ゴーンショックから1ヵ月かげつ経過けいかした。比較的ひかくてきしずかに状況じょうきょう見極みきわめてきたルノーだが、臨時りんじ株主かぶぬし総会そうかい開催かいさい要求ようきゅうするなど、ついにうごきがはじめた。アライアンスを持続じぞくさせながら、その主導しゅどうけんめぐあらそいが、本格ほんかくむかえてきている。(ナカニシ自動車じどうしゃリサーチ代表だいひょうアナリスト 中西なかにしたかしじゅ

歴史れきしかえれば
ゴーンの功績こうせき自体じたい否定ひていしがたい

ゴーン逮捕は日産の業績にも大きな影響を与えることは確実です。ゴーン逮捕たいほから1ヵ月かげつ静観せいかんしていたルノーがうごした。ルノーと日産にっさん今後こんご主導しゅどうけんあらそいなどに没頭ぼっとうすれば、日産にっさん業績ぎょうせきへの影響えいきょうけられない  Photo:AFP/AFLO

 19ねんわたるルノー・日産にっさんのアライアンスは、やすやすと解体かいたいできるものではない。このアライアンスを否定ひていしてみたところで、両社りょうしゃあかるい未来みらいおとずれるわけではないのだ。本稿ほんこうでは、ルノー・日産にっさんのアライアンスの今後こんご先読さきよみしてみよう。

 以前いぜん寄稿きこうした記事きじ「ゴーンの功罪こうざい、ルノー日産にっさん連合れんごうが『独裁どくさい維持いじ装置そうち』に変容へんようした理由りゆう)では、歴史れきしてきなアプローチをとおし、ルノーと日産にっさん対等たいとうから対立たいりつ構図こうずかった背景はいけい分析ぶんせきし、ゴーン容疑ようぎ遠因えんいん分析ぶんせき真実しんじつちかづくことをこころみた。ゴーンりをはかろうとしたフランスがわが「あく」であり、会社かいしゃまもろうとする日産自動車にっさんじどうしゃが「ぜん」であるかのような、善悪ぜんあく対立たいりつじく異論いろんていするためだ。

 くわしくは前回ぜんかい記事きじ参照さんしょうしていただきたいが、19ねんおよぶルノーと日産にっさんのアライアンス(提携ていけい)には、3つのフェーズがある。だい1段階だんかいは1999ねんから2004ねんの「対等たいとう精神せいしん」の5年間ねんかんだい2段階だんかいは2005ねんから2013ねんの「シナジーと不満ふまん」の8年間ねんかんだい3段階だんかいは、2014ねんから現在げんざいいたる「対立たいりつ分断ぶんだんリスク」であった。そのなかで、日産にっさんあきらかにルノーによって再生さいせい享受きょうじゅでき、ゴーンぜん会長かいちょうによって対等たいとう精神せいしんつアライアンスで飛躍ひやく獲得かくとくした歴史れきしてき背景はいけいしめした。ゴーンによる日産にっさん再生さいせい功績こうせき否定ひていしがたいのである。

 最初さいしょの「対等たいとう精神せいしん」のステージで、資本しほん関係かんけい親子おやこという資本しほん論理ろんりたいし、あくまでもアライアンスの精神せいしん対等たいとうとするゴーンさだめた関係かんけいが、「シナジーと不満ふまん」のステージでルノーと日産にっさん関係かんけい対立たいりつし、国家こっか資本しほん主義しゅぎてき色彩しきさいつよめたフランスの産業さんぎょう政策せいさくなかだい2段階だんかいである「対立たいりつ分断ぶんだんリスク」のステージにかった背景はいけい解説かいせつした。

 こうして歴史れきしてき事実じじつ丹念たんねん検証けんしょうしてみると、ルノーと日産にっさん資本しほんのねじれや不公平ふこうへい資本しほん関係かんけいなか日産にっさん不当ふとうあつかわれ、ゴーン常軌じょうきいっした独善どくぜんてき経営けいえい愚弄ぐろうされたという、日産にっさん擁護ようごするメディアの論調ろんちょうは、歴史れきしてき背景はいけい理解りかいしていない、かたよった見方みかたであることがわかる。