井岡いおか一はじめ翔しょう、飛躍ひやくへの障害しょうがい・父親ちちおやとの絶対ぜったい的てき亀裂きれつ…スター選手せんしゅなのに深刻しんこくなスポンサー離ばなれの裏うら事情じじょう

井岡いおか一はじめ翔しょう（写真しゃしん：AFP/アフロ）

　日本人にっぽんじん初はつのボクシング4階かい級きゅう制覇せいはへの再さい挑戦ちょうせんが決きまった井岡いおか一はじめ翔しょう（30）。ジム移籍いせき問題もんだいの兼かね合あいもあり、2017年ねん末まつに引退いんたいを発表はっぴょう後ご、一転いってんして昨年さくねん9月がつには電撃でんげき復帰ふっきを発表はっぴょうしてボクシング関係かんけい者しゃを驚おどろかせたことは記憶きおくに新あたらしい。復帰ふっき以降いこうは主戦しゅせん場じょうを海外かいがいに移うつしていた井岡いおかにとって、6月がつに千葉ちばで行おこなわれる一いち戦せんは、実じつに2年ねん2カ月かげつぶりの国内こくない復帰ふっき戦せんとなる。

　海外かいがいに主戦しゅせん場じょうを移うつすことになった直接的ちょくせつてきな原因げんいんである父ちち・井岡いおか一法いっぽう氏しとの不仲ふなか報道ほうどうが取とり沙汰ざたされたが、国内こくない復帰ふっきにあたり、父ちちとの関係かんけいは改善かいぜんされたのだろうか。ボクシング関係かんけい者しゃによれば、「表面ひょうめん上じょうは解消かいしょうされましたが……」と言葉ことばを濁にごす。

「前提ぜんていとして、井岡いおかはボクシングに対たいしては非常ひじょうにストイックで、肩書かたがきやお金かねよりも『強つよいやつと戦たたかって自分じぶんの価値かちを証明しょうめいしたい』と、強者きょうしゃとの対戦たいせんを望のぞんできた。ところが、父親ちちおやはTBSと連携れんけいして、ジムにとってドル箱ばこである井岡いおかが確実かくじつに勝かてるであろう相手あいてを中心ちゅうしんにマッチメイクしてきたんです。それが井岡いおかにとっては納得なっとくいかなかったようで、父親ちちおやとの亀裂きれつは次第しだいに大おおきくなっていった。井岡いおかは意外いがいと周まわりの意見いけんなどを気きにするタイプで、『井岡いおかは強者きょうしゃとの対決たいけつから逃にげている』と言いわれることに対たいして過剰かじょうに反応はんのうしていました。海外かいがいに拠点きょてんを移うつしたのも、もう父親ちちおやに黙だまっていてほしいから仕方しかたなく、という側面そくめんが強つよいんです」

　復帰ふっき後ごの2戦せんは、いずれも井岡いおかが望のぞんだ強豪きょうごう相手あいてで、試合しあい内容ないよう自体じたいも好こう試合しあいだったといえるだろう。ただ年末ねんまつのマカオでの試合しあいでは敗やぶれ、営業えいぎょう面めんでも思おもわぬ苦戦くせんを強しいられた。

「大晦日おおみそかに海外かいがいでのワンマッチをテレビ放映ほうえいするというのは珍めずらしい。それが、実現じつげんしたということは井岡いおかのネームバリューと日本人にっぽんじん初はつの4階かい級きゅう制覇せいはというストーリーがあってのことでした。ただ、TBSサイドは、『採算さいさんが合あうのか』と、当初とうしょから難色なんしょくを示しめしていました。蓋ぶたを開あけてみれば、試合しあい内容ないようは玄人くろうと好このみの好こう試合しあいでしたが、大幅おおはばな赤字あかじ興行こうぎょうに終おわり、それを機きに、日本にっぽんでの復帰ふっきのタイミングを図はかっていました」（放送ほうそう局きょく関係かんけい者しゃ）

　加くわえて、資金しきんづくりに関かんしてトラブルを起おこしてきた一法いっぽう氏しの存在そんざいは、スポンサーにも悪影響あくえいきょうを与あたえたという。前出ぜんしゅつのボクシング関係かんけい者しゃが続つづける。

