』」という文言もんごんのみの情報じょうほうだったため、筆者ひっしゃとしては、楽天らくてん証券しょうけんが行おこなっているような投資とうし信託しんたくの買かい付つけ代金だいきんに充当じゅうとうできるのと同おなじ立たて付つけだろう、と考かんがえていた。

　SBIネオモバイル証券しょうけんはネット証券しょうけんのSBI証券しょうけんとTポイントを有ゆうするCCCマーケティングの合弁ごうべん会社かいしゃで、となれば楽天らくてんの例れいのようにSBIが扱あつかう投信とうしんを買かえますよというのだろうと思おもったわけだ。しかし、実際じっさいには違ちがった。

　先さきに進すすめる前まえに、「ポイント投資とうし」をよくご存ぞんじない方ほうにかいつまんで説明せつめいすると、まず18年ねんからポイント投資とうしというワードがよく聞きかれるようになった。カードのポイントや共通きょうつうポイントを使つかったバーチャルな投資とうし体験たいけんが先駆さきがけで、次つぎに、先さきに述のべたように楽天らくてん証券しょうけんが現物げんぶつ購入こうにゅうの一部いちぶまたはすべてをポイント（楽天らくてんスーパーポイント）で買かえるサービスを開始かいしする。

　つまり、疑似ぎじ的てきな運用うんよう体験たいけんでポイント自体じたいが増減ぞうげんするパターンと、ポイントが現金げんきんと一体化いったいかして金融きんゆう商品しょうひんを買かい付つけるパターンの2種類しゅるいがあるわけだが、双方そうほうともこれまでは投資とうし信託しんたく（疑似ぎじ的てき運用うんよう体験たいけんの場合ばあいは積極せっきょく運用うんようのアクティブと安定あんてい的てき運用うんようのバランスの2種類しゅるいが多おおい）を投資とうし対象たいしょうとしてきた。

　ちなみに、4大だい共通きょうつうポイント（Tポイント、Ponta、楽天らくてんスーパーポイント、dポイント）のうち、Tポイントはポイント投資とうしの分野ぶんやでは最後さいご発はつになる。ライバルたちと同おなじ土俵どひょうで勝負しょうぶはしないというのだろう、日本にっぽんで初はじめて（18年ねん12月時点じてん）、ポイントを使つかって現物げんぶつ株かぶ（国内こくない株式かぶしき）が買かえるサービスである、と発表はっぴょうした。しかも、1株かぶ単位たんい（本来ほんらいは証券しょうけん会社かいしゃで取引とりひきする際さいは100株かぶ単位たんい）で購入こうにゅうでき、売買ばいばい手数料てすうりょうはいわゆるサブスクリプション方式ほうしきを採用さいよう、月間げっかん50万まん円えんまでの取引とりひきなら何なん度ど売買ばいばいしても200円えん（税込ぜいこみ216円えん）で済すむ。さらに、毎月まいつき200ポイントの期間きかん固定こていポイントが付与ふよされるので、手数料てすうりょうは実質じっしつ無料むりょうといっていい。

　正直しょうじき、儲もうけは度外視どがいしした設計せっけいで、SBI証券しょうけんが現在げんざいの顧客こきゃくの年齢ねんれい層そうを考かんがえたとき、スマートフォンで完結かんけつする取引とりひきを介かいして若年じゃくねん層そうを株式かぶしき投資とうしに取とり込こむための先行せんこう投資とうしだと思おもえばいいだろう。

逆風ぎゃくふうが吹ふくTポイントの現状げんじょう

　このローンチ発表はっぴょう会かいに出席しゅっせきしたときは「これでTポイントが少すこしは挽回ばんかいできるかも」と感かんじたものだ。というのは、このところTポイントには逆風ぎゃくふうが吹ふきまくっていたからである。

　Tポイントは共通きょうつうポイントの先駆さきがけとして知名度ちめいども高たかく、年としに一いち度どは利用りようするアクティブ会員かいいんは約やく6900万まん人にん以上いじょう（19年ねん2月がつ末まつ現在げんざい、名寄なよせ済ずみの数かず）、利用りようできる店舗てんぽは100万まん店てん以上いじょうと、ポイントの代名詞だいめいしと言いってもいい存在そんざいだ。しかし、ほかの共通きょうつうポイントと比較ひかくすると還元かんげん率りつが低ひくい（200円えんにつき1ポイント付与ふよのケースが多おおい）、決済けっさいアプリ「PayPay」との連携れんけいが進すすまない、提携ていけい先さき（ドトール、アルペンなど）が取とり扱あつかいを終了しゅうりょうしていくなどのネガティブな材料ざいりょうばかりが話題わだいとなっていた。

　しかも、このSBIネオモバイル証券しょうけん開業かいぎょうの発表はっぴょう当日とうじつに、以前いぜんからささやかれていたファミリーマートの複数ふくすうポイント化かが発表はっぴょうになった。もはや、ファミマはTポイント独占どくせんではなく、今後こんごは楽天らくてんスーパーポイント、そしてdポイントも選択せんたくできるようになる。