「本来ほんらいであれば、井岡いおかは実績じっせき的てきにも名前なまえ的てきにもスポンサーが多々たたついてもおかしくない選手せんしゅ。それが現在げんざいは、実質じっしつ的てきにパチンコメーカーSANKYO１社しゃだけで、やはり父親ちちおやの存在そんざいを嫌きらうスポンサーは多おおいのが実情じつじょうです。井岡いおか自身じしんもそれは理解りかいしていて、父親ちちおやとの関係かんけいがこれ以上いじょう悪化あっかするのは得策とくさくではないと考かんがえています。だから、表面ひょうめん上じょうは関係かんけいが改善かいぜんされたということになっていますが、内心ないしんは忸怩じくじたる思おもいでしょう。実際じっさいに、大晦日おおみそかの試合しあいには一法いっぽう氏しが観戦かんせんしたのを見みて、SANKYOの関係かんけい者しゃですら、『なぜ父親ちちおやがいるのか』と怪訝けげんそうな表情ひょうじょうをしていました。父親ちちおやのせいで、ボクサーとしての全盛期ぜんせいきに思おもうような活動かつどうができなかったという遺恨いこんは、簡単かんたんには消きえませんよ」

世界せかい戦せんのあとに移籍いせきか

　もっとも、スポンサーに関かんしては、本人ほんにんの私生活しせいかつも関係かんけいしているという声こえもある。

「谷村たにむら奈南ななさんとスピード離婚りこんしたのも印象いんしょうが良よくなかったみたいです。その後ご、すぐに別べつの女性じょせいとのスキャンダルが出でて、“お騒さわがせキャラ”という印象いんしょうが付ついてしまったのが痛いたかったですね。本人ほんにんも『大切たいせつな時期じきなのでボクシングに集中しゅうちゅうしなければ』と漏もらしていました」（井岡いおかの知人ちじん）

　一方いっぽうで、ボクシングに関かんしては、大晦日おおみそかの敗戦はいせん後ごも、井岡いおかは黙々もくもくとトレーニングを積つんでいたという。引退いんたい説せつも飛とび交かったが、本人ほんにんの意志いしは現役げんえき続行ぞっこうで当初とうしょから決きまっていた。それは、井岡いおか自身じしんが敗戦はいせんの理由りゆうを「体からだづくりの準備じゅんび不足ふそく」としていたからにほかならない。つまり、まだまだ上あがり目めがあるし、陣営じんえいが手応てごたえを感かんじている面めんも強つよかったのだ。

　国内こくない戦せんの開催かいさいに当あたっては、未み所属しょぞくの井岡いおかは当然とうぜんながら所属しょぞく先さきを探さがす作業さぎょうから行おこなう必要ひつようがあった。だが、元もと世界せかいチャンピオンの内山うちやま高志たかしが運営うんえいするジムでトレーニングをするも、所属しょぞく先さきを見みつけることは難航なんこうした。そこで手てを挙あげたのがReason大だい貴きボクシングジムだが、所属しょぞくは一時いちじ的てきなもので、他たジムに移うつるという見方みかたも強つよい。

「6月がつの試合しあいが終おわれば、どんなかたちであれ、井岡いおかはジムを移うつるでしょう。もっとも、4階かい級きゅう制覇せいはを達成たっせいした場合ばあいに、現役げんえき続行ぞっこうのモチベーションを保たもてるかは別べつ問題もんだいですが。本人ほんにんは『ボクサーとして、今いまがもっとも楽たのしくやれている』と話はなしており、充実じゅうじつした練習れんしゅうができているようです。井岡いおかは、強つよい相手あいてと戦たたかったうえで日本人にっぽんじん初はつの4階かい級きゅう制覇せいはを達成たっせいし、自分じぶんの価値かちを証明しょうめいしたいという想おもいは根強ねづよいですから」（前出ぜんしゅつ・ボクシング関係かんけい者しゃ）

　国内こくない戦せん開催かいさいに当あたっては、TBSサイドの奔走ほんそうも目立めだったという。そこには、なんとしても4階かい級きゅう制覇せいはの世界せかい戦せんを日本にっぽんで開催かいさいしたいという思惑おもわくもあった。前出ぜんしゅつの放送ほうそう局きょく関係かんけい者しゃが語かたる。

「TBSからすれば、井岡いおかが大晦日おおみそかで敗やぶれたことで、結果けっか的てきには国内こくない戦せんへ復帰ふっきする青写真あおじゃしんを描えがきやすくなったといえます。それで、ジムやスポンサー、協会きょうかいを巻まき込こんで、なんとか国内こくない復帰ふっきへと漕こぎ着つけたわけです。国内こくない戦せんであれば井岡いおかが勝かつだろう、という見込みこみもありますが、高度こうどな技術ぎじゅつを持もち、玄人くろうと好このみのボクシングをする井岡いおかには根強ねづよいファンがいるので、大晦日おおみそかでの赤字あかじ補填ほてんのためにも、力ちから技わざを駆使くししたかたちともとれます」

　日本人にっぽんじん史上しじょう初はつの4階かい級きゅう制覇せいはのために、国内こくない復帰ふっきを選えらんだ井岡いおか一はじめ翔しょうの選択せんたくは正ただしかったのか。その結果けっかは、6月がつに明あきらかになる。
（文ぶん＝中村なかむら俊明としあき／スポーツジャーナリスト）