　Tポイントをためるのをやめようか、という後うしろ向むきな客きゃくにとって、この「Tポイントで株かぶが買かえる」のは朗報ろうほうだろう。コツコツ買かっていき、単元たんげん株かぶにまでなれば優待ゆうたいも受うけられる。これまでポイントの使つかい道みちがなかったという人ひとも試ためしやすい。ただし、取引とりひきには証券しょうけん口座こうざを開ひらく必要ひつようがあるので、通常つうじょうの証券しょうけん会社かいしゃに口座こうざを開ひらくのと同様どうようの手続てつづきは必要ひつようだ。マイナンバーの提出ていしゅつも必須ひっすとなる。

Pontaはバーチャル方式ほうしきのポイント投資とうしを開始かいし

　ポイントと株かぶといえば、その直前ちょくぜんの3月がつにもPontaの新しんサービス「Pontaポイント運用うんよう」の発表はっぴょうが行おこなわれた。運用うんようは4月がつ9日にちからスタートしている。

　こちらも、実際じっさいの個別こべつ企業きぎょうの株式かぶしきの値動ねうごきに連動れんどうするポイント投資とうしだ。ただし、SBIネオモバイル証券しょうけんとは異ことなり、現物げんぶつ株かぶを買かうわけではないバーチャル方式ほうしきとなっている。20ポイントから1ポイント単位たんいで個別こべつ株式かぶしきへ疑似ぎじ投資とうしでき、対象たいしょうになるのは、ゲオホールディングス、日本航空にほんこうくう、三菱みつびしUFJフィナンシャル・グループ 、リクルートホールディングス、ローソンに加くわえ、ETFなど計けい9銘柄めいがら（4月がつ9日にち現在げんざい）。

　ただし、いつでも取引とりひきができるわけではなく、前日ぜんじつの終値おわりねベースで1日にち一いち回かいの買かい付つけのみ。株式かぶしきの値動ねうごきに連動れんどうするとなれば、それこそ急激きゅうげきな下落げらく局面きょくめんに遭遇そうぐうする可能かのう性せいもあるが、あわてて売うるのではなく中長期ちゅうちょうき的てきに保有ほゆうしてもらい、将来しょうらい的てきには現物げんぶつ株かぶとの交換こうかんや優待ゆうたいサービスも考かんがえていくとのことだった。

　先さきのSBIネオモバイル証券しょうけんとは異ことなり、あくまでポイント投資とうしなので、株式かぶしき投資とうし未み経験けいけん者しゃが手持てもちの資金しきんを使つかわずとも「企業きぎょうの株かぶの値動ねうごきとはこんな感かんじなのか」とイメージできるメリットはあるかもしれない。また、投信とうしんを対象たいしょうにした他社たしゃサービスより銘柄めいがら数すうも多おおいので、複数ふくすうに投資とうしして値動ねうごきの違ちがいを体感たいかんするのもいいだろう。

　このポイント運用うんようではPontaポイントをいったん銘柄めいがらポイントに換かえて運用うんようし、増ふえたところで再ふたたびPontaポイントに戻もどして引ひき出だすことができるが、その際さいに引ひき出だすポイント数すうの5％が手数料てすうりょうとしてかかるのが注意ちゅうい点てんだ。また、せっかく実際じっさいの株式かぶしきに連動れんどうしているのに取引とりひきはリアルタイムではないというのが物足ものたりないのは事実じじつ。このあたりは、株式かぶしき投資とうし初心者しょしんしゃのユーザーの意見いけんを聞きいてみたいところだ。

　そもそも「投資とうしとは何なにか」ということについては、それぞれ意見いけんがあるだろう。シンプルに言いえば、我々われわれがある企業きぎょう（あるいは国くに・自治体じちたい・外国がいこくなど）に出資しゅっしし、最終さいしゅう的てきにはそれが利益りえきを生うむことを期待きたいするものだ。お金かねを出だした以上いじょう、その出資しゅっし先さきの営業えいぎょう成績せいせきをチェックするようになるし、国内外こくないがいの経済けいざい状況じょうきょうやイベントにも関心かんしんを持もつようになる。

　そういう意味いみでは、ごちゃごちゃとあまたの株式かぶしきや債券さいけんが詰つめ込こまれている投資とうし信託しんたくを買かうよりは、個別こべつ株かぶを投資とうし対象たいしょうとするほうがわかりやすいとも言いえる。「貯蓄ちょちくから投資とうしへ」の動うごきがなかなか進すすまないと言いわれるが、「投資とうしは決けっして怖こわくありません。やり方かた次第しだいでは損失そんしつも限定げんてい的てきにできますよ」というおためごかしの態度たいどが逆ぎゃく効果こうかなのではないだろうか。あくまで個人こじん的てきな意見いけんではあるが、ポイントこそ株式かぶしきに投資とうしして、値上ねあがりも値下ねさがりもしっかり体験たいけんしたほうがいいのではないか。値動ねうごきするものが向むかないと思おもえば、その先さき無理むりに投資とうしする必要ひつようもない。リスクに対たいする自分じぶんの耐たい性せいもわかり、結果けっか的てきには良よき個人こじん投資とうし家かを育そだてられるのではないかと思おもう。
（文ぶん＝松崎まつざきのり子こ／消費しょうひ経済けいざいジャーナリスト）